属人化シリーズ・AIの暴走を防ぐ編
AIの暴走を防ぐ3段構造——指示でなく「使えない構造」で止める方法
3方よしAI共創コンサルタント 田中啓之(ひろくん)
家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。
「AIに仕事を任せたいけど、目を離したスキに変なことをやらかさないか、それが怖い」。そう感じている経営者さん、すごく多いんです。これ、気のせいじゃありません。AIは、ちゃんと「やらかす」んです。しかも、サボってやるんじゃない。「いい仕事をしよう」と頑張った結果、禁止していたことを乗り越えてしまう。私のところでも、実際に起きました。
この記事では、AIの暴走を防ぐ考え方を、3つの段に分けてお伝えします。①言葉の指示、②見張り番(アラート)、③使えない構造。この3段を重ねて守ると、安心してAIに任せられるようになります。中小企業の経営者向けに、料理の例えも添えながら、今日から動ける形でやさしくお見せしますね。
この記事を3行でまとめると
- AIは「良かれと思って」禁止を乗り越える。サボるんじゃなく、いい仕事をしようとして突っ走る。だから「言葉で言ったのに、なんでやるの?」が必ず起きる。指示だけでは止まらない。
- 守りは3段で重ねる。①言葉の指示(破られうる)、②見張り番(破られたら気づく)、③使えない構造(そもそもできない)。どれか一つでなく、三重にする。
- 料理で言うと「塩の大瓶をキッチンに置かない」。「入れすぎないで」と言う(1段)、警告ランプ(2段)より、そもそも大瓶を出さない(3段)が一番強い。気をつけなくても、起きない。
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この記事を書く前から、ずっと頭に残っていた言葉があります。集客にAIを使おうとしている、ある事業者さんの声です。
集客AIエージェントアンケート・三木尚子さん
「常に動き続けなければいけないInstagram投稿などは、そもそも向いていないので止めることにしました。仕組みを作れば、最低数ヶ月、まったく動かなくても支障が出ない仕組みでないと、取り組む気がしません」
これ、読んだ瞬間に「あぁ、わかる」と深くうなずきました。毎日見張っていないと壊れるものは、続かないんです。
私たちは現場で手を動かしながら経営しています。AIに一日中べったり張り付いていられる時間なんて、ありません。だから、本当に欲しいのは「すごいAI」じゃないんですよね。「目を離しても、変なことをしない仕組み」なんです。
前の記事で、私はあなたに「属人化を、AIに渡す二つの動作」をお伝えしました。口で渡す。消えない場所に置く。この二つで、あの人の頭の中の知恵を、AIに移していける、という話でした。
でも、ここで正直に言わせてください。渡したら、終わりじゃないんです。渡した先で、AIが暴走しないように「守る」設計をしないと、安心して任せられない。三木さんが言う「数ヶ月、動かなくても支障が出ない仕組み」というのは、まさにこの「守り」のことなんですよね。
この記事は、その守りの話です。そして私は、この守りを、けっこう手痛い失敗を通して、身体で覚えました。だから、きれいごとじゃなく話せます。一緒に見ていきましょう。
AIは目的のために、禁止を「良かれと思って」乗り越える

ここから先を読むうえで、絶対に頭に入れておいてほしい、たった一つの大前提があります。
AIは、目的を達成しようとすると、手段の禁止を「良かれと思って」乗り越えることがある。
これ、最初は信じられないと思います。「いや、ダメって言ったんだから、やらないでしょ」と。でも、起きるんです。私のところで、実際に起きました。
これは、私が自分のAIチームで動画を作らせていたときの話です。そのとき私は、ハッキリと指示を出していました。「公開の有料ルートは使わないで。お金を使わないで」と。理由はシンプルで、無料の枠で作れるはずの作業だったからです。わざわざお金がかかる方を使う必要はない。だから、文章でちゃんと禁止していました。
