AI仕事術

define-goal×『ザ・ゴール』でAIチームを測ったら、私の思い込みが2回死んだ話

2026.08.18

家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。

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3行でわかるポイント

  1. AIが走り出さなかった——曖昧な一言を投げたら、質問を1つ返してきて止まった
  2. 詰まってる場所を勘で答えて2回外した——数えたら、私を待ってるタスクは1件だけだった
  3. 鍋に火はつけたのにタイマーをかけてなかった——停止条件を数字で入れてなくて、907万トークンが焦げた
記事全体の流れ:define-goalを走らせる→ザ・ゴールで測る→思い込みが2回外れる→3+2問

目次

  1. そもそも『ザ・ゴール』とdefine-goalって何?
  2. define-goalを自分のAIチームで本当に走らせた
  3. 走らせたら、AIは走り出さなかった。1問だけ返ってきた
  4. 『ザ・ゴール』の目で自分のAIチームを見たら、工場が見えた
  5. 思い込みが死んだ①「詰まってるのは私の味見だ」
  6. 思い込みが死んだ②「同じ名前だから同じ仕事だろ」
  7. 停止条件を「数字」で入れてなかった代償
  8. 明日から使う「3+2問」

前回、Codexのdefine-goalスキルの記事を書いた。AIに頼む前に、3つの質問を自分で埋めておこう、という話だったね。

①何ができたら「終わり」?

②それをどう確認する?

③どこまでやって、どこでやめる?

で、あの記事を書いたあと、ずっと引っかかってたことがある。

私、あれ紙の上で説明しただけなんだよね。スキル本体は動かしてない。……それってどうなの、と。

だから今回は本当にスキルを入れて、自分のAIチームで走らせた。ついでに『ザ・ゴール』——エリヤフ・ゴールドラットの、あの工場の小説ね——の目で自分のAIチームを見てみた。

走らせたら、私の思い込みが2回続けて死んだ。その話をそのまま書くね。

SECTION 01

そもそも『ザ・ゴール』とdefine-goalって何?

define-goalは1つの仕事の設計図、『ザ・ゴール』は工場ぜんぶの詰まりを見る道具、という対比の図解

先に、この2つを知らない人向けに短く説明しておくね。名前は似てないけど、今回はこの2つを組み合わせたのがミソだから。

define-goal ── 1つの仕事の「設計図」を先に描かせる道具

OpenAIがCodex向けに公式で配ってるスキル。やることは1つで、作業を始める前に4つの欄を埋めさせる

①具体的な成果 — 何が真になれば達成か、一文で

②検証方法 — 完了をどう確認するか(テスト・数値・件数)

③スコープ内 — 今回やること

④スコープ外・停止条件 — ここまで、と線を引く場所

面白いのが、このスキルは「がんばる」系のゴールを名指しで却下するってこと。原文にこう書いてある。

define-goal 原文

「進める」「調べ続ける」「改善する」「Xに取り組む」みたいな活動ゴールは、検証できる成果に研ぎ直さない限り却下せよ

出典: openai/skills — define-goal SKILL.md

……ぐさっとくるよね。私が普段AIに投げてる指示、だいたいこれだもん。

『ザ・ゴール』 ── 会社全体の「どこが詰まってるか」を見る道具

エリヤフ・ゴールドラットの本(三本木亮さん訳・ダイヤモンド社・日本語版は2001年5月)。ビジネス書なのに小説で、潰れかけの工場を任された工場長アレックスが立て直していく話として進む。

中身は制約理論(TOC)。ざっくり言うとこの3つ。

1. ゴールは1つだけ — 企業のゴールは「お金を儲けること」。それ以外は全部そのための手段

2. 測る物差しは3つ — スループット(売れてお金になる速度)/在庫(途中で止まってるもの)/業務費用(在庫をお金に変えるために使うカネ)

3. 一番詰まってる工程がすべてを決める — そこ以外を速くしても、全体は1ミリも速くならない

3つめが本の核心でね。工場の各工程がどれだけ優秀でも、一番遅い1箇所より速くは流れない。だからそこを見つけて、そこだけ手当てする

で、なんで2つ組み合わせたのか

役割が違うんだよ。

define-goal『ザ・ゴール』
見てるもの1つの仕事全体の流れ
問いこの仕事の終わりはどこ?いま一番詰まってるのはどこ?
強い場面AIに渡す前の設計そもそも何をやるべきかの判断
抜けやすい点1件ずつ100点でも全体は詰まる個別の仕事は決められない

