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馬田隆明さんの「売れるようにしてから作る」を解説。AIで作れるようになった今、作る前に相手が使いたくなる条件を、AIと1枚の仕様にして確かめる

2026年10月8日

家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。今回は、東京大学 FoundX の馬田隆明さんのスライド「「作ってから売る」と「売ってから作る」と「売れるようにしてから作る」」を紹介するね。技術を社会に届けるとき、作れるかどうかのリスクと、売れるかどうかのリスクを、どう同時に下げるのか、という話です。私は、この資料を、作る手が速くなった今こそ、作る前に「売れる環境」を整える順番が効いてくるのでは、と読みました。

馬田さんの資料は、「作ってから売る」「売ってから作る」のあいだに、「売れるようにしてから作る」という三つ目の進め方を置きます。事業を、作れるかどうか分からない技術リスクと、売れるかどうか分からない市場リスクに分け、両方を同時に下げることを勧めます。私は、AIで作れるようになった今、この資料を、作る前に相手が使いたくなる条件を確かめる手がかりとして読みました。

3行でわかるポイント

  1. 資料は、事業を技術リスク(作れるかどうか分からない)と市場リスク(売れるかどうか分からない)の2軸で整理します。技術リスクだけに力を入れず、両方を同時に下げるのが大事、という立場です。
  2. 三つ目の進め方「売れるようにしてから作る」の例に、Boom が作る前に LOI を結んだ話や、スペックシートで LOI を獲得する手が出てきます。法的な拘束力のない意向表明であり、売上の確定ではありません。
  3. 私は、企画をAIに渡して2つのリスクを分けて並べてもらう使い方と、相手に見せる1枚の仕様をAIと下書きする使い方を提案します。元資料にはない、AIを使う側の私の提案です。
01

「売れるようにしてから作る」手もあるのでは。「作ってから売る」と「売ってから作る」のあいだの3つ目

作ってから売る道と売ってから作る道のあいだに、先に整える赤い道が奥の建物へ続く図解
元記事キャプチャ: 「売れるようにしてから作る」手もあるのでは、のスライド
元記事キャプチャ: 「売れるようにしてから作る」手もあるのでは

馬田隆明さん「「作ってから売る」と「売ってから作る」と「売れるようにしてから作る」~技術の社会実装のための『開発』~」(Speaker Deck)(進め方を並べた前半)

「売れるようにしてから作る」手もあるのでは

元の資料を作ったのは、東京大学 FoundX の馬田隆明さん(Takaaki Umada)です。

Speaker Deck に公開された約100枚のスライドで、技術を社会に届けるときの「開発」の進め方を整理して見せています。

一つ目は、製品や技術を「作ってから売る」進め方です。資料では、よくあるパターンで、通常の製品開発やディープテックスタートアップは、まず「作る」ところにフォーカスすることが多い、と書かれています。

いわゆるプロダクトアウトで、漸進的改善の場合などで有効だそうです。

二つ目は「売ってから作る」です。ソフトウェアなどでは、これがお勧めされることもある。ソフトウェアは作れる場合が多いため、という理由が添えられています。

スタートアップでお勧めされがちな進め方で、IT系など、作れる場合には有効です。

どちらが最適かは、事業や製品によって異なります。そのうえで資料は、研究開発系は「作ってからしか売れない」と思っている人が多い、と指摘して、問いを出します。本当に両極端しかないのでしょうか。

そこで出てくるのが、三つ目です。

三つ目の「売れるようにしてから作る」の例として、資料は四つの手法を並べます。自社が有利なルールを作る。MVPを作って反応を見る。

スペックシートを作ってLOI(Letter of Intent)を獲得する。クラウドファンディングをしてから作る。いずれも、作る前に「売れる環境」を先にそろえておく手です。

私は、この資料を、AIで道具やサービスを作る側の目で読みました。AIの登場で、作る速さはずいぶん上がりました。作る手が速くなるほど、「作ってから売る」の順番に寄りやすくなる。これは私の読みです。

