なぜ真面目な経営者ほど属人化するのか 原因は抱え込みOS

なぜ真面目な経営者ほど属人化するのか——原因は「抱え込みOS」にある

属人化シリーズ・原因編

なぜ真面目な経営者ほど属人化するのか——原因は「抱え込みOS」にある

3方よしAI共創コンサルタント 田中啓之(ひろくん)

家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。

「経理は田中さんしか分からない」。「あの人が辞めたら、うちはもう回らない」。中小企業の経営者なら、夜中にふっとこの不安が頭をよぎったこと、一度はあるんじゃないかな。

この記事では、その属人化が「なぜ消えないのか」という原因を、もう一段深いところまで掘り下げていきます。結論を先に言うと、原因は社員の怠慢でも、ITが苦手なせいでもありません。「私がいないとダメ」「私が全部やる」という、頭の中で動き続けているOS——私はこれを「抱え込みOS」と呼んでいます。

この記事を3行でまとめると

  1. 属人化の本当の原因は能力差じゃない。「抱えていることが自分の価値」と無意識に思っている、その心の置き場所が原因。
  2. 抱え込むのは、いい加減な人じゃなく真面目で優しい人。だから本人を責めても解決しない。
  3. 料理で言うと「自分のレシピを誰にも渡せないベテラン料理人」。腕を見せ続けることに価値を置いているうちは、厨房は永遠にその人なしで回らない。

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「経理は田中さんしか分からない」が、どの会社でも生まれる仕組み

その人しか分からない仕事が生まれる仕組みの図解

まず、あなたの会社を思い浮かべてみてください。

経理は田中さんしか分からない。得意先との細かい関係は鈴木部長の頭の中だけにある。誰も触れない謎のExcelマクロは、山田さんしか直せない。新人が入ってきても、結局はその人たちの空き時間待ち——。

これ、特別ダメな会社の話じゃないんです。私のところに相談に来てくださる経営者の方が、判で押したように同じことを口にします。会社の中に「その人にしか分からない仕事」が何個も散らばっていて、そのうちの誰か一人が体調を崩すだけで、業務がガクッと止まる。これが「属人化」です。

正直に言いますね。私もそうでした。それどころか、自分自身が「私が抜けたら回らない」を、むしろ誇らしく思っていた時期さえあったんです。

「俺がいないとダメなんだよな」「最後は俺が決めないと」。そう思いながら、見積もりも、採用の最終判断も、得意先のクレーム対応も、全部自分の机の上に集めていました。忙しいことを、価値があることだと思い込んでいた。でも本当はね、ただ自分が抱えていただけだったんです。

ここで多くの人が勘違いするのは、「属人化=うちのシステム化が遅れているせい」だと思ってしまうこと。だから「DX」とか「業務システム導入」に走る。でも、ここ数年それをやってきた会社の経営者ほど、こう言います。

「コンサルに何百万も払って、結局うちは何も変わらなかった」「ChatGPTは触ってみたけど、仕事でどう使えばいいのか分からん」。

これ、あなたが悪いわけでも、頭が固いわけでもありません。順番が、逆だったんです。

多くのDXは、こういう順番で進みます。新しいツールを買う → 「これで効率化できます」と言われる → でも現場の仕事は相変わらず田中さんの頭の中にある → システムは「箱」だけあって中身(知恵)が入っていない → 結局、田中さんに聞かないと使えない。

つまり、箱を先に買っているのに、中身が一人の頭の中に残ったまま。これじゃ属人化は消えません。むしろ「新しいシステムの使い方も田中さんしか分からない」が一個増えるだけ。

料理で考えると、よく分かります。最新のオーブンを買っても、レシピがベテランの頭の中にしかなかったら、そのオーブンは使いこなせません。新人がボタンを押しても、「ベテランが何度で何分焼いていたか」を知らなければ、同じ味は出てこない。買うべきは、オーブンじゃなかった。ベテランの頭の中にある「なぜその温度なのか」を、消えない場所に書き出すことだったんです。

だからこの記事では、原因を「技術不足」では片づけません。なぜ知恵が一人の頭の中に貼りついて出てこないのか。その犯人を、次から名指ししていきます。

属人化の原因は怠慢ではなく、真面目さの副産物である

属人化は真面目さの副産物であることを示す図解

ここで、一番大事なことをお伝えしたいです。

属人化が一番強く出るのは、いい加減な人ではなく、真面目で、責任感が強くて、優しい人なんです。

考えてみてください。田中さんが経理を一人で抱えているのは、なぜか。たぶん、「自分がしっかりやらないと、会社に迷惑がかかる」と思っているから。「中途半端に人に渡して、ミスが出たら申し訳ない」と思っているから。「自分がやったほうが早いし、確実だから」と思っているから。

