
書評・要約
エフォートレス思考の要約|頑張りを足さず、やり方を変えて大事なことを簡単にする全15章
- 何の本か:グレッグ・マキューン著、高橋璃子訳。『エッセンシャル思考』の続編で、大事なことを「どのように」やるかを全15章で説く本です。
- 誰に:真面目に仕事を抱え、削れるだけ削っても、まだ疲れ切っている経営者に。
- 結論:足りないのはやる気でなく、やり方。精神・行動・しくみ化の順に、いちばん大事なことをいちばん簡単にしていきます。
家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。
大事なことだけに絞った。それでも、まだ多すぎる。
そんなとき、どうしますか?『エフォートレス思考』は、まさにこの行き止まりから始まる本です。
著者のグレッグ・マキューンさんは、前作『エッセンシャル思考』で「何を」やるかを絞る方法を書いた人。その本人が、削れるだけ削っても忙しすぎて、燃えつきました。
そこで向き合ったのが、「どのように」やるか、です!
この記事では、序文から第15章、エピローグまでを本の順番どおりに要約します。最後に、手元の仕事のやり方を一つ見直す手順もまとめました。頑張りを足す前に、やり方を変える。その道筋を一緒に見ていきましょう。

序文の要約:大事なことが多すぎるなら、変えるのは「やり方」
序文(プロローグ)の題は「エフォートレス思考とは そのやり方が唯一の道ではない」。最初に登場するのは、パトリック・マクギニスという人です。

名門大学からハーバード・ビジネス・スクールへ。長時間働き、休みはほとんどありません。出張も山ほど。複数の企業で役員を務め、体調が悪くても根性で乗り切っていました。
彼の前にあったのは、こんな分かれ道です。死ぬまで頑張り続けるのか。成功をあきらめて、楽な仕事に移るのか。それとも、頑張らない働き方で成功を手に入れるのか。
選んだのは最後の道です!
AIGの役員を降り、コンサルタントとして会社に残りました。定時に帰り、週末のメール確認もやめます。睡眠を増やし、ウォーキングとジョギングを始め、食生活も整えました。
友人にならって、スタートアップへ少しずつ投資も始めます。収入源が一つに頼らなくなりました。労働時間は半分に。収入は増えたんです!
彼はこの経験から、頑張ってもうまくいかないなら別の道を探したほうがいい、という教訓を得ました。実は、この序文でいちばん生々しいのは、著者自身の話です。
『エッセンシャル思考』が売れ、ツアーやサイン会に出る日々。読者一人ひとりに応えたい。一方で著者は4人の子の父で、家族が最優先でした。
次の本の執筆も、スタンフォードでの講師の仕事も、ワークショップ事業も保留にします。
削れるだけ削った。それでも忙しすぎた。有名な「大きな石」の話があります。瓶に大きな石から先に入れれば、小石や砂利も隙間に収まる、というたとえです。
著者はホテルの部屋で考え込みます。大きな石が多すぎたら、どうするのか?その夜、息子からビデオ通話が入りました。娘がてんかんの発作を起こした、という知らせです。
著者は夜行便で家に戻りました。病院通い、親戚や友人からの電話、講演の予定変更。数週間それが続き、すっかり燃えつきます。妻には、このままでは無理かもしれない、と打ち明けました。
たどり着いた結論は、基準もやろうとしていたことも正しかった、間違っていたのはやり方だった、というものです。
フォームを知らない重量挙げ選手。息つぎを知らない競泳選手。パン生地をこねる機械を持たず、手でこね続けるパン屋。そんなたとえが続きます。
大事なことだけをやろうとしても、それでも多すぎるなら、あきらめるか、やり方を変えるしかない。
序文の一文です。著者は続けて、エッセンシャル思考は「何を」やるか、エフォートレス思考は「どのように」やるかを極める技術だ、と整理しています。
正直、ここがこの本の背骨です。
著者によれば、問題はやる気ではありません。どんなにやる気があっても、使える力には限りがある。だから力ずくで頑張るのをやめ、いちばん楽なやり方で最優先事項に取り組む。力を抜くのは怠惰でなく、スマートな生き方だ、と著者は書きます。
そのうえで問いかけます。どうでもいいことが難しくなり、本質的なことが簡単になったら、何が起こるだろうか、と。本は3部構成です。著者はこれを、バスケットボールのフリースローで説明します!
まず選手はゾーンに入り、雑念を消す。これがエフォートレスな精神です。次に、考えずに最小限の動きでボールを放つ。これがエフォートレスな行動。
そして、同じシュートを何度でも再現する。これがエフォートレスのしくみ化です。偏光サングラスをかけると、水面のぎらつきが消えて水中が見える。正しいやり方が見えると視界が晴れる、というたとえも出てきます。
著者は読者に、こんな覚えはないかと聞きます。リラックスしていたら、ゾーンに入っていた。頑張りを少し減らしたら、前より結果が良かった。小さな自動化のしくみが、何度も役に立った。
序文は、互いの人生を楽にするのでなければ何のために生きるのか、というジョージ・エリオットの言葉で閉じられます。
私の場合|家族第一なのに、仕事を抱えていた
2026年9月15日の問答で、私はこう答えています。「前から家族第一だった。けど仕事を抱える癖で抱え込んでた。手放したら本当に大切な人やコトがもえた」
家族第一は、前からありました。それでも、仕事を抱える癖で抱え込んでいた。
著者も、家族を最優先にしながら仕事を削り、それでも抱えきれなかった人です。違うのはその先。著者は燃えつきてから、やり方の誤りに気づきました。
私が答えたのは、抱える癖と、手放した後のことです。どう手放したのかは、エピローグのところで書きます。
第1部「エフォートレスな精神」は、頭の重荷を下ろすところから
第1部の扉で、著者は脳をスーパーコンピューターにたとえます。

不要な考えや、ネガティブな感情、ダメな思考パターンが詰まると、処理が遅くなる。認知心理学の「知覚的負荷」という考え方と、脳が恐怖や怒りのような強い感情を優先して処理する性質が紹介されます。
疲れて帰った夜は、鍵の場所も思い出せない。家族の一言にもイライラする。でも、食事をして熱いシャワーを浴び、一晩ぐっすり眠ると、世界が違って見えます!
