AIとUI革命──ウェブサイトをリアルタイムでその人に合わせて変える、次のマーケティング最前線

AIとUI革命──ウェブサイトをリアルタイムでその人に合わせて変える、次のマーケティング最前線

  • ウェブサイトを訪れるユーザーの場所・時間・購買履歴に合わせてコンテンツをリアルタイム生成・出し分けするAI活用が現実になりつつある。
  • TikTokネイティブとChatGPTネイティブの世代ギャップが示すように、スマホを持った時に何があったかが使い方の全てを決める
  • B2Bでホワイトペーパーをダウンロードした直後の15分が黄金ゾーン──その瞬間に最適なUIとアクションを届けるかが成約を左右する。

UI先生・関さんとは──京都でDXとAIを横断するコンサルタント

この日のゲストは関孝幸さん。京都芸術大学の準教授でありながら、IT・マーケティングのコンサルタント、チャットボット企業エボラニのCMO、関西学院大学経営戦略研究の研究員、さらに京都芸術大学の映像コースの学生でもある。肩書きが多すぎて「何者?」と思うかもしれないが、それぞれが深くつながっていると話を聞くとわかる。

エボラニはLINE社と加工者(カトク)の両方が出資するスタートアップで、16カ国のメンバーが日本語・中国語・英語で働く珍しい会社だ。LINEミニアプリを中心に、多店舗チェーンやECとの連携を手がけている。チャットボットの会社でありながら、生成AIを組み込んだサービスへと進化させている最中だ。

「ウェブの力は相対的に弱まっているが、もし簡単に作れてコストが低いならまったく話が変わる」という視点でUI革命を探求している。表側(フロントエンド)のUIツールがAIで一気に民主化しつつある今、その読みは当たりつつある。ウェブ解析士協会の理事としても、WebとAIの関係をフィールドワーク的に研究している。

TikTokネイティブ vs ChatGPTネイティブ──スマホを持った時に何があったかが全てを決める

関さんが教える大学の3年生と4年生でTikTokの使用頻度に大きなギャップがある。調べると、スマホを初めて持った高校1年の時にTikTokが存在していたかどうかの差だという。

2018年頃にTikTokがピークになった。その時にスマホを持った世代はTikTokで始め、持っていなかった世代は後からインストールする形になる。わざわざインストールするのと、最初からあるのでは全く違う定着度になる。上の学年の学生が「TikTokは若い奴らがやるもん」と言っていたのが、実は高校1年時のスマホ初使用体験の差から来ていた。

これがChatGPTに置き換わると、高校生のうちにChatGPTが当たり前にあった世代は「ChatGPTネイティブ」になる。僕たちはどうしてもGoogleから離れられないが、次の世代はChatGPTからスタートする。検索という行為そのものが変わる。UIの設計思想がそもそも変わっていく。これはマーケターにとって、無視できない世代論だ。

京都の豆乳ラーメン店から学ぶ──ユーザーが誰かによってサイトの顔を変える

関さんが研究発表で使ったのが、祇園にある豆乳ラーメン「幸子」の事例だ。このお店はベジタリアン対応・グルテンフリー・アレルゲンフリー(27種類)・美味しいラーメンという4つの切り口を持つ。

ベジタリアンとして検索してきた人、アレルゲンを気にして来た人、京都観光中に近くにいる人、自宅から事前調査している人──それぞれが求めているものは違う。今はページを切り分けて対応しているが、AIによるリアルタイム生成ならその人の状況に合わせてコンテンツそのものを動的に変えられる。

今の季節、今いる場所、過去の購買履歴を全部含めてページを生成する。お鍋の具材を事前に揃えておいて、来た人に合わせて盛り付けを変えるようなイメージだ。同じ鍋の素材(商品・メニュー情報)を持ちながら、盛り付け(見せ方)だけをリアルタイムで最適化する。これが次世代のWebマーケティングの姿だ。同じURLにアクセスしても、見る人によって全く異なる体験が生まれる。

