
COLUMN
AI秘書は道具をつなぐより、任せる仕事を決めるほうが難しい
2026年7月27日
朝、Xを流し読みしていたら「月4000ドル相当の個人秘書が、実質無料で手に入る」という投稿が流れてきた。親指が止まったのは金額のほうじゃない。中身が、半年前に私が打ち合わせで喋っていた構想そのものだったからだよ。
家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくんです。今日はそのブックマーク1本から考えたことを書くね。便利ツールの紹介記事にはならないと思う。途中で、自分がいちばん恥をかいた話を1つ白状することになるから。「決めてから渡せ」と偉そうに書いている本人が、それを何百回も破ってきた話だよ。
3行でわかるポイント
- Hermes Agentは「つなぐ」がすごい。Telegram・Slack・メールなど、どの入り口から話しかけても同じエージェント、同じ記憶。オープンソース(MITライセンス)で公開されている
- でも「実質無料」は言いすぎ。本体は無料でも、Free / Plus / Super / Ultra の料金ティアがあって、動かし続けるにはサーバー代とモデル利用のコストが乗る
- 本当に難しいのは、任せる仕事を決めること。厨房の設備を新しくするのは1日でできるけど、「今日、誰に何を任せるか」を決めるのは毎日やる仕事だよ
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半年前に喋っていた構想が、よその手で形になっていた

止まったのはこの投稿。AI Edge氏の投稿(2026年)で紹介されていた、Hermes Agent(ハーメス・エージェント)というAIエージェントの話だった。
打ち出しはかなり強めで、「月4000ドル相当の個人秘書が実質無料で手に入る」という趣旨。この数字は後でちゃんと分解する。この表現は言いすぎだと私は思っている。
これ、半年前に私が仲間との打ち合わせで喋ってたやつだ。
2026年1月、洋平との打ち合わせで、私はこんな構想を語っていた。
「入り口はSlackでもChatworkでもLINEでもいい。思いついたことをその場で音声で放り込むと、そこから自動で処理が動いて、AIが勝手に中身を整理して溜めてくれる。で、朝になったらAIのほうから『今日はこれをやったらどうですか』と聞いてくる」
——2026年1月、洋平との打ち合わせで話していた構想(当時の言い方を、今の私の言葉で書き直したもの。実装はしていなかった)
2月には、かえるさんとの打ち合わせで、もっと生活に近い言い方をしていた。
「感覚としては電話と一緒だよ。AI秘書に『今月のトレンドを調べて、ブログ10本ぶんのネタにしといて』と頼むと、しばらくして結果がLINEに返ってくる。それくらいの距離感で使いたい」
——2026年2月、かえるさんとの打ち合わせで話していた使い方イメージ(当時の言い方を、今の私の言葉で書き直したもの)
どっちも構想止まりで、私は実装していない。そして今日、それを他の人たちが先に形にして、オープンソースで公開までしていた。「こういう鍋料理があったら最高だよね」と厨房で喋っていたメニューが、半年後によその店の看板になっていた感じだね。
で、悔しいか。これが自分でも意外だったんだけど、そんなに悔しくなかった。強かったのは答え合わせができたという感覚のほうで、「あの方向で合ってたんだ」と思えた。しかも読み込んでいくうちに、もっと大事なことに気づくことになる。
ちなみに「AI秘書」というキーワード自体、今すごく動いているよね。少し前にExcelがAI秘書に進化?という最新AIニュース解説でも取り上げたけど、表計算ソフトすら「聞けば動く相棒」になろうとしている時代だから。道具側は、放っておいてもどんどん進化していく。
Hermes AgentはAI秘書として何ができるのか

Hermes Agentは、Nous Research(ナウス・リサーチ)が開発・公開しているオープンソースのAIエージェント。ライセンスはMITで、ソースコードはGitHubのNousResearch/hermes-agentリポジトリにある。使い方の詳細は公式ドキュメントにまとまっているよ。
公式サイトのトップを開くと、まずこの一文が目に入る。
The Agent That Grows With You One agent, one memory, every surface.
