住友生命役員が語るAI民主化——「素の力」で戦う時代の終わりと個人の台頭
2024年4月末
この記事のポイント
- 住友生命のデジタル役員・木さんが語る「AI民主化の本質」。まず目標を持ち、自分のやりたいことからAIを使い始めることが、AI活用を継続させる唯一の方法だ。
- 「貝殻を高く売る」ビジネス発想研修が一日で人をDX人材に変える。価値=ベネフィット÷コストという原則は生成AIでも変わらない本質的なフレームワークだ。
- 刀と鉄砲・戦艦とモビルスーツ・恐竜と哺乳類——「素でいい」という思い込みが日本のDX遅延の根本原因だ。AIという「鉄砲」を持った人が、時代を変えていく。
住友生命デジタル役員がGPTs研究会のライブに登場
今回のゲストは住友生命保険のデジタル系役員を務める木さんです。社内のDX推進と、外部へのデジタル・ビジネスモデル研修、さらに国の政策立案委員としてAI・DXの普及を考える立場にあります。「GPTs研究会のライブを毎日視聴している」と語り、AI氣道との縁をつないだのはたち君でした。
木さんが書いた「DX人材の育て方」という本の特徴は、第7章の「ビジネス発想力研修」にあります。貝殻・石・流木・砂・プラスチックなど「ただのゴミ」を使って、いかに高く売るかを考える1日間のワークショップです。1300人以上が受講し、経済産業省の課長クラスですら「これみんなやらないといけない」と感じる内容だと言います。
この研修の最後の5分で「1日かけてみなさんがやったことを、生成AIなら3秒でできます」と見せる。全員が言葉を失い、その後から自発的にAIを学び始める——という強力な「体験から動かす」手法が印象的でした。
「まず目標を持て」——何に使うか分からない人がAIを使えない理由
木さんが多くの現場で感じてきた課題は「何に使えばいいか分からないままAIを使っても苦痛なだけ」ということです。ChatGPTが登場して全員が騒いだ2023年、そして「使う人」と「使わない人」に分かれた2024年——その分岐点にあるのは「目標があるかどうか」だと言います。
「まず何かをやろうと思いなさい」というアドバイスは、AIの使い方よりも前の話です。自分のやりたいこと・解決したい課題・達成したい目標があって初めて、AIはその手段として機能します。逆に言えば、目標が明確な人はどんなツールを使っても前に進める。AI氣道が「まず自分を知る」ことを強調する理由とまったく同じです。
Z世代の若手社員が「こっちのほうが効率的なのに」と生成AIを使い始めると、「根性でやれ」という上司世代と衝突する——という現場の現実も語られました。これは組織のDXが進まない構造的な原因でもあります。「使えるものは全部使おう」というマインドセットの差が、個人・組織・国のレベルで広がり続けています。
「価値=ベネフィット÷コスト」——AI時代も変わらないビジネスの本質
木さんの研修で使われる基本フレームワークは「価値=ベネフィット÷コスト」です。価値を上げるには、分子のベネフィットを上げるか、分母のコストを下げるか——そのどちらか、またはその両方をデジタル・AIで実現することがDXの本質だと言います。
住友生命が提供する「バイタリティ」という健康増進型保険は、まさにこのフレームワークの体現です。割引で買える・返品できる・品揃えが多い——これらすべてが価値を高める要素です。そして今、生成AIを使ってこれらの要素を顧客ごとにカスタマイズして提案できるようになりました。
この「価値の方程式」はAI時代にも変わりません。むしろAIが「ベネフィットを上げる」「コストを下げる」両方を同時に実現できるため、使える人と使えない人の価値提供の差が急拡大しています。「素でいけます」という人が負け続けるのは、この方程式で考えれば当然の結果です。
刀と鉄砲の時代——「素で戦う」ことが通用しなくなった歴史的転換点
木さんが披露した「刀と鉄砲の比喩」が絶妙でした。剣の達人がいくら腕を磨いても、農民が鉄砲を持てば瞬時に倒される。「素でいける」という自負が、逆に変化への適応を妨げる——これは日本のDX遅延の構造的な原因です。
研修では「まず素の力で戦ってみる」という体験をさせてから、AIが同じことを3秒でやるのを見せます。「ピストルもあるよ」と示した瞬間に全員が「最初からこれ使わないとダメでしょ」と気づく——体験しないと刺さらない、という人間の本質を突いた設計です。
「戦艦とモビルスーツ」「恐竜と哺乳類」「高い戦闘ヘリと安いドローン」——どの比喩も同じことを言っています。大きくて強かったものが、小さくて機動力のあるものに逆転される。AIはその「逆転のツール」であり、今まで何も持たなかった個人が、大企業・大資本と対等以上に戦える時代を作っています。
イノベーション人材は「いない」のではなく「埋もれている」
木さんが語った印象的な視点が「イノベーション人材は企業にいないのではなく、埋もれている」という話です。趣味が北海道での狩猟というサラリーマン、ドローンを使ってカモの位置を確認してから猟に行くというユニークな発想の持ち主——こういう人が社内にいても、「データサイエンティスト」という肩書では何をしているか分からないと言われてしまう。