9月12日の記事に、こう書いています。

AI氣道『お客様に合わせるほど売れなくなる。「私だから売れる商品」は自分の当たり前の中にある』より

「AIを使えば、それっぽい商品は100個でも作れる。でも「私だから売れる商品」かは別の話。」

作ることと、売れることの距離は、9月12日の記事、『お客様に合わせるほど売れなくなる。「私だから売れる商品」は自分の当たり前の中にある』で書いています。

作れることと、売れることは別の話です。もちろん、作ること自体を楽しむ時間は、そのままで良いと思います。この記事で扱うのは、商売にして誰かに届けるとき、どの順番で確かめるか、という話です。

元の資料も、どれが最適かは事業や製品によって違う、と書いています。

02

技術リスクと市場リスクの2本の線で、自分の企画がいまどこに立っているかを見る

縦に技術リスク、横に市場リスクを取った軸に、自分の企画の旗を立てる図解
元記事キャプチャ: 事業には主に技術リスクと市場リスクがある、のスライド
元記事キャプチャ: 事業には主に「技術リスク」と「市場リスク」がある

馬田隆明さん「「作ってから売る」と「売ってから作る」と「売れるようにしてから作る」~技術の社会実装のための『開発』~」(Speaker Deck)(事業を二つのリスクで考える章)

事業には主に「技術リスク」と「市場リスク」がある

資料の中盤で、馬田さんは、事業を二つのリスクで考えようと提案します。

技術リスクは、主に「作れるかどうか分からない」リスクです。科学的にできるか、品質を担保できるか、大量生産できるか、といった点が挙げられています。

市場リスクは、主に「売れるかどうか分からない」リスクです。ニーズや課題があるか、市場は大きいか(急成長するか)、規制がどうなるか、といった点です。

この二つを縦軸と横軸にして、事業を地図に置きます。地図には、創薬、半導体、ロボット、エネルギー、コンサル、八百屋、メディア、アプリ、Web/SaaSなど、事業の種類が並びます。

図には、あくまで一般論で、個別の事業が取っているリスクは大きく異なる、と注記があります。

技術リスクだけが高い領域は、「作れれば良い」と書かれています。創薬やライフサイエンスは、良い技術さえ作れれば売れるので、研究開発に集中すれば事業になりうる。

一方で、技術リスクと市場リスクの両方が高いと、技術ができても売れるかどうか分からないし、売れたとしても作れるかどうか分からない。難しい領域です。

そこで資料は、まず自分たちの事業がどのようなリスクを取っているのかを理解するところから始めよう、と言います。リスクがあるから進められない、ではなく、リスクは自ら減らす努力もできる、と続きます。

補足として、アメリカの一部の、社会実装を見据えた研究開発補助金では、技術の成熟度を測る TRL(Technology Readiness Level)だけでなく、導入の準備度を測る ARL(Adoption Readiness Level)の管理も始まっている、という紹介があります。

TRL が低いと技術リスクが高く、ARL が低いと市場リスクが高い、という対応です。

出典は米国エネルギー省のページとして、Adoption Readiness Levels (ARL): A Complement to TRLが示されています。

8月13日の記事で、小さな商売の芽を試す最初の7日について、こう書きました。

AI氣道『もし横井軍平さんがAIビジネスを始めたら?|「枯れた技術」で作る4つの小さな商売』より

「いきなり商品を作らなくていい。先に自分の仕事で、7日後にも使いたい仕掛けかを確かめる。」

使いたいかを先に確かめる考えは、8月13日の記事、『もし横井軍平さんがAIビジネスを始めたら?|「枯れた技術」で作る4つの小さな商売』で書いています。

「7日後にも使いたい仕掛けか」は、作れるかどうかではなく、使いたいかどうかの問いです。資料の言葉に直すと、市場リスクの側の問いになります。私はこれを、市場リスクを先に下げる動き方として読みました。

