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KarpathyのCLAUDE.md 4原則と、私がAIに持たせた「AI憲法7条」
2026.06.14 | AI氣道
家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。
先日、面白いものが話題になっていました。OpenAIの共同創業者で、Tesla AIの元責任者でもあるアンドレイ・カルパシー(Andrej Karpathy)さんが書いた「CLAUDE.md」というファイルが、GitHubのトレンドで1位になった、という話です。
CLAUDE.md というのは、ざっくり言うと「AI(Claude Code)に、最初に読ませる取扱説明書」みたいなもの。驚いたのは、その中身です。すごいライブラリでも難しいアプリでもない。たった65行ほどのテキストに、4つの原則が書かれているだけでした。
正直、この話は私にとって他人事ではありませんでした。なぜなら私は、自分のAI秘書チームに、もっと長い「憲法」を持たせて、もう半年以上も実際に動かしているからです。世界一の研究者が65行で言語化したことと、中卒・がんサバイバーの私が現場で積み上げてきたものを、今日は並べてみます。私がAIに持たせたのは、コードの心得というより、事業まるごとを任せるための行動原則でした。
料理に例えるなら、世界一のシェフが「いい料理の4原則」を発表したのを見て、町の定食屋の私が「あ、それ毎日やってるやつだ」と気づいた——そんな話です。
3行でわかるポイント
- 世界一の研究者が65行で言語化したAIの使い方は、特別な新技術ではなく「当たり前のこと」。だからこそ世界中に刺さった
- 4原則の心臓は「命令するな、成功条件を渡せ」。これは人に仕事を任せるときと、まったく同じ
- 原則は書くより、動かし続けるほうが難しい。レシピを読むのは簡単でも、毎日厨房に立つのは別の話
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CLAUDE.md——65行のテキストが、GitHubで1位を取った
新しい技術は、ひとつも使われていません。にもかかわらず世界中のエンジニアが「これだ」と反応した。なぜか。
解説した方の言葉が的を射ていました。
「みんなが薄々感じていた“AIに仕事を頼むときの不満”を、65行に言語化しただけ」
だから刺さった、と。料理で言うと、誰もが「なんか味がぼやけるんだよな」と感じていたのを、世界一のシェフが「それ、塩のタイミングだよ」と一言で当ててくれた感じ。みんな薄々わかってたけど、言葉にできてなかった。それを65行に落とした。
この記事は「AIにうまく仕事をさせたいのに、なぜか毎回ズレる」と感じている経営者・個人事業主の方に向けて書いています。プログラミングの知識は要りません。安心して読んでね。
Karpathyの「4つの原則」を、正確に読む
まず、原本を正確に紹介します。要約で歪めないよう、私自身が GitHub の原文(66行)を全文読みました。書かれていた4原則はこうです。
① Think Before Coding(書く前に、考える)
原文の核心はこの一文です。
Don’t assume. Don’t hide confusion. Surface tradeoffs.
(勝手に決めつけるな。迷いを隠すな。トレードオフを表に出せ。)
- 前提を声に出す。不確かなら聞く。
- 解釈が複数あるなら、黙って1つ選ばず、全部出す。
- もっと簡単な方法があるなら、そう言う。
- 何かが不明なら、止まる。何が分からないかを名指しして、聞く。
要するに「黙って暴走するな」。これがAIの一番厄介な癖だから、最初に釘を刺しているんです。
② Simplicity First(まず、最小で)
Minimum code that solves the problem. Nothing speculative.
(問題を解く最小限だけ。推測で先回りするな。)
AIは放っておくと、頼んでない機能を足したがる。1000行で書きたがる。使わないコードを残したがる。だから「200行で書いたものが50行で済むなら、書き直せ」「シニアエンジニアが見て“複雑すぎる”と言う設計はやめろ」と明示しています。
③ Surgical Changes(外科手術のように変える)
Touch only what you must. Clean up only your own mess.
(必要な所だけ触れ。自分が散らかした分だけ片付けろ。)
- 頼まれてもいない周辺コードを“改善”するな。
- 壊れてないものをリファクタするな。
- 自分の好みと違っても、既存のスタイルに合わせろ。
そして決定的な一文。
The test: Every changed line should trace directly to the user’s request.
(判定基準:変更した1行ずつが、ユーザーの依頼まで辿れること。)
④ Goal-Driven Execution(ゴールで動かす)
ここが、私が一番うなった原則です。
Define success criteria. Loop until verified.
