NotebookLMに全部詰め込むな|知識を育てる「小分け」設計とObsidian連携の現在地

この記事の3行まとめ
- 先日書いた「Gemini Notebook(旧NotebookLM)が手を動かすAIになった」話の続編・運用編
- Obsidianとの連携はGoogle公式機能ではなく、Chrome拡張を使った非公式のワークアラウンドという現在地
- 本題は新機能ではなく「1つのノートブックに詰め込みすぎない」という知識の小分け設計の話
先週の続き ——「手を動かすAI」になった後に残る宿題
先日、Gemini Notebook(旧NotebookLM)が「読むAI」から「手を動かすAI」に変わった話を書きました。Deep ResearchとSource Discoveryで、リサーチの初動がまるごと自動化される——という内容だった。あの記事の主語は「新機能」でした。
で、今日はその続き。主語を変えます。自分の知識をどう小分けして育てるか——そこが今日の本題なんですよね。
きっかけは、note で見つけた1本の記事でした。佐藤賢治さんの「NotebookLMがエージェント化した——Obsidian連携で情報収集が変わった話」。実際に使い込んで、普段のノートアプリ(Obsidian)との行き来がどう変わったかを書いている記事なんですよね。冒頭のこの一文が、私の胸のあたりを刺してきました。
佐藤賢治さん(note)「情報収集の悩みは、いつも同じところに行き着きます。ソースが増えるほど整理が追いつかず、結局どこに何を書いたか分からなくなる。」
ちなみに佐藤さんも、前編で私が紹介した新機能をきっちり実地で使い倒していました。
佐藤賢治さん(note)「Source Discoveryは、もう少し軽量な機能です。トピックを説明するだけで、数百件の候補の中から関連性の高いソースを最大10件、注釈付きで提示してくれます。ワンクリックでノートブックに追加できるので、リサーチの初動が驚くほど速くなりました。」
分かる…。冷蔵庫と同じです。買ってきた食材を全部いちばん大きい棚に放り込むと、奥の方は存在ごと忘れる。AIに読ませる資料も、まったく同じことが起きる。
AIが賢くなればなるほど、こっちの宿題は「材料の置き方」に移っていく。これ、地味に大事。
Obsidian連携は公式機能じゃない ―― 非公式の2ステップ
まず、いちばん大事な前提から。ここを飛ばして紹介すると事故になるので、佐藤さん自身の断り書きをそのまま引きます。
佐藤賢治さん(note)「NotebookLMとObsidianの連携は、Google公式の機能ではありません。今回紹介するのは、サードパーティのChrome拡張機能を使った非公式のワークアラウンドです。」
正直、ここが一番のニュースだと思っています。「連携できるらしい」という噂だけが先に走って、公式機能だと勘違いしたまま業務に組み込むのがいちばん危ない。厨房でいうと、正規の納入業者じゃない裏ルートの仕入れ先みたいなもの。使えるけど、いつ止まってもおかしくない。
往路:NotebookLM → Obsidian
従来は、NotebookLMで作ったノートから必要な部分を手でコピーして、Obsidian側に貼って整形し直す。地味に時間を食うし、書式が崩れることもよくあったそうです。それが拡張機能を入れると、こう変わる。
佐藤賢治さん(note)「NotebookLMのノートをMarkdown形式でエクスポートし、Obsidianのvaultフォルダにドラッグ&ドロップするだけで済むようになりました。見出し構造がある程度保持されたまま取り込めるので、Obsidian側でリンクやタグを足すだけで自分のVaultに馴染ませられます。」
エクスポート、そしてドラッグ&ドロップ。工程はこの2つだけ。作った料理をタッパーに移して冷蔵庫に入れる、あの動きに近いです。完全自動じゃないけど、手で盛り付け直す手間は消えるっぽい。
復路:Obsidian → NotebookLM
逆方向、つまり自分の手元のメモをAIに読ませたい時はどうするか。Obsidianのエクスポート系プラグインで複数ノートを1つのPDFにまとめて、それをNotebookLMのソースとしてアップロードするという手順が紹介されていました。ファイルを1本に束ねてから渡す、という発想です。
佐藤賢治さん(note)「双方向のやり取りが非公式の工夫でどうにか成立している、というのが2026年7月時点の実情です。」
「どうにか成立している」。この温度感、めちゃくちゃ誠実だと思いました。断言しない人の情報のほうが、あとで転ばない。
往路は「作った惣菜をタッパーに移して冷蔵庫へ」、復路は「バラバラの食材を1つの鍋に集めてから火にかける」。器を揃えてから運ぶ、それだけの話なんですよね。