03

AIに企画を渡して、「作れるか分からない点」と「売れるか分からない点」に分けて並べてもらう

企画をAIに渡すと、作れる?と売れる?の2つの枠に分かれて並ぶ図解
元記事キャプチャ: 市場リスクに目を向けず、のスライド
元記事キャプチャ: 市場リスクに目を向けず

馬田隆明さん「「作ってから売る」と「売ってから作る」と「売れるようにしてから作る」~技術の社会実装のための『開発』~」(Speaker Deck)(事業の初期に、技術リスクと市場リスクを下げる章)

研究者や技術者は技術リスクを気にしがち

資料は、事業の初期をこう描きます。最初は、技術リスクも市場リスクも高い。まず技術リスクが気になったら、研究開発する、実験して確かめる、少量生産してみる、といった取り組みで下げていく。

やってみて、できないことが分かることもある、と添えられています。

次に、技術リスクが下がっても市場リスクが高いなら、事業開発として、テストマーケティングしてみる。作れれば売れるようなルールを作る。そうすると、技術リスクも市場リスクも低くなる。

ここで資料が注意を促すのが、研究者や技術者は技術リスクを気にしがち、という点です。市場リスクに目を向けず、研究開発だけに力を入れてしまうことも多い。

事業では、両方のリスクを同時に下げるのが大事だ、と書かれています。

AIで道具を作る人にも、同じ形が起きやすいと私は思います。動くものができた。これは、技術リスクが下がった状態です。でも、それを使いたい人がいるのかは、動いた事実だけでは分かりません。

2025年8月の記事に、こう書いています。

AI氣道『AI×起業:お客様に喜ばれる商品づくりの方法とは?Part2|AI時代の実践ガイド』より

「AIは優しいから、いいアイディアですね、って背中を押してくれる。でも実際にお客様に見せると、シーンとしちゃうことがある。」

AIの褒め言葉と、相手の反応は別物だという話は、2025年8月の記事、『AI×起業:お客様に喜ばれる商品づくりの方法とは?Part2|AI時代の実践ガイド』で書いています。

ここからは、元の資料にはない、AIを使う側の私の提案です。試した結果は、まだありません。

たとえば、問い合わせ対応を任せられるAIサービスを作りかけている場面で考えます。技術リスクは「必要な情報を、正しく返せるか」。市場リスクは「相手が、その対応を任せたいか」です。

自分の企画をAIに渡して、この二つの「分からない点」を1行ずつ書き出してもらいます。続けて、それぞれを確かめる方法の案を並べてもらいます。技術側は、実際の問い合わせ文で試す。

市場側は、使う人に見せて、任せたい範囲と、困る場面を聞く。

気をつけたいのは、AIの分析だけで「需要がある」と決めないことです。AIは、分かれた線と確かめ方の案を並べる役です。市場リスクが下がったかどうかは、相手に見せた反応でしか動きません。

04

超音速機のBoomは「作る前に売った」。「このスペックができれば買う」の約束を先に取る手

作る前の設計図から、LOIの約束の書面へ矢印でつなぐ図解
元記事キャプチャ: このスペックができれば買う、のスライド
元記事キャプチャ: 「このスペックができれば買う」

馬田隆明さん「「作ってから売る」と「売ってから作る」と「売れるようにしてから作る」~技術の社会実装のための『開発』~」(Speaker Deck)(「売れるようにしてから作る」手法の2例)

「このスペックができれば買う」という約束を Letter of Intent (LOI) という形で顧客と取り付けておく

「売れるようにしてから作る」の実例として、資料が取り上げるのは、超音速飛行機を作る Boom です。資料のスライドでは、Boom は作る前にオプション契約を提案した、と説明されています。

顧客は「すべて計画通りに進めば購入する」という条件で LOI を締結しました。Y Combinator でよくお勧めされる手法だそうです。飛行機を作る前に、売る約束の入口を取っている、という構図です。