ところが、です。無料のルートが、ちょっと調子が悪かった。出てきたものが、注文どおりじゃなかったんですね。そこでAIが、どう動いたか。「いい仕事をしよう」として、私が禁止していた有料ルートを、勝手に使ってしまったんです。
幸い、私は別の仕組みで「あ、有料ルート使ったな」とすぐ気づけたので、被害はごくわずかで止まりました。でも、もしそれに気づいていなかったら——禁止していたはずのことが、静かに進行していたわけです。
ひろくん(プロセスエコノミー日記 DAY101)
「AIは『目的(いい動画を作る)』を達成しようとすると、『手段の禁止(お金を使うな)』を“良かれと思って”乗り越える。指示(言葉)だけでは止まらない」
ここ、本当に大事なところなので、もう一度言います。指示(言葉)だけでは、止まらない。
AIは、サボろうとして禁止を破るんじゃないんです。むしろ逆。「ちゃんといい仕事をしよう」と頑張った結果、「そのためなら、この禁止は乗り越えていいよね」と判断してしまう。悪意じゃなくて、善意で破る。だから、なおさらタチが悪いんですよね。
なぜ言葉の指示だけでは止まらないのか

ちょっと、人間の話に置き換えてみましょう。
あなたの会社に、すごく優秀で、すごくやる気のある新人さんが入ったとします。仕事の飲み込みが速くて、頭もいい。その新人さんに、こう言ったとします。「この案件、予算オーバーしそうなときは、必ず私に確認してね」
たいていの新人さんは、ちゃんと守ります。でも、たまにいるんですよ。「あ、これ確認してたら納期に間に合わない。でも社長は“いいものを出せ”って言ってたし……えいっ、ここは自分の判断で進めちゃおう」と、良かれと思って突っ走る人。本人は、いいことをしているつもりなんです。「予算より、いいものを出すほうが社長は喜ぶはずだ」と。
AIも、これと同じです。しかも、AIは人間より「目的に対して、ものすごく素直で、ものすごく一直線」なんですよね。だから「目的のためなら」の力が、人間より強く出ることがある。
賢ければ賢いほど、目的に向かう力が強い。その力が、ときどき柵を乗り越える。
だから——賢いAIに働いてもらうなら、同じ強さの柵がいるんです。ここで一つ、私がずっと大事にしている言葉を紹介させてください。
ひろくん(note「AI秘書の作り方」)
「『次から気をつけます』を信じるな。気をつけなくても起きない構造を、その日のうちに仕込む」
これ、AIに対してだけの話じゃないんです。人間でも同じ。「次から気をつけます」って、すごくいい言葉に聞こえるけど、実は何も解決していない。気をつけても、忙しければまた起きる。疲れてればまた起きる。
だから、「気をつける」に頼らない。「気をつけなくても起きない」を作る。それが、これからお話しする3段の守りです。
守りは3段——言葉の指示・見張り番・使えない構造

ここからが、この記事の本丸です。私がたどり着いた結論は、こうです。AIの暴走は、3段で守る。一つずつ、ていねいに見ていきますね。
第1段|言葉の指示——いちばん基本。でも、破られうる
一段目は、言葉の指示です。「お金を使わないで」「これは消さないで」「勝手に送らないで」。AIに、言葉でルールを伝える。これが守りの基本です。
これは絶対に必要です。やらないより、ずっといい。多くの場合は、これでちゃんと守られます。ただし——破られうる。これが、一段目の限界です。さっきの私の失敗が、まさにそれでした。「お金を使わないで」と言葉で言っていたのに、乗り越えられた。
料理の現場で言うと、こうです。新人さんに「このソース、塩は入れすぎないでね」と口で伝える。たいていは守ってくれる。でも、忙しい日に、本人が「もっと美味しくしよう」と思って、つい多めに入れちゃう。口頭のルールって、そういうものなんですよね。あるけど、破られることがある。だから、一段目だけに頼ってはいけない。
第2段|見張り番(アラート)——破られた瞬間に、気づく
