AIで“ゼロから”作ろうとして手が止まる経営者へ
勝っている仕組みを真似て「1点だけ」ずらす考え方
2026.06.25 | AI氣道 コラム
家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくんです。
「AIを使って、うちだけの特別な仕組みをゼロから作りたい」——最近、経営者の方からこの相談、ほんとによく受けるんだよね。
生成AIが賢くなって「自社専用のシステムも作れるらしい」って聞けば、そう考えるのは自然なこと。でも私はね、その手前で一回だけ立ち止まってほしいと思ってるんだよ。
だってAIで一番もったいない失敗って、「誰も困ってないものを、ゼロから一生懸命作っちゃう」ことだから。
先日、すてぃおさんの「ゼロから作るな。パクれ。」っていうnote記事を読んで、思わず膝を打った。エンジニアの起業論として書かれた記事なんだけど、これがそのまま、現場を持つ経営者のAI活用に当てはまる話だったんだよね。今日はこの記事を入り口に、「AIで何を作るか」を決める前に知っておきたい“1点ずらし”の考え方を、私自身の現場(mothership-lab)と重ねながら話すね。
この記事でわかること
- なぜ「ゼロから作る」がAI時代に一番危ないのか
- メルカリ・freee・OpenWorkに学ぶ「後発でも勝てる」型
- 私の現場 mothership-lab も“発明”じゃなく“1点ずらし”だった話
- 今日から動ける3つのステップ
なぜ「ゼロから作る」が、AI時代に一番危ないのか

すてぃおさんの記事の核心は、ひとことで言うとこれ。
新しいことをやってはいけない。すでにお金が払われている市場をパクれ。
過激に聞こえるけど、理由を聞くと納得するんだよね。事業が失敗する一番の原因は、「存在しない市場」に入っちゃうこと。つまり——誰も困ってない課題を課題だと思い込む。困ってる人はいるけど、お金を払うほどじゃない。困ってる人はいるけど、数が少なすぎる。このどれかに当たると、どんなに良いものを作っても売れないんだ。
で、これってAI活用でも全く同じことが起きてるんだよ。「AIで自社専用の◯◯を作る」って決めた瞬間、私たちは“まだ誰も成功してない仕組み”の検証を、自分のお金と時間で始めることになる。
レシピも分量も決まってない新作料理を、いきなり満席のお店で出すようなもの。仕込みの段階で、ほとんどの食材がムダになっちゃうんだよね。一方で「すでにお金が払われてる仕組み」を真似れば、需要も価値もお客さんの数も、先に世の中が証明してくれてる。検証のリスクをまるごと飛ばせるんだ。
以前「Claude Skillsを増やしても結果が出ない理由」で、「道具を増やす前に判断軸を整えよう」っていう“内側”の話を書いた。今日はその一歩手前、「そもそも何を作るか=既にある勝ち筋を真似る」っていう“入口”の話なんだよね。
「後発じゃ勝てない」は、ただの思い込み

ここで多くの人が反論するんだよね。「真似たって、先にやってる人に勝てるわけがない」って。でも歴史を見ると、勝者の多くは後発なんだよ。Googleは18番目の検索エンジンだったし、Facebookだって後から出てきたSNS。
すてぃおさんは日本の例も挙げてる。これがわかりやすい。
| 後発で勝った会社 | 先行していた相手 | どこで勝ったか |
|---|---|---|
| メルカリ | フリル(女性向けフリマ) | 勝者が決まる前のタイミングで全方位に拡大 |
| freee | 弥生(何十年も会計ソフトを統治) | 「簿記を知らなくても使える」UIと銀行同期・AI自動仕訳 |
| OpenWork | 既存の企業口コミサイト | 「自分が書かないと他人の口コミが読めない」仕組みで質を担保 |
特にfreeeの話が象徴的なんだよね。会計ソフトの市場は、弥生さんが何十年も押さえてた。普通なら「今さら入っても無理」って諦める場所。でもfreeeは、先行者が当たり前すぎて気づかなかった前提——「ユーザーは簿記を知ってるはずだ」——を、まるごとひっくり返した。「簿記を知らない人でも使える」っていう、たった1点。そこを変えただけで、巨大な牙城に風穴を開けたんだ。
これ、「ゼロから新しい会計の概念を発明した」わけじゃない。会計ソフトっていう市場はそのまま借りて、勝ち筋を1点だけずらした。それだけなんだよね。
丸パクリじゃなく、「1点だけ」ずらす