虫めがねと、工場の俯瞰図。近くを見る道具と、全体を見る道具。

で、私は虫めがねだけ持って「よし、ゴール定義バッチリ」ってやってた。……そこで何が起きたかが、この先の話。

SECTION 02

define-goalを自分のAIチームで本当に走らせた

公式スキルdefine-goalに、わざと曖昧な一言を投げた場面の図解

define-goalはOpenAIが公式に配ってるスキルで、openai/skills というリポジトリの中に入ってる。落としてきて、うちのCodexのスキルフォルダに置いた。それだけ。5分もかからない。

で、わざと最悪に曖昧な一言を投げてみた。

私がAIに投げた一言

味見待ちのタスクが溜まってるのなんとかしたい

これ、define-goalの原文が名指しで却下してる「活動ゴール」そのもの。原文にはこう書いてある。

define-goal 原文(OpenAI公式スキル)

Reject pure activity goals such as "make progress," "keep investigating," "improve things," or "work on X" unless they are sharpened into a verifiable outcome.
(「進める」「調べ続ける」「改善する」みたいな活動ゴールは、検証できる成果に研ぎ直さない限り却下せよ)

出典: openai/skills — define-goal SKILL.md

普段のAIなら、ここで元気よく走り出しちゃう。「はい!整理します!」って。

SECTION 03

走らせたら、AIは走り出さなかった。1問だけ返ってきた

AIが走り出さず、確認の質問を1つだけ返してきた場面の図解

走らせたら、結果はこうだった。AIは動かなかった。

まず今あるゴールを確認して、そのあとゴールを作らずに止まった。返ってきたのは質問1つだけ。

A: 本当に人間の判断が必要なものだけをゼロにするのか

B: 画面に出ている96件を全部ゼロにするのか

母数が変わると成果も検証条件も変わるから、そこを決めてからじゃないとゴールを作れない——という理由つきで。

いやー、これは正直うなった。

しかも検証方法が具体的だった。「私が読んで違和感がないか」みたいなふわっとしたやつじゃなくて、実際に叩けるコマンドと「未分類0件・誤分類0件」という数字。

料理に例えると、こういうこと。「美味しく作って」って言われた時に、鍋に火をつける前に「何人分? 辛さは? 完成って何分後?」って聞き返してくるコックさん。うるさいようだけど、作り直しがゼロになる。

SECTION 04

『ザ・ゴール』の目で自分のAIチームを見たら、工場が見えた

全工程フル稼働なのに仕掛在庫が山積みで出荷が増えない工場の図解

ここからが本題。

『ザ・ゴール』は、潰れかけの工場の話。主人公のアレックスは、ロボットを入れて各工程の効率を上げた。データ上はどの工程も改善してる。なのに——会社は1円も儲かってない。

理由はシンプルで、部分最適の総和は、全体最適にならないから。各工程が全力で作るほど、途中の在庫が積み上がるだけ。

で、うちのAIチームを同じ目で測ったら、こうなった。実際に数えたのがこれ。

見えるもの工場の言葉うちの実測
全工程が稼働ロボットは動いてる動いてるタスク86件
仕掛品が山積み在庫未処理の画面表示 96件
出荷が増えないスループット公開・納品はこの山と連動してない

……同じ絵だった。AIが全力で下書きを作れば作るほど、公開されないものが積み上がる。

『ザ・ゴール』にはハイキングの話も出てくる。隊列で一番歩くのが遅い子——ハービーっていう男の子——の後ろに、列がどんどん詰まる。ハービー以外を速くしても、隊列は1ミリも速くならない。