詰め込むほど鈍る ―― 「詰め込み型」と「小分け型」の比較
ここからが、私がいちばん持ち帰りたかった話です。元記事の後半に、こんな注意書きがありました。
佐藤賢治さん(note)「1つのノートブックにソースを詰め込みすぎると、AIが適切な情報を見つけにくくなり、回答の精度が落ちるという実利用者の報告があることです。トピックごとに小さなノートブックへ分割しておくのが、地味ですが効果的な対策です。」
いやー、これ、AIを使い込んだ人ほど刺さるやつだと思う。私たちはつい「全部入れておけばAIが勝手に選んでくれる」と考えがち。でも実際は逆で、鍋にぜんぶ放り込んだ闇鍋からは、狙った味は出てこない。出汁の輪郭がぼやけるだけ。
で、ここで一回、両者を並べて見ておきます。
| 詰め込み型ノートブック | 小分け型ノートブック | |
|---|---|---|
| 入れ方 | 関係ありそうな資料を1箇所に全部 | 1トピック=1ノートブックで分ける |
| AIの回答 | 関係ない資料に引っぱられてぼやける | 参照範囲が狭いぶん的が絞られる |
| 探し物 | 「どこに入れたっけ」が発生する | ノートブック名を見れば当たりがつく |
| 更新のしやすさ | 古い資料が混ざったまま残りやすい | テーマ単位で捨てる・差し替えができる |
| 人に渡す時 | 丸ごとしか渡せない | そのテーマだけ切り出して渡せる |
| 厨房でいうと | 特大寸胴で闇鍋 | 小鍋を並べて仕込み分け |
右側が優れている理由は、AIが賢いか賢くないかじゃない。探す範囲が狭いほど、当たりを引く確率が上がるという、それだけの話です。人間の棚と何も変わらない。
小分けの発想は、うちの「5層21スキル」とまったく同じだった
この「小分け」という言葉を読んだ瞬間、私は別の話を思い出しました。以前ai-kidou.jpで紹介した、デザイナーのKAWAIさんがClaude Codeで実働8時間を60分まで縮めた「5層21スキル」の構造です。実に93%の削減。しかも魔法の1本のスキルでそうなったわけじゃない。
KAWAIさんの5層は、こう並んでいます。厨房に置き換えるとスッと入る。
| 層 | 担当していること | お店でいうと |
|---|---|---|
| 第1層:調査 | 情報を集めて材料にする | 仕入れ |
| 第2層:制作 | 記事・投稿・図・スライドを作る | 調理 |
| 第3層:品質管理 | 事実確認とデザインの採点 | 味見 |
| 第4層:オペレーション | 秘書・経理・連絡・セミナー運営 | 配膳とレジ |
| 第5層:分析 | 今日と今週を振り返って次に活かす | 閉店後の振り返り |
1つでも欠けたら、お店は回らない。逆に言うと、役割を5つに割ったから回ったわけです。「万能な1つ」を作ろうとしなかったのが勝因なんですよね。
ノートブックの話とまったく同じ構造だと思いませんか。1つに詰め込むほど鈍る、割るほど効く。順番が逆なんだよね。
私自身、複数のマシンで動いているAIエージェントを1枚のダッシュボードで見渡す運用をしています。外出先からでも、今どれが動いていて、どれが止まって私の判断を待っているのかが分かる(これはAGI Cockpitで複数ツールを試した記事でも触れました)。あれも結局、1つの巨大なAIに全部やらせず、小分けにして並べたから見渡せているだけ。まな板を1枚から4枚に増やしたようなものです。
AI氣道「Gemini Notebookは『読むAI』から『手を動かすAI』へ」より「『企業のデータがMOATになる』という主張は、半分正しく、半分解像度が足りない。社内のノートやログは、存在するだけでは未精製の原油に近い。整形・統合され、必要な場面でAIに供給され、評価・更新されるループがあって初めて知能に変わる。」
先週の私はこう書いていました。で、今週の答えがこれ。「整形」の中身は、小分けだった。データを持っているだけでは資産にならない、というのは知識創造理論を読み直した記事でも同じ結論に着地しています。
正直な現在地 ―― 私がまだ試していないことと、データの扱い
ここは正直に書きます。私自身は、まだこのChrome拡張を自分の環境に入れていません。元記事の手順を読んで「これはうちのやり方と同じ思想だ」と膝を打った、いまはその段階。
理由は2つ。
1つは、非公式のワークアラウンドだから。拡張機能はGoogle側の仕様変更で、ある日ふっと動かなくなることがある。仕入れルートが1本しかない厨房は、その1本が止まった日に店が開かない。だから業務の本線には、まだ置けない。
もう1つは、私のメモの本体がObsidianじゃないから。うちは自前のナレッジ置き場で回していて、そっちにAIが直接手を入れる形にしています。ぶっちゃけ、拡張機能を入れる前に整理すべきものが手元に山ほどある…。道具より先に、棚——それが私の現在地。