著者のいうエフォートレスな精神とは、心身の重荷がなく、頭がすっきりした状態。今この瞬間に集中でき、今やるべきことを余裕でこなせる状態です。ここから5章をかけて、そのつくり方が語られます。
第1章 INVERT(転回)「頑張れば成果が出るとはかぎらない」
最初は、大学で働くキム・ジェンキンスの話です。勤務先の方針が変わり、手続きと事務が一気に増えました。自分に厳しい彼女は、全部を全力で抱えていたそうです。
あるとき、ふと気づきます。すべてがこんなに大変である必要はないのでは?そこから、もっと簡単なやり方はないか、と自分に聞くようになりました。
一学期分の講義を動画で記録してほしい、という依頼が来ます。以前なら音楽や見栄えのいい画面まで作り込むところ。今回は、まず教授と話しました。
すると、試合で欠席の多い学生一人のための記録だと分かったんです!
受講生にスマホで録画してもらう案で、話は数分でまとまりました。著者はここで、血と汗と涙をしぼるほど価値がある、という思い込みを問い直します。
人の脳は、苦労の少ないやり方を選ぶようにできている。最小努力の法則、認知容易性のバイアスと呼ばれる性質です。著者によれば、これは生き残るうえで有利な性質でした。逆らわずに強みへ変えればいい、というのが著者の主張です。
いやー、続く著者自身の失敗談は具体的です。重要な顧客から、リーダーシップのプレゼンを頼まれました。資料は承認済み。なのに前日、もっと良くできる気がして、徹夜で一から作り直します。
寝不足で臨んだ本番は大失敗。残りの回は先方から取り消され、契約も白紙になりました。教訓は、頑張りすぎは失敗のもと。著者は、子どもの頃から失敗の多くは頑張りすぎが原因だった、とまで書いています。
数学者ヤコビの、問題はいつも逆から考える、という姿勢も紹介されます。
それは「どうすればもっと楽になるだろう?」と考えるアプローチだ。
第1章の一文です。大事なことをやり遂げる道は、限界を超えて働くか、もっといいやり方を探すか。著者は後者を勧めます。歴史の例も出てきます。イギリスの奴隷貿易廃止運動では、正面から倫理を説いても、議会がなかなか動きませんでした。
仲間のジェームズ・スティーブンは、論点を戦争に移します。中立国の旗を隠れみのに、フランス側へ奴隷を運ぶ船を問題にしたんです! 流れが変わり、1807年の禁止につながりました。
著者は、いちばんシンプルで簡単で価値のある問題を見つけるのが戦略のかなめだ、という考えも紹介します。
アリアナ・ハフィントンは、心身を酷使しないと成功できないという考えを、社会の集団幻覚だと語ります。苦労の少ない成功は、物語になりにくいだけ。
バフェットは、高いバーを跳び越えるより、低いバーをまたぐほうがいい、という姿勢で投資してきました。
難易度を下げれば、力を入れなくても前に進み、勢いがつく。章の最後で著者は、成果を出すためにいちばん簡単なやり方は何か、と問い直すよう勧めます。
第2章 ENJOY(遊び)「『我慢』を『楽しい』に変える」
1981年、活動家のジェーン・チューソンは、スーダンの難民キャンプで重い病にかかり、臨死体験をしました。帰国後、キャンプの人々のために寄付を集め始めます。でも、頼むほうも頼まれるほうも苦しい。
そこで彼女は、楽しくてワクワクできるやり方で集めればいい、と思いつきました!著者は、仕事は仕事、遊びは遊び、という分け方を問題にします。
大事なことは苦しい、と決めると後回しになる。やっていない後ろめたさで、遊びまで重くなる。だから両方を楽しくやろう、と。運動や読書の成果は、何週間も何年もたってから返ってきます。著者はこれを遅行指標と呼びます。
その時間差を縮めれば、行動そのものが楽しくなる。コツは、大事な行動に、分かりやすいごほうびを結びつけることです。出張明け、大量の折り返し連絡を前に、著者は問いを変えました。どうすれば楽しくみんなに連絡できるか?
