WATCH REPORT

家事ロボットはなぜ人型ではなく天井を走るのか、安全の理由を成田修造さんと浅谷学嗣さんの対談から整理

2026.10.19

家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。今回は、YouTube のチャンネル TBS CROSS DIG with Bloomberg の番組 1on1 Tech で、MW共同創業者でCEOの成田修造さんと、AI/ロボティクス責任者の浅谷学嗣さんが、家事をなくす家とフィジカルAIを語った対談を紹介します。

AIで家事が減る、という話は大きく聞こえます。でも、何がすでに動いていて、何がこれからなのか。安全や家の中のデータは、どう守られるのか。そこが見えにくいんですよね。長い対談を、通しで見る時間がない人へ向けて書きました。

動画は、約1時間18分の対談。MWの成田さんと浅谷さんが、聞き手の中川さんに、家事をなくす家とフィジカルAIを語ります。話は、家事をなくしてあげる家という出発点から、天井を走るロボットと安全、AIが要る所とデータ集め、事業の組み立てへと進みます。

家事ロボットの決め手も見えてきます。取り戻したい時間、安全とデータの置き場所、小さく実績を作ってから広げる順番の3つ。その横に、私ならこう見る、を添えました。

SPEAKER

成田修造さん

MWの共同創業者で、CEOです。動画の画面では、学生の頃からクラウドワークスに役員として参画し、取締役副社長を経て2022年に退任、2024年にMWを共同創業した、と紹介されています。この動画では、家事をなくす家の構想と、事業の組み立てを話します。

SPEAKER

浅谷学嗣さん

MWのAI/ロボティクス責任者です。動画の画面では、エクサウィザーズCTOとしてロボット部門を牽引し、2025年に同社を退社してMWに参画した、と紹介されています。この動画では、ロボットの実演と、天井型・安全・AIの役割を説明します。

SPEAKER

中川雅博さん

TBS CROSS DIG with Bloomberg のビジネスエディターで、この動画の聞き手です。トレーラーハウスでの実演と、横浜の新築の部屋での対談の両方で、2人に話を聞きます。

3行でわかるポイント

  1. 成田さんは、究極的に素晴らしい家は、家事をなくしてあげる家だと話します。浅谷さんは、人型ではなく天井を走る型のロボットを、安全のために選んだと説明します。(第1章・第2章へ)
  2. AIが要るのは、毎回形が変わる洗濯物。人が遠隔操作で集めたデータでロボットに教え、2028年の製品化を目指す、と浅谷さんは話します。(第3章へ)
  3. 私なら、AIやロボットに渡す前に、取り戻したい時間を決め、安全とデータの置き場所を先に決めます。(第4章へ)

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01

家事をなくしてあげる家、という出発点

▲目次
家事をなくしてあげる家という出発点の図解。左に洗濯物を畳む・食器を片付けるという家事、中央に天井を走るロボットとAI、右に取り戻した時間、と矢印で並べている
図解: 家事をなくしてあげる家という出発点
動画の画面。冒頭のハイライトで、男性が話し、料理まで完全制覇したいという字幕が出ている場面
動画キャプチャ: 冒頭のハイライトの場面(0:06頃)

動画は、前半と後半の二本立てです。前半はロボットの実験場になっているトレーラーハウスでの実演で、後半は横浜の新築の部屋での対談になります。では、成田さんはなぜ家を作るのか?

究極的にいい家とは何かを考えて、成田さんが行き着いたのは、家事をなくしてあげる家でした。

成田さん(動画の中で・40:45〜)

究極的に素晴らしい家って何だろうと思ったら家事をなくしてあげる家だと思ったんですよ。

人間は家事に1日2時間40分を使うと言われている、と成田さんは続けます。

なぜ今も、洗濯物を畳み、食器を片付けているのか? ロボティクスの技術、つまりフィジカルAIをうまく使えば解決できる、という話です。

ITの経営のあと、成田さんは、ものづくりやハードウェアの事業をやりたかったそうです。住宅は、人が人生の半分ほどを過ごす大事なインフラ。

ところが、自分で家を買ってみると、新築でもテクノロジーの進化が搭載された家はほとんど無かったと感じたそうです。家だけがずっと技術革新から取り残されている、という実感でした。

そこで持ったのが、素人の発想でやれば面白いものが生み出せるのではないか、という仮説です。

構想は、家を静的なものから、動的な生命体へ変えること。例は、お風呂が沸いていてほしいのに、今はその手段が無い、という日常の不便です。

ビジョンは素人で、それを組み立てる土地・建築・ロボティクスは専門。その専門家が1つのビジョンにまとまっているのがMWの特徴だ、と成田さんは話します。

成田さん(動画の中で・38:43〜)

