属人化シリーズ・暗黙知の引き出し方編
ベテランの暗黙知をAIで引き出す方法——「なぜそう判断したか」を毎日聞く
3方よしAI共創コンサルタント 田中啓之(ひろくん)
家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。
「あの人が辞めたら、うちは回らない」。中小企業の経営者なら、一度はこの不安に夜中うなされたことがあるんじゃないかな。経理の田中さん、得意先を握っている鈴木部長、謎のExcelマクロを触れる山田さん。彼らの頭の中にある「言葉にできない判断の軸」——これを専門用語で暗黙知(あんもくち)と言います。
この記事では、その暗黙知を、AIを使ってベテランの頭から引き出す具体的な方法をお伝えします。やることは、たった一言。ベテランが何かを決めた瞬間に「今、なぜそう判断したんですか?」と聞く。これを毎日積むだけ。書類は書かせません。しゃべってもらうだけ。中小企業の経営者向けに、今日から動ける形でやさしくお見せします。
この記事を3行でまとめると
- 暗黙知は「本人すら言葉にできない知恵のかたまり」。だから手順書を書いてもらおうとしても書けない。これが引き継ぎが何度やっても失敗する根本の理由。
- ベテランの隣にAIを座らせて「なぜ?」を聞くだけでいい。本人はしゃべるだけ。AIが記録して、構造化して、漏れまで聞き返してくる。書かせず、しゃべってもらうのが現実解。
- 料理で言うと「うちの味の基本を、壁に貼る」。引き出した暗黙知は、消える場所(チャット)でなく、毎回必ず読まれる場所に置く。これだけで効き目が段違いに変わる。
暗黙知の引き出し方や業務の自動化を、仲間と一緒に学びたい方へ。
GPTs研究会に参加する(無料・8,000名突破!)横に配られた型は「一般的な営業マン」でしかない理由

前の記事で、私たちはAnthropicが無料で配っている「職種別AI」を、横にずらっと並べました。営業、経理、人事、法務、CS……11職種分のテンプレが、もうあなたの手元にある状態です。インストールして、起動して、動かす。ここまでは、機械が苦手な人でも辿り着けます。
ところが、いざ自分の会社で動かしてみると、こう思う人が出てくる。
「……なんか、しっくりこない」
営業AIに見積もりの相談をしても、返ってくる答えが「教科書通り」すぎる。経理AIに月末処理を聞いても、うちのやり方とは微妙に違う。これ、当たり前なんです。だって、横に配られた型は「一般的な営業マン」だから。
私もそうでした。最初、出来合いのテンプレを動かして「すごい!便利!」と興奮して、その次の瞬間「でも、これ”うち”じゃないな」って肩を落とした。多くの経営者が、ここで「やっぱりAIは使えない」と判断して、引き出しにしまってしまう。もったいない。本当にもったいないんです。
なぜなら、ここからが本当のスタートだから。横に配られた型を、あなたの会社の「分身」に育てる。その方法を、この記事で全部お渡しします。
まず、はっきりさせておきたいことがあります。横に配られた職種別AIは、完成品じゃありません。これは欠陥じゃなくて、設計です。Anthropicが配っているテンプレは、どの会社でも使えるように作られている。だから「平均的」なんです。
料理で言うと、フランチャイズのチェーン店のレシピみたいなものです。誰が作っても80点。安定している。でも、あなたの店の常連さんが「ここのコレが好きなんだよね」と言ってくれる、あの一皿の味じゃない。
その「あの一皿の味」は、どこにあるか。——あなたの会社のベテランの頭の中です。
暗黙知とは何か——本人すら言葉にできない会社の宝物

経理の田中さん。得意先との関係を握っている鈴木部長。謎のExcelマクロを触れる山田さん。——この記事を読んでいるあなたなら、何人か顔が浮かぶはずです。
彼らの頭の中には、手順書には書いていない判断の軸がある。「この取引先は月初に連絡すると機嫌がいい」「この見積もりは値引きより納期で勝負したほうがいい」「この処理は例年通りだと年度末にズレるから、ここで一手間入れる」。
