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個人開発ツール「Tokusetsu」を13年続けた佐野章核さんが解説。作ることより届け方で学んだ10のこと
2026年9月22日
家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。今回は、佐野章核さんの「13年続けた個人プロダクトで、作ること以外で学んだ10のこと」という記事を紹介するね。
正直、この記事を読んで背筋が伸びた。同人音楽の特設サイトを作るツール「Tokusetsu」を13年、一人で回し続けてきた佐野章核さんが「作ることと同じくらい、届け方にも工夫の余地がある」とまとめていて、それが実家の惣菜屋の店先で私が覚えたことと重なったからです。この記事を読むと、今作っているもの・売っているものを「誰に届けないか」から見直せるようになりますし、断られた時にただ落ち込むのではなく次の一手に変える型が手に入ります。
3行でわかるポイント
- 誰のために作らないかを先に決めると、断られても焦らなくなる
- 作り込むのは核だけ。購入・利用判断を左右する部分にだけ全力を出す
- 断られた理由はデータ。パターン化すれば、次の伝え方が変わる
佐野章核さん(SANOGRAPHIX Blog)・2026年9月15日公開
🖥 Tokusetsu 5 の実際の画面
公式サイトのトップページ。「そのリリースに、ふさわしい特設サイトを」というコピーの通り、同人音楽の特設サイトを作るためのデスクトップアプリだとひと目でわかる。
実際のテーマ選択画面。左でテーマを選ぶと、右側にイラスト入りの特設サイトがそのままプレビューされる。
「誰のために作らないか決める」。個人開発ツール「Tokusetsu」で学んだ視点
佐野章核さん(SANOGRAPHIX Blog)
「こんな人には刺さらない」という仮説が生まれる。これを念頭に置けば、説得しなくていい層を見極められるので、もし製品が彼らに受け容れられなかったとしても想定通りで、焦ったり慌てたりする必要がなくなる。
Tokusetsu 5なら「自分でゼロからサイトをデザインしたい人」や「知り合いのWebデザイナーに頼むつもりの人」には十中八九刺さらない。佐野さんはそれを最初から決めてしまいます。
「ターゲットを絞りましょう」とはよく言われます。ライフスタイルや価値観が人によって違う以上、誰からも愛されるプロダクトは現実的に作れません。ただ、作っているうちに「もっと多くの人向けに」とつい欲張ってしまう。そこで佐野さんは、順方向ではなく逆から考えます。「誰のために作らないか」を先に決める。そうすると「こんな人には刺さらない」という仮説が生まれ、説得しなくていい層を見極められるので、焦ったり慌てたりする必要がなくなるわけです。
この話を読んで思い出したのは、AI課題解決センターやAiportを作ってきた時の自分の癖です。「もっと多くの人に」って欲張ると、結局誰の刺さり方も薄くなるんです。
私には最初から「お断りする客層(アンチペルソナ)」があります。「全部やってくれ」と丸投げする人、最短で金儲けしたいだけの人、家族を犠牲にしてでも成功したい人。この3つを先に決めておくと、断られても「刺さらない相手に刺さらなかっただけ」と分かるので、変に自分を責めずに済みます。
佐野さんの「誰のために作らないか」を先に決めるやり方は、私にとっても答え合わせのような感覚でした。
今日やるなら、今のサービスか発信を1つ選んで「刺さらない3人」を紙に書き出してみてほしい。10分あれば終わる。書き終えたら、その3人には無理に届けようとしなくていい、と自分に言い聞かせてください。
「会って話を聞くことを恐れない」。数十回のインタビューが仮説を検証する
佐野章核さん(SANOGRAPHIX Blog)
「でも、自分はそんな人脈もないし、人と話すのも苦手だよ」と思っていませんか? その気持ちはよくわかります。自分もそうだから。
佐野さんは初対面の相手ばかりに数十回インタビューして、告知プロセスの課題を手に取るように理解したと書いています。「イベントの準備で忙しい」とは具体的にどのような忙しさなのか。既存のウェブサイトビルダーを選ばないのはなぜか。品番(カタログナンバー)は誰にとってどう重要なのか。こうした問いは、机の上で考えても答えが出ません。聞いて確かめるしかない、と正直に書いています。話の上手さより「仮説検証をやりきる」ことが大事だという言い方は、とても実務的だと思いました。