答えは、風呂につかりながら電話すること。相手も笑い、終わる頃には名残惜しいほどだったそうです!ロン・カルバーソンの話もあります。子ども向けの木製カーレース、パインウッド・ダービーです。
速さを競って最下位。翌年は下から2番目。3回目は、いちばん目立つ車を作る方針に変えました。アイスクリームの箱をかたどった車は、注目の的に。デザイン賞は逃しましたが、親子で作る過程が十分に楽しかった、と本人は振り返ります。
でね、この章でいちばん身近なのは、著者の家の夕食の片づけかもしれません。食べ終わると、子どもたちは忍者のように消えていく。得点表のゲームにしても、誰も残りません。
長女の案で、ディズニーの曲を大音量で流して歌いながら片づけたら、うまくいきました!レゴの名前は、デンマーク語の「よく遊ぶ」に由来するそうです。
著者夫婦は、気の重い家計の打ち合わせを、好きなチョコレートと音楽を用意したデートのような時間に変えました。
習慣は「何を」やるか、儀式は「どのように」やるか。こんまりの片づけ、風呂でリンゴを食べながら書いたアガサ・クリスティー、毎朝コーヒー豆を数えたベートーヴェン。
著者は儀式を、魂のこもった習慣と表現します。
楽しみはつねに、今このときにある。
第2章の結びの一文です。いつか来る満足を待たなくても、退屈なタスクに小さな遊びを足せば、タスクそのものが楽しみに変わる。著者の主張は、ここに集まっています。
私の場合|ワクワクしないことが途切れて、最初に戻ったのは新しいAI
第2章は、避けられない作業に楽しさを足す技術です。私の入口は、その逆でした。9月15日の問答で、私はこう答えています。「ワクワクしないコトが途切れたことでワクワクすることしか再開しなくてよい状態になった」
最初に再開したのは何か。私の答えは「新しいAI」でした。
何がワクワクだったのか。そう聞かれて、私は「自分をより新しく表現できる」と答えています。では、それまでの自分の表現と何が違ったのか。続けて聞かれた問いには、こう答えました。「シンプルにAIを触ってて楽しくより長文や画像や音楽やLPなど成果物がカタチになりやすく意図以上にできてワクワクした」
楽しさを作業に足したのではありません。ワクワクすることだけを再開すればいい所から、また始まったんです!
第3章 RELEASE(解放)「頭の中の不要品を手放す」
著者は6歳の頃から、ストームトルーパーの装備に憧れていました。大人になって、ついに身につけたとき。感じたのは喜びではなく、荷を下ろした、という思いだったそうです。
夢が、いつかやるべき課題として、頭の片隅を占め続けていたんです。以来、著者が軽はずみなことをしかけると、妻はそれをストームトルーパーと呼んで指摘するようになりました。
古い目標、くすぶる怒り、考えても仕方のない後悔。著者はこれらを、裏で動き続けて脳を遅くする不要なプログラムにたとえます。
不平不満は、簡単で価値のないものの典型だ、と著者は言います。SNSを開けば不満があふれ、知らないうちに影響を受ける。足りないものに目を向けると、今あるものが見えなくなる。
そこで勧めるのが、不満から感謝へ注意を移すこと。不足思考から充足思考へ、です!フレドリクソンの拡張‐形成理論と、コリンズの弾み車も引かれます。良い流れは、勢いがつくと自分で回り出す、という説明です。
不満をひとつ見つけるたびに、感謝をひとつ見つけること
第3章の一文で、著者が自分に課したルールです。BJ・フォッグの、XをしたらYをする、という習慣づけを応用しています。
空港の混雑に文句を言ったら、安全に飛行機に乗れるありがたさを足す。息子が宿題をしていなければ、本に夢中なのはいいことだと足す。
続けるうちに、不満を言うと自然に感謝が口から出るようになった、と著者は書いています。で、章の後半は重い話に入ります。
クリス・ウィリアムズは2007年の事故で、妻とお腹の赤ちゃん、そして子ども2人を失いました。大破した車の中で、彼は許すと決めます。
彼が選んだのは、生き残った息子たちのそばにいられる父親になる未来でした。
著者は、クリステンセンのジョブ理論を借りて問います。この怒りを、何の仕事のために雇ったのか?
満たされない思いを埋めるため、優位に立つため、同情を集めるため、自分を守るため。どの目的で雇っても、怒りはいい仕事をしない。だから、ゆっくり雇い、すばやく解雇しよう、と著者は言います。
友人ジョナサン・カレンの子は、生まれる前にダウン症と分かり、生まれてすぐ新生児集中治療室に入りました。
離れていく友人もいた。彼は友人を正そうとせず、期待を手放して現実を受け入れます。そこで初めて、前へ進む準備が整ったと感じたそうです。
章は、雨の日にできる最善のことは雨を降らせておくこと、というロングフェローの言葉で締めくくられます。自分を傷つけた人への感情を手放すのは、相手のためでなく、自分を解放するため。それが著者の主張です。
第4章 REST(休息)「『休み』で脳をリセットする」
眼科外科医のジェリー・スウェールは、両手に発疹が出ても、受診を先延ばしにしていました。ある日、車を運転しながら気づきます。時間は勝手に降ってこない。
彼は勤務時間を短くしてもらい、地域の教会の役職も降りました。後に続いて役職を降りる人も出たそうです。皮膚科を受診し、毎日自転車に乗り、夜はしっかり眠るようにしました。
その後、仕事仲間の医師が急に辞め、全患者を引き受けることになります。それでも無理はせず、できることとできないことを冷静に分けて、仕事を回しました。
野球のジョー・マドン監督は、シーズンオフに何もしない時間を存分に味わい、その大切さに気づきます。そして、選手が疲れる8月に、気楽にやっていい特別な1週間を設けました。
1日の仕事は、1日ですっかり疲れが取れる程度まで。
第4章の一文です。著者は、午前中に最優先の仕事をし、90分以内のセッション3回に分け、あいだに10〜15分の休憩を挟むリズムも勧めています。
アスリートのカトリン・ダヴィズドッティルは、2014年の大会の大事な場面で崩れ落ちました。
翌年、コーチのベン・バーガロンは、ひたすら頑張る練習に休息を組み込みます。2015年、彼女は優勝しました!睡眠の話も続きます。寝不足が続くと睡眠負債が積み重なり、自覚がなくても頭の働きが落ちる、と著者は研究を引いて書いています。
起業家を多く見てきたショーン・ワイズは、眠りの足りない経営者ほど気難しく、立ち直る力が落ちると気づきました。そこで、自分で睡眠の実験を始めます。
著者は、睡眠の質は深い眠りをどれだけ取れるかで決まると書き、ベッドに入る1時間前に電子機器を切る工夫にも触れます。
あ、そうだ。著者は昼寝も勧めています。
昼寝に罪悪感を覚えるのは、忙しさを良しとする社会の副産物だ、と著者は言います。4時間睡眠のナポレオンを見習えと言われたグラント将軍は、それなら昼間にたっぷり寝ていたはずだ、と返したそうです。
コツは、集中が切れる時間帯を選ぶ、暗く静かにする、アラームをかける、寝ている間はほかのことを考えない、の4点。どれも具体的です!