全部、優しさと責任感から来ています。つまり、属人化は「真面目さの裏返し」「真面目さの副産物」なんです。サボっている人は、そもそも仕事を抱え込みません。さっさと人に振るか、放り出します。一人で背負い込めるのは、責任感がある人だけなんです。

ここを取り違えると、対策の方向を間違えます。「あの人が独占している」「囲い込んでいる」と見ると、対立になる。「あの人が、責任感から一人で背負ってくれている」と見ると、感謝から始まる。同じ事実を見ているのに、入り口がまるで違ってくるんです。

私自身の話で言うと、私は父の暴力を見て育ちました。子どものころは、ただ怖かった。でも自分が35歳で父親になって、子どもがいっぱいいて、仕事もうまくいかなくて、行き場がなかったあの人の気持ちが、痛いほど分かるようになったんです。父もまた、誰にも頼れず、一人で全部背負い込んで、押し潰されそうになっていた。

抱え込みは、強さじゃない。頼り方を、誰にも教わらなかった人の、孤独なんです。だから私は、属人化を抱えている人を責める気にはなれません。あの人もきっと、ずっと一人で頑張ってきたんだと思うから。

「真面目さの副産物」という見方は、決して優しいだけの話じゃありません。原因を正しく特定するための、いちばん実用的な視点なんです。怠慢が原因なら「叱る」が打ち手になる。でも真面目さが原因なら、打ち手は「叱る」じゃなくて「安心して荷物を下ろせる仕組みを一緒に作る」になる。原因の見立てを間違えると、打ち手も全部ズレるんです。

抱え込みOSの正体は「存在価値をどこに置いているか」という問題

抱え込みOSの正体は存在価値の置き場所だと示す図解

では、その「真面目さの副産物」の、さらに奥にあるものは何か。ここが、この記事の中心です。

抱え込みOSというと、多くの人が「仕事を抱え込む癖」のことだと思います。タスクを人に振れない、なんでも自分でやってしまう、忙しいのに手が離せない——そういう「行動の癖」だと。でも、本当の根っこは、もっと深いところにあります。

それは、自分の存在価値を、どこに置いているかという問題なんです。

「私がいないとダメ」「私が全部やる」——こう思っているとき、人は無意識に、自分の存在価値を「抱え込んでいる状態そのもの」に置いています。つまり、心の奥でこうなっているんです。

・「私が抱えているから、私には価値がある」

・「みんなが私に聞きに来るから、私はこの会社に必要とされている」

・「私がいないと回らないから、私の居場所は安全だ」

これ、口に出すと身も蓋もないですけど、けっこう多くの人が、心の奥でこれをやっています。私もそうでした。

料理人でたとえると、分かりやすいかもしれません。自分の味を一子相伝のように握りしめて、弟子にもレシピを書いて渡さない職人さん。あれは弟子が憎いわけじゃない。「この味を出せるのは自分だけ」という事実が、自分の居場所だから。レシピを全部渡したら、自分は「ただのおじさん」になってしまう気がする。だから、口では「いつか教える」と言いながら、ずっと厨房に立ち続ける。

属人化の本当の原因は、能力の差ではありません。「抱えている状態」と「自分の価値」が、心の中でくっついてしまっていること。ここが分からないまま、ツールやマニュアルだけ用意しても、本人の手が動かないのは当然なんです。

知恵を渡せないのは「全部渡したら要らない人になる」という恐れ

全部渡したら要らない人になるという恐れの図解

存在価値が「抱えている状態」にくっついていると、何が起きるか。ここからが、属人化が消えない仕掛けの核心です。

この状態のままだと、知恵を渡したくても、渡せないんです。

なぜか。だって、知恵を全部渡してしまったら、「私がいなくても回る」状態になる。そうしたら、自分の価値の置き場所が、なくなってしまう気がするから。

頭では「引き継いだほうがいい」と分かっている。でも、心のどこかが「全部渡したら、私は要らない人になるんじゃないか」と、無意識にブレーキを踏む。

だから、手順書を書く時間がいつまでも取れない。だから、「いやこれは口で説明しないと無理だから」と言って抱え続ける。だから、引き継ぎがいつまでも進まない。これは、その人がサボっているわけでも、意地悪をしているわけでもありません。自分の居場所を守るために、無意識にそうしているんです。