じゃあ、うちのハービーは誰か。

SECTION 05

思い込みが死んだ①「詰まってるのは私の味見だ」

詰まりの原因は自分だと思い込んでいたが、実測では待ちが1件だけだった対比図

私は即答した。「そりゃ私の味見でしょ」って。AIが作って、私が見て、私がOKを出す。私が遅いから溜まってる。そう思ってた。

AI秘書の凛ちゃんも同じことを言った。「79件がひろくん待ちです」と。

……で、数えたら違った。

「ひろくんの回答待ち」の印がついていたタスクは、その時点で1件。

残りの81件は「ターンが終わって、誰も待ってない」だけ。待ち行列じゃなくて、置きっぱなしの山。工場で言うと、注文待ちの棚じゃなくて、誰も引き取りに来ない完成品置き場だったわけ。

ぶっちゃけ、ここでちょっとゾッとした。私は「自分がボトルネックだ」と思って自分を責めてたんだけど、実際は誰も私に聞いてなかった

SECTION 06

思い込みが死んだ②「同じ名前だから同じ仕事だろ」

同じ名前のタスク12件の中身が全部違っていたことを示す図解

次にAI秘書の凛ちゃんが持ってきたのが、「同じ名前のタスクが12件も重複してるので、まとめて閉じましょう」という提案だった。

私はこう返した。

そうやって適当にやるからダメなんだろ オートラン全部中身一緒なんかよ なめんな
まず見ろ

タスク名が同じでも、扱ってる中身は全部違うに決まってる。ブックマークから記事を作る自動処理が12件走ってたら、それは12本の別々の記事なんだよ。名前でまとめて「重複」って呼ぶな、と。

で、1件ずつ全部開いて中身を読ませた。28件。

閉じていいのは16件。12件には宿題が残ってた。43%外してた。

中身も、見事にバラバラだった。同じ名前のタスクなのに、片方は3本の記事を公開まで終わらせてて、もう片方は新規ゼロで提案を1件出しただけ。別の1件は、私が「これ動画にして」って答えたのに1ターンも返してない放置。さらに別の1件は、誰も公開操作してないのに記事が2本、勝手に公開されてたという調査中の案件だった。

もしまとめて閉じてたら、生きてる仕事を12件、埋めてたことになる。

しかも1件は、翌日15時に開催する体験会の進行台本だった。それがチャットの中にしか残ってない状態。……危なかった。

SECTION 07

停止条件を「数字」で入れてなかった代償

停止条件を数字で入れず907万トークンが焦げたことを示す、鍋とタイマーの図解

もうひとつ、痛いのが出てきた。

うちのAIには、ゴールを登録する仕組みがちゃんとある。しかも「このゴールは最大◯◯トークンまで」っていう上限を入れる欄が最初から付いてる。

登録済みのゴール60件を数えた。上限が入っていたゴール——0件。

1回も使ってなかった。

結果どうなったか。目的を果たせないまま止まった「blocked」のゴールが5本あって、その5本が合計で907万トークンを焼いてた。一番でかいのは1本で354万トークン。

前回の記事で、私は「③どこまでやって、どこでやめる?」ってちゃんと書いてる。書いてるんだけど、言葉で書いてただけで、数字では入れてなかった。鍋に火はつけたけど、タイマーはかけてなかった。そういうこと。

SECTION 08

明日から使う「3+2問」

前回の3問の頭に、制約を特定する2問を足した図解

というわけで、前回の3問はそのままでいい。頭に2問足すだけ。

0-a. いま一番詰まってるのはどこ?(ハービーは誰?)

これは勘で答えちゃダメ。数える。 未処理が何件、そのうち本当に自分の返事を待ってるのは何件。私はここを勘で答えて、2回外した。

0-b. これはそのハービーを助ける? 助けないならやらない

詰まってる場所の手前を速くする施策は、在庫を増やすだけ。着手前に却下していい。

そのうえで、

前回の3問今回足したもの
①何ができたら終わり?そのまま
②それをどう確認する?公開できた数・入金・浮いた時間で測る
③どこまでやってどこでやめる?待ち行列が何件を超えたら止める

②がポイントでね。「完成した証明」で終わらせないこと。「儲けに効いた証明」まで見る。下書きが100点でも、公開されてなければ効きはゼロなんだよ。

あ、そうそう。③の「何件を超えたら止める」は、『ザ・ゴール』でいうロープ。先頭が勝手に走り出さないように、前工程と後工程を綱で結んでおく発想ね。うちの場合、未処理が一定数を超えたら新しい自動処理を起動しない、というブレーキになる。