ダリが鍵を手に持ってまどろみ、落ちた音で目覚めて奇妙なアイデアを得た「鍵のついた睡眠」も紹介されます。
ここに並ぶ睡眠の話は、著者が本で紹介している研究と考え方です。体のことで気になる点は、専門家に確かめてください。
第5章 NOTICE(集中)「今、この瞬間にフォーカスする」
シャーロック・ホームズは『ボヘミアの醜聞』で、ワトソンの靴の傷から、最近ずぶ濡れになったことを言い当てます。そして、玄関から部屋までの階段が何段かを聞く。答えられないワトソンに、君は見ているが観察していない、と告げるんです。
難しいのは、聞くことではない。聞きながらその他のことを考えないことだ。
第5章の一文です。著者は頭の中のノイズを白内障にたとえ、放っておくと視界がどんどん曇っていく、と説明します。NBAのカリー選手は、テニスボールとバスケットボールを同時に扱う練習を、段階的に重ねています。
動く複数のボールを目で追う実験では、アスリートでない人も含め、全グループが練習で成績を上げました!練習すれば、ノイズを無視して大事なことに集中する力は身につく。著者はそう書いています。
人間関係でも同じです。心理学者のゴットマン夫妻は、相手に関心を求める合図を「つながりの呼びかけ」と呼びました。
応じ方は大きく、同調、抵抗、回避に分かれます。著者はこれを人間関係のテニスと呼びます。同調は、まっすぐ打ち返すプレイ。反対側へ打ち返して相手を走らせるのが抵抗で、回避はボールを無関係な方向へ飛ばしてしまいます。
困るのは回避だ、とされています。
ある少年は、医師にじっと向き合ってもらった体験から、医療の道を選びました。全身全霊でそこにいることは、相手に大きな影響を与える、と著者は言います。
悩みを打ち明けられたら、すぐ結論を出さない。クエーカーのクリアネス委員会では、誠実な質問だけをし、助言は禁じられています。
パーカー・パーマーの言う、一人ひとりの中にある内なる教師の声を、本人が聞けるようにするためです。
章の終わりには、5つの日課が紹介されます。場を準備する、体の力を抜く、頭を落ち着ける、心を解放する、感謝の呼吸。心を解放するところでは、嫌な人が浮かんだら、許します、とつぶやき、心の中の鎖を断ち切ります。
第2部は「エフォートレスな行動」。最小の動きで終わらせる
第2部の扉は、収穫逓減の話から始まります。

原稿書きのように、ある量を超えると、いくら時間を足しても出力が増えない。むしろ落ちていく。著者はこの頑張りすぎの状態を、オーバーエグザーションと呼びます。
仲良くなろうと必死になって、相手に引かれる。眠ろうと焦って、目が冴える。思い当たる場面はないでしょうか?本当にうまくいっているときは、頑張る必要がない。何も考えなくても体が動き、時間を忘れて没頭する。
このフローこそ成果のスイートスポットだ、と著者は言います! 東洋哲学の無為にも重ねています。
第6章 DEFINE(目標)「ゴールを明確にイメージする」
今から400年ほど前、スウェーデン国王グスタフ2世は、強い軍艦を求めていました。造船技師ヘンリック・ヒベルツゾンに建造を命じます。
問題は、国王が完成の姿を決めていなかったことです。
1628年、ヴァーサ号は未完成のまま出港。突風で傾き、そのまま沈みました。
仕事を難しくする確実な方法は、ゴールをあいまいにすること。著者はそう書きます。
重要なプロジェクトが終わらない原因のひとつは、いつまでも手を加えつづけることだ。
第6章の一文です。著者自身は、コストとリターンが逆転するちょうど手前を完成と定め、そこに着いたら潔く終える、と書いています。
終わりの姿を描くと、始めやすくもなります。大事な仕事に取りかかる前に、1分だけ目を閉じ、作業が終わったときの姿を思い浮かべる。
あいまいなゴールを、目に見える姿に言い換える表もあります。ポッドキャストを始めたい、が、1話録音してファイルをアップロードする、に変わるんです!
著者が使うのは「今日の完了」リスト。できたらいいことを並べるリストではありません。
全部終えたら、1日の終わりに満足できるか。それを基準に中身を選びます。話は人生全体にも広がります。生きているうちに持ち物を整理するスウェーデン式の「死の片づけ」から、人生の完了リストへ。
2度の卒中を経た著者の友人は、自伝を書くことと、自分の曲に語りを添えることに集中して生きているそうです。
第7章 START(発動)「はじめの一歩を身軽に踏みだす」
最初の一歩が遠すぎると感じるなら、一歩の大きさを見誤っている。もっと小さく分ければいい、と著者は言います。生産性の専門家エイプリル・ペリーが出会った女性は、部屋中に本があふれていました。本棚を注文すれば片づくのに、それができない。
壁を測る必要がある。でも、メジャーの場所が分からなかったんです!詰まっていたのは、メジャーを手に入れるという、見落とすほど小さな一歩でした。
こんまりの片づけは、一気に、短期に、完璧に。一方、佐々木典士さんは、最初の一歩を今すぐ捨てること、と定めます。
著者はそれに従って本を閉じ、インクのかすれたペンを1本捨てました。そこから勢いがつき、古い名刺や充電ケーブルの束まで手放していったそうです!