「ドローン詳しいんだよね?じゃあノート書いて」とClaude(AIツール)の使い方を教えたら、その人がすぐに面白いコンテンツを作り始めた——これが「埋もれていた人材の発掘」の瞬間です。趣味・好きなこと・変わったスキルを持っている人こそ、AIを使って化ける可能性を秘めています。
同じ発想で、ひろ君たちの「AI氣道」というコミュニティも機能しています。農業・増援業・漁業・保険業——どんな業界の人も、AI氣道に来ると「あなたの強み×AI」という掛け合わせで新しい可能性が見えてきます。
「自分ごとテキスト」——個人の好きなことでAIを学ぶ時代へ
木さんが国の委員会でも提唱しているコンセプトが「自分ごとテキスト」です。個人の趣味・好きなことを入力すると、それに合わせたDXの学習テキストが生成される——という仕組みです。野球部の学生に「大リーグのデータ活用」の文脈でデジタルを教えたら、前のめりで聞いてきた、という体験談がそのヒントになりました。
「脳は自分の好きなものしか受け入れない」という事実に基づいたこのアプローチは、AI時代のパーソナライズ学習の本質です。同じことでも、自分の好きなキャラクターや興味のある文脈で語られると理解度が劇的に上がる——ロイデミアのようなAI教育プラットフォームとも通底する考え方です。
「AIは移動の民主化」という表現も印象的でした。新幹線ができる前は足が悪い人は東京〜大阪を移動できなかった。でも新幹線ができたことで誰でも行けるようになった。AIは「知識・創造・発信の民主化」をもたらし、今まで大企業だけに可能だったことを個人が実現できる時代を開いています。
まとめ:個人の時代——趣味と熱意と生成AIで世界が変わる
木さんとの対話から見えてきたのは「個人の時代が本格的に到来している」という確信です。モビルスーツの時代・哺乳類の時代・ドローンの時代——大組織・大資本よりも、機動力と個性を持った個人が台頭する時代が、今まさに始まっています。
その中でAIは「個人を武装させる鉄砲」です。好きなことを持ち、目標を持ち、AIを使いこなす人が、古い構造を軽々と超えていく。ガンダムで言えば「ミノ粒子でレーダーが使えなくなった時代のモビルスーツ」——個人の感覚・判断・創造性がより重要になる戦場で、AIはその能力を100倍に増幅してくれます。
AI氣道では「好きなことからAIを使い始める」ことを毎朝のライブで実践し続けています。あなたの趣味・好き・強みは何ですか?まずそこにAIを掛け合わせることから、新しい時代の一歩が始まります。
- Q. 「何に使えばいいか分からない」状態からAIを始めるにはどうすればいいですか?
- A. まず「自分が今困っていること・面倒に感じていること」を一つ選んでください。メールの文章作成・資料のまとめ・アイデア出しなど、日常業務の中の小さなことでも構いません。「これをAIにやらせたらどうなるか」を試すことから始めると、体感として「使える」という感覚が生まれます。
- Q. 「価値=ベネフィット÷コスト」というフレームワークは、どう活用できますか?
- A. 自分の商品・サービスに当てはめてみてください。「お客さんが得るベネフィット(便益)は何か」「お客さんが支払うコスト(金銭・時間・手間)は何か」を整理します。AIを使ってベネフィットを高める(質向上・スピードアップ)かコストを下げる(自動化・効率化)かで、提供価値が上がります。
- Q. 「素でいける」という自信が邪魔になるとは、具体的にどういうことですか?
- A. 自分のスキル・経験に自信がある人ほど「AIに頼るのは負け」という感覚を持ちやすいです。でも剣の達人が鉄砲を持った相手に負けるように、どれだけスキルが高くてもAIを使う相手には効率・量・スピードで敵わない場面が増えています。プロ意識をAI活用に向けることが、逆に強みを最大化する道です。
- Q. 企業内の「埋もれたイノベーション人材」を発掘するにはどうすればいいですか?
- A. 「趣味・休日の過ごし方・変わった特技」を聞くことから始まります。一見仕事と無関係に見えるスキルが、AIと組み合わさると強力な武器になることが多いです。その人に合った文脈でAIの使い方を教えると、自発的に動き出します。「自分ごとテキスト」のアプローチが効果的です。
- Q. 個人がAIで大企業と対等に戦える、とはどういう意味ですか?
- A. 従来は大企業だけが持てた「大量のコンテンツ生産力」「多言語対応力」「24時間対応のカスタマーサポート」「高度なデータ分析」などが、AIを使えば個人でも実現できるようになっています。YouTubeで個人が億万長者になれるように、AIでも「好きなこと×AI」で個人が大企業と同じ土俵に立てる時代が到来しています。
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