それから、多くの人が気にするデータの扱いについても、元記事がきちんと触れていました。
佐藤賢治さん(note)「Googleはアップロード内容やクエリ、AIの応答について、人間のレビュアーがレビューすることはなく、フィードバックを送った場合を除いてAIモデルの直接的な学習にも使わないと公式に説明しています。フィードバックを送った場合のみ、関連データが最大3年保持されます。」
「フィードバックを送った場合のみ」という条件つきなのがポイントです。ここを読み飛ばすと、社内資料の扱いを誤る。設定まわりの考え方は、Googleのデータ設定を親子で見直したLIVEの記事にもまとめてあるので、あわせてどうぞ。
味見していないものを、お客さんに出すわけにはいかない。だから今日の記事は「私が試した結果」ではなく「私が採用した考え方」として置いておきます。
非エンジニアにも関係ある話 ―― 溜め込まない、という普遍のコツ
ここまで読んで「うちはObsidianもNotebookLMも使ってないし」と思った方へ。この話、道具の話じゃないんです。
思い当たりませんか。共有フォルダの「一時保管」に3年分たまっている。LINEのやり取りに大事な決定が埋もれている。ノートアプリの「とりあえず」フォルダが肥大化している…。全部、同じ現象です。
で、AIを入れると何が起きるか。散らかったままの棚を、そのままAIに渡すことになる。AIは散らかりを直してはくれない。散らかりごと読んで、平均的な答えを返してくるだけ。
| 溜め込み型の職場 | 小分け型の職場 | |
|---|---|---|
| 資料の置き方 | 共有フォルダに何でも入れる | 案件・テーマ単位で箱を分ける |
| 探す時間 | 「たしかどこかにあったはず」から始まる | 箱の名前で当たりがつく |
| 引き継ぎ | 担当者の記憶が頼り | 箱ごと渡せば伝わる |
| AIに渡した時 | 古い情報が混ざった答えが返る | その箱の中だけで答えが返る |
| 捨てる判断 | 怖くて誰も捨てられない | 箱単位で古いものを畳める |
非エンジニアの経営者にとっての実務的な教訓は、たぶんこの一行です。「新しいAIを入れる前に、いま持っている情報を箱に分ける」。順番はこっちが先。AIに全部やらせる前に役割を渡そう、という「委ねるOS」の記事でも書いた通り、渡し方の設計が9割なんですよね。
AIの精度が出ない時、疑うべきはAIの性能じゃなくて「渡した材料の量と混ざり具合」。まずは分ける。話はそれから。
今日から始められること
大掛かりな導入は要りません。手を動かす順に3つだけ、置いておくね。
① 1つのノートブック=1テーマにする
すでにNotebookLM(Gemini Notebook)を使っているなら、まず今いちばん資料が多いノートブックを開いて、テーマが2つ以上混ざっていないか見てください。混ざっていたら割る。それだけで回答の当たり方が変わります。
② 「出口」を決めてから資料を入れる
何を作りたいのか(提案書なのか、社内マニュアルなのか)を先に決める。出口が決まると、入れなくていい資料が見えてきます。買い物リストを書いてからスーパーに行くのと同じ。
③ 成果物は自分の手元にも落とす
AIの中だけに置きっぱなしにしない。Markdownでもテキストでも、自分の棚にコピーを1つ置く。サービスが変わっても、自分の資産は残ります。
③がいちばん地味で、いちばん効くやつ。以前、自分のAIの使い方を実際に計測してみた記事を書いたことがあるんですが、あの時も結論は同じでした。感覚でやっているうちは、良くも悪くも再現できない。手元に残すと、比べられるようになる。
ひろくんのコラム:道具を増やす前に、棚を減らした話
私は新しい道具が出ると、まず触りたくなるタイプです。今回も最初は「拡張機能、入れてみるか」と手が動きかけた。でね、その前に自分のナレッジ置き場を開いてみたんです。
……ひどかった。「あとで整理する」フォルダに、あとで整理されなかったものが積み上がっていた。
そこで気づいたのは、連携が欲しかったんじゃなくて片付いた棚が欲しかったということ。連携はあくまで、棚と棚をつなぐ通路です。通路を先に作っても、両側が散らかっていたら意味がない。
AIの新機能が出るたびに私たちは「何ができるようになったか」を追いかけます。でも本当に効いたのは、いつも「何を渡すか」を整えた時だった。今回のニュースからいちばん持ち帰りたかったのは、Chrome拡張の名前じゃなくてそっちです。派手さはゼロ。でも、これが効く。
よくある質問
- Q1. NotebookLMとObsidianは、公式に連携できるようになったんですか?