正直、ここに出てくる一歩は、拍子抜けするほど小さいです。
エリック・リースのMVPは、最小限の努力で顧客の反応を最大限に知るための版。エアビーアンドビーは、飾りのないサイトに部屋の写真を数枚載せるところから始めました。
著者は、シェイクスピアが小さいけれど激しいと描いたハーミアを思い出す、とも書いています。
正しい最初の一歩は、短い時間の強い集中、マイクロバーストを起こす。ガレージ掃除なら、まずほうきを見つける。新製品を考えるなら、まず紙とペンを用意する。
第8章 SIMPLIFY(削減)「手順を限界まで減らす」
1998年、ジェフ・ベゾスはペリ・ハートマン、シェル・カファンとのランチで言いました。注文から引っかかりをなくしたい。一度のクリックで済ませられないか。
ステップが増えるほど、顧客の気が変わる確率は上がるからです。
著者の息子は、ボーイスカウトの最高位イーグルスカウトに必要なレポートで止まっていました。ほかの家庭の立派な作品を見てハードルが上がり、2週間ほど進まなかったんです。
著者は問い直しました。この仕事を完了させるために、最低限必要な手順は何か?答えは、短い言葉を集めて印刷し、切ってのりで貼る。質問に答えるだけの簡潔なエッセイを書く。そして提出する。息子は期限の前に昇格できました!
いやー、この削り方は潔いです。必要最小限を見極めるのは、手を抜くことでも、品質を落とすことでもない。不要なステップは、ただ不要なだけ。著者はそう念を押します。
頑張りすぎて挫折するより、最低限やるべきことを終わらせよう。
第8章の一文です。著者には、頼まれたことだけをやって、いつも良い成績を取る幼なじみがいました。著者自身も、Xを頼まれたらYをやる必要はない、というルールを持っています。
IBMのルイス・ガースナーは、会議でスライドの説明が始まると、そっとプロジェクターを止め、仕事の話をしようと言いました。
スティーブ・ジョブズは、iDVDの複雑な案を前に、ホワイトボードに四角を一つ描いてみせます。ゼロから考える、という合図でした。
著者も、ポッドキャストのゲスト向けの長い説明書きをゼロから見直し、2ステップにまで減らしています!
章は、アジャイルソフトウェア開発宣言の原則で締めくくられます。やらないことを最大限に増やす技術としてのシンプルさが本質だ、というものです。
第9章 PROGRESS(前進)「よい失敗を積み重ねる」
1959年、実業家ヘンリー・クレーマーは、人力飛行機に賞金を出すクレーマー賞をつくりました。この目標は長いあいだ、優秀なチームを挫折させてきます。
マクレディのチームが作ったのは、壊してもすぐ直せて、作り直せる、不格好な機体でした。
短い期間に何度も飛んで経験を積み、8の字飛行に成功しました! 改良機では、イギリス海峡の横断にも成功します。優雅さや精巧さにこだわると、かえって進歩の邪魔になる。それが著者の読み取る教訓です。
「どんなに醜くても」いいから、手軽に失敗して修正できるようなモデルをたくさんつくろう。
第9章の一文です。ピクサーのエド・キャットムルも、どんな作品も最初は醜いと語り、ピクサーは監督の醜い赤ちゃんを守るためにある、とまで言います。
外国語を教える著者の友人は、1000個のビーズが入った袋を想像するよう勧めます。間違えるたびに1個出す。早くたくさん間違えるほど、上達も早い。
著者はオンライン講座で、準備なしにまず小テストを受けました。早く間違えて、分からない所だけに集中する。最短で合格できたそうです。
失敗は、小さく安いうちに。著者夫婦は子どもたちに、寄付用、貯金用、使う用のガラス瓶を渡しました。
息子は電動レーシングカーを買って、後悔します。本当はレゴの大きなセットが欲しかった。著者はこれを、学習サイズの失敗と呼びます。
リード・ホフマンは、速く動くためなら10〜20%の失敗率は問題ない、と言います。最初の製品が恥ずかしくないなら、リリースが遅すぎる、とも。
頭の中の厳しい批判から、自分の未完成品を守る。歩き始めた幼児に話しかけるように、自分に話しかける。で、最後はゼロドラフトです。下手でもいいから、とにかく何でも書く。誰にも見せない、バージョンゼロの下書きです。
書き始めれば、だんだんましなものができてくる。著者はそう書き、マヤ・アンジェロウやマーガレット・アトウッドの言葉を添えています。
第10章 PACE(上限)「早く着くために、ゆっくり進む」
南極点を目指したアムンセン隊は、毎日決めた距離だけ進みました。天気が良くても、その距離を超えません。一方のスコット隊は、天気の良い日に隊員を酷使しました。
アムンセン隊は南極点に着き、無事に帰路につきます。スコット隊は遅れて到達し、帰り道で全員が亡くなりました。
全力疾走の危うさは身近にもあります。週末のうちにビジネスプランを書き上げた著者の友人は、直後に燃えつき、数週間なにも手につきませんでした。
著者自身も若い頃、地元ヨークシャーのクロスカントリーで、計画を破って最初から飛び出しました。すぐに息が切れ、悔しさから、その競技をやめてしまったそうです。
多作なミュージシャンの友人は、本を書くとき、週に2本というペースを守りました。書きたくても、それ以上は書かない。9カ月後には、原稿を出版社へ送りました! 書いたり書かなかったりの著者は、まだ何も完成させられずにいたそうです。
小説家のリサ・ジュエルも、自分のペースを守ろう、と言います。トライアスロン出身のコーチは、決めた時刻になったら必ずオフィスを出ます。
著者の娘は鶏の世話を、数日分まとめてやるようにしました。そこへ急な暑さが来て水が足りなくなり、鶏が1羽死んでしまいます。