ここで大事になるのが、「腹で決める」という言葉です。頭で「引き継ごう」と思うだけでは、足りない。心の奥にある「抱えていないと不安」というブレーキが残っている限り、行動は変わらないんです。

腹で決める。つまり、「私の価値は、抱えていることじゃない。むしろ、渡せることだ」と、お腹の底でひっくり返す。ここが外れた瞬間に、初めて知恵が動き出します。

そしてもう一つ、安心してほしいことがあります。「抱えるのをやめる」というのは、無責任に放り投げることでも、自分の仕事を取り上げられることでもありません。背負ってくれている人の荷物を、一緒に下ろす話なんです。レシピを書き出した料理人が「ただのおじさん」になるかというと、逆です。レシピを書ける人は、店を増やせる。後進を育てられる。一人で厨房に立っていたときより、よっぽど価値が上がる。

「渡せる人」のほうが、「抱えている人」より強い。この順番が腹に落ちると、ブレーキは外れ始めます。

義務の抱え込みと「快感の抱え込み」——2つのタイプを見分ける

義務の抱え込みと快感の抱え込み2タイプの図解

ここまで「責任感や不安から抱える」という話をしてきました。でも、抱え込みには、実はもう一種類あります。これを知っておかないと、対策を打つ相手を見誤ります。

一つ目は、これまで話してきた「義務の抱え込み」。責任感や「迷惑をかけたくない」という不安から、手放せないタイプです。

二つ目が、「快感の抱え込み」。「楽しくて、手放せない」という抱え込みです。

正直に言うと、私自身が、この「快感の抱え込み」がまだ抜けきれていません。新しいことに次々ワクワクして、「これも自分でやってみたい」「あれも実験したい」が止まらない。アイデアが無限に湧いてくる。それ自体は楽しいんです。でも、全部自分で味見したくなるから、手を広げすぎて、一つも深く掘れなくなる。料理で言えば、全部の鍋に手を出して味見だけして、一品も完成させないシェフ、みたいな状態です。

この2つは、見た目はどちらも「その人が抱えている」状態で同じです。でも、原因も、効く言葉も違います。違いを表にすると、こうなります。

見分けるポイント義務の抱え込み快感の抱え込み
手放せない理由責任感・不安(迷惑をかけたくない)楽しい・面白い(自分でやりたい)
本人の口ぐせ「私がやらないと迷惑がかかる」「これ、自分でやったほうが面白い」
表情疲れている・追い込まれているイキイキしている・むしろ元気
渡せない時の言い訳「口で説明しないと無理」「自分でやったほうが早いし楽しい」
効く声かけ「いつも背負ってくれてありがとう。一緒に下ろそう」「あなたにしかできない、もっと面白い仕事に集中しよう」

義務の抱え込みには「安心して下ろしていい」が効きます。一方で、快感の抱え込みには「下ろせ」と言っても響きません。だって、本人は楽しんでいるんだから。効くのは「もっとワクワクする上流の仕事を空けるために、こっちは渡そう」という、置き換えの提案です。

あなたの会社の「あの人」は、どっちのタイプでしょうか。疲れた顔で抱えているのか、楽しそうに抱えているのか。ここを見極めるだけで、かける言葉が変わります。

本人を責めても解決しない——荷物を一緒に下ろすという姿勢

荷物を一緒に下ろし消えない場所に渡す図解

原因が「真面目さ」と「存在価値の置き場所」だと分かると、打ち手も自然に決まってきます。本人を責めても、解決しないということです。

「もっと人に振りなさい」「引き継ぎを早くしなさい」と正論で言っても、本人は「いや、振ったら迷惑がかかる」と思っているわけだから、心の底では納得していない。納得していないことは、続きません。マニュアルを書けと言われて一度は書いても、結局またその人に聞かないと回らない状態に戻る。これ、よく見る光景じゃないかな。

ここを、経営者であるあなたが理解しているかどうかで、ものすごく差が出ます。属人化を「あの人が独占している」と見るのか、「あの人が責任感から一人で背負ってくれている」と見るのか。後者で見ると、最初のひとことが変わります。

「田中さん、いつも一人で背負ってくれてありがとう。でも、それだと田中さんが休めないし、田中さんに何かあったとき会社が困る。田中さんの頭の中を、消えない場所に少しずつ移していかない? 田中さんが、もっと楽になるために」

これは、知恵を奪う話じゃないんです。背負ってくれている人の荷物を、一緒に下ろす話。「あなたが要らない」ではなく「あなたが休めるように」。主語が変わるだけで、引き継ぎの空気がまるで違ってきます。