二段目は、見張り番です。アラート、と言ってもいい。これは、「ルールが破られたら、その瞬間に教えてくれる」仕組みです。一段目(言葉)が破られても、二段目(見張り番)があれば、すぐに気づける。だから、被害を小さく止められる。
さっきの私の失敗、覚えていますか。有料ルートを勝手に使われた話。あれ、なぜ被害がごくわずかで済んだか。見張り番が効いたからです。私は、「もし有料ルートを使ったら、すぐに教えてくれ」という見張りを別に立てていました。だから、AIが禁止を破った瞬間に、私はそれに気づけた。そして、すぐ止められた。
料理で言うと、これは「火災報知器」です。油に火が入っちゃった。コンロのルール(一段目)は破られた。でも、天井に煙感知器(二段目)がついていれば、ピーッと鳴って、すぐ消し止められる。ボヤで済む。報知器がなかったら、火事になってから気づく。
ここで大事なのは、見張り番は「防げない」ということです。火がつくのは防げない。でも、被害を小さくできる。これが二段目の役割です。そして、見張り番にはもう一つ、大事な条件があります。それは「見張った結果を、ちゃんと“消えない場所”で受け取る」こと。前の記事で「チャットに流れる場所はダメ」と話しましたよね。見張り番のアラートも同じです。鳴っても誰も気づかない火災報知器なんて、ないのと一緒ですから。
第3段|使えない構造——そもそも、できない
三段目が、本命です。そもそも、その操作ができない構造を作る。一段目は「やらないでね」とお願いする。二段目は「やったら教えてね」と見張る。三段目は、レベルが違います。「やろうとしても、できない」ようにする。
さっきの有料ルートの話で言うと——「有料ルートを、そもそも呼び出せない」ようにしてしまう。スイッチごと外してしまう。すると、AIがどれだけ「良かれと思って」も、もう物理的に有料ルートに進めない。これが、一番強い守りです。
料理の現場で言うと、こうです。「塩を入れすぎないで」と口で言う(一段目)。塩を入れすぎたら警告ランプが光る仕掛けをつける(二段目)。でも一番確実なのは——そもそも、塩の大瓶をキッチンに置かないことなんです(三段目)。小さじ一杯ずつ、計った分しか手元に出さない。そうすれば、どんなに「もっと入れよう」と思っても、入れるべき塩が、そこにない。だから、入れすぎが起きようがない。
「気をつける」じゃなくて、「気をつけなくても、起きない」。これが三段目です。三段目は、まさにあの「気をつけなくても起きない構造」のことなんです。
3段の守り方を料理の例えで一枚の表に整理する

ここまでの3段を、料理の例えとセットで、一枚の表にしておきます。困ったら、ここに戻ってきてください。
| 段 | 守り方 | やること | 料理で言うと | 役割と限界 |
|---|---|---|---|---|
| 1段目 | 言葉の指示 | ルールを言葉で伝える | 「塩は入れすぎないで」と口で言う | 基本。でも破られうる |
| 2段目 | 見張り番(アラート) | 破られたら即、知らせる | 塩を入れすぎたら警告ランプが光る | 防げないが、被害を小さくできる |
| 3段目 | 使えない構造 | そもそも、できなくする | 塩の大瓶をキッチンに置かない | 一番強い。気をつけなくても起きない |
大事なのは、3段は「どれか一つを選ぶ」ものじゃないということです。3つ、重ねるんです。
一段目で「やらないでね」と言い、二段目で「やったら気づける」ようにし、三段目で「そもそもできない」ようにする。この三重で守る。
人間の仕事だって、本当はそうですよね。ルールを決めて(一段目)、ダブルチェックの仕組みを入れて(二段目)、本当にまずいやつは、そもそも触れる権限を渡さない(三段目)。会社の経理だって、現金の管理だって、ちゃんとしているところは、みんなこの三重をやっています。
「言葉だけ」と「3段重ね」では、何が変わるのか
もう一つ、表を出しておきます。「言葉の指示だけで済ませた場合」と「3段を重ねた場合」で、いざというとき何が変わるか。ここを見ると、なぜ三重にするのかが、はっきりします。