まとめて頑張っても、同じ結果になるとはかぎらない。予定はいつでも狂うものです。先の読めない状況は、VUCAと呼ばれます。そこで生まれたやり方が、これです。
そのひとつが「ゆっくりはスムーズで、スムーズは速い」というやり方だ。
第10章の一文です。熟練した兵士は、歩きと走りの中間のような足取りで進むといいます。著者が勧めるのは、上限と下限を決め、X以上Y以下の範囲に収めること。下限は意欲を保てる高さに、上限は疲れない低さにします。
エフォートレス思考の第3部「しくみ化」は、一度の努力を何度も効かせる
第3部の扉で、著者は成果を2種類に分けます。直線的な成果と、累積的な成果です。

時給で働く。一夜漬けで覚えて、すぐ忘れる。毎日、運動するかを悩み直す。これらは、努力した分だけの直線的な成果です。一方、本の印税、応用のきく基礎、一度だけの決断。こちらは一度の努力が何度も成果を生む、累積的な成果とされます。
著者の友人ジェシカ・ジャックリーは、東アフリカで魚を売るキャサリンと出会い、少額融資の仕組みKivaを共同で立ち上げました。返ってきたお金を、次の起業家にまた貸し出せる仕組みです。
著者はテコとして、学ぶ、教える、自動化する、信頼をつくる、問題を防ぐ、を挙げます。
でね、この5つのテコが、そのまま第11章から第15章になっています!ただしテコは、悪い評判や悪い習慣、採用の失敗も同じように増幅する。著者はそう注意を添えています。
第11章 LEARN(学習)「一生モノの知識を身につける」
ニュートンの『プリンキピア』には、自動車やジェット機の作り方は書いてありません。書いてあるのは、それらに応用できる原理です。
手軽な解決策は直線的な成果、原理原則は累積的な成果を生む。著者はそう対比します。
正しいことを一度だけ学ぶのは効率的だ。
第11章の一文です。編集者のピーター・カウフマンは、科学雑誌の巻末インタビューを読み込みました。学んだことを、宇宙の物質から生き物、人類の歴史まで分野ごとに整理し、そのすべてに通じる一貫した原理を探したんです。
著者は、妻を喜ばせたピザを繰り返したら通じなかった、という失敗も明かします。成功を繰り返すより、喜ばせる原則を探すべきだった、と。
イーロン・マスクは、知識を意味の木として捉え、枝葉の前に幹と大きな枝、つまり土台の原理を理解する、と語っています。
チャーリー・マンガーは、たくさんのことを知る狐のように、心理学や歴史や物理など分野をまたいで知恵を組み合わせてきました。良いアイデアは意外な組み合わせから生まれやすい、という研究も紹介されます。
読書は、この世でもっともレバレッジの高い活動だ、と著者は言います!
長く読まれてきた本を優先する。冊数を増やすためでなく、吸収するために読む。読み終えたら、自分の言葉で1ページにまとめ、エッセンスを抜き出す。
背面跳びのディック・フォスベリーは、1968年のオリンピックで、誰もやっていなかった跳び方を見せました。
みんながやることを上手にやるより、誰もやっていないことをやる。そうして得た独自の知識は評判になり、長くチャンスを呼ぶ。著者の場合、それが『エッセンシャル思考』でした。
第12章 LIFT(強化)「いちばんシンプルに伝える」
章には、作り方を知らなかった大勢のボランティアが、教え方を広げることで、短い期間に大量のマスクを作り上げた話が出てきます。
広く影響を与えたいとき、人に教えることはテコになる、という話です。
祖父が亡くなり、ニューヨークのアパートを整理した著者は、部屋に人生の手がかりがほとんど残っていないことに気づきます。
記憶は簡単に消える。だからストーリーで伝える。先祖の思い出を毎年語り合う家族や、2500年以上語り継がれるイソップの寓話が例に挙がります。
人に教えると、自分も効率よく学べる。著者は、読者の実践を聞いて、ホームオフィスを出るときに時刻を声に出す習慣を取り入れました。
セサミストリートの法則も紹介されます。ある大手ソフトウェア企業では、戦略をホワイトボード1枚に収まるまで単純化し、教え方まで含めて社内に広げました。
数週間で、どの国の誰が説明しても同じ説明になったそうです! 難しい言葉を使わず、復唱しやすいメッセージにする。P&GのA・G・ラフリーの考え方です。
第13章 AUTOMATE(自動化)「勝手に回る『しくみ』をつくる」
著者の隣人は膝の手術のあと、なかなか回復しませんでした。手術中のミスで、小さな器具が膝に残っていたんです。実は、理由は単純でした。記憶に頼っていたからです。
著者は、もっと注意していれば、と考える代わりに、注意する必要がなかったら、と逆から考えます。文明の進歩は、考えずに実行できる重要な作業を増やすことで実現される。ホワイトヘッドのこの言葉が、章の軸です。
1935年、ボーイングのモデル299は、飛行試験で墜落しました。経験豊富なパイロットが、操縦翼面のロック解除を忘れたためです。
そこで導入されたのが、チェックリスト。その後の試験は無事故で進み、機体は大量に発注されました。
チェックリストの優れた点は、考える作業が事前に完了することだ。
第13章の一文です。外科医アトゥール・ガワンデの論を引き、人がその場で呼び出せる記憶の量には限りがある、と著者は説明します。だから、記憶に頼らなくても回る形にしておく。会議の議題を書き出す、家事の当番表を作る。そんな手近な一歩から始めればいい、と。
リチャーズ夫妻は、ロッジを買うという一度の決断で、毎年の家族旅行の行き先決めを不要にしました。何世代にもわたって、家族がそこに集まっているそうです!