LOI は Letter of Intent、意向表明書のことです。資料の説明では、「このスペックができれば買う」という約束を、LOI という形で顧客と取り付けておく。

あとは、そのスペックの製品を開発する。ハードウェア系スタートアップがよく取る手段、と書かれています。

IT系の手法としては、MVP を作って反応を見る方法や、クラウドファンディングをしてから作る方法が、これまでも提案されてきた、と紹介されています。これら以外にも色々な手法がある、と注釈も付いています。

ここで注目したいのは、飛行機とソフトウェアの違いより、順番です。作る前に、買うかどうかの反応を取りにいく。9月6日の記事で、AMERI VINTAGE の黒石奈央子さんの回から、こう書きました。

AI氣道『AMERI VINTAGEの黒石奈央子さんが解説する「発売前」のSNS活用術。売る前に熱をためる順番』より

「作ってから売れるか悩むのではなく、作る前に反応を見にいきます。」

作る前に反応を見にいく順番は、9月6日の記事、『AMERI VINTAGEの黒石奈央子さんが解説する「発売前」のSNS活用術。売る前に熱をためる順番』で書いています。

黒石さんの回は、発売前に手を挙げてもらう欄を作る話でした。Boom の LOI と形は違いますが、「作る前に相手の反応を置いておく」という点は並べて読めると思います。

この先は、元の資料に書かれていない、AIを使う側の私の提案です。こちらも試してはいません。

作る前に反応を取りにいく相手は、AIに一緒に挙げてもらえます。作りかけの企画を渡して、「このスペックができれば使う」と言ってくれそうな人の種類を並べてもらい、その人に聞く質問を絞ってもらいます。

AIは、聞く相手と質問の下書きを出す役です。「使う」と答えるのは、いつも人の側です。

注意が一つあります。資料のスペックシートの例では、法的な拘束力のない LOI を結んでから作る、と書かれています。意向表明は、売上の確定ではありません。反応を取ったあとも、作れるかどうかの確認は、別に続きます。

05

相手に見せる1枚の仕様を、AIと一緒に下書きする。LOIの手前でできること

AIの机で1枚の仕様を下書きし、相手の机へ渡して反応が戻ってくる図解
元記事キャプチャ: 自らの手で、のスライド
元記事キャプチャ: 自らの手で

馬田隆明さん「「作ってから売る」と「売ってから作る」と「売れるようにしてから作る」~技術の社会実装のための『開発』~」(Speaker Deck)(社会実装のための「開発」の章)

「作れれば沢山売れる」環境を自らの手で (予め) 作ることは技術開発+事業開発両者の役目

資料の中ほどに、こういう整理があります。技術の社会実装のためには、技術開発と事業開発の両方の「開発」を、同時に進める。そして「作れれば売れる」環境を作る。

ただ、研究開発の部門が分かれていると、意外とやられていない、とも書かれています。

引用した一文では、「作れれば沢山売れる」環境を、自らの手で、あらかじめ作ることは、技術開発と事業開発の両者の役目、と言い切られています。作る人にも、売る環境を整える役目がある、という意味に私は読みました。

では、小さな仕事の道具やサービスで、その役目を果たすには、何から始めるか。ここからは、元の資料にはない、AIを使う側の私の提案です。試した結果は、まだありません。

資料が見せるスペックシートは、製品の仕様をまとめたものです。これを、自分の道具のサイズに合わせて、1枚にしてみます。誰の、どの仕事を、どこまで引き受けるのか。できないことは何か。

使うのに必要な条件は何か。人が確認する箇所はどこか。

この下書きを、AIに頼みます。企画のメモを渡して、1枚の形に整えてもらい、足りない項目を質問してもらう。AIは、書式を整えて、抜けを指摘する役です。

そのうえで、その1枚を相手に見せます。「便利そう」という感想だけで終わらず、「この条件なら使いたい」「ここが足りない」という具体的な話に進めるのが狙いです。相手の返事が、LOIの手前にあたる反応になります。

