COLUMN
AIが急にバカになった朝
「全部渡す」が裏目に出るcontext rotの正体
2026年4月19日 · ひろくん
家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。
おはようございます。ひろくんです。
今日はね——3時間、順調に走ってた私のAI秘書が、急に「なんでそれ飛ばすの?」っていう動きを始めた朝の話をします。怒りかけて、ふと気づいたんだ。「あ、これ、AIのせいじゃないわ」って。
3行でわかるポイント
- 全部渡したらAIが腐る:「100万トークン=でかい冷蔵庫」と思って全部ぶち込んだら、奥から野菜が腐った
- 賢い人は毎ターン整理する:続行/巻き戻し/新規/要約/子エージェント——AIと話すたびに選ぶ
- context rotは経営の鏡:AIに抱え込ませる人は、自分も抱え込んでいる。私の「抱え込みOS」そのものだった
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参加する(無料)→「あのAI、急にバカになりました」——朝、モニタの前で固まった話

ある朝、動画生成のタスクをAI秘書に回してたんですよ。
3時間くらい、順調だった。スクリプトも書いてくれるし、素材も整理してくれる。「いやぁ、もう私いらないじゃん」って笑いながら、横で子どもと遊んでた。
で、戻ってきて続きを頼んだ瞬間——
「え、なんでそこ飛ばすの?」
前半でちゃんと決めたルール、無視してる。直前に「これはやらないで」って言った処理を、平気でやろうとしてる。……正直、一瞬イラッとしました。「え、さっきまでの3時間、何だったの?」って。
モニタの前で「いやいやいやいや」って独り言を連発して、椅子ごと少し後ろに引いた。コーヒー冷めてた。
でも、そこで——一瞬、止まった。
あのね、これ、誰かを叱る時と同じ感覚でした。「お前なんで言うこと聞かないんだ」って口から出そうになる、あの感じ。父を反面教師にしてる私が、一番出したくない声。
だから深呼吸して、考えた。
「待てよ。AIって、変わらないはずだよな」
モデルは同じ。起動したばかりの時はちゃんと動いてた。なら変わったのは——私が渡した情報の量のほうだ。
「AIの台所に食材を山盛りに積んだのは私だった」——context rotという罠

この数日後に、Anthropic社員のThariq氏(@trq212)の投稿が54万ビューの大バズを起こしてるのを見つけて、全部つながりました。
現象には、ちゃんと名前がついてたんです。
context rot(コンテキスト腐敗)
情報を渡しすぎると、AIの精度がむしろ落ちていく現象のこと。
……ね、刺さるでしょ。「腐敗」って単語が入ってる時点で、もうAIの話じゃない気がしてくる。
私が使ってるClaude Opus 4.7(2026年4月時点の最新モデル)は、100万トークン——日本語でざっくり70万字、新書10冊分くらいの情報を一度に読ませられるんですよ。
最初、これを「でかい冷蔵庫」だと思って、ワクワクしたの。「よっしゃ、全部ぶち込める!全部渡して、私はサボれる!」って。
で、やってみた結果が、さっきの「急にバカになった朝」。
Thariq氏によると——ここ大事なんだけど——30万〜40万トークンあたりから、腐敗が始まるそうです。100万あるからって100万入れたら、実は奥の7割が使えない状態になってる。冷蔵庫と一緒。買ってきた野菜を奥に押し込んだら、1週間後に「あ、ニンジンこんなとこにあった……」ってしなびたやつが出てくる。あれ。
あなた、覚えないですか?
ChatGPTでもClaudeでも、「長く話してると急に的外れな返答が増える」って感覚。あれ、気のせいじゃない。科学的に起きてるんです。私が雰囲気で「AIってそういうもんだよね」で済ませてたやつ、ちゃんと名前がついてた。
「情報が多い=賢い」は、完全に幻想だった