ビジョンっていうのはすごく素人なんですね。

この話の値打ちは、ロボットの腕の話より前に、家の中のどの時間を取り戻したいのかを、先に決めている所。家の中から何を減らすのかが、最初に決まっているんですよね。

私は以前の配信で、AIやシステムを使うことで、経営者も家事と子育てができる環境の選択肢を作ることが、たまたまできた、と話しました。

同じ話の中で、結婚して子どもができて育ててみて、子育ての大変さとプレッシャーを感じたとも話しています。そのうえで、家事と子育てもしたい、と続けていました。

家事や子育てができる父親になろうと思った、という言葉もあります。

AIで家事を消した話ではなく、選べる形ができた、という話に近いかな。

成田さんの話は、家そのものを、ロボットとAIで動く家に変える話です。私の話は、AIやシステムを使って、経営者も家事と子育てができる環境の選択肢を作る話でした。

変える物は違っても、出発点が家事と時間にある所は、並んでいるんですよね。ロボットを入れるにしても、AIを入れるにしても、最初に置くのは、何の時間を空けたいかです。

私なら、AIに渡す前に、取り戻したい時間を先に決めます。

02

天井を走るロボットを選んだ理由は、安全

▲目次
天井を走るロボットを選んだ理由の図解。左に床を歩く人型、右に天井のレールを動く型。右の型に、転倒しない、人の動線と分ける、人がいる間は動かない、映像は家の中で処理、の4つの札を添えている
図解: 天井型を選んだ安全の理由
動画の画面。天井から伸びた白いロボットアームが、タオルの並ぶ棚の前の作業台に腕を伸ばし、手前で二人の男性が見ている場面
動画キャプチャ: 天井から伸びるロボットアームが映る場面(10:20頃)

実演のロボットは、床を歩く人型ではなく、天井のレールを動きます。なぜ天井なのか? その理由を、浅谷さんは安全から説明します。

実演で見えたのは、運ぶ役のカーゴロボットと、物をつかむワークロボットで、先端を磁力で付け替えて使います。

場面は、買ってきた食品を冷蔵庫や棚にしまう所と、洗濯物を取り出して畳む所。ロボット専用の家電にはせず、市販の冷蔵庫や洗濯機をそのまま使う方針です。この日は遠隔操作で、目指すのは完全な自動化です。

人型にしなかった理由は、安全。浅谷さんの家には小さい子供がいて、人型ロボットが家の中を歩いていたら、と考えてしまうそうです。

浅谷さん(動画の中で・42:51〜)

万が一のことがあったらどうしようとかやっぱり考えてしまうんですよね。

天井に固定すると、何が変わるのか? ロボットが転ぶことはなく、天井は家のデッドスペースなので、人の生活動線と分けられて圧迫感も出ません。

家庭向けの事業では、1件の大きな事故が会社を傾けかねない、という事情も浅谷さんは挙げます。

人の居場所は、センサーで分かるんですね。その上で、MWは次の決まりを置いています。

浅谷さん(動画の中で・23:09〜)

人がいる環境では基本的にロボットは動かないっていうような、そういう風なセーフティを貼ってるんですね。

空間は人とロボットで共有して、生活する時間帯をずらし、センサーには熱源を見る赤外線のカメラを使って、在室や就寝を見分けます。

気になるのは、その映像の行き先。処理はセンサーの中や家のサーバーで終え、クラウドには上げない、と浅谷さんは説明します。

浅谷さん(動画の中で・21:43〜)

完全にもうエッジ側で完結してますね。

ロボットを動かすAIのモデルも、家のサーバーで動きます。短所もあって、届く範囲が限られることと、レールの施工は新築が向いていることなんですね。

安全は、後から足す機能ではなく、形を選んだ時点で決まっているんですね。天井を選んだ所に、その順番が出ています。

家のロボットで決め手になるのは、腕の器用さより、人と分ける線の引き方だと私は見ています。

動く場所を分けること、人がいる間は動かないこと、映像を家の外に出さないこと。

家の中は、人が気を抜いて過ごす場所です。だからこそ、どこまでが人の場所で、どこからが機械の場所なのかを、使う前に分けておきたいんですよね。

人が最後に押す線を先に決める考え方の記録は、AI自動化で、ここだけは人間が押す線を先に決めた話を書いた、分身AI日記のDAY164にあります。

03

AIが要るのは、毎回形が変わる洗濯物

▲目次
AIが要る所とデータ収集の図解。左に人がロボットを遠隔操作して衣類を畳む、中央にそのデータでAIが学ぶ、右に完全自動化と製品化、と矢印で並び、下に目標の道筋を添えている
図解: 遠隔操作のデータからAIが学ぶ流れ
動画の画面。天井から伸びたロボットアームが、作業台の上で白い布を畳んでいる場面
動画キャプチャ: 布を畳む実演の場面(11:40頃)