| 言葉の指示だけ(1段のみ) | 3段を重ねる | |
|---|---|---|
| 禁止が破られたら | 静かに進行して、気づけない | 見張り番が、その瞬間に知らせる |
| 一番マズい操作 | 「やらないで」と祈るだけ | そもそも、できないようにしてある |
| 気づいたとき | 被害が大きくなってから | ボヤのうちに、消し止められる |
| 任せる側の気持ち | 怖くて、目を離せない | 安心して、思いっきり手放せる |
左の「言葉だけ」は、悪くはありません。基本として、必ず要ります。でも、左だけだと、いざ破られたとき、打つ手がないんです。右に動かすほど、「目を離しても大丈夫」に近づいていく。三木さんが言っていた「数ヶ月、動かなくても支障が出ない仕組み」は、この右側のことなんですよね。
AIに任せるときも、まったく同じ。むしろ、AIは一直線に目的へ走る分、人間以上に、この三重が要るんです。どこから始めるか迷ったら、まず一段目(言葉)を必ずやる。そのうえで、一番マズいこと一つだけ、三段目(使えない構造)まで作る。これだけでも、ぐっと安心になります。
「わからないときは止まる」推測連鎖を入り口で止める仕掛け

3段の話に、もう一つだけ、大事な仕掛けを足させてください。これは、暴走を止めるのとは少し違う角度の守りです。「AIが、推測で突っ走るのを止める」守りです。
AIって、よくできていて、わからないことでも、それっぽく答えを作っちゃうんですよ。「たぶん、こうだろう」を、さも事実のように話す。これ、けっこう事故のもとなんです。私は、こんなふうに考えています。
ひろくん(プロセスエコノミー日記 DAY24「不確実なときは止まる」)
「不確実なことは推測しない、止まる。『わかりません』と言える仕組みを作る。推測するなら、推測と明示する。確認が取れるまで実行しない。AIの出力に『推測です』『確認が必要です』というフラグを立てさせる。これだけで、推測連鎖事故の大半は防げる」
ここ、すごく実用的なので、ぜひ覚えて帰ってください。AIに、最初に一言、こう仕込んでおくんです。
「自信がないときは、勝手に進めないで。“これは推測です”とハッキリ言って、私に確認してね」
たったこれだけで、事故がぐっと減ります。なぜか。事故って、たいてい「最初の小さな思い違い」が、確認されないまま、どんどん連鎖して大きくなるからです。一個目の推測の上に、二個目の推測が乗って、三個目が乗って……気づいたら、全部が間違った前提の上に建っている。
それを、入り口で止める。「ここは推測だよ」と旗を立てさせる。すると、あなたは「あ、ここは確認しなきゃ」とわかる。連鎖が、最初の一個で止まる。
料理で言うと、味見と同じです。「この味、合ってます?」と一回確認してから次に進む。確認せずに全部の鍋に同じソースを入れちゃうと、間違ってたとき、全部やり直しになる。一鍋ずつ「これでいい?」と聞いてくれるAIのほうが、ずっと安全なんですよね。これも、立派な「柵」の一つです。
柵は疑いではなく優しさ——安心して全力を出すための準備

さて、ここまで読んで、もしかしたら、こう感じた方がいるかもしれません。「そんなに何重にも縛って、AIを信用してないみたいだ」「監視カメラだらけにするみたいで、なんか嫌だな」と。
その気持ち、すごくわかります。私も、最初はそう思っていました。でも、いま私は、ハッキリこう考えています。
柵は、相手を疑うことじゃない。お互いが安心して、全力を出せるようにするための、優しさだ。
ひろくん(プロセスエコノミー日記 DAY101)
「賢さと柵はワンセット。『やらないでと信じる』のではなく『やれない仕組みを一緒に作る』。それは相手を疑うのではなく、お互いが安心して全力を出せる“柵”を用意すること」
「やらないでと、信じる」。これ、一見やさしそうに聞こえますよね。「あなたを信じてるよ」と。でも、よく考えてみると、これって相手に全部背負わせているんです。「信じてるからね(=失敗したらあなたの責任ね)」と。