ジョシュア・ブラウダーは、交通違反の罰金への不服申し立てを自動化するサービスを作りました。エクスペディアは、旅程表の再送を頼む電話が多いことに気づき、顧客が自分で旅程を確かめられるようにしています。
ただし自動化は、無駄も固定します。解約し忘れた自動更新の定期購読が、その例です。
だから、重要なことはハイテクで手間なく、不要なことはローテクで手間がかかるように。健康診断の自動予約や、大切な人の誕生日のリマインダーなど、分野ごとの例も表にまとめられています。
第14章 TRUST(信頼)「不信のコストを削減する」
ウォーレン・バフェットは、ウォルマートの言うことを信頼して、通常の詳しい調査を省きました。そしてマクレーン社を短期間で買収します。
それは、信頼だ。信頼があれば、人々の調整にかかる労力が少なくてすむ。
第14章の一文です。関わる人が増えるほど、調整の手間は増える。信頼が低いと、監視し、締め切りを思い出させ、成果物をいちいち確かめることになります。
やがて、自分でやったほうが早いと感じ、何も任せられなくなる。
著者は信頼を、チームのエンジンオイルにたとえます。部品どうしの摩擦を減らし、なめらかに回し続ける潤滑油です。
自動車会社を経営するスティーブ・ホールは、会計の不一致に気づきながら、経理部長を雇い続けました。損失は年々膨らみ、彼は信頼を裏切られた後も雇い続けたことを悔やみます。
その後、彼はバフェットが信頼を測るのに使う基準で、採用を見直しました。何よりまず誠実さ、そのうえで知性と自発性を見る、という基準です。新しく採った人は会社に定着し、何度も昇進したそうです。
構造の話もあります。期待や役割があいまいな関係は、信頼が低くなりやすい。著者は自宅のリフォームで、契約書が届かないまま工事を進め、遅れと予算超過を招きました。
建設業界の団体LCIは、プロジェクト全体の成果で全員の報酬が決まる、ディールという契約を取り入れています。
結果、役割、ルール、リソース、評価。この5項目を書き出し、一緒に確かめるだけでも、信頼度の高い契約になる。著者はそう勧めます。
第15章 PREVENT(予防)「問題が起こる前に解決する」
1977年、ソマリアで病院の料理人をしていたアリ・マオ・マーランは、注射を嫌って予防接種を受けず、天然痘に感染しました。
大規模なワクチン接種で広がりは抑えられ、彼は自然に感染した最後の天然痘患者とされています。著者はこれを、一度の介入が長く続いた問題を終わらせた例として挙げます。
ジョンは2年間、毎日、閉まりにくい引き出しにイライラしていました。原因は、中で引っかかっていた鉛筆立て。直すのにかかったのは、ほんの2分でした!
著者はこれを、時間管理のロングテールと呼びます。
著者が勧めるのは、自分に問いかけることです。何度もイライラさせられている問題を思い浮かべ、放っておくと1年でどれだけの損になるかを見積もる。そのうえで、数分ですぐできる一歩を探します。狙いは、最小の時間で解ける最大のイライラを見つけることです。
会議にいつも遅れるクライアントは、毎晩、翌日の予定を確かめてリマインダーを設定するだけで、遅刻する人という評判を払いのけました。
悪の枝を叩く者は多いが、根を叩く者は少ない。ソローの言葉です。
病院では、心臓発作の前に出やすい小さな兆しと、専門チームを呼ぶ基準を決めておき、危険な状況を防いできました。
フランス国鉄SNCFは、新しい車両がホームに合わず、ホームを削る工事をすることになりました。原因は、一部のホームだけを測って、ほかも同じだと思い込んだことです。
2回測って1回切る。ひとつのミスはドミノのように連鎖するから、未然に防げば連鎖ごと防げる。著者はそう締めくくります。
エピローグ「エフォートレス思考を生きる」:重いほうか、軽いほうか
エピローグで、著者は家族の話に戻ります。

一家はのどかな田舎へ引っ越し、娘は自然の中で生き生きと過ごしていました。その娘がよくなること。それが一家のただひとつの望みでした。
道は二つあった、と著者は書きます。困難を重く受け止め、あらゆる方向から全力で戦うか。困難を軽くするか。親としての本能は、前者に傾きました。それでも一家は、後者を選びます。
だから「やらないこと」「できないこと」を決めた。
エピローグの一文です。いつまで続くか分からない戦いで、燃えつきることだけは避ける。無理のないペースで燃料をくべ続けるためだった、と著者は書いています。
一家は、シンプルで簡単なこと、自分たちで決められることに集中しました。今あるものに感謝すると、気持ちが軽くなっていったそうです。
泣いた日もありました。それでも、歌い、笑い、食べ、思い出をつくった。
治療が効いたかと思えば、病状がまた悪くなったこともあります。そのとき一家は、最初にエネルギーを使い果たしていませんでした。2年がたち、娘は少しずつ回復している、と著者は書きます。
人生の軌道は、一瞬で変わる。選ぶ瞬間、許す瞬間、過ちを認める瞬間、やり直す瞬間、愛を伝える瞬間。人生は思うほど困難でも複雑でもない。著者はそう書き、ロバート・フロストの詩で本を閉じます。