ここが今日の一番大事なところ。「パクれ」って言っても、まるごとコピーしろって意味じゃないんだよ。後発で勝つ会社は、みんな同じ型を踏んでる。
ひとつ、市場そのものは素直に真似る(需要が証明済みだから)。ふたつ、勝ち筋を「1点だけ」ずらす(そこで差をつける)。メルカリはターゲットを女性限定から全方位へ「広げた」。freeeは簿記知識を「不要にした」。OpenWorkは口コミを「書いた人だけが読める」ようにした。どれも、変えたのは1点だけなんだよね。
定番の生姜焼き定食は、そのまま出す。でもタレだけ、自分の店の隠し味に変える。お客さんは「知ってる安心感」で入ってきて、「あれ、ここのは何か違う」で常連になる。ゼロから創作フレンチを発明するより、よっぽど勝率が高いんだよ。
私の現場も発明してない——mothership-labという1点ずらし

正直に告白すると、私はゼロから何かを発明するのが得意なタイプじゃない。むしろ苦手なんだよね。
そもそも、私のキャリアの出発点からして、ゼロからの発明なんかじゃなかった。中卒でフリーターだった私が、リフォーム会社でWEB集客を独学で覚えた。といっても、新しい集客術を発明したわけじゃないんだよ。「言葉と写真と導線で、人の行動を変える」っていう、すでに世の中にある型を、ただひたすら真似して、自分の現場に当てはめただけ。それを続けたら、EC事業で月商6,000万円まで行けた。
そのあと、20代で事業に失敗して大きな借金を背負って、134kgまで太って、がんもやった。何度も派手に転んだ私が、そのたびに立ち上がれたのは、ゼロから天才的な一発逆転を発明したからじゃない。いつも、すでに手元にある手札を組み替えて、1点だけ自分仕様にずらしてきたからなんだ。
今の私が毎日の経営を回してる「mothership-lab」っていう仕組みも、まったく同じ。今でこそ119個のスキルと、自前のサブエージェント、たくさんの自動化フックが動くAI秘書チームになってるけど、中身をひとつずつ見ていくと、私がゼロから発明したものって、ほとんどないんだよ。
土台は、Anthropic社のClaude Codeっていう、すでに世界中で使われてる道具。その上に、世の中に公開されてる設計のパターンを真似て、自分の現場に必要な形へ少しずつ寄せた。そして過去に貯めてきたコンテンツ資産(私たちは「カルピス原液」って呼んでる。今2,125枚ある)を、捨てずに何度も組み替えて使い回した。つまりmothership-labは、「ゼロからの発明」じゃなくて、「既にある勝ち筋を借りてきて、私の現場に1点だけ合わせ続けた結果」なんだよね。
私がよく使う言葉に「人間は縦に掘る、AIは横に広げる」っていうのがある。自分が現場で縦に掘ってきた専門性に、AIが“すでにある型”を横にどんどん広げてくれる。この組み合わせが、ゼロから作るより何倍も速いんだよ。
| ゼロから発明しようとすると | 既存を真似て1点ずらすと | |
|---|---|---|
| 最初の一歩 | 「何が正解か」から自分で検証 | 動いてる見本をそのまま真似る |
| 失敗のコスト | 時間もお金も全部自腹で先払い | 検証リスクは先人が払い済み |
| 自分の武器 | 毎回ゼロから、すり減る | 既存資産を組み替えるほど増える |
| AIとの相性 | 「作れる」だけで満足して頓挫しがち | 「どこを1点ずらすか」に集中できる |
たとえば、私の仲間の農場長は、本来なら外注で100万円かかる仕組みを、AIを使って部品代6万円で自作した(「外注100万円の見積もりを、部品代6万円で自作した農場長の話」)。これもゼロから新しい業務システムを発明したわけじゃない。「見積もり」っていう、既にお金が払われてる確かな需要に対して、作り方だけを1点ずらした。だから6万円で済んだんだよね。
機能の多さが武器にならない時代=AI活用こそ1点ずらし