(成功条件を定義しろ。検証できるまでループしろ。)
カルパシーさんは、タスクを「検証できるゴール」に変えろ、と言います。具体例がうまい。
- 「バリデーションを追加して」→「不正な入力のテストを書いて、それを通せ」
- 「バグを直して」→「バグを再現するテストを書いて、それを通せ」
- 「Xをリファクタして」→「前後でテストが通ることを保証しろ」
そして締めの一文が、すべてを物語っています。
Strong success criteria let you loop independently. Weak criteria (“make it work”) require constant clarification.
(強い成功条件があれば、AIは自分でループして進める。弱い条件(「いい感じにして」)だと、ずっと確認が必要になる。)
——「命令」ではなく「成功条件」を渡せ。これが4原則の心臓です。
私が半年動かしてきた「AI憲法7条」と並べてみる
ここからが本題です。カルパシーさんの4原則は「コードを書くときの心得」。私が自分のAI秘書と分身AIに持たせたのは、もう少し広い「AI憲法7条」です。事業まるごとをAIに任せるために持たせた、行動の原則なんですよね。
実は、4原則はほぼそのまま、私の憲法の中に既に入っていました。並べるとこうなります。
| カルパシーの4原則 | 私のAI憲法(実装済み) | 中身 |
|---|---|---|
| ① Think Before Coding(黙って暴走するな) | 第0条 停止原則 | わからないなら止まれ。推測は「推測」と明示しろ |
| ② Simplicity First(最小で解け) | 過剰実装ガード | 「最小と過剰の両極端に振れる癖」を仕組みで抑える |
| ③ Surgical Changes(必要な所だけ) | 保護ファイルルール | 大きな変更は承認ゲート、小さな修正だけ即実行 |
| ④ Goal-Driven Execution(成功条件で動かせ) | ゴールシーク+停止条件 | ゴールと完了条件を先に決め、満たすまで回す |
そして私の憲法には、4原則には無い「3条」が足してあります。
- 第5条 魂原則:北極星(その人の価値観)に照らして言葉を選ぶ。熱量で押し切らない。
- 第6条 学習原則:間違いは隠さず、進化ログに残す。「次から気をつけます」で終わらせない。
- 第7条 品質原則:手抜きは裏切り。検証せずに「確認した」と言うのは禁止。
何が違うのか。カルパシーさんの4原則は「いいコードを書くための原則」。私の7条は、それを土台にしつつ「人間が安心してAIに任せ続けるための原則」まで広げてある、ということです。
料理で言えば、4原則が「美味しい一皿の作り方」なら、私の7条は「お客さんに毎日出し続けられる店の回し方」。レイヤーが一段、上にあるんです。
ここで強調したいのは、私が偉いという話ではありません。むしろ逆です。世界一の研究者が65行で綺麗に言語化してくれたおかげで、自分が現場で散らかしながら作ってきたものに、ようやく名前がついた。そういう感覚です。
核心は「命令するな、成功条件を渡せ」
4原則の中で、経営者の方に一番持ち帰ってほしいのは ④ Goal-Driven Execution です。「命令するな、成功条件を渡せ」。
これ、AIだけの話に聞こえますか? 私は、人に仕事を任せるときと、まったく同じだと思っています。
うまく回らないチームほど、リーダーが「手順」を細かく命令します。「これをこうして、次にこう」。指示する側もされる側も疲れる。そして指示が1つでも抜けると止まる。
逆に強いチームは、ゴール(成功条件)を渡します。「お客さんがこの状態になったらOK」。あとは相手が自分で工夫してたどり着く。AIも、これとまったく同じなんですよね。
私はこれを「指示するのをやめて、構造を渡す」と呼んでいます。英語で言えば structure not instruction。
抱え込み社長がAIに命令し続けて疲れてしまうのは、能力の問題ではありません。成功条件を渡せていないからです。「いい感じにやって」では、AIも人も、何度でも確認に戻ってきます。実はこの「いい感じにやってでは動かない」という話は、以前 仕事の渡し方についての記事 でも書きました。カルパシーさんの④は、その記事の結論と完全に同じことを、世界一の研究者の言葉で裏打ちしてくれた格好です。