そして、もう一つ大事なこと。荷物を下ろした先の話です。「腹で決めて、抱えるのをやめたとして——じゃあ、その知恵を、いったい『誰』に渡すの? 結局、また別の社員が抱え込むだけじゃないの?」。そうなんです。ここが肝心。

抱えるのをやめても、渡す先がもう一人の「人間」だったら、また属人化が繰り返されます。鈴木部長から佐藤さんに移るだけ。3年後にはまた「佐藤さんしか分からない」が生まれる。だから、渡す先は人間じゃない。消えない場所——毎回必ず読まれる場所に渡すんです。

メモをチャットやSlackに流しても、すぐに上に流れて消えていきます。半年後には誰も探せない。そうじゃなくて、仕事をするたびに毎回必ず最初に読み込む「就業規則」のような場所に置く。そこに業務手順を足していくと、もう「田中さんしか分からない」が、物理的に消えていきます。

この「消えない場所」に中身を入れて動かしていくのが、いま無料で配られはじめている職種別のAIテンプレートです。ありがたいことに、AIを作っている会社の一つであるAnthropic(アンソロピック)社が、営業・マーケティング・人事・法務・財務・カスタマーサポートなど11職種ぶんのAIテンプレートを、誰でも使えるように公開しています(参考:github.com/anthropics/knowledge-work-plugins)。ゼロから作る必要はありません。横に配られた完成品を動かしながら、ベテランの頭の中を少しずつそこに足していけばいい。

でも——その箱に中身を入れるためには、まず「抱える人」が、抱えるのをやめてもいいと腹で決めていることが、絶対の前提になります。だから、技術の話より先に、原因の話をしているんです。

属人化の原因チェックリストと、よくある誤解の比較表

属人化のよくある誤解と本当の原因の図解

ここで、頭の中を一回整理しましょう。属人化を「真面目すぎる人のせい」でも「ITが苦手なせい」でもなく、構造として見るための表を2つ用意しました。

よくある誤解 vs 本当の原因

よくある誤解本当の原因
あの人がワザと囲い込んでいる責任感から一人で背負ってくれている(真面目さの副産物)
うちはITが遅れているから属人化する箱(システム)を先に買い、中身(知恵)が頭の中に残ったまま
マニュアルを書かせれば解決する「渡したら要らない人になる」という恐れが残ると、手が動かない
ベテランの能力が高すぎて引き継げない能力差ではなく、存在価値を「抱えている状態」に置いている
新しい優秀な社員に引き継げばいい渡す先が「人間」だと、また3年後に別人で属人化が再発する
抱え込みを外す目的は「楽をするため」空いた隙間に、本当に大事な時間や上流の仕事を置くため

自社の属人化の原因チェックリスト

次の項目に、いくつ当てはまるか数えてみてください。3つ以上当てはまったら、原因は技術ではなく「抱え込みOS」側にあります。

□ 「あの人が辞めたらどうしよう」と夜中に考えたことがある

□ マニュアルを作れと言ったのに、いつまでも上がってこない

□ 本人が「これは口で説明しないと無理」と言って渡さない

□ 抱えている本人は、いい加減ではなく真面目で責任感が強い

□ 過去にシステムを入れたが、結局その人に聞かないと使えない

□ 引き継ぎを進めても、いつの間にか元の「その人頼み」に戻る

□ 本人が抜けると、特定の業務が物理的に止まる

チェックが多いほど、買うべきは新しいツールではなく「知恵を外に出して、消えない場所に置く順番」だ、ということ。原因が分かれば、打ち手の優先順位もはっきりします。

ひろくんコラム:私自身、いまも抱え込みOSと戦っている

ひろくんコラム 戦いの最中 隣を歩く図解

COLUMN

「先生」のフリは、したくない

ここまで偉そうに原因を語ってきたけど、正直に白状します。私自身、抱え込みOSの書き換えは、いまもまだ戦いの最中なんです。134kgからの大幅な減量も乗り越えたし、抱えた借金も整理したし、ステージ3のがんも手術で乗り越えてきた。それでも、抱え込みOSだけは、今も完全には手放せていない。

私の場合は「快感の抱え込み」が手強い。新しいことに次々ワクワクして、全部自分で味見したくなる。アイデアが無限に湧くのに、手を広げすぎて一品も完成しない。料理で言えば、全部の鍋をつまみ食いするシェフ。分かっているのに、抜けきれない。