私の場合|手術と入院で、手放してよいことに気づいた
抱えていた仕事を、手放してよいと気づいたきっかけ。9月15日の問答で、私はこう答えています。「抱え込まず手放してよいことを手術や入院で物理的な強制断捨離で気づいた」
著者は、家族の闘病のさなかに、やらないことを自分たちで決めました。
私は、手術や入院による物理的な強制断捨離で、気づかされた側です。決めた人と、気づかされた人。入口は違います。重なるのは、抱え込まずに手放してよいことがある、という一点です。
『エフォートレス思考』で、仕事のやり方を一つ見直す
ここまでの章から、手元の仕事に使える問いを、一つの流れにまとめました。

用意するのは紙とペン。選ぶ仕事は一つで十分です。
- 何度も重く感じている仕事を一つ選ぶ(第15章の、何度もイライラさせる問題は何か)
- その仕事の横に「どうすれば簡単にできるだろう?」と書く(第1章)
- 1分だけ目を閉じ、その仕事が終わった姿を書く(第6章)
- 終わった姿までの、最低限必要なステップだけを書き出す(第8章)
- その中から、いちばん小さな最初の一歩を選ぶ(第7章)
あ、書く量は少なくて大丈夫です。ステップは、足す方向より、減らす方向で書きます。Xを頼まれたらYをやる必要はない。第8章のルールを横に置いておくと、削りやすくなります。
最初の一歩は、ペンを1本捨てるくらいの小ささでかまいません。メジャーを探す。ほうきを見つける。本に出てくる一歩は、どれも驚くほど小さいです!
終わった姿が書けなかったら、その仕事はヴァーサ号と同じく、ゴールがあいまいなのかもしれません。それが分かるのも、一つの見直しです。
一つ見直せたら、次の仕事でも同じ問いを使ってみる。問いを使い回すことは、第3部でいう累積的な成果の考え方にも通じます。
『エフォートレス思考』のよくある質問
読む前に気になりやすい点を、本の内容に沿って答えます。

『エッセンシャル思考』とは何が違いますか?
著者の整理では、エッセンシャル思考は「何を」やるか、エフォートレス思考は「どのように」やるかです。大事なことを選んだあと、その大事なことをいちばん簡単にやる方法を扱うのが本書です。前作を読んでいなくても、序文で前提は説明されています。
頑張らないのは、手抜きではありませんか?
著者は、力を抜いて成果を出すのは怠惰ではなくスマートな生き方だ、と書いています。第8章でも、必要最小限のステップを見極めるのは、手を抜くことでも品質を落とすことでもない、と念を押しています。外すのは、価値を生まない手順です。
忙しくて全部は読めません。どこから読めばいいですか?
本は、精神、行動、しくみ化の順に積み上がる作りで、著者は順に身につける前提で書いています。時間がなければ、序文で全体像をつかみ、重く感じている悩みに近い章へ。そのあと、本の順番に戻る読み方がおすすめです。
まとめ:エフォートレス思考は、頑張りを足さずにやり方を変える本
『エフォートレス思考』の芯は一つです。大事なことが多すぎて苦しいなら、足りないのはやる気でなく、やり方だということ。

第1部で頭の重荷を下ろす。第2部で、最小の動きで終わらせる。第3部で、一度の努力が何度も効くしくみにする。序文のフリースローと同じ順番です。
頑張りを足すのは、真面目な人ほど得意な手かもしれません。この本が差し出すのは、足す前にやり方を変えられないか、という問いです。
まずは重く感じている仕事を一つ。どうすれば簡単にできるか、と紙に書くところから始めてみませんか?
コラム|仕事を手放すのは、もっと遊ぶため
私の場合|目的もゴールもない鬼ごっこ
この本は、頑張りを減らして余裕をつくる本です。では、その余裕に何を置くのか。私は問答で「子供のようにワクワク夢中に遊ぶ時間のためにAIを使って仕事を手放したい」と答え、「もっと遊びたい」と続けています。

この答えは、AIに任せる目的は、子供のように夢中に遊ぶ時間を持つことという記事にまとめました。
記事には、同じ問答で答えた、この一文も載せています。
ただ鬼ごっこするだけ目的もゴールもない
鬼ごっこに、目的もゴールも置いていない。ただ鬼ごっこをする。答えとして書いたのは、それだけです。
でね、二つの答えを並べてみます。仕事を手放したいのは、遊ぶ時間のため。そして、その遊びのほうには、何かのための理由が付いていません。手放すほうには理由があっても、遊ぶほうに理由は書いていません。
本を読み終えると、空いた余裕を、また次の成果へ回したくなる人もいるかもしれません。ただ、私がその余裕に置きたいのは遊ぶ時間で、その遊びを何かの手段にはしていません。
目的もゴールもない時間を、そのまま置いておく。仕事を手放した先に置くのは、そういう時間です。「もっと遊びたい」は、仕事を手放したいという答えのすぐ後ろに続けた言葉です。いやー、もっと遊びたいんです!
分身AIと過ごした最初の100日の記録は、分身AIと歩んだ100日の全まとめにあります。分身AIについては、分身AI.comにまとめています。