これは、私が非効率だけどあえて続けていることと重なります。食材の買い出しに毎回行くのは、新しい発見や特売品を見るためだけではありません。常連客やお店の人と交わす立ち話は、今にして思えば小さなインタビューでした。「最近どう?」の一言から、何を求めていて、何に困っているかを、机の上で仮説を立てるより先に拾える場所だったんです。実家の惣菜屋「山口屋」の商売っ子として、そうやって話を聞く感覚を子どもの頃から体で覚えました。
机の上で仮説を立てるだけでは、答えは出ません。現場に行って、聞いて、確かめる。それをやらずに「たぶんこうだろう」で作ったものは、だいたい外れます。
直近で来た要望や相談を1件選んで、「なんでそう感じたんですか」って一言だけ聞き直してみてほしい。5分でできる。
「ハイライトだけ作り込む」。完璧主義とスピードの折り合い
佐野章核さん(SANOGRAPHIX Blog)
「そのプロダクトの購入・利用判断を最も左右するハイライト」を重点的に作り込み、それ以外の設定画面やエッジケースは全部ダミーまたは作らないでおく、あたりがバランスよいのではと思い、現状そのようにしている。
佐野さんはここで、Ash Maurya『Running Lean』の「プロダクトは作る前に売れ」という考え方を紹介しています。需要が無い製品を作っても開発コストが無駄になる。だから、作る前にお金を払ってくれる人がいるか確認する。プロトタイプやデモをその場で見せて購入するか聞く手法を、本では「マフィアオファー」と呼ぶそうです。
ただ、理屈は分かっても実行は難しい。Figmaでリアルなモックが作れるようになった今でも、作り込み自体に時間がかかります。しかも、触ったら何が起きるかは相手の想像力次第。想像力が豊かな人は過大評価し、そうでなければ過小評価する。そんな疑念も残ります。だから佐野さんは、購入判断を左右する核だけを重点的に作り込み、それ以外はダミーにする、というバランスに落ち着いたわけです。作り込みすぎると、細かい部分にかけた労力が反応の悪さと一緒に消えてしまいますから。
正直、これは私の一番の弱点の話でもあります。強み診断だとMaximizer(最上志向)が1位で、もっと良くしたいが本能。でもAchiever(達成)は27位で、完了させる力が実は弱いんです。一人で磨いていると、いつまでも出せなくなります。
だからAI秘書の凛ちゃんには「80%で出しちゃいなよ!」って言われます。核だけ仕上げて、あとはダミーでいい。その割り切りを、佐野さんの記事は同じ言葉で裏付けてくれた気がします。
今作っている企画やページで、購入・利用の判断を一番左右する箇所を1つだけ選んで、そこだけ今日中に仕上げてみてほしい。他はダミーのままでいい。それで十分伝わります。
「要望の文脈を掘り、先に与える」。額面通りに動かない
佐野章核さん(SANOGRAPHIX Blog)
「実は○○さんの作品画像をお借りしてデモサイトを作ってみたんですが……」と、その人自身の作品専用の画面を見せる。そのほうが説明しやすいから、という理由もあるが、結果的に相手にとっても「自分がこれを使ったらどうなるか」具体的なイメージが湧くので、その後の話が一気に進んだ、ということがあった。
「機能が欲しい」という要望を、佐野さんはそのまま実装しない。理由は明快です。「その機能があれば買う」という保証はどこにもないからです。過去に一度、別の個人プロダクトで要望どおりに機能を追加してあげたところ、結局ほとんど誰にも使われず、余計な設定がひとつ増えただけになった、という失敗談も正直に書いています。だから要望が出たら、まず「どんな状況でそう感じたのか」「その機能があったら何を実現できると思ったのか」という文脈を掘り下げる。機能の検討は、その後に始めても遅くありません。
そのうえで、汎用デモではなく相手専用のデモを見せる。これは、先に与えてから頼む順番です。
私も、要望を聞く前に先に与えることを商売の原則にしています。高額な個別コンサルや情報商材、成果保証には手を出さず、場そのものは無料で開放する。価値を先に渡してから、その後で対価をいただく。佐野さんが過去バージョンを無料配布してからインタビューに応じてもらいやすくなったのと、同じ順番です。
先に与えると、後から頼みやすくなる。順番を間違えると、同じ内容を渡しても響き方が変わる。
次に何かを売り込む相手が思い浮かんだら、その人専用の見せ方を1つだけ考えてみてほしい。15分でいい。汎用の説明資料を使い回すより、時間はかかります。でも、響き方はまったく違います。
「本体開発と同じくらいプロモーションに期間を設ける」。作ると同じ熱量で届ける
佐野章核さん(SANOGRAPHIX Blog)
だから自分は、課題探索(インタビューなど)・本体開発・プロモーションに、体感でだいたい0.5〜1:1:1くらいの割合でリソースを使うようにしている。わかりやすいように時間で考えると、本体開発に2ヶ月かけたら、プロモーションにも2ヶ月かけるイメージ。