こういうのを、専門用語で「暗黙知(あんもくち)」と言います。難しい言葉に聞こえるかもしれませんが、中身はシンプルです。本人すら、言葉にできていない知恵のかたまり。
私はこの暗黙知について、こう書いたことがあります。
ひろくん
「暗黙知って、本人が言葉にできないんですよ。『なんとなくこっちかな』『経験的にこの順番』『お客さんの空気で判断』みたいな、本人すら手順化できない知恵のかたまり。」
出典:拙稿「中小企業の属人化・暗黙知をAI秘書に渡す」note 2026-05-31
ここが、属人化の正体です。「あの人が辞めたら回らない」——この不安の中身は、「あの人の頭の中にある暗黙知が、丸ごと消える」ということなんです。
手順書を渡してもらえばいいじゃないか、と思うかもしれません。でも、書けないんです。本人すら言葉にできていないものを、書けるわけがない。これが、引き継ぎが何度やっても失敗する根本の理由です。
だから、横に配られた「一般的な営業マン」を、うちの鈴木部長にする。そのためにやることは、ひとつ。
ベテランの隣に、AIを座らせる。
ベテランの隣にAIを座らせる、たった4ステップ

ここが、この本の核心です。AIは横に広げてくれる。でも、深さは人間が掘らないと出てこない。その「縦に掘る」具体的なやり方を書きます。私はかつて、ある記事でこう書きました。
ひろくん
「ベテランの隣にAIを座らせる。ベテランが判断するたびに『今、なぜそう判断したか』を聞く。AIが横で全部メモる。それを毎日積み上げると、3ヶ月後には『ベテランの判断ロジック』が手順化されてる。本人すら気づかなかった軸が、文字になって残る。」
出典:拙稿「中小企業の属人化・暗黙知をAI秘書に渡す」note 2026-05-31
やることは、本当にこれだけです。順番に4ステップで分解します。
| ステップ | やること | ベテランがやること |
|---|---|---|
| 1 | ベテランの仕事に、AIを「同席」させる | いつも通り仕事をする |
| 2 | 判断の瞬間に「なぜ?」を聞く | 聞かれて答える(しゃべるだけ) |
| 3 | AIが「ここ抜けてませんか?」と聞き返す | 当たり前を答えて穴を埋める |
| 4 | これを、毎日積む | 1日ひとつだけ話す |
ステップ1:ベテランの仕事に、AIを「同席」させる
ベテランが普段の仕事をする。そのとき、AIを横に置いておく。「AIを横に置く」って、具体的にどういうことか。
たとえば、鈴木部長が得意先に出す見積もりを作っている。そのとき、職種別AIの「営業」テンプレを開いた状態にしておく。あるいは、田中さんが月末の経理処理をしている横で、「経理」テンプレを起動しておく。スマホでもパソコンでもいい。ベテランの作業の「隣」に、聞き役のAIがいる状態を作る。それだけです。
ステップ2:判断の瞬間に「なぜ?」を聞く
ベテランが何かを「決めた」瞬間。ここがいちばん大事です。見積もりで値引き幅を決めた瞬間。連絡するタイミングを選んだ瞬間。例年と違う処理を足した瞬間。その「決めた瞬間」に、こう聞きます。
「今、なぜそう判断したんですか?」
たった一言です。すると、ベテランはこう答えます。「ああ、ここはね、この取引先は年度末が3月じゃなくて12月だから、いつもより1ヶ月前倒しでやっとくんだよ」。
——これです。これが、手順書には絶対に書かれない、ベテランの頭の中の軸。それをAIが全部メモる。本人がしゃべるだけ。AIが横で記録するだけ。ステップ3と4は、次の見出しでくわしくお話しします。
判断の瞬間に「今、なぜそう決めたんですか」と聞く威力

もう一度、ステップ2の核心を掘り下げます。なぜ「今、なぜ?」がそんなに効くのか。ここで一番大事なのは、ベテランに「文章を書かせない」ことです。私はこう確信しています。
ひろくん