すてぃおさんの記事で、私が一番うなったのがこの指摘なんだよね。「今は、機能の多さが武器にならない時代になった」って。
少し前まで、ソフトウェアの世界では「機能の山」が参入障壁だった。先行者が何年もかけて積み上げた多機能に、後発が追いつくのは至難の業。機能数そのものがお城の堀だったんだよ。ところが生成AIが登場して、この堀が一気に浅くなった。AIを使えば、先行者が何年もかけた機能を後発でも短期間で追いつけちゃう。「作れること自体」が、もう誰にとっても珍しくなくなったんだ。
だからこそ、勝敗の分かれ目は「機能をどれだけ持ってるか」から、「どの市場を選び、どこを1点ずらすか」へ完全に移った。これ、現場のAI活用にそのまま跳ね返ってくる。「すごいAIシステムを作れること」自体は、もう自慢にならない。大事なのは、どこに確かにお金が払われてる需要があるかを見極めて、そこに自分の現場だからこそできる“1点の違い”を作り込むこと。この2つだけなんだよね。AIは、その“1点”を形にするスピードを何倍にも上げてくれる道具なんだ。
関連して、AIが「自分の学びを貯めて賢くなる」しくみを「ループエンジニアリングの次の地平」、AI活用を“遊び”に変える発想を「AIツールはゲームUI化で、遊ぶほど学べて稼げる場になる」で書いてる。どっちも“ゼロから”じゃなく、既にある仕組みの組み替えの話だよ。
「Winner takes all」かどうかだけ、先に見極める

ひとつだけ注意点がある。後発で勝てるのは、「勝者総取り(Winner takes all)にならない市場」に限るってこと。
ネットワーク効果が強い市場(LINEやフリマアプリ)は、「みんなが使ってるから自分も使う」が働くから、勝者が決まった後の参入は茨の道。莫大な広告費が要る。一方でネットワーク効果が薄い市場(翻訳ツールや業種特化のBtoBサービス)は、先行者がいても後発が1点ずらしで自分の居場所を作れる。会計のfreeeが、個人事業主では弥生に及ばなくても、法人っていう別のセグメントで勝てたのは、会計ソフトがネットワーク効果の薄い市場だったからなんだよね。
これを現場のAI活用に置き換えるとね——「みんなが集まる場所そのもの」を後から作ろうとするのは大変。でも、「自分の業種・自分のお客さん・自分の業務フロー」っていう、世界に一つしかないセグメントなら、後発でも1点ずらしで十分に勝てる。むしろ、そここそが自分の主戦場なんだよ。
今日から始められる、3つのステップ

抽象論で終わらせたくないから、明日から動ける形にまとめるね。
ステップ1:すでにお金が払われてる「勝ち筋」を1つ見つける。自分の業界で、すでに繰り返しお金が動いてる仕事を1つ選ぶ。見積もり、予約管理、問い合わせ対応、定期レポート——なんでもいい。「誰かが、すでにお金を払ってる」ことが条件で、新しさは要らないんだよね。
ステップ2:その勝ち筋を、まず素直に真似てみる。ゼロから設計しようとせず、世の中で動いてる見本(他社のやり方、公開事例、AIに「定番のやり方を教えて」と聞いた答え)を、まず素直になぞる。ここでAIが効く。「定番の型」をAIに出させて、自分の現場に当てはめるんだ。
ステップ3:勝ち筋を「1点だけ」ずらす。全部を変えようとしないでほしい。お客さんが「あれ、ここのは何か違う」と感じる、たった1点を決める。freeeなら「簿記不要」、農場長なら「外注を自作に」。その1点をAIで作り込んで、残りは真似たままでいいんだよ。
この3ステップのいいところは、どこで間違えても被害が小さいこと。市場は真似てるから「需要がない」で転ぶことはないし、変えたのは1点だけだから、外れても元に戻すのが簡単。AIが、この試行錯誤を何倍も速くしてくれるんだよね。
まとめ——“発明家”より“目利きの料理人”であれ

