AI氣道コラム — Claude Skills
Skillsを72個入れる前に
——“自分の中身の質”の話をさせて
2026年6月18日
家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。
先日、ある投稿がXのタイムラインを席巻した。
東大ClaudeCode研究所が公開した「トップ層が使うClaude Skills 72選」(X Article)。38万ビューを超え、私のフォロワーさんのなかでも「保存した」「試した」という声が続々と届いた。元はアメリカの研究者Mr. Buzzoni氏が公開した67のSkills(420万ビュー超)をベースに、日本のビジネス現場向けに4カテゴリ+独自パックで再構成した力作だ。
私も読んだ。設計思想「設計を承認するまでコードを書かない」という発想、面白いと思った。「Skillsは一度教えたら永久に覚える仕組み」という言葉にも、ハッとした。
でも正直に言う。
72個の中身を追いかけながら、私はずっと一つのことが気になっていたんだよね。
「あなたが教え込む”中身”は、濃いですか?」
この記事の3行ポイント
- Claude Skillsは「永久に覚える仕組み」だからこそ、教える中身が薄いと永久に薄いまま。
- ツールの数を競う前に、自分の言葉・体験・判断基準という「中身の質」が問われる。
- 「社長無人化」を目指す私が実際にやっていること——Skillsに仕込む3つの問いを紹介。
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まず前提として、Claude Skillsとは何かを整理する。
Claudeには「Skills(スキル)」という機能がある。SKILL.mdと呼ばれるファイルにAIへの指示・仕事のやり方・判断基準をあらかじめ書いておくと、Claudeは毎回そのルールをベースに動いてくれる。
東大ClaudeCode研究所が紹介する72選は、そのSkills設計を「どんな領域で・どんな目的で使うか」という観点で体系化したものだ。同研究所のX Articleによれば、4カテゴリに整理されている。
📝 72選の4カテゴリ(出典: 東大ClaudeCode研究所)
- 思考・ブレスト系:Brainstorming、Grill Me(自分に問いを投げさせる)など
- 執筆・コミュニケーション系:ライティングスタイル定義、メールのトーン設定など
- 開発・設計系:PRD(製品要件定義)、「設計を承認するまでコードを書かない」設計など
- 業務・自動化系:日常タスクの自動化、ワークフロー化など
この体系化の発端はMr. Buzzoni氏が公開した「67 Skills」(420万ビュー超)だ。それを日本のビジネス現場に合わせて再構成・拡張したのが今回の72選という位置づけになる。
Mr. Buzzoni(研究者・67 Skills著者)「AIに何をどう教えるかを設計することが、成果の差を生む」
出典: Mr. Buzzoni 「67 Claude Skills」(420万ビュー超)をもとに意訳
「Skillsは一度教えたら永久に覚える仕組み」——この言葉が、私にはいちばん刺さったかな。
東大ClaudeCode研究所「Skillsは一度教えたら永久に覚える仕組み」
永久に覚える。裏返せば、永久に間違い続けるリスクもあるということだよ。
出典: 東大ClaudeCode研究所「トップ層が使うClaude Skills 72選」(38万ビュー超・2026年)
でも、ここで立ち止まってほしい

72選という数字は、それ自体が呪いになりうる。
「全部入れなきゃ」「早く試さなきゃ」「周りがやってるから自分も」——そう焦った瞬間に、本質が抜け落ちる。
Skillsは何を食べさせるかで全てが決まる「器」だ。どれだけ高性能な器を72個そろえても、注ぐ中身が薄ければ薄い答えしか返ってこない。
正直、GPTs研究会(多くの経営者が集まるコミュニティ)で私がいちばん多く受ける悩みは、実はこれなんだよね。
よくある声(経営者・個人事業主から)
「ChatGPTに聞いても、なんか当たり障りのない答えしか返ってこない」
「プロンプトをどう改善しても、ズレた提案をされる」
「便利なのはわかるけど、自分のビジネスには使えてない気がする」
これは全て、AIに渡す「自分情報」の濃度問題だ。Skills設計以前の話として、「あなたは誰か」「あなたの判断軸は何か」「あなたのお客さんはどんな人か」——この「中身」がAIに届いていない。
ツールを新しくしても、Skillsを増やしても、この問題は解決しない。
むしろ、薄い中身を高性能な器に入れると、より説得力のある薄い答えが出てくる。これが怖い。
AIに「自分の中身」を教えるとはどういうことか