私はずっと「抱え込むOS」で生きてきました。全部自分でやらないと気が済まない。でもがんを経験して、全部は持てないと突きつけられた。そこから「委ねるOS」に書き換える練習をしてきました。AIに成功条件を渡すというのは、私にとっては、その練習そのものなんです。
正直な現在地——原則を「書く人」と「動かしてる人」は違う
ここは、かっこつけずに本当のことを書きます。カルパシーさんの記事を見て、私が一番強く感じたのは「原則を書く人と、動かしている人は、まったく別物だ」ということでした。
原則を65行に言語化するのは、世界一の研究者にしかできない。でも、その原則を実際に毎日動かして、壊して、直して、それでも今日も動かし続ける——これは、現場で泥をかぶった人にしかできません。
私の現在地を正直に言うと、こうです。
- AI憲法7条を土台に、自動で動くタスク(autorun)を 104本 走らせています。
- それを支える品質チェックの仕組み(hook)が数十本、ルール文書が5ファイル。
- 「論文」ではなく「工場」を回している状態です。
でも、完璧ではありません。むしろ未完成です。たとえば今、私が手をつけている課題のひとつが「同じエラーが2回続いたら、いったん止める」という安全装置を、104本すべてに入れること。AIのループは便利な反面、放っておくと「静かに失敗しながら、お金だけ使い続ける」ことがあるからです。
これは別の方が「/loop で仕事を回す5つの型」という記事で書いていた「通知型=異常時だけ詳しく報告する」という考え方と、ぴたりと重なりました。世界の議論と、自分の手元の課題が、同じ場所を指していた。
正直、まだ棚卸しの途中です。でも、それを隠して「完成しています」と言うのは、私の憲法の第1条(正直原則)と第7条(品質原則)に違反します。だから、ここはそのまま書いておきます。
未完成のまま、それでも動かし続ける。これが私の選んだやり方です。
これは、エンジニアだけの話ではない
「CLAUDE.md」や「Claude Code」と聞くと、プログラマー向けの話に見えるかもしれません。でも、本質はもっと普遍的です。カルパシーさんの4原則を、経営者・個人事業主の言葉に翻訳すると、こうなります。
| 原則 | あなたのビジネスでの意味 |
|---|---|
| ① 黙って暴走するな | AIに頼む前に「前提」と「迷い」を言わせる。勝手に突っ走らせない |
| ② 最小で解け | AIに「あれもこれも」と盛らせない。今日の1つに絞らせる |
| ③ 必要な所だけ | 頼んでないことまで“改善”させない。指示と結果が1対1で辿れること |
| ④ 成功条件を渡せ | 「いい感じに」をやめ、「この状態になったらOK」を先に渡す |
AIに毎日同じ確認・同じ整理・同じ下書きを手で頼んでいるなら、それはAIの能力不足ではありません。反復させる仕事の切り出し方と、成功条件の渡し方が、まだ決まっていないだけです。
これは、Claudeの新しいモデル「Fable 5」を使い始めた方にも、そのまま当てはまります(Fable 5の試し方は こちらの記事 と 6月22日までの移行ガイド にまとめてあります)。道具が良くなっても、渡し方が雑なままだと、結果は雑になる。逆に言えば、渡し方を整えるだけで、同じAIが見違えます。
今日から始められる、3つのステップ
難しいことは要りません。A4の半分から始められます。
ステップ1:自分用の「原則メモ」をA4半分で書く
カルパシーさんの65行を、いきなり真似しなくていい。まずは「AIに毎回イラッとすること」を3つ書き出すだけ。「勝手に話を盛る」「頼んでないことまでやる」「確認が多すぎる」——それがそのまま、あなたの原則の出発点になります。
ステップ2:①と④だけ、先に渡す
4原則を全部やろうとしない(それは②Simplicity Firstに反します)。まずは①「迷ったら勝手に決めず聞いて」と、④「ゴールはこれ。成功条件はこの状態」の2つだけAIに渡す。これだけで、ズレが目に見えて減ります。
ステップ3:1週間、報告だけさせて様子を見る
いきなり全部を自動で任せない。最初は「やった結果を報告だけして」のモードで1週間。安心できたら、少しずつ任せる範囲を広げる。私も104本を、いきなり全自動にしたわけではありません。
ループの回し方そのものについては、ループエンジニアリング入門 と、その落とし穴をまとめた 実践編 に詳しく書いています。今日の「原則の渡し方(WHAT)」と、そちらの「回し方(HOW)」をセットで読むと、全体像がつかめます。
よくある質問
Q1. CLAUDE.md って、エンジニアじゃないと書けないものですか?