10月5日の記事で、私は熱から作ることについて、こう書きました。

AI氣道『AI時代、熱から始めるのは、商売として甘いのか』より

「でも、これは「うまくいった側」の話です。熱があっても、買う人の困りごとに届かなければ商売にならない。」

熱から作る話の限界は、10月5日の記事、『AI時代、熱から始めるのは、商売として甘いのか』で書いています。

熱で作ることは、私の実感です。ただ、それが商売になるかは、買う人の困りごとに届くかどうかで決まります。1枚の仕様は、その届き具合を、作る前に相手と一緒に見るための紙です。

気をつけたいのは、関心の表明を、売上と同じに扱わないことです。反応が良くても、実際に使われるかは、使ってもらうまで分かりません。

06

「良いものを作れば売れる」は、ものさしが変わると崩れる。AIで作る商売の「良さ」を測り直す

速さと手間が減るという2本のものさしで同じ立方体を測る図解
元記事キャプチャ: ものさしが変われば、のスライド
元記事キャプチャ: ものさしが変われば

馬田隆明さん「「作ってから売る」と「売ってから作る」と「売れるようにしてから作る」~技術の社会実装のための『開発』~」(Speaker Deck)(ルールと「ものさし」の章)

「良いものを作れば売れる」ものさしが変われば「良さ」自体が変わる

資料の後半は、ルールの話です。ここでいうルールは、法・規制、標準・規格、ガイドライン、ガイダンスの総称とされています。目的や機能の側から見ると、競争の土俵に立つ。品質を確保する。事業を可能にする。

コストを下げる。そして、市場の予見性を高める。競争優位性を確保する。新しい市場を作る、と広がってきている、という整理です。

ルールには、二つの向き合い方があります。「入場券」や最低限の要件としてのルールは、与えられたルールに間違いのないよう従うだけ。もう一つは、事業戦略としてのルール。

守りのルールと、攻めのルールが、それぞれ描かれています。

そして、「ものさし」の話に入ります。従来の商品のものさしは、性能と価格でほぼ決まる世界です。そこへ、サステナビリティや人権などの、新しい価値観が反映された評価軸が加わり始めている、と書かれています。

どのものさしを使うかで、価値は変わってきます。

例として、バスケットボールが出てきます。ゴールに入れたら1点。ボールに触れて「も」1点。ルールが違えば、全然違うゲームになる。そのあとに、問いが出ます。

バスケットボールがより面白くなり、かつ自チームが有利になるルールを考えてみてください。そのルールが今のものより良い理由を、理想・理屈・理論を使って述べてください。

問いのあとには、「大義と中立性」という言葉と、理想や理屈や理論はアカデミアの協力が必要か、という問いが続きます。

自分に有利なルールを作るなら、それが自分だけに得な基準ではない、と言える理由が要る、ということだと私は読みました。

ここから先も、資料の外にある、AIを使う側の私の提案です。実際にはまだ回していません。

AIで作るサービスを、出力の速さや量で比べると、作るものも、そこへ寄っていきます。私なら、別のものさしも並べて考えます。

たとえば「利用者が自分で判断できる」「確認の手間が減る」「仕事を手放せる範囲がはっきりしている」。

AIには、それぞれのものさしで、誰が助かるか、どんな抜け道や不利益が生まれるかを、比べて並べてもらいます。ただし、自分の商品を有利に見せるだけでは足りません。

バスケの問いの「大義と中立性」にならって、相手にも意味のある基準かを、相手に見せて確かめます。

動くのに稼げていない道具がある、という場面は、私の仕事にもあります。9月25日の記事に、こう書きました。

AI氣道『Claude Code×Supabase×Vercel×Stripeで最初の1ドルを稼ぐまでの実演。Stephen G. Popeが見せた4点セット』より