これ、私のビジネスのやり方もまったく同じだったんですよ。
過去の私、社員に仕事を頼む時にね——資料を10個送ってた時期があるんですよ。「全部送っとけば、何かの役に立つでしょ」って。
結果?社員、固まる。
「どれが今のタスクの資料ですか?」って聞いてくる。で、私はそれにイラッとして「全部見ろよ」って言いかけて——いや、全部見せてる私が悪いな、って気づいた夜があった。
AIも同じ。「量を渡す」は「質を伝える」の代わりにならない。むしろ、量で殴ると精度が落ちる。
料理のキッチンで考えてほしいんです。
10平米の小さな厨房なら、塩も砂糖も包丁も全部視界に入る。でも、1000平米のスタジアムみたいなキッチンに「はい、ここで料理してください」って放り込まれたら——どう?塩を取るだけで30歩歩く。途中で「あれ、さっき何作ろうとしてたっけ」ってなる。
広すぎる厨房は、料理人を動けなくする。
これが、100万トークン時代のAIに起きてることそのものです。
タスク終わるたびに「次どうする?」を選ぶのが、AI秘書使いこなす人の仕事

じゃあ、どうするか。
Thariq氏がね——Anthropicの中の人——5つの選択肢を整理してくれてるんですよ。
AIが何かひとつ仕事を終えた時、取れる手は5つ。
| # | 選択肢 | どんな時? | 料理で言うと |
|---|---|---|---|
| 1 | Continue(続行) | 同じテーマの小さな追加作業 | 「もう1品、同じ流れで作る」 |
| 2 | rewind(巻き戻し) | 失敗した試行錯誤を丸ごと消したい | 「この鍋、作り直す。油も捨てる」 |
| 3 | /clear(新規) | 別テーマに完全に移る | 「和食終わり。これから洋食」 |
| 4 | /compact(要約) | 長い流れの要点だけ残して続ける | 「仕込みのメモだけ残して、生ゴミは捨てる」 |
| 5 | Subagents(丸投げ) | 結論だけあれば十分な作業 | 「下ごしらえは別の人に頼んで、出来上がりだけ受け取る」 |
で、ここからが大事。
ほとんどの人——過去の私も含めて——AIとのやりとりって、1番の「Continue」しか選んでないんですよ。返答が来たら、そのまま次のメッセージを打つ。また返答が来る。また打つ。
これ、全部の食材を鍋に放り込み続けてる状態です。
で、ある瞬間——30万トークンあたり?——ごちゃ混ぜの闇鍋が完成する。そして「あのAI、急にバカになった」って言い出す。
いや、バカになったんじゃない。闇鍋を出したのは、私だ。
rewind(巻き戻し)——これ知らずにAI使うの、マジで損してる

5つの中で、私が一番衝撃を受けたのが2番の「rewind」。
Claude CodeでEscキーを2回ポンポンって叩くとね、過去のどこかのメッセージまで戻れるんです。で、戻った地点より後の会話は——コンテキストから完全に消える。
これ、何が嬉しいかって——具体例で話しますね。
私がAI秘書に「動画生成スクリプト書いて」って頼んだ。ファイルを5個読ませた。Aというやり方を試してもらった。失敗した。
普通、こう返しません?
❌ 「それじゃダメだった。代わりにBを試して」
私もずっとこれでした。でも、これが最悪の一手だったんです。
だって、失敗したアプローチAの全ログが——しかも長々と——コンテキストに残り続けるんですよ。冷蔵庫に腐った野菜を入れたまま、その隣で次の料理を作ってるようなもん。臭い、移る。
良いやり方は、こう。
✅ ファイル読み込み直後までrewindして、学んだことだけ添えて、再指示する
「アプローチAは使わないで。fooモジュールはそれを公開してないから。Bで直接行って」
こうすると、失敗した試行錯誤のトークンは全部消えて、「学び」だけがクリーンな状態で残る。奇跡みたいな挙動です。
これ、仕事の本質と一緒だと思いません?
失敗そのものは捨てる。でも、そこから学んだ1行だけは残す。泥臭い試行錯誤の100行は捨てていい。「ここ、こう間違えた。だから次はこう」だけ残せばいい。
……これ、私が5年かけて「プロセスエコノミー」で辿り着いた答えと、ほぼ同じなんですよ。失敗は財宝。でも、腐った状態のまま抱え込むな。一回整理して、財宝だけ残せ。
/compactが一番壊れるのは、一番使いたいタイミング