(訳:あなたと一緒に育つエージェント。エージェントは1つ、記憶も1つ、そしてあらゆる接点で使える。)
「One agent, one memory, every surface(エージェント1つ、記憶1つ、接点は全部)」。この一文が私はいちばん刺さった。
公式サイトが挙げている機能を、厨房にたとえながら並べてみる。
- どこからでも呼べる(Connect):Telegram、Discord、Slack、WhatsApp、Signal、Email、CLI。1つのエージェントに、いろんな入り口から話しかけられる。厨房への注文口が、店頭・電話・出前アプリ・LINE、全部つながっている状態だね
- 覚えている(Remember):やり取りが記憶として残る。しかも作業のやり方を「スキル」として自動生成して溜めていく。前に作った料理のレシピを、勝手にレシピ帳に書き足してくれる感じ
- 勝手に動く(Schedule):「毎朝7時にレポートを出して」みたいな自然な言葉でスケジュールを組める。仕込みの時間をタイマーで回してくれるイメージ
- 子分に振れる(Delegate):サブエージェントに仕事を切り出せる。別の会話・別のターミナルを持たせて並列で動かせる。副菜担当を別に立てるのと同じ
- 調べて作れる(Search):Web検索、ブラウザ自動化、画像生成、音声読み上げ、複数モデルの使い分け
- 安全に試せる(Experiment):ローカル・Docker・SSHなど複数のサンドボックス(隔離された作業場)に対応。味見用の小鍋を分けておく発想だね
さらに、Composio(コンポジオ)という外部サービス連携の仕組みを組み合わせると、カレンダー・メール・タスク管理まで、WhatsAppやテキストのやり取りだけで24時間動かせる。これは実際にできる使い方だよ。
Composioの公式サイトの説明が分かりやすい。
Everything your agents need to take action
Just-in-time tool calls, secure delegated auth, sandboxed environments, and parallel execution across 1,000+ apps.(訳:エージェントが「実際に動く」ために必要なもの、すべて。必要なときだけ呼び出すツール、安全に権限を預ける認証、隔離された作業場、そして1,000以上のアプリをまたぐ並列実行。)
出典:Composio 公式サイト(2026年7月27日確認)
「エージェントが実際に動くために必要なもの、すべて」。ここだけ読むと、明日から社長業が変わりそうに見えるよね。つなぐ技術としては、実際そこまで来ていると思う。
ただ、ここから先が今日の本題になる。その「ひとこと」を、誰が決めるの?
入り口も、記憶も、手足も、ひととおり揃っている。半年前に私が「こんな鍋があったらいいよね」と喋っていたものが、レシピと材料つきで置いてある状態。素直にすごいと思う。でも、何を作るかまではどこにも書いていない。
「実質無料」は言いすぎだと思う

お金の話も書いておきたい。私は「AIで売上10倍」みたいな大風呂敷に本気で腹が立つタイプなんだよね。「これで全部タダ」みたいな煽りも同じ。自分が過去に情報商材で痛い目を見ているから、余計に。
だから元の投稿にあった「月4000ドル相当が実質無料」という打ち出しも、そのまま鵜呑みにしないほうがいいと思っている。
無料の範囲と、そうでない範囲がある。
- ソフトウェア本体は、たしかにオープンソースでMITライセンス。ここは公式サイトに明記されている(”Open Source • MIT License”)。ダウンロードして自分のパソコンやサーバーで動かすぶんには、Nous Researchにお金を払う必要はない
- ただし、公式には Free / Plus / Super / Ultra という料金ティア(階層)が用意されている