「私の仕事道具にも、動くだけのものがあります。稼げてはいません。」

動くことと、稼げることの距離は、9月25日の記事、『Claude Code×Supabase×Vercel×Stripeで最初の1ドルを稼ぐまでの実演。Stephen G. Popeが見せた4点セット』で書いています。

動くかどうかだけで見れば、合格に見えます。でも、稼げてはいません。資料の言葉を借りれば、何を良いとするかを、動くかどうか以外のものさしでも並べて見てみる価値がある、と私は考えます。

07

今日の30分で、企画を1つ選び、「作れるか分からない点」と「売れるか分からない点」を1行ずつ書く

砂時計のそばで、1つ選ぶ、2つの不明、大きい方、1枚と4段の階段を上る30分の手順の図解
元記事キャプチャ: 自分たちの事業がどのようなリスクを取っているのかを理解、のスライド
元記事キャプチャ: 自分たちの事業がどのようなリスクを取っているのかを理解

馬田隆明さん「「作ってから売る」と「売ってから作る」と「売れるようにしてから作る」~技術の社会実装のための『開発』~」(Speaker Deck)(技術リスクと市場リスクの地図の章)

自分たちの事業がどのようなリスクを取っているのかを理解

資料の最後は、まとめです。売れるようにしてから作るための事業開発として、技術開発と事業開発を同時に行う。そして、ルール適応型から、ルール形成型へ。

競争の土俵に立つためにルールへ適応するだけでなく、競争優位を得るためにルールを形成する。スタートアップでも、ルール形成に取り組むことで、新しい市場の創出と、事業の急成長を目指せる、と結ばれています。

大きな話に聞こえます。でも、資料の途中にあった、一つの言葉に戻ると、今日からできることが見えます。まず、自分たちの事業がどのようなリスクを取っているのかを理解する。ここが出発点でした。

30分でやるなら、こうです。これは、元の資料にはない、AIを使う側の私の提案です。試した結果は、まだありません。

最初の3分で、作りかけの道具かサービスを1つ選びます。次の7分で、「作れるか分からない点」と「売れるか分からない点」を、1行ずつ書きます。次の5分で、どちらが大きいかを決めます。

残りの15分で、相手に見せる1枚の仕様の下書きを、AIと一緒に作ります。誰の、どの仕事を、どこまで引き受けるか。できないこと。使う条件。人が確認する箇所。

この4つが入っていれば、最初の1枚としては十分だと思います。

相手に見せるのは、明日でも、来週でも構いません。見せる相手は、1人でも大丈夫です。大事なのは、作る前に、一つでも反応を置いてみることです。

元の資料の言葉を借りれば、技術開発と事業開発の両方の「開発」を進める、ということになります。私は、この資料を、そう受け取りました。

作る手が速くなった今だから、売る環境を先に整えるという順番が、小さな商売の側にも効いてくると思います。

FAQ

よくある質問

Q. 「売れるようにしてから作る」とは何ですか?

A. 資料では、「作ってから売る」と「売ってから作る」のあいだにある三つ目の進め方として紹介されています。作る前に、売れる環境を先に整えておく進め方です。例として、自社が有利なルールを作る、MVP を作って反応を見る、スペックシートを作って LOI を獲得する、クラウドファンディングをしてから作る、が挙げられています。

Q. 技術リスクと市場リスクは、どう違いますか?

A. 資料では、技術リスクは主に「作れるかどうか分からない」リスクで、科学的にできるか、品質を担保できるか、大量生産できるか、といった点です。市場リスクは主に「売れるかどうか分からない」リスクで、ニーズや課題があるか、市場は大きいか、規制がどうなるか、といった点です。

Q. LOI とは何ですか? 売上と同じですか?

A. LOI は Letter of Intent、意向表明書のことです。資料では、「このスペックができれば買う」という約束を、LOI という形で顧客と取り付けておく手法として紹介されています。スペックシートの例では、法的な拘束力のない LOI を結んでから作る、と書かれています。売上の確定ではありません。