もうひとつ、罠があるんです。これハマった人、手を挙げて。
長時間セッション使ってると、自動で「要約」が発動することがあるんです。AI側が「あ、もうコンテキスト重いな」って判断して、勝手に圧縮してくれる。ありがたい機能、のはずなんだけど——
Thariq氏、こう書いてます。
モデルが作業の方向性を予測できない時、自動compactの質は極端に悪くなる。しかも皮肉なことに、コンテキスト腐敗のせいで、compact実行時のモデルが「最も知性が低い状態」にある。
……え、待って。
一番正確な要約が必要な瞬間に、一番頭が回ってない状態で要約される。これ、人間で言うなら——徹夜明けの自分に、3日分の議事録を要約させるようなもんです。絶対ミスる。
私、これで2回ハマりました。
一回目は、LPの修正作業を5時間くらい回してた時。「あ、じゃあbar.tsのあの警告も直しておいて」って追加で頼んだら——AI秘書、キョトンとしてるんですよ。で、「bar.tsの警告って何でしたっけ?」って聞いてくる。いや、さっきまで一緒に議論してたじゃん。
要約の途中で、その警告の情報がごっそり抜け落ちてた。
その時、ほんと、めっちゃガッカリしたんです。AIにじゃない。自分に。「また抱え込ませてた……」って。
で、対策はシンプルです。
余裕のあるうちに、自分から/compactを叩く。しかも「これから何やるか」を添えて。
例えばこんな感じ。
/compact 認証のリファクタリングに集中する。テストのデバッグは忘れていい
これ、何してるかわかります?「次に向かう方向」を指示してから要約させてるんです。
料理で言うとね——「はい、キッチン片付けて」じゃない。「次パスタ作るから、塩とオリーブオイルは出したまま、揚げ物の油だけ片付けて」って指示する。
次の料理を知ってる状態で片付けるから、必要なものが残る。指示がないから、AIは全部片付けてしまう、もしくは全部残してしまう。
これ、社員に仕事振る時と完全に同じなんですよ。「これやっといて」じゃなくて「次これやるから、これとこれは残して、これは捨てていい」って言える人だけが、チームをうまく動かせる。
「結論だけでいいか」を聞ける人は、AI秘書を本物の相棒にできる

最後に一番実務的な話をします。これ、正直、一番見落とされる。
Claude CodeにはSubagents(子エージェント)って機能があって——これ、別のAIを生成して、そっちに独立したクリーンな作業スペースで仕事してもらう仕組みです。で、結果だけ親セッションに返ってくる。
使うタイミングの判断基準、Thariq氏がめちゃくちゃシンプルに言ってくれてます。
👀 「このツール出力、後でまた必要か?それとも結論だけあればいいか?」
結論だけでいいなら、subagentに任せる。
……この問い、ズバッと刺さりません?
私、毎日この基準で使い分けてます。
| 作業 | 判断 | なぜ? |
|---|---|---|
| 大量のファイル検索 | ✅ subagent | 全部の中身はいらない、該当ファイルのパスだけ欲しい |
| 外部記事のリサーチ | ✅ subagent | 本文丸ごとは邪魔、3行要約で十分 |
| 設計判断・記事執筆のコア | ❌ 親で実行 | 過程の思考そのものが大事、結論だけだと魂が抜ける |
これね、AI秘書を育てる話じゃなくて、「経営者として何を残して何を手放すか」の話なんです。
過程が大事な仕事——自分の魂が乗る判断、お客さんに届ける言葉を選ぶ瞬間、家族との時間をどう設計するか——こういうのは、ぜったいに親の手元に残す。
でも、「結論だけあればいい」仕事は、子エージェントに任せる。検索、リサーチ、ファイル整理、スケジュール調整、議事録まとめ、データ集計。私が「楽しくない」「自分がやっても付加価値がない」って感じてる仕事、全部これです。
この問い、紙ノートに書き出してほしいんです。
「私が今日やった仕事のうち、過程が大事なのはどれ?結論だけあればいいのはどれ?」
分類できた瞬間、AI秘書が動き出します。ほんとに。
AIの抱え込みは、経営者の抱え込みOSの鏡だった