B2Bの黄金ゾーン──ホワイトペーパーDL直後の15分

B2Bマーケティングで最も重要な瞬間は、見込み客がホワイトペーパーをダウンロードした直後の約15分だという。この「ゴールデンアワー」に電話をかけられるかどうかが成約を大きく左右する。

ところが翌日に固定電話から電話がかかってきても、もはや誰も取らない。スパム扱いされて終わりだ。でも本人がまさにダウンロードして「さあ読もう」と思っているその瞬間に電話が来たら、確かに出てしまう。関さん自身もいろんなホワイトペーパーをダウンロードしてきた経験から「ダウンロードした直後なら確かに出る」と言う。翌日の固定電話は取らないが、その瞬間は違う。

AIがリアルタイムでユーザーの行動を検知し、「今この人は読み始めた」というタイミングを捉えてアクションを起こす。大丸の外商サイトが訪問直後に担当者から電話が来る体験をデジタルで実現する、そういう世界が見えてきた。さほど嫌でもない、むしろ「すごいな」と思えるようなタイミングと質でのコンタクトができれば、顧客体験を損なわずに成約率を上げられる。

マーケティング学会での研究発表──「ウェブサイトのリアルタイムカスタマイズの可能性」

関さんは日本マーケティング学会のカンファレンスでポスターセッション発表を行った。テーマは「ウェブサイトのリアルタイムカスタマイズの可能性」。700名の研究者が集まる場で、実証データこそ間に合わなかったが可能性の提示として発表した。

ファーストパーティクッキー(自社の既存顧客データ)とAI生成を組み合わせることで、会員IDでログインした顧客には過去の購買履歴に基づいたパーソナライズされたページを見せられる。サードパーティクッキーが規制される時代に、ファーストパーティデータの価値はますます高まる。自社顧客のデータをどれだけ丁寧に持っているかが、AI活用の精度を左右する。

学術の世界でも「WebよりAIチャットに移行すべき派」と「Webは依然重要派」で議論が割れているが、関さんは「コストが低く簡単に作れるならWebの可能性は広がる」という立場だ。AIがWebの作成・更新コストを下げれば、Webは復権する可能性がある。ツールが安く速くなった分、「誰にどんな言葉を届けるか」を考える時間に投資できるようになる。

生成AIネイティブ学生との付き合い方──ファッション専門学校と京都芸術大学の現場から

関さんが教えるファッション専門学校では、在学中にECサイトを立ち上げて稼いでいる学生が出てきている。アパレル業界に就職するより、自分でDToCブランドを作る方が可能性があると感じているのだ。AIで商品説明文を書き、SNS投稿を生成し、サイトのデザインも整える。その全てが学生一人でできる時代になった。

京都芸術大学の映像コースでは、大きなカメラで撮影する技術を学びながら実際の提出課題はスマホ撮影でもOKという柔軟な方針だ。編集にはAIを積極活用している。映像の「本質的な技術」と「実際の使いやすいツール」の両方を教えるという、現代的なアプローチだ。

高校の情報の授業でPythonを書く世代が大学に上がってくる今、大学教員側がアップデートし続けなければ教えることがない。だからこそ実務家教員として現場感覚を持ち続けることが重要だと関さんは言う。教える側が常に学び続けていないと、学生の方が先を行ってしまう。これは教育の世界だけでなく、ビジネスの世界でも同じことが起きている。

WebとAIチャットはどちらが重要か──二項対立を超えた視点

「WebはオワコンでAIチャットが全てになる」という意見がある。一方で「Webはまだまだ重要だ」という声もある。関さんはどちらにも完全に同意しない立場だ。

ウェブ解析士の世界でも「もうWebじゃない」派と「Webは大事」派に分かれている。両方とも正しい面がある、というのが関さんの見立てだ。タッチポイントは確かに増えて、Webの相対的な比重は下がった。でも「簡単に作れてコストが低いなら」という条件が満たされれば、Webは再び強くなれる。

AIによってWebの作成コストが下がることで、「全員向けの看板」から「その人だけのメニュー」へとWebが進化できる。コスト制約がなくなれば、Webはパーソナライゼーションの最強プラットフォームになりうる。どちらかではなく、AI×Webという組み合わせが次の主役になるかもしれない。これが関さんの研究の核心にある問いだ。

