有機農業×物販×AI活用

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有機農業×物販×AI——北海道の農家が実践する「生き方を守るためのAI活用術」

配信日:2025年2月7日(金曜モーニングライブ)

この記事の3行まとめ

  • 北海道の有機農家・日山農場がAIを使ってExcel管理・SNS発信・画像生成を時短化し、農業以外の事務作業をゼロに近づけている。
  • 「誰のお米か分からなくなる」から直販を選んだ——農家とAIが組み合わさると、大手にはできない個性ある差別化が生まれる。
  • X投稿365日分をChatGPTで一気に作成し、2025年元旦から毎日投稿を実現。0から考える時間をゼロにした。

じいちゃんの血を継ぐ僕が、農家のAI活用に本気になった理由

僕の祖父は農家だった。田んぼ、りんご、梅、なし、スモモ——子供の頃から農作業を手伝い、土と食べ物のそばで育った。「多田」という苗字自体、田んぼとの縁を感じさせる。だから今、農業の未来が明るくないと知ったとき、どこか他人事にはなれなかった。

今回のゲスト・日山ゆみさんは、北海道別海町でJAS有機認証を取得した自然栽培米を育てる「日山農場」を夫と共に営んでいる。AIや画像生成を500日以上毎日試してきたというゆみさんが、農業とAIをどう組み合わせているか——その実践をじっくり聞いた。

農業の話とAIの話は、一見かけ離れているように見えるかもしれない。でも実際に話を聞いていくと、そこには「限られた時間の中で本当に大事なことに集中する」という、どんな仕事にも共通する本質が見えてきた。

JAS有機農業とは何か——手間と信念の話

「有機農業」は農薬・化学肥料を使わない栽培だが、「JAS有機」はさらにその認証を国から取得したものだ。書類審査が複雑で取得に手間がかかる分、「安心・安全ですよ」という第三者のお墨付きになる。日山農場はこの認証を2008年に取得し、さらに「自然栽培」という農薬も有機肥料も一切使わない栽培方法を2010年から続けている。

なぜそこまでするか。答えはシンプルだ。土の中の微生物を大切にして、その力を借りて土を本当に良くすること。「青い空 広い大地 1粒の愛」という言葉をお米の袋に書き続けているように、育てる側の気持ちが作物に宿ると信じているからだ。この文字はゆみさん自身が書道で書いたもので、それをそのままデザインに取り込んでいる。

農薬を使わないことで手間は増える。でも日山農場はそれを否定ではなく、自分たちの選択として続けてきた。「農薬を使う農家さんもいる。手間を省いてたくさん作る必要もある。それはそれで正しい」という姿勢も持ちながら、自分たちの信念を貫いている。

ISOや業界規格に近い仕組みで認証を受けることで、言葉にしにくい「こだわり」を見える形にできる。これはビジネスでも同じで、資格や認証が「信頼の可視化」になる。

「誰のお米か分からなくなる」——だから直販を選んだ

日山農場は農協に出荷せず、全量をお客様に直接販売している。なぜか。農協に出すと、複数の農家のお米が一緒になり「誰のお米」かが消えてしまうからだ。手間暇かけて自然栽培した米も、ブランドとして届かない。

2004年の農地法改正でお米の直販が解禁になってから、日山農場は少しずつ直販を始め、今では15〜16年の歴史を持つ。直販はJA(農協)がやってくれていたことを全部自分たちでやる必要がある。顧客管理・在庫管理・SNS発信・デザイン——この「農業以外の仕事」をどうこなすかが、今のテーマだ。

改正前は農家が自由にお米を販売することは法律上できなかった。それが解禁されて、初めて「自分たちのお米として届ける」選択肢が生まれた。そこから積み上げてきた15年超の直販の歴史が、今のAI活用の土台になっている。