新しいことをゼロから始めるのは、かっこよく見える。でも、見つけた「新しい市場」のほとんどは、残念ながら需要のない場所なんだよね。AIで作れるようになった今こそ、その落とし穴は深くなってる。
私がmothership-labで学んだのも、結局これだった。ゼロからの発明家になろうとするより、すでに評価されてる定番を真似て、自分の現場の隠し味を1点だけ加える“目利きの料理人”でいるほうが、ずっと遠くまで行ける。AIは、ゼロから何かを生み出す魔法じゃない。すでにある勝ち筋を、自分の現場の味に1点だけ素早く寄せてくれる、とても優秀な仕込み係なんだ。
「何を作ろう」と手が止まったときは、思い出してほしい。作るのは“新しい市場”じゃなくて、“すでにある勝ち筋の、自分だけの1点ずらし”だよ。
よくある質問
- Q1. 真似るのは、パクリやモラル違反になりませんか?
- 市場や「課題の選び方」を真似るのと、他社の商標・文章・デザインをそのままコピーするのは、まったく別の話だよ。前者は合理的な戦略、後者は権利侵害。真似るのは「どこに需要があるか」っていう構造だけで、出てくるアウトプットは自分の現場の1点ずらしで自然と別物になる。気になる部分は、公開前に必ず一次情報(公式サイトや専門家)で確認してね。
- Q2. AIで本当に「ゼロから」作れる時代なのに、なぜ作らないほうがいいんですか?
- 「作れること」と「売れること」は別の能力だから。AIが上げてくれたのは「作るスピード」であって、「需要を生み出す力」じゃないんだよね。需要は今も世の中が決める。だからこそ、需要が証明済みの場所を選んで、そこにAIの作るスピードを全部ぶつけるのが一番合理的なんだ。
- Q3. 自分の業種は特殊で、真似できる先行事例が見当たりません。
- それ、多くの場合はチャンスだよ。「ネットワーク効果が薄く、先行者が雑にしか押さえてない市場」の可能性が高いから。完全に同じ事例がなくても、「隣の業種の勝ち筋」を持ってきて自分の業種に1点ずらす、っていう応用が効く。まずは業種をまたいで「お金が払われてる型」を集めるところから始めてみてね。
🏛️ 偉人に聞く——「ゼロから作らない」知恵
この「すでにあるものを活かして1点ずらす」って考え方、実は大昔から賢人たちが言ってることなんだよね。2人に登場してもらおう。
📜 孔子 ──「故きを温ねて、新しきを知る」
わしは『論語』でこう説いた。「故きを温ねて新しきを知れば、以て師と為るべし」──昔から伝わるものをよくよく温め直せば、そこから新しい知恵が生まれる、とな。
何もないところから知恵は湧かぬ。先人の積み重ねを敬い、学び、その上に己の工夫を一つだけ載せる。それが「新しきを知る」ということじゃ。気負う前に、まず君の現場の「故き」を温めてみよ。
⚡ 平賀源内 ──「わしのエレキテルも、ゼロからの発明ではない」
みんな勘違いしておるが、わしはエレキテルを発明したわけじゃない。あれはオランダ渡来の品でな、長崎で手に入れた「壊れた一台」を、6年かけて仕組みを調べ、修理して動くようにしただけよ。
ゼロから生むより、すでにこの世にある面白いものを、自分の手で直して作り変える。そっちのほうが、よっぽど早いし面白い。「前例がない」を恐れるより、すでにある何かを1つ自分流にいじってみろ。とにかくやってみよう、だ。
ひろくんのコラム——「苦手」を認めたら、武器が見つかった
実はね、私、才能診断を受けたら「ゼロからの創造が苦手なトレーダー」ってはっきり出たんだよ。最初はちょっとショックだった。「経営者なのに、ゼロイチが苦手って致命的じゃん」って。「革新的なアイデアを生まないといけない」って、ずっと思い込んでたから。
でも同じ診断で、「ビジョンを描いて、最善の道を選ぶのは得意」とも出た。料理で言えば、最高のシェフの才能があるのに、つい自分でキッチンスタッフもやっちゃうタイプ。だから、あるときから考えを変えたんだ。「ゼロイチが苦手なら、すでにあるものを組み合わせて1点ずらすことに、徹底的に振り切ればいい」って。そう決めてから、過去に貯めてきたコンテンツ(カルピス原液2,125枚)も、世の中の優れた仕組みも、全部「組み替えるための材料」に見えるようになった。
正直に言うとね、今でも「全部自分で作りたい」っていう“抱え込みの快感”が出ちゃうんだよ。ワクワクするアイデアが多すぎて、どれも味見の段階で手が止まる。記事のタイトルにした「手が止まる経営者」って、半分は私自身のことなんだ。
だからこそ、「ゼロから作らない。すでにある勝ち筋を1点だけずらす」は、私みたいな凸凹な人間が前に進むための、生き方の処方箋でもある。苦手を無理に克服するより、得意な人のやり方を真似て、自分の現場で1点だけずらす。凸凹なまま、夢中でいられる。これが、今の私がたどり着いてる答えなんだよね。