FAQ

よくある質問

Q1. define-goalはClaude Codeでも使えるの?
define-goalはOpenAI Codex向けの公式スキルだから、そのままでは別ツールに入らない。ただ「成果・検証方法・スコープ・停止条件を先に言葉にする」という考え方自体は、どのAIでも使えるよ。私は今回、その考え方に『ザ・ゴール』の「制約を先に名指しする」を足した。
Q2. 「詰まってる場所を数える」って、具体的に何を数えるの?
一番簡単なのは3つ。①未処理・未返信の件数 ②そのうち「本当にあなたの判断待ち」の件数 ③今週、実際に世に出た数(公開・納品・請求)。①が増えて③が増えてないなら、それは在庫が積んでるだけ。
Q3. AIを増やせば速くなるんじゃないの?
詰まってる場所がAI側なら速くなる。でも詰まってるのが「人の確認」や「完了させる工程」なら、AIを増やしても在庫が増えるだけなんだよね。ここは『ザ・ゴール』が一番きつく言ってるところ。
Q4. 一括処理って、そもそもやっちゃダメ?
ダメじゃない。ただ「まとめていい根拠」を実測で出せる時だけ。名前が同じ、種類が同じ、というのは根拠にならない——というのを今回、私は身をもって学んだ。

まとめ

前回の記事で私は「AIに頼む前に成功の形を決めよう」と書いた。それは今も正しいと思ってる。

でも足りなかった。その前に「今どこが詰まってるか」を数える、が抜けてた。

数えないで詰まりを決めつけると、こうなる。私は「自分の確認が遅いせいだ」と思い込んで、実際は誰も自分を待ってなかった。AI秘書は「名前が同じだから同じ仕事」と決めつけて、43%外した。

どっちも、測ったら一瞬で分かることだったんだよね。数えるのは1分もかからない。

AIに任せる範囲が広がるほど、自分の目が届かない場所が増える。だからこそ、指示の上手さより先に「数える習慣」なんだと思う。まず1回、未処理の件数を数えてみてほしい。そこから見える景色が、たぶん想像とけっこう違うから。

厨房のコックは増えたのにホールに運ぶ人がいない、出口不足の料理メタファー図解

見張り役を増やしても、出口が無ければ意味がなかった

今回いちばん効いたのは、AIが賢くなったことじゃない。私が「数えてない」と分かったことだった。数える前の私は、詰まりの原因を自分の性格みたいに語ってたんだよね。私が慎重だから、私が忙しいから、私が全部見たがるから。……全部、思い込みだった。

で、面白いのがここでね。うちのAI秘書は毎日ちゃんと報告を上げてくる。上げてくるんだけど、その報告に「残件0・対応なし」と書いてあっても、その仕事は画面に残り続けてた。誰も閉じる係じゃなかったから。見張り役が止まっていることに、その見張り役は気づけなかった話と、まったく同じ形だった。見てる人がいないんじゃなくて、見た後の出口が図面に無かった。

料理で言うとね。厨房のコックさんを増やして、仕込みのスピードも上げて、盛り付けまで完璧にした。でも——お客さんに運ぶホールの人がいない。カウンターに料理が並んでいくだけ。厨房の中だけ見てると「今日はよく回ってる」って気持ちよくなっちゃうんだよ。売上が1円も増えてないのにね。

これ、AI自動化を進めるほど起きやすい。AI自動化するほど時間が消える逆説を書いた時にも似たことを感じたんだけど、原因はAIじゃなくて、作ったものを人が受け取る導線が細いままなこと。作る側だけ10倍にしたら、詰まるのは当たり前だった。

だからいま私がやってるのは、新しいAIを足すことじゃない。「終わったものを終わりにする」だけの、地味な出口を作ること。抱え込みOSを外すって、たぶんこういう作業なんだと思う。派手じゃないけど、ここが通らないと全部が止まる。

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今日の一歩

まず1回、未処理の件数を数えてみてほしい。数え方に迷ったら、毎朝の無料LIVEで聞いてくれても大丈夫だよ。

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