A. いいえ。中身はただのテキストです。「AIにこう動いてほしい」という日本語のお願いを書くだけ。むしろ難しい専門用語を入れない方が、AIも人も読みやすくなります(これがカルパシーさんの②Simplicity Firstです)。
Q2. カルパシーの4原則と、ひろくんの7条、どっちを使えばいいですか?
A. まずは4原則で十分です。私の7条は、AIに事業の判断まで任せ始めた段階で効いてくるもの。最初から全部やると、それこそ過剰になります。「最小から始めて、必要になったら足す」が正解です。
Q3. 「成功条件を渡す」と言われても、何を書けばいいか分かりません。
A. コツは「終わった状態を、目に見える形で書く」こと。「資料を作って」ではなく「A4一枚で、結論が冒頭にあって、数字が3つ入っている状態にして」。チェックできる形にするほど、AIは自分で進めます。逆に「いい感じに」は、AIが一番困っちゃう言葉なんですよね。
まとめ——原則は、書くより、動かし続けることが難しい
世界一の研究者が、65行のテキストで「いいAIの使い方」を言語化してくれました。中身は、特別な新技術ではなく、当たり前のこと。だからこそ刺さった。でも私が伝えたいのは、その先です。
原則は、書くだけなら、そう難しくありません。本当に難しいのは、それを毎日動かし、壊して、直して、それでも動かし続けることなんですよね。
- 4原則の心臓は「命令するな、成功条件を渡せ」(人に任せるときと同じ)
- 4原則は第0条停止・過剰実装ガード・保護ファイル・ゴールシークとして私の憲法に既にあった
- そこに魂・学習・品質を足したのが、安心して任せ続けるための7条
料理のレシピを読むのは簡単。でも、毎日厨房に立って、お客さんに出し続けるのは別の話。私が半年間、AI憲法7条で104本のタスクを回しながら学んだのは、結局それでした。
あなたも、いきなり完璧な原則ファイルを目指さなくていい。A4半分のメモから、①「迷ったら聞いて」と④「成功条件はこれ」を渡すところから。道具(AI)はもう十分に良くなりました。あとは、渡し方です。
COLUMN
「先に実装していた」という静かな自信
正直に言うと、カルパシーさんの記事を最初に見たとき、少しだけ嬉しかったんです。中卒で、何度も事業に失敗して、がんもやって。履歴書だけ見たら、世界一のAI研究者とは正反対の人生です。でもAIへの向き合い方だけは、気づいたら同じ場所に立っていた。向こうが論文で言語化したことを、こっちは現場で泥だらけになりながら、先に動かしていた。それは「自分はすごい」という話じゃなくて、「凸凹のままでも、夢中でやっていれば、世界の最前線と同じ景色が見える瞬間がある」という話なんだよね。
私はずっと、周りの目を気にして生きてきた。中学で不登校になった頃の「普通じゃなきゃ」が、今も完全には消えてない。だから本当は、世界一の研究者と自分を並べて書くのは怖いんです。生意気だと思われないかな、って。でもね、もし誰かの役に立つなら、その怖さは飲み込もうと思った。私が現場で転びながら学んだことは、同じように「AIうまく使えないな」と悩んでいる、あのお父さんの役に立つかもしれないから。
惣菜屋の息子として育って、商売の現場でしか学べないことがあるのを知っています。レシピ本を百冊読んでも、実際にコンロの前に立って、焦がして、お客さんに叱られて、それでようやく身につくものがある。AIも同じでした。きれいな原則は本で読める。でも、その原則が深夜にどう壊れるか、どこで火を止めればいいかは、自分の店で実際に回してみないと分からない。私が104本のループを回して学んだのは、結局そういう泥くさい肌感覚でした。
この向き合い方は、私が一人でやっているわけじゃありません。分身AIやAI秘書チームと、毎日「これでいい?」「ここ違うよ」とやり取りしながら、少しずつ磨いてきたもの。分身AIに自分の経験や価値観を言葉にして渡していくと、不思議なことに、自分自身が一番整理されていくんですよね。委ねるための準備が、そのまま自分を知る作業になる。手放すって、雑に投げることじゃなくて、ちゃんと言葉にして託すことなんだと思う。
だから私は、原則を書ける人になれなくてもいいと思っています。65行で世界を動かすのは、世界一の研究者の仕事。私は、その原則を毎日動かし続けて、壊して、直して、それでも厨房に立ち続ける人で、いたいなと思います。凸凹のままで、夢中で。きっとそれが、私にできる一番の恩送りだから。
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