料金セクションを読むと、こう書かれていた。
All paid tiers include monthly credits for use in Hermes Agent, access to 300+ cutting-edge models and built-in tool use
(訳:有料ティアにはすべて、Hermes Agentで使える月間クレジット、300以上の最新モデルへのアクセス、組み込みのツール利用機能が含まれます。)
無料で始められるのは本当だけど、全部が無料というわけじゃない。表にしてみた。
表①:無料でできることと、お金がかかるところ
| 項目 | 無料の範囲 | お金がかかる範囲 |
|---|---|---|
| ソフト本体 | オープンソース(MITライセンス)。入手・改変・自分での運用は無料 | — |
| 動かす場所 | 自分のパソコンで動かすなら追加費用なし | 24時間動かすならサーバー(VPS)代が必要 |
| 頭脳(AIモデル) | 無料ティアでは無料モデル+標準的な利用制限 | 有料ティアで月間クレジット+300以上のモデルとツール利用が使える |
| 外部サービス連携 | 自分で設定すれば無料枠で試せるものもある | 連携先サービス側の有料プランが必要になる場合がある |
| 設計・運用の手間 | ゼロにはならない | 自分の時間というコストがかかる |
レシピと調理器具は無料で配られているけど、ガス代と食材費は自分持ち、ということだね。
これは悪いことじゃないし、むしろ健全だと思う。こわいのは「実質無料」という言葉だけを持ち帰って、始めてから「あれ、思ったよりお金かかる」となること。期待値は先に合わせておきたい。
そしてもうひとつ、お金の話より重い見えないコストがある。
並べてみたら、差は「つなぐ」の外側にあった

表②:半年前の私の構想 vs Hermes Agentの実装
| 私が半年前に語っていたこと | Hermes Agentでの実装 | 私の答え合わせ |
|---|---|---|
| SlackでもLINEでもいい、思いつきを吹き込むだけで動いてほしい | Telegram・Slack・WhatsApp・Signal・Email・CLIから同じエージェントを呼べる | 方向は合っていた。入り口を1つに絞らないのが正解だった |
| 吹き込んだ内容をAIが勝手にデータベースにまとめる | 永続記憶+スキルの自動生成 | 「まとめる」だけじゃなく「やり方ごと覚える」まで踏み込んでいた |
| 朝になったらAIのほうから「今日これやったら?」と聞いてくる | 自然言語でのスケジューリング(毎朝のブリーフィング等) | ここは完全に同じ発想。私はまだ雑にしか作れていない |
| AI秘書に「ブログ10本ぶんリサーチして」と頼むとLINEに届く | サブエージェント委譲+Web検索・ブラウザ自動化 | 「頼み方」は同じ。ただし品質を誰が見るかは別問題だった |
こうやって並べてみると、構想の方向はズレていなかった。それは素直に嬉しい。
一方で、目が覚めるような差もあった。私は「こういうのが欲しい」で止めて、彼らは「じゃあ作って公開する」まで行った。この差は、手を動かすところまで持っていく設計の差だと思う。言いっぱなしの私と、公開までやった彼ら。差はそこだよ。
表③:Hermes Agentが「つなぐ先」 vs 私が実際に「任せている仕事」
| 観点 | Hermes Agentが提供するもの | 私(ひろくん)が実際にやっていること |
|---|---|---|
| 入り口 | Telegram・Slack・WhatsApp等、どこからでも呼べる | 入り口はほぼ1つに固定。増やすより「どこで話しかけるか」を決めた |
| 記憶 | 会話とスキルを自動で溜める | 過去のやり取り・判断の記録を「原液」として蓄積し、そこから判断軸を作る |