ChatGPTでExcelの関数を教わる——「聞いてみなきゃ分からなかった」

ゆみさんがAI活用で最初に実感した変化は、Excelの顧客管理・在庫管理だった。「基礎の基礎程度しか使えていなかった」というExcelを、ChatGPTに「これをやりたい」と相談すると、必要な関数をバーッと教えてくれる。コピペして貼るだけで動く。

「Google検索で調べても自分に当てはまるものが分からなかったのが、個別に悩みを聞いてくれるから解決できた」——これは僕が講座でよく聞く声だ。スプレッドシートの保存方法すら知らなかった方が、ChatGPTを「先生」として使い始めると急速に伸びる。24時間360度対応してくれる個別指導の先生が、無料でそこにいる感覚だ。

ゆみさんの夫も「分かりやすくなった」と言ってくれた。完璧にやろうとせず、「今年はここまでできたらOK」という基準で進めたことも成功の鍵だった。顧客データと在庫を紐付けて、発送時期を一発で確認できる仕組み——それが農業以外の部分での大きな時短になっている。

AIを使う前から持っているExcelやスプレッドシートを、まず使いこなすこと。新しいツールを次々と入れるより、既存のツールをChatGPTに教えてもらいながら深めることの方が、実務への影響は大きい。

画像生成で「お米の妖精ちゃん」を作り、漫画でお知らせ——クリエイティブのAI活用

ゆみさんが特に楽しんでいるのが画像生成だ。500日以上毎日試してきたというだけあって、キャラクターに一貫性を持たせる方法や、漫画風に仕上げるやり方まで身につけている。

完売のお知らせを「お米の妖精ちゃん」と「ちょっとかっこよくした主人(夫)」が登場する漫画で発信した。「農家さんですよ」という堅いイメージを崩して、親しみやすく伝えることができた。Facebookへの投稿の反響も良かったという。

書道もたしなむゆみさんが自ら書いた「青い空 広い大地 1粒の愛」という文字をデザインに取り込んでいる。AIと手仕事が組み合わさったとき、「その人だけのクリエイティブ」が生まれる。これは機械だけでは絶対に作れない。AIは道具であって、クリエイターはあくまでゆみさん自身だ。

FacebookもInstagramもXも——全てのSNSで発信しているゆみさんにとって、このクリエイティブ制作の効率化は時間の節約だけでなく、発信の質を上げることにもつながっている。

X投稿365日分をChatGPTで一気に作成——元旦から毎日投稿を実現

僕からゆみさんに提案した「365日分のX投稿をChatGPTで作る」という取り組みが実を結んだ。2025年1月1日、元旦から毎日Xに投稿し続けている。

作り方はシンプルだ。「1年分の投稿文を作って」と指示するだけではなく、日山農場の想い・季節の農作業・お客様への感謝——そういった素材を入力し、それをもとに投稿文を生成してもらう。「全部そのまま使うのではなく、読んで自分の思いが入るところは変える」というゆみさんのスタンスが大事だ。

元素材(0.1)があることで、寝る前の2〜3分で投稿が完了する。今まで「何を書くか考えているうちに時間が終わってしまう」という壁がなくなった。0から1を作るのと、0.1から1を作るのでは、かかる時間も気力も全く違う。

この「365日分を一気に作る」という発想の転換が重要だ。毎日1件ずつ考えていたら365日かかる。でも一気に作ってしまえば、あとは微調整するだけ。仕込みを前倒しにしておくことで、毎日の発信のストレスがゼロになる。

農業×AI——アナログの極致だからこそ、デジタルが光る

農薬を使わない、機械に頼らない、土の微生物を大切にする——日山農場の農業はアナログの極致だ。だからこそ、事務・発信・クリエイティブの部分をAIが担うことで、夫婦の時間と労力を本来の「育てること」に集中させられる。

AIは農作業はできない。種をまき、水を管理し、草を取り、収穫するのは人間の手だ。でも「誰に届けるか」「どう伝えるか」「管理をどうするか」という部分は、AIが大きく支援できる。手間をかけるべき場所に手間をかけるための道具として、AIは農業の現場にも自然に馴染んでいく。