- いいえ。2026年8月時点で、これはGoogle公式の機能ではありません。サードパーティのChrome拡張機能を使った非公式のワークアラウンドです。業務の本線に組み込む場合は、拡張機能が止まった時の代替手順(手動でのエクスポート)を必ず用意しておいてください。
- Q2. Obsidianを使っていません。それでも役に立つ話ですか?
- はい。この記事の本題は特定のアプリではなく「1箇所に詰め込みすぎない」という設計の話です。共有フォルダ、ノートアプリ、チャットの履歴——どこでも同じことが起きます。テーマ単位で箱を分けるところから始められます。
- Q3. ノートブックはどのくらい細かく分ければいいですか?
- 目安は「そのノートブックに投げる質問が、1種類で言い切れるか」です。「A社の提案書を作る」と「業界の市場調査をする」が同居していたら、それは2つに割るサインだと考えています。数値の上限が公式に決まっているわけではないので、回答がぼやけてきたら割る、という運用で十分です。
- Q4. アップロードした社内資料は、AIの学習に使われますか?
- 元記事によると、Googleはアップロード内容・クエリ・AIの応答について人間のレビュアーによるレビューは行わず、フィードバックを送った場合を除いてモデルの直接的な学習にも使わないと説明しています。フィードバックを送った場合のみ、関連データが最大3年保持されます。ただし機密度の高い資料を扱う前には、必ずご自身で最新の公式説明を確認してください。
- Q5. まず何から手をつけるのが一番いいですか?
- いま一番よく使っているノートブック(またはフォルダ)を1つ開いて、テーマが混ざっていないか見るところからです。混ざっていたら分ける。新しいツールの導入より、この5分のほうが効きます。
まとめ
先週は「Gemini Notebookが手を動かすAIになった」という話でした。今週はその続きで、手を動かしてもらうために、こちらが材料をどう並べるかという話。
Obsidianとの連携は、まだ非公式です。エクスポートしてドラッグ&ドロップ、逆はPDFに束ねてアップロード。工夫でどうにか成立している、という現在地。これは正直に共有しておきたかった。
そして本命は連携じゃなくて、小分けでした。1つのノートブックに詰め込むほど回答は鈍る。5層に割ったから実働8時間が60分になった。まな板は1枚より4枚。全部同じことを言っています。
新しい機能のニュースは、これからも週に何本も流れてくる。そのたびに追いかけるのもいい。でも、いちばん効くのは今日、自分の棚を1つ分けることだったりします。
まずは、一番散らかっている箱を1つ。そこからで大丈夫です。
今回の元ネタ。非公式のObsidian連携ワークフローとデータ取り扱いの整理
この記事の前編。Deep Research・Source Discoveryのアップデート解説
「小分けにするほど回る」を実証した5層の構造
複数のAIを1枚のダッシュボードで見渡す運用の話
アップロードするデータの扱いを確認したい人向け
データを持つだけでは資産にならない、という背景の話
渡し方の設計が結果を決めるという話
感覚でやらず、手元に残して比べる話