| 手足 | Web検索・ブラウザ操作・画像生成・外部サービス連携 | 手足は必要なものだけ。増やすたびに壊れる箇所が増えるので慎重に |
| 判断 | モデルとプロンプトに依存 | 「何をやらせないか」「どこで止まるか」を先に決めている |
| 検証 | 実行結果はユーザーが確認 | AI秘書の凛ちゃんが仕上げたものを、私が最後に味見する工程を固定 |
| 失敗の扱い | 都度対応 | 失敗の記録を残して、次に同じ失敗が起きない仕組みに落とす |
見比べると分かるんだけど、Hermes Agentが強いのは「つなぐ」の部分なんだよね。任せ方の部分は、どのツールにも書いていない。そこは本当に良くできている。でも私が日々いちばん時間を使っているのは、表の下半分だった。判断と検証と、失敗の扱い。
このあたりは、以前書いたAI秘書はClaude Cowork+Notionで作れるという記事と対になる話でもある。あっちは「AI秘書をどう作るか」で、道具と置き場所の話だった。今回は作ったあと、何を任せるかをどう決めるかの話。作り方が分かっても、任せ方は自動では決まらない。
道具そのものについては、AIはどれも「器」、9割は自分の原液だったという記事でも書いた。器が良くなるのはありがたいけど、中身は自分で仕込むしかない。今回、その実感がさらに強くなったよ。
私のAI秘書環境は、もうつながっている

たとえば昨日のこと。手が離せないタイミングで、「一人社長がAIを入れるときの順番って、書き出す→分ける→1つ渡す、の3ステップじゃないか」と思いついた。文章にせず、音声のまま放り込んだ。整理もしていない、ただ喋っただけ。
そして今朝いちばんに画面を開いたら、AI秘書の凛ちゃんが昨日の喋りを整理して、「今日はこれをやったらどうですか」の並びにして出していた。先頭は「昨日の音声、記事の3ステップとして書き出しませんか」だった。
半年前に「こうなったらいいな」と喋っていたことは、形としてはだいたい動いている。じゃあ完成かというと、まったくそうじゃないんだよね。
いま私が毎日いちばん時間を使っているのは、これは任せていい仕事か、任せちゃいけない仕事かを決めることだから。
- 情報を集めてくる → 任せていい
- 集めた情報を要約する → 任せていい
- 要約から記事の下書きを作る → 任せていい
- その下書きを世に出すかどうか決める → 任せられない
- 人にお金の話をする、謝る、断る → 任せられない
- 「これは私の言葉じゃない」と気づいて止める → ここが一番むずかしい
道具の接続は手順書があれば進むけど、任せ方の切り分けには手順書がない。自分の商売と価値観の話だから、他人の正解をコピーしても合わない。しかも、つなぐ先を増やせば増やすほど、この切り分けが効いてくる。
以前AIエージェントは増やすほど止まるという記事を書いたけど、あれと同じ現象だね。人数を増やしただけの厨房は料理が早くならない。「誰がどこまでやるか」が曖昧なぶん、皿が止まる。
私はこの切り分けに、まだ答えが出きっていない。日々、味見しながら線を引き直している。
それでも今日の答え合わせで、ひとつはっきりしたことがある。
これは技術の話じゃなくて、決め方の話だった。
Hermes Agentのようなツールがどれだけ増えても、何を任せるかが決まっていなければ道具が増えただけで終わる。逆に、任せる仕事さえ決まっていれば、道具は今あるもので足りることも多い。
判断軸をどう作るかは、52万発言の「カルピス原液」でAIが分身になるという記事で詳しく書いた。自分の過去のやり取りを溜めて、そこから「自分ならこう判断する」を取り出す作業。正直めんどくさいけど、ここを飛ばすとAIは平均的な答えしか返してこない。
私の環境には、過去の失敗メモが600件を超えて溜まっている。同じ失敗を二度やらせないための記録で、道具を買ったら付いてくるものじゃない。毎回の失敗を、その場で書き残してきた蓄積だよ。
1件、そのまま出すね。