……ここまで書いて、気づいたことがあります。
context rotって、AIの話をしてるようで、全部、私の話なんですよ。
私ね、134kgから50kg痩せた時、借金4億から這い上がった時、大腸がんステージ3を乗り越えた時——毎回、同じパターンにハマってたんです。
「全部自分でやろうとする」。
これが私の持ってる古いOS——「抱え込みOS」です。タスクや仕事の抱え込みじゃない。感情の抱え込み。「怖い」「辛い」を笑いに変換して、ひとりで処理するOS。
で、2025年1月に手術台に乗った時、麻酔が落ちる直前に気づいたんです。
「積み減らして、委ねて、生き直す」
これがAIを始めた原点。で、今回のcontext rotの話を掘って掘って——わかったのは、AI秘書に対しても、私、同じことをやってたってこと。
「全部渡せば、AIがやってくれるでしょ」
違うの。全部渡すは、抱え込ませるの裏返しだった。自分が抱え込むのをやめて、AIに抱え込ませてただけ。これじゃ誰も楽にならない。AIも精度落ちるし、私も「AIがバカだ」ってイライラする。
本当の「委ねる」って、こうなんですよ。
自分の判断基準を言語化できた人だけが、「ここは任せる、ここは残す」を明示できる。明示できた瞬間、AI秘書が動き出す。
あのね、これ、社員育成と一緒なんです。
「丸投げ」じゃダメ。「全部やれ」でもダメ。「ここは任せる。この判断軸でやってほしい。この手触りが出てきたら私に戻して」——これが言える上司のところで、部下が育つ。
AI秘書も、まったく同じだった。
「凸凹のまま、夢中に生きる」って、私の北極星なんですけど——この凸凹にはね、「自分の凸を残して、凹は委ねる」って意味も含まれてるんです。今まで、これを人間の凸凹の話だと思ってた。
違った。AIとの付き合い方も、凸凹の話だった。
私の凸(こだわりたいところ・判断したいところ)を残して、凹(量でこなす作業・結論だけあればいい仕事)はAIに渡す。これ以外の渡し方は、全部「抱え込ませ」になる。
今日、ひとつだけ試してみませんか
長くなったので——最後に、今日から1つだけ試せること、置いておきます。
次にあなたがAI(Claudeでも、ChatGPTでも、Geminiでも)とのセッションが長くなってきて、「あれ、なんか返答が的外れになってきたな」って感じたら——
失敗したやりとりの直前までrewind(もしくは新しいチャットを開いて学びだけ持っていく)してみてください。
Claude CodeならEscキーを2回叩く。ChatGPTやGeminiならブランチ機能を使う、もしくは新規チャットに「前のチャットで学んだことは〇〇と〇〇。これを踏まえて次行く」って書き始める。
腐った野菜を捨てて、冷蔵庫を一回整理する。
AIの返答、変わります。驚くほど。
そして多分ね、その時、あなた自身の仕事の整理の仕方も、ちょっと変わります。「何を渡して、何を残すか」の目が、少しだけ鍛えられるから。
AI秘書は、あなたの冷蔵庫です。定期的に整理しないと、必ず腐る。
そして——その整理のやり方を知ってる人だけが、AI秘書を本物の相棒にできる。
私も、まだ道の途中にいます。偉そうに書いたけど、朝にイラッとしたの、たった数日前の話なので。一緒にやっていきましょう。
出典
- Thariq Shihipar (Anthropic) 「Using Claude Code: session management and 1M context」(2026年4月15日公開): claude.com/blog/using-claude-code-session-management-and-1m-context
- Claude Code Studio 日本語解説記事(54万ビュー): x.com/ClaudeCode_love/article/2044672857998016940
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