「属人化解消は『手順書を書かせる』じゃなく『AIに口頭で渡してもらう』が現実解。完璧な書類を書ける人なんていない。」
出典:拙稿「中小企業の属人化・暗黙知をAI秘書に渡す」note 2026-05-31
完璧な手順書を書ける人なんて、この世にいません。書けと言われたら、みんな身構えて、当たり障りのないことしか書かない。本当に大事な「なんとなくこうしてる」が抜け落ちる。
でも、しゃべるだけならできる。「なぜ?」と聞かれて答えるだけなら、構えずに口が動くんです。これが「今、なぜそう決めたんですか」という、たった一言の威力です。
考えてみてください。「うちの仕事のマニュアルを書いてください」と頼まれたら、ベテランは机に向かって、何時間もうなって、結局「教科書みたいな当たり障りのないこと」しか書けません。でも、目の前で見積もりを作りながら「あ、いまなんで値引きを5%にしたんですか?」と聞かれたら、「ああ、この客は値引きより納期を喜ぶから、値引きはほどほどにして納期で勝負したんだよ」とスラスラ出てくる。
この差が、属人化を解けるか解けないかの分かれ目です。書かせると消える。聞くと出てくる。だから、判断の「現場」で、その「瞬間」に聞く。これが全部の土台になります。
AIが「ここ抜けてませんか」と聞き返すから網羅される

これが、AIを使う本当のうまみです。(ステップ3にあたる部分ですね。)
ベテランがしゃべった内容を、AIが構造化してくれる。手順の形に整理してくれる。そして——ここがすごいところなんですが——漏れに気づいて、聞き返してくる。
AIの聞き返し(例)
「鈴木さん、この取引先への連絡は月初とのことですが、月初が休日のときはどうしてるんですか?」
ベテラン本人だけで手順書を書いたら、絶対にこの抜けは埋まりません。だって、本人にとっては当たり前すぎて、書く必要すら感じないから。でもAIは、容赦なく「当たり前」を聞いてくる。だから、本人だけで書くより圧倒的に網羅される。私はこのことを、こう書きました。
ひろくん
「AIが『ここ抜けてませんか?』と聞いてくる。これがね、本人だけで書くより圧倒的に網羅されるんです。」
出典:拙稿 同上 note 2026-05-31
人間が縦に掘り、AIが横に広げて漏れを埋める。この二人三脚で、暗黙知が「文字」になっていきます。
ステップ4:これを、毎日積む
そして最後。これを1日で終わらせようとしないこと。1回の聞き取りで、ベテランの全部を引き出すのは無理です。むしろ、毎日少しずつ。今日は見積もりの判断、明日は得意先対応、明後日は例外処理。
毎日積み上げると、3ヶ月後には、ベテランの判断ロジックが手順化されている。本人すら気づかなかった軸が、文字になって残る。田中さんが辞めても、田中さんのAI版が残る。これが、属人化を解くということです。
残す場所を間違えると、全部水の泡になる
ここで、多くの人がやらかす落とし穴があります。せっかくベテランの暗黙知をAIに聞いて、文字にした。手順が構造化された。「やった!」と思う。——でも、その文字を、消える場所に置いてしまう。
チャットに流して終わり。メモアプリに書いて終わり。これだと、せっかく掘り出した暗黙知が、二度と読まれないまま埋もれていきます。私は、ここを声を大にして言いたい。
ひろくん
「出力先は『Slackに流れる場所』NG。『消えない、毎回読まれる場所』に置く。これだけで効き目が段違いに変わります。私のうちでも、AI秘書の『就業規則』は2.3万トークン分あります。常時読み込み。」
出典:拙稿 同上 note 2026-05-31
ここ、専門用語が出てくるので、料理で例えます。チャットに流れる情報って、回転寿司のレーンを流れていくお皿みたいなものなんです。一瞬目の前を通るけど、すぐ向こうに行ってしまう。取り損ねたら、もう手元に来ない。