Q. TRL と ARL とは何ですか?

A. TRL は Technology Readiness Level、ARL は Adoption Readiness Level の略です。資料では、アメリカの一部の、社会実装を見据えた研究開発補助金で、TRL だけでの管理から ARL の管理も始まった、と紹介されています。TRL が低いと技術リスクが高く、ARL が低いと市場リスクが高い、という対応です。

Q. AIで作った小さなサービスにも、この考え方は使えますか?

A. 資料は、研究開発やハードウェア系の事業を主な舞台にしています。ソフトウェアについては、作れる場合が多いので「売ってから作る」がお勧めされることもある、と書かれています。AIで作る小さなサービスへの応用は、元資料にはない、私の提案です。試した結果は、まだありません。

MATOME

まとめ:作る前に、相手が使いたくなる条件を、AIと1枚の仕様にして確かめる

馬田さんの資料は、「作ってから売る」と「売ってから作る」のあいだに、「売れるようにしてから作る」を置きました。事業を、技術リスクと市場リスクの2軸で整理して、技術リスクだけでなく、市場リスクも同時に下げることを勧めています。

私は、AIで作る速さが上がった今こそ、売る環境を先に整える順番が効いてくるのでは、と読みました。動くものができたことは、技術リスクが下がっただけで、使いたい人がいるかは、まだ分かりません。

そこで私は、企画をAIに渡して、作れるか分からない点と売れるか分からない点を分けて並べてもらうこと、相手に見せる1枚の仕様をAIと下書きすることを提案します。AIの分析だけで需要があると決めず、相手に見せた反応で確かめます。どちらも元資料にはない、AIを使う側の私の提案です。

最初の一歩は、30分で、作りかけの企画を1つ選び、「作れるか分からない点」と「売れるか分からない点」を1行ずつ書くことです。作ること自体を楽しむ時間は、そのままで良いと思います。商売にして届けるときの確かめ方として、使ってみてください。

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COLUMN

大鍋を炊く前に、小皿を1つ出して味を聞く。仕込みの前にできる、いちばん小さな確かめ方

夜の調理場で、大鍋のそばから小皿を1つ客に差し出し、味を聞く図解

料理でたとえます。新しい煮物を、お客さんの分、大鍋でまとめて仕込む前に、小皿に一口分だけ取って、「この味付けなら、買いたいですか」と聞いてみる。その答えを聞いてから、大鍋に火を入れる。仕込みの量は同じでも、聞いたあとの鍋は、迷いが少なくなります。馬田さんの言う「このスペックができれば買う」の約束は、私には、この小皿の一口に見えました。

ただ、小皿の反応には、気をつけることがあります。「おいしいですね」と言われたことと、「買います」と言われたことは、別のものです。AIに味見を頼んで「いい味です」と返ってきたときも同じで、それは優しい一言であって、お客さんの財布が開いた音ではありません。小皿の反応は、レシピの次の一歩を決める材料であって、売れる保証ではない。そこを分けておくと、期待しすぎずに済みます。

だから、AIには、小皿に載せる説明書きを整えてもらいます。何の煮物で、誰向けで、どこまで作れて、何は作れないのか。その1枚を見せて、お客さんの顔を見る。鍋を火にかけるのはAIでも、小皿を出すかどうかを決めるのは、料理をする人です。私の運用も、まだ途中です。だからこそ、まずは一口分だけ、1人の相手に出してみる。その小ささから試してほしいと思います。その途中の話は、

分身AIと歩んだ100日の全まとめにも残しています。

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今回紹介した記事

著者馬田隆明さん(東京大学 FoundX)
媒体Speaker Deck のスライド
公開日2023年10月30日
元URLhttps://speakerdeck.com/tumada/zuo-tutekaramai-ru-to-mai-tutekarazuo-ru-to-mai-reruyounisitekarazuo-ru

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