正直に言うと、私がこの感覚に至ったのは、AIの出力を見て「なんか違う」とモヤッた経験の積み重ねなんだよね。
AIが書く綺麗な文章より、自分が体験して自分の言葉で語ったものが一番価値がある。自分の言葉・体験・判断軸が濃く伝わっているとき、AIのアウトプットはぐっと「自分らしく」なる——これが私のAI活用の根底にある考え方だ。
では「AIに教え込む中身」とは具体的に何か。私が考える3つの層がある。
🧪 AIに教え込む「中身」の3層
-
体験(Episode)
何を経験したか。大きな減量を経て気づいた身体と商売の感覚、直腸がんのサバイバー体験、中卒からWEBマーケティングで事業を作った過程。これは他の誰も持っていない。 -
判断軸(Criteria)
何を大事にするか。「三方よし」「AIに委ねて、人は積み減らして生きる」「脂肪は財宝——失敗も黒歴史も資産になる」。この判断軸がブレると、AIはどの方向に歩けばいいかわからなくなる。 -
言葉(Voice)
どう語るか。私の話し方、よく使う比喩、リズム感、ひろくんらしい「間の取り方」。文体が揃ってはじめて、AIが書いた文章を読んでも「ひろくんっぽい」と感じてもらえる。
Skillsの設計は、この3層をどうAIに伝えるかが全てだ。
「Brainstorming」というSkillを入れたとしよう。でも何をベースにブレストするのか——自分のビジネス文脈、顧客像、大事にしたい価値観——それが書かれていなければ、汎用的なアイデアしか出てこない。72選の力を引き出すのは、Skillsの中に教え込む「中身の質」なのだ。
だから私はこう問う。
あなたのSkillsには、あなたの声が聞こえますか?
「自分にそれほど語れる体験があるか自信がない」——そう感じる方も多いかな。でも私は「語れる体験がない人なんていない」と思っているんだよね。ただ、まだ言語化できていないだけだ。
「自分のビジネスにどう活かすか分からなかったが、光が見えた」——こういう感想をもらえるのが、私がいちばん嬉しい瞬間だ。その「光」の正体は、「自分の言葉・体験・判断軸をAIに渡すやり方が見えてきた」ということだと思う。
私がSkillsに仕込んでいる3つのこと

私は今、「社長無人化」を進めている。経営判断・コンテンツ制作・顧客対応の一部を、AIが私の代わりに担える状態を作ることだ。
そのために私がSkillsに書き込んでいるのは、ツールの使い方より先に次の3つだ。
私の「譲れない判断軸」を書く
私のSkillsにはまず、私が絶対に曲げないことを書いている。
- 「三方よし(自分よし・相手よし・世間よし)」に外れる提案はしない
- 煽り言葉や、過剰な期待をあおる表現は使わない
- 読者(一人社長・発信者)を置いてけぼりにしない。難しい言葉は必ず噛み砕く
- 真面目で不器用で孤独な経営者に向けて書く。煽りも過剰な期待もNG
これを書いておくだけで、Claudeが出すアウトプットが劇的に変わる。私が嫌いな言い回しが自然に消える。私のトーンに近づく。
私の「具体的な体験エピソード」を渡す
「ひろくんらしい例え話をして」とだけ頼んでも、Claudeは架空の例え話を作る。それは私の言葉ではない。
だから私はSkillsの中に、実体験の断片を仕込む。
- 惣菜屋「山口屋」で育った経験——食と商売が常に隣にあった
- 直腸がんのサバイバーとして、「積み減らして生きる」という感覚が生まれた経緯
- 中卒からマーケティングを学んだ「知識を仕入れて試し続けた」試行錯誤の積み重ね
これらを書いておくと、Claudeが記事を提案するとき、私の実体験に似た文脈の角度を選んでくれるようになる。
「私が答えを出す場所」と「AIに任せる場所」を分ける
東大ClaudeCode研究所「設計を承認するまでコードを書かない」
72選の設計思想にある「設計を承認するまでコードを書かない」という言葉——これ、私の経営にそのまま当てはまるんだよね。
私は「What(何をするか)」と「Why(なぜするか)」は自分で決める。「How(どうやるか)」「When(いつするか)」「どう表現するか」はAIに委ねる。
Skillsで設計するのは、この「委ねる境界線」だ。
💡 実践Tips:今日できる一歩
あなたのClaudeのSkills(またはCustom Instructions)に、次の3文を書き加えてみてほしい。①「私が絶対に言わない言葉」②「私のビジネスで大切にしていること」③「私の読者(お客さん)はどんな人か」。これだけで、AIが返す言葉の「温度」が変わる。
72選から私が本当に使っている考え方