それに対して、「消えない場所」というのは、お店の壁に貼ってある「うちの味の基本」みたいなもの。新人が入るたびに、必ず最初に読む。毎日、目に入る。だから味がブレない。ここにベテランの暗黙知を足していくと、「田中さんしか分からない」が、物理的に消えていきます。AIが毎回「田中さんの判断軸」を読み込んだ状態で仕事をするから、田中さんがいてもいなくても、田中さんの判断で動くようになる。
これは、Claude Codeのようなツールが本領を発揮する場面でもあります。LIVEで仲間の高崎さんがこう整理してくれたことがあります。
高崎さん
「クロードコードの特化してるポイントっていうのはコンテキストエンジニアリングかなって思っていて、複数のいろんなシステムとかをいっぱい同時に処理して読み込んで……複合的ないろんなシステムをいっぱい動かすようなことを考えると一番クロードコードの力を活かせるんだ。」
出典:Claude Codeで何ができる?スキル化×自動化で広がる、言葉だけで世界を作る時代(高崎さん・LIVE 2026-04-22)
「コンテキストエンジニアリング」というのは、要するに「AIに、何を読み込ませた状態で仕事させるか」を設計すること。何を読み込ませるか。——そう、ベテランの暗黙知を、消えない場所に置いて、毎回読み込ませる。これそのものが「コンテキストエンジニアリング」なんです。横文字で身構える必要はありません。やることは「うちの味の基本を、壁に貼っておく」だけです。
教えることは言語化——社員教育と暗黙知の記録は一石二鳥

「いやいや、そんなにうまくいくの?」と思った方もいるはずです。正直に言います。これ、机上の空論じゃありません。私自身が、自分の身で体験したことなんです。
2026年の5月25日。GitHub実践会という勉強会で、私は参加者にClaude Codeの使い方を教えていました。手順を、ひとつひとつ説明しながら。そのとき、何回も「あ」と思った瞬間があったんです。
「あ、これ、自分でもなぜこの順番でやってるか、言語化したことなかった」
私が毎日やっている作業。当たり前にこなしている手順。それを「教える」という立場に立った瞬間、自分の頭の中の暗黙知が、するすると言葉になって出てきた。
ひろくん
「5/25にちょうど自分のところで体験しました。GitHub実践会で勉強会をやってたんですけど、参加者に手順を教えながら、私自身が『あ、これ自分でもなぜこの順番でやってるか言語化したことなかった』って気づいた瞬間が何回もあって。」
出典:拙稿「中小企業の属人化・暗黙知をAI秘書に渡す」note 2026-05-31
教える、ということは、自分の暗黙知が言葉になる瞬間なんです。これって、すごいことだと思いませんか。
ベテランに「教えてください」と頼む。そのとき、横にAIを座らせて「なぜ?」を聞く。すると、社員に教えながら、同時にベテランの暗黙知も文字に残る。
一石二鳥です。社員も育つ。暗黙知も残る。
教えるという行為が、そのまま会社の財産になる。私は、貢献するほどビジネスになるって最高だと思っています。そして、教えることが一番学べる。自分の頭の中を外に出すと、自分でも見えていなかった軸が見える。これは私が、ずっと大事にしてきた感覚です。
ベテランに「教えてもらう」のは、ベテランに頭を下げることじゃない。ベテランの一番輝く時間を作ることなんです。
手順書を書かせる方式と口頭で渡す方式の比較表

ここまでの話を、表で整理しておきます。「ベテランに手順書を書かせる」やり方と、「ベテランの隣にAIを座らせて、口頭で渡してもらう」やり方。何がどう違うのか。
| 手順書を「書かせる」方式(従来) | 口頭で「渡してもらう」方式(AI同席) | |
|---|---|---|
| ベテランの負担 | 机に向かって何時間もうなる | 聞かれて答えるだけ。構えない |
| 出てくる中身 | 当たり障りのない教科書的な内容 | 「なんとなくこうしてる」本音の軸 |
| 「当たり前」の抜け | 本人が書く必要を感じず抜け落ちる | AIが「ここ抜けてませんか?」と埋める |