ニッチな製品ほど「誰の何を解決するか」がパッと見で伝わりません。当事者であっても「自分の悩みを解決してくれるものだ」と気づいてもらえなければ、検討の土俵にすら乗らない。だからこそ、開発とプロモーションに同じ時間をかける、と佐野さんは言い切っています。プロモーションとは具体的には、ランディングページ、デモサイトやデモ動画の制作、販売サイトのサムネイル画像制作などを指します。
これは、私のEC時代の実感とそのまま重なる話でした。商品を仕入れて並べるだけでは、誰にも気づいてもらえません。言葉と写真と導線で人の行動を変える。そこに商品作りと同じだけの時間をかけたからこそ、EC事業を育てられたんです。中卒フリーターからリフォーム会社でWEB集客を独学で習得したのも、作ることと届けることを同時に学ぶ必要があったからでした。
作るところで力尽きて、届けるところが片手間になる。これをやると、どんなに良いものでも埋もれます。佐野さんの「0.5〜1:1:1」という具体的な比率は、感覚論で終わらせないところがいいですね。
直近作ったものについて、実際にかけた「作成時間」と「発信・宣伝の時間」を数字で出してみてほしい。10分でできる。
「競合と共存の道を考える」。AIを潰す相手ではなく、下ごしらえの相方にする
佐野章核さん(SANOGRAPHIX Blog)
そこで採った方針は、対抗ではなく共存すること。Tokusetsu 5にはHTMLエクスポート機能があり、作ったサイトをそのままエクスポートして、あとは各自のAIに読み込ませて調整させることができる。このようにして「併用するもの」と位置づけ直したわけだ。
「バイブコーディングで特設サイトを作ればいい」という声が現実的になってきた中で、佐野さんはAIと潰し合わず、Tokusetsuを「AIに渡す前の下ごしらえ」として位置づけ直しました。
ここには実益上の理由もあると書いています。実際にAIへ特設サイトを作らせる場合、「同人音楽の告知で何をどこまで載せるべきか」をまず整理してからAIに渡す必要があります。細かい文脈や慣習の指示も要るかもしれません。それなら、最初の叩き台をTokusetsuが担ってしまった方が、結果的に早く作れる。対抗ではなく共存を選んだのは、感情論ではなく実務判断でした。
これは、私の判断軸そのものです。発散型で1つの話題から10個アイデアが湧く性分なので、全部を自分で抱えると捨てきれません。解決策は「捨てる」ではなく「分身AIに所有権を預ける」こと。残りは分身AIが持っていれば、捨てていないのと同じです。セカンド冷蔵庫に入れておけば、自分のキッチンはスッキリします。
佐野さんがTokusetsuをAIの下ごしらえ役に位置づけたのと同じで、自分の道具や仕事をどこまでAIに渡し、どこを自分で持つかを決めるのは、競争ではなく役割分担の話です。人間は縦に掘る。AIは横に広げる。この2つを対立させず、どちらも生かす場所を先に決めておく。それだけで、新しい道具が出るたびに身構える必要がなくなります。
今抱えている作業を1つ思い浮かべて、「AIに下ごしらえだけ渡せそうな部分」を1つ選んでみてほしい。
「断りは分析し、慣れた方法こそ疑う」。結果より仕組みを見る
佐野章核さん(SANOGRAPHIX Blog)
「この価格に対して率直にどう思いましたか?」と聞くと、多くの人は「みんなは高いと言うかもしれない」というような、自分の意見ではない「代弁」を返す。ところが「あなたはどうします?」と聞き方を変えるだけで、自分ごととしての本音を引き出しやすい。
断られたら終わりではなく、パターンを分析して次の伝え方に変える。そして、13年同じ配色方式でやってきたTokusetsuの仕組みすら、後になって「自動抽出できるのでは」と疑って変えた。それが佐野さんの締めくくりです。
その手前の「数字はほどほどに見る」も、実務的です。個人開発の初期。数件・数十件のデータしかありません。数字だけで細かく最適化しようとしても難しい。定量データより、インタビューで得られる定性データの方が有意義に使える、という実感です。数字をゼロにはしません。「M3の1週間前にダウンロード数が跳ね上がる」。そんな傾向は参考にする、という距離感です。否定せず、使う場面を選ぶ。そこが誠実だと感じました。
私にも「慣れたやり方を疑って、結果的に良くなった」経験があります。毎朝、紙にマインドマップで頭の中を書き出す習慣を続けていますが、最初はiPadでやろうとしていました。うまくいかず、紙とペンに変えてから、もやもやが整理されて新しいアイデアも湧くようになったんです。手の感触が思考を動かすと気づいたのは、デジタルのやり方を一度疑ってからでした。