誤解のないよう言っておく。72選は良いリストだ。
ただ、「72個全部入れる」は初手として正しくない。私が勧めるのは、まずこの3つから始めることだ。
私が実際に使っているSkills設計3選
1. 「Grill Me」——自分に問いを立てさせる
AIに自分の考えを問い返させるスキル。「その判断の根拠は何ですか」「もし失敗したら何が原因ですか」——外部から批判的に問われることで、自分の思考が鍛えられる。経営者に特に効く。
2. Voice定義——私の話し方をAIに教える
文体・一人称・使っていい言葉と使ってはいけない言葉を書き込む。私の場合は「一人称は私」「読者を煽る表現・過剰な期待をあおる言い回し禁止」「比喩は自然に1〜2個まで」など。これが自分の言葉をAIに伝える最速の方法。
3. PRD的「設計承認ゲート」——話してからつくる
コンテンツでも資料でも、まず構成案を出させて承認してから本文を書かせる。このひと手間で、的外れな「それじゃない」アウトプットが激減する。72選の設計思想「設計を承認するまで書かない」を、コンテンツ制作に転用したかたちだ。
繰り返すが、72選を参考にしながら「自分のビジネスに当てはまるもの」を3〜5個選ぶのが正解だ。全部入れようとした瞬間、器集めが目的になる。
あなたが経営者として使うSkillsの数は、少なくていい。一つひとつに、あなた自身の体験と言葉が濃く仕込まれているかどうかが全てだ。
💡 実践Tips:「選定の問い」を使う
72選を眺めながら次の問いを自分に投げてみてほしい。「このSkillsに、私の判断軸を書き込めるか?」答えがすぐ出るものから着手する。答えがぼんやりするものは後回しでいい。ぼんやりしている=自分の言葉・体験がまだ整理できていない、というサインだ。
よくある質問
- Q. Claude Skillsを使い始めるのに何が必要ですか?
- Claude ProまたはTeamプランのアカウントがあれば始められます。最初に必要なのはツールの設定より先に、あなた自身の「判断軸」と「話し方」を文章で整理することです。それを書いてからSkillsに入れる順番が、成果の早道です。
- Q. 72個全部試した方がいいですか?
- いいえ。まず3〜5個から始めてください。全部入れようとすると「器集め」が目的になり、肝心の「中身(自分の体験・言葉)」を整理する時間がなくなります。少ない数でも、自分の体験・判断軸・言葉が濃く書き込まれたSkillsの方が、格段に使えます。
- Q. 「自分の中身(体験・言葉)」を整理するにはどこから手をつければいいですか?
- 3つの問いから始めてみてください。①私が絶対に使わない言葉は何か ②私のお客さんはどんな悩みを持っているか ③私がビジネスで絶対に譲れないことは何か。これを箇条書きで書いて、Claudeに渡すだけでアウトプットの質が変わります。
- Q. AIに任せることへの不安があります。どうすればいいですか?
- 「What(何をするか)」と「Why(なぜするか)」は自分で決める、という一線を引くことをお勧めします。AIに委ねていいのは「How」と「When」と「表現」です。判断の根幹は人間が持つ。この分担を決めた上でSkillsを設計すると、安心して使えるようになります。
まとめ:Skillsは器。中身が命

「トップ層が使うClaude Skills 72選」は、優れた地図だ。どこに向かえるかを示してくれる。
でも地図があっても、出発点に立っていなければ進めない。
あなたの出発点は、あなた自身の言葉と体験だ。体験・判断軸・言葉——この3つがSkillsに仕込まれたとき、はじめて「永久に覚える仕組み」は本当の力を発揮する。
私が「社長無人化」を進める中で実感しているのは、AIが賢くなるより先に、自分が「自分の言葉で語れているか」の方がはるかに大事だということだよ。
72個の器を急いで集めるより、今日1個の器に、あなた自身の言葉と体験を濃く注いでほしい。
それが私の、一つの考え方だ。
明日から使える3アクション
- 自分のClaudeに「私が絶対に使わない言葉リスト」を3つ書いて渡す
- 「Grill Me」型の問い返しSkillsを一つ作り、次の意思決定で使ってみる
- 72選の中から1つだけ選んで「自分の体験エピソードを書き足した上で」使ってみる
COLUMN
「教え込む」という覚悟の話
私は惣菜屋で育った。毎日同じ時間に、同じ手順で、同じ味を出す。それが商売だと体で覚えた。
Skillsの設計は、それに似ている。AIに「うちの流儀」を教え込む作業だ。怠ければ、どこかよそのお惣菜みたいな答えが返ってくる。丁寧に仕込めば、うちの味になる。
72選を見ながら私が思ったのは「どれを使うか」より「どれなら自分の流儀を仕込めるか」という問いだった。優れた器でも、中身が決まっていなければ何も入らない。
「積み減らして生きる」——これが私のAI活用の根っこにある言葉だ。あれもこれもSkillsに詰め込もうとせず、今の自分が一番使いこなせるものに絞る。その一つに、自分の全部を仕込む。
数を追う誘惑は常にある。でも商売の真骨頂は、一つの味を磨き続けることだと、山口屋の店先が教えてくれた気がする。
分身AI.comでは、AIに「自分らしさ」を教え込む方法についてさらに深く掘り下げています。ぜひ合わせてご覧ください。
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