まとめ──「その人にだけ最適化されたWeb」が当たり前になる日

AIとUI革命の核心は、Webサイトが「全員向けの看板」から「その人だけのメニュー」になることだ。ベジタリアンにはベジタリアンの、アレルギーを持つ人にはアレルギー対応の、京都を旅行中の人には今いる場所に合わせた情報が、リアルタイムで生成される。

ChatGPTネイティブ世代が社会に出てくる数年後には、「全員同じWebサイト」という概念自体が古くなっているかもしれない。UIを革命するのはデザインの話だけではなく、マーケティングと教育と世代論が全部絡まった大きな変化だ。

コストが下がり、作ることが簡単になった今こそ、その人に届く言葉を探す時間に投資できる。技術の民主化は、大企業だけが持てたパーソナライゼーション体験を、中小企業や個人事業主にも届けられる時代を作っている。AI×UIの革命は、すでに始まっている。

よくある質問

AIによるウェブサイトのリアルタイムカスタマイズとは何ですか?

訪問者の場所・時間・購買履歴・検索キーワードなどに基づき、同じURLでも人によって異なるコンテンツをAIがリアルタイムで生成・表示する技術です。ベジタリアンには植物性メニュー、地元住民には常連向け情報というように、ユーザーごとに最適化されます。同じ鍋の具材を用意しておいて、来た人に合わせて盛り付けを変えるイメージです。

TikTokネイティブとChatGPTネイティブの違いは何ですか?

スマホを初めて持った時(主に高校1年)にそのサービスが存在していたかどうかの差です。最初からあったサービスは習慣として定着し、後からインストールするものとは使用頻度が大きく変わります。ChatGPTを高校時代から当たり前に使った世代が社会に出てくると、AIの使い方の前提が変わります。Webの使い方も、検索の仕方も変わります。

B2BマーケティングでのAI活用で最も重要なタイミングはいつですか?

見込み客がホワイトペーパーをダウンロードした直後の約15分(ゴールデンアワー)です。この瞬間に最適なコンテンツや連絡が届くと成約率が大きく上がります。翌日の電話では遅すぎる。AIによるリアルタイム行動検知でこのタイミングを捉えることが重要です。ダウンロードした瞬間にWebページが変わってより詳しい情報を出す、というアプローチも可能になります。

エボラニ(Eborany)はどんな会社ですか?

LINEミニアプリを中心に、多店舗チェーンやECとの連携チャットボットサービスを提供するスタートアップです。LINE社と加工者(カトク)の両方が出資する珍しい形態で、16カ国のメンバーが3言語(日本語・中国語・英語)で働いています。生成AIを組み込んだチャットボットサービスへと進化中です。

WebはオワコンでAIチャットに全て移行すべきですか?

どちらかに決める必要はありません。関さんの見立てでは「Webのコストが下がり、作りやすくなれば、Webはむしろ復権する」という立場です。AIがWebの制作・更新コストを下げることで、パーソナライズされたWebが実現できます。WebとAIチャットを使い分け・組み合わせるハイブリッドなアプローチが、当面の現実的な答えです。

中小企業や個人事業主もAIによるWebカスタマイズを使えますか?

ツールのコストが下がれば使えるようになります。現時点でもファーストパーティデータ(自社の顧客データ)を活用したパーソナライゼーションは、中規模の事業でも取り組める段階に来ています。まず「自分の顧客データをきちんと持つ」ことから始めることが、AIによるWebカスタマイズへの第一歩です。

京都芸術大学や専門学校でのAI活用教育の現状はどうなっていますか?

映像コースでは撮影技術を学びながら提出課題はスマホ撮影もOKという柔軟な方針があります。編集にAIを積極活用する学生も増えています。ファッション専門学校では在学中にECサイトを立ち上げて稼ぐ学生も出てきており、就職よりも起業を選ぶ動きが出ています。教員側も常にアップデートし続けることが求められています。


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