| 続けやすさ | 面倒で三日坊主になりがち | 1日ひとつ話すだけ。毎日積める |
| 残る場所 | フォルダの奥で二度と読まれない | 消えない場所に置き、AIが毎回読む |
| 3ヶ月後 | 結局「あの人頼み」のまま | 判断ロジックが手順化され分身が育つ |
左の「書かせる」方式は、悪気はないんです。多くの会社が、引き継ぎといえばこれをやる。でも、本当に大事な暗黙知は、書類にすると蒸発してしまう。完璧な書類を書ける人なんて、いないからです。
右の「口頭で渡す」方式は、ベテランの負担をぐっと下げます。書類を書く重労働を、しゃべるだけの軽作業に変える。しかも、その軽作業のほうが、出てくる中身は濃い。これが、属人化を解くいちばん現実的な道です。
もうひとつ、表の左右で大きく違うのが「残る場所」です。前の見出しでお話しした通り、せっかく引き出した暗黙知を、回転寿司のレーンみたいに流れていく場所(チャット)に置いたら、二度と読まれません。「壁に貼る」——毎回必ず読まれる場所に置く。ここまでやって、はじめて暗黙知が会社の資産になります。

COLUMN
勉強会で「自分でも言語化してなかった」と気づいた夜
あの5月25日の夜のことを、もう少し書かせてください。GitHub実践会で、私は参加者に手順を教えていました。教えながら、自分の口から出てくる言葉に、自分でいちばん驚いていたんです。「あ、これ、なんでこの順番でやってたんだろう」。毎日やっている当たり前の作業が、教えた瞬間に、初めて言葉になった。
私はずっと「うちのやり方は特殊だ」と思って生きてきました。実家は惣菜屋で、中卒で、134kgの体から大幅に減量して、借金も整理して、がんも乗り越えてきた。経歴だけ見れば確かに特殊です。だから「自分の頭の中は、誰にも渡せない」と握りしめていた。でも、教えてみたら、するすると言葉になった。握りしめていたものは、ちゃんと外に出せたんです。
そのとき確信しました。暗黙知は、本人の中に閉じ込めておく宝物じゃない。聞かれて、答えて、外に出すと、初めて宝物になる。私はいま、自分の口ぐせや判断の軸を分身AIに少しずつ移しています。「なぜ?」と聞かれて答えるたびに、自分でも見えていなかった軸が、くっきりしてくる。
これ、ベテランも、あなたも、まったく同じです。ベテランに「教えてください」とお願いするのは、頭を下げることじゃない。その人がいちばん輝く時間を、作ってあげることなんです。AIに任せるのは、自分らしさを手放すためじゃない。むしろ逆。「あの人にしか分からない」をAIに渡して、ベテランも、あなたも、もっと自分らしい時間を取り戻すため。
私は先週末、家族で児童館でさんざん遊んだあと、皮から水餃子をこねました。AIに任せれば一瞬で終わる作業を横目に、わざわざ手で皮をこねて、包んで。めちゃくちゃ手間がかかる(笑)。でも、最高に贅沢だったんです。属人化を解いて仕組みが回るほど、人間がやることは「もっと働くこと」じゃなくなる。空いた隙間に、家族と皮をこねるような、かけがえのない時間を置けるようになる。凸凹のまま、でいい。私もまだ、隣を歩きながら一緒に解いている最中です。一緒にやっていきましょう。
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暗黙知の引き出し方についてよくある質問

Q1. うちのベテランは「AIなんて」と嫌がりそうです。どう始めればいいですか?
ベテランに「AIを覚えてください」とは言わないでください。やってもらうのは、いつも通り仕事をすることと、「なぜ?」と聞かれたら答えることだけ。AIの操作は、あなたや若手が横でやればいい。ベテランは、しゃべるだけ。「マニュアルを書いてください」と頼むより、「いつもの仕事を、教える感じで話してくれませんか」とお願いするほうが、ずっと構えずに口が動きます。書類を書かせず、しゃべってもらう——ここが全部のコツです。
Q2. 毎日聞くと、ベテランの仕事を邪魔しませんか?