料理に例えるなら、仕込みの段階(AIで管理・発信を効率化)をしっかりやっておくことで、本番(農作業・栽培)に全力を注げる。良い仕込みがあってこそ、本番のクオリティが上がる。これはどんな仕事でも同じ構造だ。

「今年はここまでできたらOK」——完璧主義を手放す覚悟

ゆみさんのAI活用で印象的だったのは、「全部完璧にやるんじゃなくて、ちょっとずつ始めればいい」というスタンスだ。今年はここまでできたらOKという基準を自分で決めて、それを実現することに集中した。

これは多くの人がAI活用を諦める理由と逆をいくアプローチだ。「全部一気に変えなきゃ」「完璧なシステムを作らないといけない」と思うと、始める前に疲れてしまう。でも「まずExcelをちょっと使いやすくする」「週1本投稿のためにAIに聞いてみる」という小さな一歩が、半年後に大きな積み重ねになる。

500日以上毎日画像生成を続けているゆみさんも、最初から「毎日やろう」と決めていたわけではないはずだ。楽しかったから続いた。楽しいから深まった。AIの習熟は、義務感ではなく好奇心から始まる。

よくある質問

農家がAIを使うメリットは何ですか?
農作業そのものにAIを直接使うことは現状難しいですが、顧客管理・在庫管理・SNS発信・チラシや漫画などのクリエイティブ制作において大きな時短になります。農業以外の事務作業を効率化することで、本来の作業に集中する時間が増えます。日山農場ではExcel管理の効率化・X投稿365日分の一括作成・漫画風画像の制作といった具体的な成果が出ています。
JAS有機認証米と通常のお米は何が違いますか?
JAS有機認証米は農薬・化学肥料を使わず、国の第三者機関による認証を受けたお米です。取得に手間がかかる分、安心・安全の証明になります。さらに「自然栽培」は有機肥料も使わず、土の微生物の力だけで育てる栽培方法で、より手間がかかります。日山農場は2008年にJAS認証を取得し、2010年から自然栽培に移行しました。
SNS投稿をAIで作るとき、自分らしさは保てますか?
保てます。AIが作った文章を「たたき台(0.1の素材)」として、自分の気持ちや言葉に合わせて手を加えることが重要です。元素材があることで考える時間が大幅に減り、手直しに集中できます。全部そのまま使うのではなく、「自分フィルター」を通すことが自分らしさを守るコツです。ゆみさんも「読んで思いが入るところは変える」というスタンスを大切にしています。
Excelが苦手でもChatGPTで関数を教えてもらえますか?
はい。「〇〇をしたいのですが、どの関数を使えばいいですか?」と具体的に質問すると、必要な関数とその使い方を教えてくれます。コピペして貼るだけで動くコードを出してくれることも多く、専門知識がなくても実務に使えます。Google検索で調べると「自分に当てはまるものが分からない」という壁がありましたが、ChatGPTは個別の悩みに対して答えてくれます。
農家が直販を始めるとき、AIはどう役立てますか?
顧客リスト管理・発送時期の通知管理・SNS投稿の自動化・商品説明文やチラシの作成など、直販に伴う事務・発信業務全般にAIを活用できます。農業の知識とAIの組み合わせは、大手には真似できない個性ある発信につながります。JAがやってくれていた業務を自分たちでやる際の負担を、AIが大幅に軽減してくれます。
AI活用を始めたいけど何から手をつければいいですか?
まず今使っているツール(ExcelやスプレッドシートなどA)を、ChatGPTに「こうしたい」と相談することから始めるのがおすすめです。新しいツールを一気に入れるより、既存の業務の中の「困っていること」を1つChatGPTに聞いてみる。それだけで大きく変わることがあります。完璧主義を手放して、「今年はここまでできたらOK」という小さな目標で進めることが長続きの秘訣です。


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