「○○禁止」「○○なし」「○○だけ」——制約の言葉が入っているときは、一次解釈だけで着手しない。必ず復唱確認をする。
パッと見、AI側のミスの記録に見えるでしょ。でも、これを書かせた原因は私なんだよ。
今年の春、動画を作らせるときに、私は指示書に「キャラ装飾禁止」とだけ書いて渡した。スライドの飾りの話のつもりだった。AIは「キャラを全部消せ」と受け取った。結果、キャラが1人も出てこない動画がまるごと1本でき上がって、YouTubeに上がるまで誰も気づかなかった。私が見て「キャラいないじゃん」で発覚して、作り直しになった。どこまでが「装飾」か。それを決めずに渡したのは私だった。
で、白状するって言ったのはここから。
溜まったメモを読み返すと、AIが賢くなかった記録より、私が「どこまで任せるか」を決めずに投げた記録のほうが目につく。つまり私は、この記事で偉そうに書いている「決めてから渡す」を、自分で何百回も破ってきた側だった。任せる仕事を決めるのが難しい、と私は書いた。正確に言うと、難しいと言いながら決めないまま投げてきたのが私。
つなぐのは1日でできる。溜めるのは半年かかる。
この非対称さはたしかにある。でも、そこからもう一段、いやなところまで降りてしまった。
なんで私は、決めないまま投げるんだろう。ずっと能力の問題だと思っていた。切り分けが下手だから決められないんだ、と。でも記録を読み返して、思い当たったことがある。
決めていないうちは、まだ自分が握っていられるんだよ。「ここまでは任せる」と線を引いた瞬間、その仕事は私の手を離れる。曖昧なまま渡しておけば、いつでも「思ってたのと違う」と言って引き取れる。決めないことは、手放さないための保険だった。
私は昔から、なんでも自分で抱え込む人間だった。人に振るより自分でやったほうが早い、で全部やってきた。その癖は今も完全には抜けていない。
だとすると、話がひっくり返る。決めるのが難しいんじゃなくて、私が手放したくないだけだった。 能力じゃなくて、性格の話。これは道具では直らないやつだよ。ここが今日いちばん腹に落ちたところ。
人を雇うとき、難しいのは机と電話を用意することじゃない

ここは非エンジニアの人にこそ読んでほしい。「Telegramと連携」「サンドボックス」「サブエージェント」。こういう言葉が並ぶと、「あ、これ自分には関係ないやつだ」と閉じたくなるよね。分かる、私も昔そうだった。
でも、今日の話の芯を日本語に置き換えてみる。
人を雇うとき、いちばん難しいのは机と電話を用意することじゃない。何をお願いするかを決めることだ。
これ、AIじゃなくて人の話でも同じでしょ。
私はよく、一人でやっている社長さんからこういう相談を受ける。
- 「うちのUSP(強み)が何なのか、自分でも分からない」
- 「下請けがメインで、話を聞けるお客さんが身近にいない」
- 「何か、探すヒントになるものはありませんか」
こういう相談に「じゃあAIを導入しましょう」は答えになっていないんだよね。任せる仕事が決まっていない状態でAIを入れても、指示を出す仕事が増えるだけだから。
私だったら、この順番でやる。
- 自分の1週間の仕事を、実際に書き出す(頭の中で数えない。紙に書く)
- その中から「私じゃなくても結果が変わらない仕事」に印をつける
- その印の中から、失敗しても取り返しがつくものを1つ選ぶ
- それだけをAIに渡す
この順番は、AIの使い方より先に、”欲しい道具”を思いつける頭になるという記事で書いた話とつながっている。道具のカタログを眺める前に、「自分は何に困っているんだっけ」を先に出す。順番が逆になると、いつまでも道具を見比べる時間が続くんだよ。
包丁を10本買ってから何を作るか考える人はいないよね。作りたい料理があって、そのために必要な包丁を選ぶ。AIも同じ。
そして一人社長の場合、これがそのまま時間の話になる。人を雇う余裕がないということは、あなたの時間が事業の全部だということ。だからこそ、何を手放すかを決めることにいちばん頭を使う価値がある。