1日に全部を引き出そうとすると邪魔になります。だから、毎日ひとつだけ。今日は見積もりの判断、明日は得意先対応、明後日は例外処理。判断した「その瞬間」に一言「なぜ?」と聞くだけなら、作業の流れはほとんど止まりません。むしろ、聞かれることでベテラン自身も「なるほど、自分はこう考えてたのか」と整理ができて、嫌な顔をされるどころか喜ばれることも多いです。少しずつ、毎日積む。これが鉄則です。
Q3. 手順書を書いてもらうのと、何が違うんですか?
いちばんの違いは「本音の軸が出てくるか」です。手順書を書かせると、みんな身構えて、当たり障りのない教科書的なことしか書けません。本当に大事な「なんとなくこうしてる」が抜け落ちる。完璧な手順書を書ける人なんて、この世にいないんです。でも、しゃべるだけならできる。さらにAIが「ここ抜けてませんか?」と聞き返してくれるので、本人だけで書くより圧倒的に網羅されます。書かせず、しゃべってもらうのが現実解です。
Q4. 引き出した暗黙知は、どこに保存すればいいですか?
「消えない、毎回読まれる場所」に置いてください。いちばんやりがちな失敗は、チャットに流して終わりにすること。チャットは回転寿司のレーンと同じで、一瞬で目の前を通り過ぎて、二度と手元に来ません。お店の壁に貼る「うちの味の基本」のように、AIが毎回必ず読み込む場所に置く。専門用語では「コンテキストエンジニアリング」と言いますが、要は「うちの味の基本を壁に貼る」だけです。これだけで効き目が段違いに変わります。
Q5. どれくらいで効果が出ますか?
毎日少しずつ積んで、3ヶ月後にはベテランの判断ロジックがかなり手順化されてきます。ただ、効果は初日から少しずつ出ます。1個書き出すだけで、「あの人が辞めたら」の不安が毎日ほんの少しずつ減っていく。完璧な計画を立てる必要はありません。今日、いちばん「この人が抜けたら困る」という仕事を1つだけ、職種別AIに「教える感じで」話してみる。早く動き出すことが、いちばん大事です。3割の完成度でいいので、まず1個積んでみてください。
この記事のまとめ
・横に配られた型は完成品じゃない。職種別AIは「一般的な営業マン」でしかない。それを、あなたの会社のベテランの暗黙知で「うちの鈴木部長」に育てる。
・暗黙知は、本人すら言葉にできない知恵のかたまり。だから手順書を書かせても出てこない。これが引き継ぎが失敗する根本の理由。
・ベテランの隣にAIを座らせて「なぜ?」を聞くだけ。本人はしゃべるだけ。AIが記録し、構造化し、「ここ抜けてませんか?」と漏れまで聞き返す。書かせず、しゃべってもらうのが現実解。
・教えることは、言語化そのもの。ベテランに教えてもらいながらAIで記録すれば、社員も育ち、暗黙知も残る。一石二鳥。
・残す場所を間違えると水の泡。チャット(消える場所)でなく、「壁に貼る」=毎回読まれる場所に置く。これが「コンテキストエンジニアリング」の正体。今日の一歩は、「あの人にしか分からない仕事」を1つだけ、AIに教える感じで話してみること。
ここまでで、「ベテランの暗黙知を、AIで引き出す」やり方が見えたと思います。でも、まだ大きな疑問が残っているはずです。「ベテランに、どうやってAIに渡してもらえばいいの? 結局、難しい書類を書かせることになるんじゃないの?」
——大丈夫。次の記事で、その渡し方の現実解をお見せします。ヒントは、もう本記事で何度か出てきました。書かせない。しゃべってもらう。「口頭で渡す」——これが、属人化を解くいちばん現実的な道です。一緒に進みましょう。
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