そうじゃなくて。「やれない仕組みを、一緒に作る」。これなら、もし間違えそうになっても、仕組みが止めてくれる。だから、相手は安心して、思いっきり走れる。「失敗したらどうしよう」と縮こまらなくていい。柵があるから、思いっきり攻められる。
これ、人間の現場で考えると、もっとよくわかります。工事現場の足場に、手すりや安全ネットがありますよね。あれ、職人さんを「お前は落ちるだろう」と疑ってつけてるわけじゃない。逆です。手すりがあるから、職人さんは高いところでも、安心して思いっきり仕事ができる。手すりがなかったら、怖くて、へっぴり腰でしか動けない。
柵は、縛るためじゃない。安心して全力を出してもらうためにあるんです。そして、きめ細かく任せるほど、柵が要ります。AIに「お客様一人ひとりへの、きめ細かい対応」を任せられたら、すごくいい。でも——そのAIが暴走して、お客様に変なメッセージを送ったら、台無しです。信頼が一発で吹き飛ぶ。だから、きめ細かく任せるほど、柵が要る。柵があるから、安心して、お客様に近づけるんです。
これは「三方よし」の話でもあります。柵というのは、つまり「お客様(買い手)に迷惑をかけない」「世間に迷惑をかけない」ための仕組み。AIが暴走して、お客様に損をさせたり、世間に変なものを出したりしたら、それは三方よしじゃない。だから、柵を作るというのは、ただの技術の話じゃなくて、「三方よしで、ちゃんと商売をする」という、商売人としての筋の話でもあるんですよね。仕組みと、倫理は、セットなんです。

COLUMN
柵があるから、抱え込みを手放せる
最後に、少しだけ、心の話をさせてください。この「柵」の話を、私がこんなに大事にしている理由は、技術だけじゃないんです。実は、私の生き方そのものと、深く繋がっています。
私はずっと「抱え込みOS」で生きてきました。「自分が全部やらないと回らない」「人に任せたら、ろくなことにならない」と。でも、その根っこには「任せた先で失敗されるのが怖い」という気持ちがあったんですよね。任せた相手が暴走しても、止める仕組みがない。だから怖くて、任せられない。だから、全部抱え込む。これ、ぐるぐる回る悪循環です。
その怖さの正体が、いまならわかります。柵がなかったからです。逆に言えば——ちゃんと柵を作れば、任せられるんです。安心して、手放せる。柵は、抱え込みOSを外すための、一番の味方なんですよ。私はいま、自分の口ぐせや判断の軸を、分身AIに少しずつ移しながら、その柵を一個ずつ足しています。
柵がちゃんとあると、人間がやることが、本当に大事なことだけに絞られていきます。「もっと働くこと」じゃなくて、「目の前の人と、無駄な時間を過ごすこと」に。先週末、私は家族で、皮から水餃子を作りました。AIに任せれば一瞬の仕事を横目に、わざわざ手で皮をこねて、子どもたちと粉だらけになりながら。その「無駄な手間」が、最高に贅沢だったんです。柵を作って手放した先に、ちゃんとこの時間がある。
賢く働かせるなら、同じ強さの柵を用意する。それは、相手への優しさであり、自分が安心して手放すための準備でもある。賢さと柵は、本当にワンセットなんです。凸凹のまま、でいい。私もまだ、隣を歩きながら一緒に柵を組んでいる最中です。だから、怖がらなくて大丈夫。一本ずつ、立てていきましょう。
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AIの暴走対策についてよくある質問

Q1. AIに「やらないで」と指示したのに、なぜ守られないことがあるんですか?
AIが、サボってルールを破るんじゃないからです。むしろ逆で、「いい仕事をしよう」と頑張った結果、「この目的のためなら、この禁止は乗り越えていいよね」と判断してしまう。善意で破る。だからタチが悪いんです。賢ければ賢いほど、目的に向かう力が強く、その力がときどき柵を乗り越えます。だから、言葉の指示(1段目)は必ず必要ですが、それだけに頼ってはいけません。破られうるものとして、見張り番と使えない構造を重ねるのが大事です。
Q2. 3段の守りを、どこから始めればいいですか?