なんでこんな正直な話をするかというと、「先生」のフリをしたくないからです。「私はもう全部手放せました、皆さんもどうぞ」なんて嘘は言いたくない。私もまだ抱えています。あなたも、抱えています。それでいいんです。

この記事は、もう全部解けた人が上から教えるものじゃない。分身AIに手順や暗黙知を任せて、空いた隙間を取り戻す——そんな働き方を、まだ完全には解けていない私が、隣を歩きながら一緒に解いていく記事です。先日も、家族で水餃子を皮からこねました。AIに任せれば一瞬の仕事を横目に、わざわざ手で。効率だけ見たらありえない。でも、その「無駄な手間」が最高に贅沢だったんです。

凸凹のまま、でいいんです。完璧に手放せた丸い人になる必要はない。今ここから、一つだけ外していければ、それで前に進んでいます。私は、がんの手術台で麻酔が落ちる直前、頭に浮かんだのは仕事じゃなく家族の顔でした。だから決めたんです。AIに委ねて、人は積み減らして生き直す、と。抱え込みOSを外すのは、そこへ戻るためなんです。

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最後に、原因が分かったあなたに、今日できる一歩を渡します。難しいことは何もいりません。あなたの会社で「あの人にしか分からない仕事」を、1つだけ思い浮かべて、紙に書き出してください。経理でも、得意先対応でも、謎のExcelでも、発注の判断でもいい。一つだけです。

そして、その横に3つだけメモします。①誰の頭の中にあるか(例:経理の田中さん)②その人が抜けたら何が止まるか(例:月末の支払い処理が全部止まる)③その仕事、本人は「言葉にできる」と思っているか(例:たぶん「感覚だから無理」と言う)。3分で終わります。

紙に「経理=田中さん=月末が止まる」と書き出した瞬間、それは漠然とした不安から、解ける課題に変わります。夜中にぐるぐる回る恐怖は何もできないけれど、目に見える課題は一つずつ潰していける。地味だけど、これが「あの人が辞めたら」の不安を、毎日少しずつ減らしていく最初の一歩です。

属人化の原因についてよくある質問

属人化の原因についてよくある質問の図解

Q1. 属人化の一番の原因は、結局なんですか?

技術不足でも社員の怠慢でもなく、「私がいないとダメ」「私が全部やる」という抱え込みOSです。本人が自分の存在価値を「抱えている状態」に置いているため、知恵を渡すとブレーキがかかります。だからシステムを入れても、中身が一人の頭に残ったまま属人化が消えないんです。

Q2. 真面目な人ほど抱え込むって、本当ですか?

本当です。サボる人は、そもそも仕事を抱え込みません。「自分がやらないと迷惑がかかる」「ミスが出たら申し訳ない」という責任感と優しさがあるからこそ、一人で背負ってしまう。だから本人を叱っても解決しません。「いつも背負ってくれてありがとう」と感謝から入り、荷物を一緒に下ろす姿勢が出発点になります。

Q3. マニュアルを作らせれば属人化は解決しますか?

それだけでは戻ります。「渡したら要らない人になる」という恐れが残っていると、本人の手が動かず、書いても結局その人に聞く状態に戻るからです。先に「私の価値は、抱えることじゃなく渡せることだ」と腹で決めること。そのうえで、メモを流れて消えるチャットではなく、毎回必ず読まれる「消えない場所」に置くこと。この2つがそろって初めて定着します。

Q4. 知恵を別の優秀な社員に引き継げば、属人化は解消しますか?

渡す先が「人間」だと、また属人化が繰り返されます。鈴木部長から佐藤さんに移るだけで、3年後にまた「佐藤さんしか分からない」が生まれる。だから渡す先は人間ではなく、AIが毎回必ず読み込む「消えない場所」にするのがポイントです。そこに手順を足していけば、特定の人に依存しない仕組みに変わっていきます。

この記事のまとめ

・属人化が消えない一番の原因は、技術でもAIでもなく、「私がいないとダメ」という抱え込みOS

・抱え込むのは、いい加減な人ではなく真面目で責任感が強い人。真面目さの副産物だから、責めても解決しない。

・本当の根っこは能力差ではなく、存在価値を「抱えている状態」に置いていること。だから渡すのが怖い。

・抱え込みには「義務の抱え込み」と「快感の抱え込み」の2タイプがあり、効く声かけが違う。

・打ち手は「腹で決める」→「知恵を外に出す」→「人間ではなく消えない場所に渡す」。今日の一歩は、『あの人にしか分からない仕事』を1つ、紙に書き出すこと。

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