任せる仕事の決め方|今日から始められる3ステップ

読んで終わりだと意味がないから、今日できる形にしておくね。新しいツールを入れる必要はないよ。
順番については、分身AI講座のグループコンサルでも同じことを話している。
「まず1つの作業をスキルとして言語化する。それを組み合わせて、ワークフローにする。そこに門番役と採点役を置いて、最後に自分で直っていくループにする。この順番を飛ばして先に量産すると、増えた数だけ直す量が増えるだけなんだよね」
——2026年7月、分身AI講座のグループコンサルで話した段階論(当日の話を、今の私の言葉で書き直したもの)
要するに、量産の前に言語化。ここを飛ばさないための最小の3ステップが、これだよ。
ステップ1:1週間ぶんの「私がやったこと」を書き出す(所要20分)
紙とペンでいい。今週やったことを、思い出せるだけ書き出す。メール返信、見積作成、材料の発注、電話、SNS投稿、請求書、雑談。粒の大きさは揃えなくていい。
参考までに、私の今週から3つ挙げるとこうなる。「ブログの下書きを書く」「朝のLIVEをやる」「分身AI講座のグループコンサルで話す」。
大事なのは、頭の中で数えないこと。書き出すと想像より多いんだよ。私も毎回びっくりする。
ステップ2:3色に分ける(所要10分)
書き出した1つずつに、印をつける。
- ◎ 私にしかできない(判断・謝罪・お金・関係性・最終決定)
- ○ 私じゃなくてもいい(調べる・まとめる・下書き・整形・記録)
- △ そもそもやらなくていい(惰性で続けている作業)
さっきの私の3つで言うと、「ブログの下書きを書く」は○。書いてもらって、私が味見する。でもその下書きを世に出すかどうか決めるのは◎で、ここは代われない。お金の話をする、謝る、断るも同じ◎だよ。
ここでの発見はたいてい2つある。「△が意外とある」と「○が想像より多い」。この2つが見えるだけでも、20分の価値はあると思う。
ステップ3:○の中から「1つだけ」選んで渡す(今日中)
全部渡そうとしないのがコツで、1つだけ。しかも、失敗しても取り返しがつくものを選ぶ。たとえば「今週のニュースを3行にまとめる」「問い合わせメールの下書きを作る」あたりから。使うのは、今あるChatGPTでもClaudeでもいいよ。
Hermes Agentのような本格的なエージェントを入れるのは、この1つが回り始めてからで間に合う。
そして渡したあと、必ずやることがある。結果を味見して、直したところをメモに残すこと。「ここが違った」「この言い回しは私は使わない」。このメモが、あなただけの判断軸になる。
ツールは買えるけど、このメモは買えない。ここが、一人社長がAIで戦える場所だと私は思っている。
よくある質問
Q1. Hermes Agentは、パソコンが苦手でも使えますか?
正直に答えると、今の時点ではハードルは低くない。公式にはmacOS・Windows・Linux向けのインストール方法もデスクトップアプリもあるけど、24時間動かしたい・外部サービスとつなぎたいとなると、サーバーの用意や設定の知識が必要になる場面が出てくる。
だから私の意見はこう。まず今使っているAIで「1つだけ任せる」を試してから、物足りなくなったら検討する。順番が逆だと、環境構築で力尽きるんだよね。詳しい仕様は公式ドキュメントを確認してみて。
Q2. 「実質無料」って結局どうなんですか?
ソフト本体がオープンソース(MITライセンス)なのは事実。でも公式には Free / Plus / Super / Ultra という料金ティアがあって、有料ティアには月間クレジットと300以上のモデルへのアクセス、ツール利用機能が含まれる。24時間動かすならサーバー代も乗る。
始めるお金は小さいけど、続けるお金はゼロじゃない。この理解がいちばん実態に近いと思うよ。
Q3. うちは従業員がいない一人会社です。AI秘書を入れる意味はありますか?