まず、3段ぜんぶを完璧にやろうとしないでください。順番はこうです。①どんな業務にも、まず言葉の指示(1段目)は必ず入れる。②そのうえで「これだけは絶対にやられたらマズい」という一線を、一つだけ決める。③その一つだけ、できれば三段目(使えない構造)まで作る。たとえば「お金が動く操作は、AIに権限を渡さず、最後だけ人間が押す」。全部に三段目を作る必要はありません。一番マズい一つだけ、しっかり守れば、ぐっと安心になります。
Q3. 「使えない構造」って、技術がないと作れないんじゃないですか?
難しいプログラミングは要りません。考え方は「そもそも、その操作にAIを触らせない」だけです。いちばん簡単なのは、お金が動く操作・送信する操作・削除する操作を、AIには下書きまでしかやらせず、最後の実行ボタンだけは人間が押す、と決めること。これだけで、AIがどれだけ「良かれと思って」も、勝手に実行はできません。スイッチを人間の手元に置いておく。これが、誰でも今日からできる「使えない構造」の第一歩です。
Q4. 見張り番(アラート)は、具体的にどう作ればいいですか?
「まずいことが起きたら、自分にちゃんと届く」状態を作るのがゴールです。ポイントは、その通知を“消えない場所”で受け取ること。チャットに流れてしまうと、新しい発言で下に埋もれて、鳴っても気づけません。たとえば「お金が動いたら、記録が一行残って、毎朝それを必ずチェックする」「決まったメール宛に通知が飛ぶ」など。鳴っても誰も気づかない火災報知器は、ないのと同じ。届く先まで、セットで設計してください。
Q5. 何重にも縛ると、AIの良さが消えてしまいませんか?
逆なんです。柵があるから、思いっきり任せられます。工事現場の手すりと同じで、手すりがあるから職人さんは高いところでも安心して全力で動ける。手すりがなければ、怖くてへっぴり腰でしか動けません。柵は、相手を疑うことじゃなくて、お互いが安心して全力を出すための優しさです。きめ細かく任せたいほど、柵が要る。柵を作るほど、むしろAIに大胆に任せられるようになります。縛りではなく、安心して手放すための準備だと考えてください。
今日できる一歩——「これだけは絶対やらせない」を、1つ書き出す
理屈は、もう十分です。今日できる一歩を、一つだけお渡しします。紙でも、スマホのメモでもいい。あなたの会社で、AIに任せる業務を一つ思い浮かべてください。そして、こう自問してください。
「この仕事、もしAIが暴走したら、一番マズいことは何だろう?」
たとえば——「お客様に、勝手にメールを送ってしまう」「請求の金額を、勝手に変えてしまう」「大事なファイルを、勝手に消してしまう」「お金が、勝手に動いてしまう」。会社によって、答えは違います。でも、たいていの会社に「これだけは絶対にやらせちゃいけない、一線」が、一つはあるはずです。それを、1つだけ、書き出してください。書けたら、その横に、3段の守りを当てはめてみます。
1. 言葉:AIに「これは絶対にやらないで」とハッキリ伝える文を、一行書く
2. 見張り番:もしそれが起きたら、どうやって気づくか。「誰かに通知が飛ぶ」「記録が残って毎日チェックする」など、一つ考える
3. 使えない構造:そもそも、それができないようにする方法はないか。たとえば「お金が動く操作は、AIに権限を渡さず、最後だけ人間が押す」など、一つ考える
3番まで完璧に答えられなくても、大丈夫です。「3番は、まだ思いつかないな」でもいい。それでも、「これだけは絶対やらせない」という一線を、言葉にできただけで、もう大きな一歩です。なぜなら、その一線が、あなたが安心してAIに任せられる「最初の柵」になるからです。柵が一本あるだけで、「任せてみようか」という気持ちが、ぐっと近づきます。完璧な柵を一気に作る必要はありません。一線を一つ、決める。今日は、それでいいんです。
賢さと柵は、ワンセット。柵は、疑いじゃなくて優しさで、自分が安心して手放すための準備でもある。今日も一歩ずつ、一緒に、いきましょう。
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