慣れた方法をやり続けるのは楽だ。でも、それを一度疑ってみないと、後から見て「なんで気づかなかったんだろう」ってなる仕組みのままになる。
直近で断られた・反応が薄かった案件を1件選んで、理由を仮説でいいから1行書いてみてほしい。書けたら、次に同じ相手へ話す時の一言も、あわせて考えてみてください。
よくある質問
Q. この記事は個人開発をしている人しか役に立ちませんか?
A. いいえ。元記事は同人音楽の特設サイトツール「Tokusetsu」の話だけど、「誰に届けないかを決める」「断りをデータとして扱う」といった考え方は、商品・サービス・発信のどれにも応用できるよ。
Q. 「作り込む前に検証したいけど、ハイライトは作り込む」とは具体的にどういうことですか?
A. 購入・利用の判断を最も左右する部分(佐野さんの言う『ハイライト』)だけを丁寧に作り、それ以外の細かい設定画面やエッジケースはダミーのままにしておく、というバランスの取り方のことだよ。
Q. AIとの『競合ではなく共存』というのは、佐野さんの結論をそのまま真似していいんですか?
A. 発想の型としては真似できるけど、自分の道具の何を『AIに渡す前工程』として位置づけ直せるかは、業種や作業内容によって変わる。まずは自分の仕事の中で1つだけ、下ごしらえとして渡せそうな部分を探すところから始めるといいよ。
Q. 元記事の内容を、この記事だけで全部把握できますか?
A. この記事は私の視点を通した紹介と要約なので、元記事の10項目の細かいニュアンスまでは拾いきれていません。気になったら元記事のリンクから佐野章核さんの言葉をそのまま読んでみてください。
作ることと同じくらい、届け方に工夫の余地がある
佐野さんの10項目を振り返ると、共通しているのは「相手を決める→聞く→核だけ作る→先に与える→同じ熱量で届ける→競合と共存する→断りをデータにする→慣れたやり方を疑う」という一本の流れです。
どれも派手な話ではありません。でも、同人音楽の特設サイトツールを13年続けた佐野章核さんが実際にやっていることなので、重みが違います。
私自身、実家の惣菜屋の店先や、EC事業を育てた頃の感覚と何度も重なりました。作ることに全力を使い切って、届けることを後回しにしてしまう癖がある人ほど、この記事は刺さると思います。
作る。届ける。この2つは、別の仕事ではありません。同じ一つの仕事の、前半と後半です。前半だけ頑張って、後半を手放すと、せっかくの良いものが埋もれてしまいます。
COLUMN
「作る」と「届ける」は、下ごしらえと味付けの関係
正直、料理と同じだと思いながら読んでいました。私は実家の惣菜屋「山口屋」の商売っ子でしたから、厨房の奥で仕込みをしている職人が、店先でお客さんに声をかける仕事までは意外とやらない、というのを子どもの頃からずっと見てきました。
佐野さんの記事は、その両方を自分一人でやる話です。仕込み(開発)に2ヶ月かけたら、味付けと盛り付けと呼び込み(プロモーション)にも2ヶ月かける。仕込みだけ上手くても、店先で「これ何?」って聞かれた時に答えられなければ、お客さんは通り過ぎてしまいます。
「誰のために作らないか決める」も、惣菜屋の感覚でいうと「今日のメインは唐揚げだから、揚げ物が苦手な人向けには別の一品は出さない」と割り切るようなものです。全員向けの惣菜を作ろうとすると、味がぼやけます。
AIとの付き合い方も似ています。仕込みの一部(下ごしらえ)をAIに任せて、味の最終判断と、お客さんに渡す瞬間だけは自分でやる。佐野さんがTokusetsuを「AIに読み込ませる前の下ごしらえ」に位置づけたのは、まさにこの役割分担そのものでした。
作ることに夢中になって、届けることを忘れる。これは私もよくやる失敗です。だからこそ、この記事を読んで「今日は仕込みだけでなく、店先にも顔を出そう」と思い直しました。
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参考リンク
元記事の著者プロフィールページ
記事内で紹介されている本人プロダクト
元記事で引用されているAsh Maurya『Running Lean』の版元ページ
📄 今回紹介した記事
| 著者 | 佐野章核(SANOGRAPHIX) |
| 媒体 | SANOGRAPHIX Blog(個人ブログ) |
| 公開日 | 2026年9月15日 |
| 元URL | https://text.sanographix.net/entry/2026/09/15/191000 |
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