むしろ一人だからこそ意味がある、というのが私の考え。人を雇えないということは、あなたが倒れたら全部止まるということだから。
私自身、がんで入院したときにこれを味わった。あのとき止まらなかったのは、仲間が代わりに場を回してくれたからだよ。
ただし、入れる順番は守ってほしい。ツールを入れる前に、この記事の3ステップ(書き出す→3色に分ける→1つだけ渡す)を先にやること。
Q4. 自分の判断軸をAIに覚えさせるって、具体的に何をするんですか?
いちばん地味で、いちばん効くのは「直したところをメモに残す」こと。AIが出してきた文章を直したとき、「なぜ直したか」を1行でいいから書く。「この言い方は上から目線だから使わない」「うちのお客さんはこの単語を知らない」。これが積み重なると、AIに渡せる判断材料になる。
本文で出した「キャラ装飾禁止」のメモが、まさにその1件。動画を1本まるごと作り直したあと、残したのは「制約の言葉が入っているときは復唱確認をする」の1行だけ。長い反省文より、この1行のほうが次に効く。
私の場合、これを長く続けた結果、失敗メモが600件を超えた。最初の1件を書くところからしか始まらないんだよね。考え方の詳細は52万発言の「カルピス原液」の記事にまとめてある。
まとめ:つなぐのは1日、決めるのは毎日

- Hermes Agentは、Nous Researchが公開しているオープンソース(MITライセンス)のAIエージェント。入り口も、記憶も、スケジュールも、子分への委譲も、ひととおり揃っている
- 「実質無料」は言いすぎ。本体は無料でも、Free / Plus / Super / Ultra の料金ティアがあり、動かし続けるにはサーバー代とモデル利用のコストがかかる
- 本当に難しいのは、つなぐことじゃなく任せる仕事を決めること。技術の話じゃなく決め方の話だから、非エンジニアでも今日から取りかかれる
厨房の設備を最新にするのは、お金と時間があれば1日でできる。でも「今日、誰に何を任せるか」を決めるのは、毎日やる仕事なんだよ。
道具は増える。決めるのは、私たち。

ひろくんのコラム:「先に作られた」を悔しがらなくなった話
昔の私だったら、今日の投稿を見て確実に凹んでいたと思う。「あれ、俺が言ってたやつじゃん」「なんで先にやられたんだろう」って。
でも今日は、不思議とその感情が出てこなかった。出てきたのは「あー、方向合ってたんだ」という安心と、「じゃあ私はどこを掘ろうか」という次の問いだった。
理由を考えてみたんだけど、たぶん自分の持ち場がはっきりしてきたからだと思う。つなぐ仕組みを作るのは、世界中のすごい人たちがやってくれる。オープンソースで公開までしてくれる。ありがたい話だよ。
じゃあ私は何をするのか。自分の商売の中で、何を手放して何を握るかを決める。その決め方を、同じように一人で抱えている人に渡す。ここは誰かが代わりにやってくれる仕事じゃない。任せる判断そのものについては、AI業務自動化で失敗した7つの理由でもうちょっと踏み込んで書いているよ。
本文で書いた「手放したくないから決めない」。あれを私は昔から「抱え込みOS」と呼んでいて、今も完全には書き換わっていない。この癖がいったん壊れた日のことは、抱え込みOSが壊れた日——AIに委ねたら代謝が始まったに書いた。
がんで入院したとき、朝のLIVEを仲間が代わりに続けてくれた。「あ、私がいなくても場は続くんだ」と知ったよ。あのときの気持ちは、悔しさ半分、ありがたさ半分だった。今日の感覚はあのときと似ている。似ているけど、悔しさの比率がだいぶ減った。
凸凹のままでいい。私の凹(作り込む速さ)は、誰かの凸が埋めてくれる。私の凸(決め方を言葉にすること)で、誰かの凹を埋められたらいい。
競争より共創。今日もそれでいこうと思う。
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参考リンク
元ネタ
Hermes Agent 公式
連携サービス
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