洗濯物を畳むロボットは、2017年から研究されてきました。それなのに、なぜ今なのか?浅谷さんは、その理由をAIの進み方から説明します。

浅谷さんが洗濯物を畳むロボットの研究を始めたのは、2017年のことです。ぐしゃぐしゃの状態から、まず広げるところから教えているんですね。

AIが要る理由は、衣類の形にあります。

浅谷さん(動画の中で・56:47〜)

衣服とかそういったものは毎回形状変わってしまいますんで

形に合わせて動きを変えなければ、畳めないんですよね。トイレットペーパーや洗剤の補充なら、AIが無くても既存の技術とルールで足りる、と浅谷さんは分けます。

2017年当時のAIは、新しいものに対応できませんでした。今のAIモデルは新しい環境にも順応できて、そこがいちばん大きな変化だと、浅谷さんは見ているんですね。

では、そのAIに何を教えるのか?ロボットのデータ収集の施設では、収録の翌月か翌々月ごろに、約50人体制で、人がロボットを遠隔操作して衣類を畳む予定です。

今は、ありとあらゆる衣類を集めて畳ませている段階なんですね。この段階を、浅谷さんはこう表します。

浅谷さん(動画の中で・16:05〜)

割と今やってるのは力技なんですよね。

遠隔操作の動きは、いまはゆっくりなんですね。AI化されると速度が上がる、とも話します。

道筋は、2027年に完全なAI自動化のデモ、さらに1年後の2028年に製品化。2029年までに、家事5タスクで成功率90%を目指す計画です。

5タスクは、ランドリー、ゴミ回収、食器、ベッドメイキング、洗面所と玄関を整えることです。料理への挑戦は、2030年以降の話ですね。

成田さんが例えばと置いた、1タスク2億円で20タスクなら40億円という計算もあります。予算の発表ではなく、仮の計算です。

ロボットの腕が動くことより先に来るのは、何を誰が教えるか。ここが、この章の芯なんですよね。

私は以前の登壇で、現場の生の一次情報と、最終的にアウトプットするところは人間にあるので、その中間は全部AIがやってもいいと思う、と話しました。

その登壇では、AIによる自動投稿を全部オートメーションで回せるんじゃないかと思って、実際に試した、とも話しています。結果は、人間不在の自動投稿だと、BANされたり、監視が入ったりすることでした。だから人間を挟まないといけない、という話です。

AIに任せ切るのも駄目、というのが、その登壇での私の言葉です。

私の運用の原則は、入口の生の情報と、出口の味見だけは人が立ち、その間の翻訳・増幅・媒体展開はAIに任せる、というものです。

動画では、人が衣類を畳む動きが、ロボットの手本になります。今は人の動きが、あとでAIが学ぶ材料になるという順番です。

手本を渡すのは人で、その先をAIが広げるんですよね。入口に人が立つ点は、ロボットも私も同じです。違うのは出口で、ロボットは完全な自動化を目指し、私は出口の味見を残します。ロボットが学んでから物理の世界に出るまでの流れは、フィジカルAIとは何か、ロボットはシミュレーションで学び、最後に物理世界に出る流れを整理した記事でも読めます。

私なら、入口の事実と出口の味見は自分で持ち、その間をAIに渡します。

04

高級住宅から広げ、食洗機やエアコンのように標準にする

▲目次
高級住宅から広げる事業の組み立ての図解。左に最初の高級住宅で実績を作る、中央に施工の標準を作る、右に食洗機やエアコンのように広がる、と矢印で並べ、下に30年やると決めている、と添えている
図解: 小さく始めて標準にして広げる流れ
動画の画面。対談の場面で、AIハウスに誰でも住める未来というテロップの下、二人の男性が話している場面
動画キャプチャ: 対談の場面(66:00頃)

最後は、事業の組み立ての話です。ロボットを家に入れるために、どの順で広げるのか?その順番を、成田さんが話します。

入口は、土地込みで2億〜4億円の高級住宅。先進的な体験を、新しいものに挑戦する層に絞って作る、という考えです。

プロジェクトは15以上あり、アーバンとオーシャンとマウンテンのシリーズに分かれています。

人型のロボットを大量に作って工場に入れる方向は、誰でも想像がつく領域なんですよね。最後はコスト勝負になるので、成田さんはこう話します。

成田さん(動画の中で・71:18〜)

そういう領域で勝負をするっていうのはあんまり僕らはいいと思ってないんで誰もやってないところで

たとえに出てくるのは、食洗機やエアコン。メーカーが工務店やデベロッパーと組み、施工のノウハウを蓄積して、今では家に入っているのが当たり前になりました。

同じことをAIロボットでも起こし、長期的には食洗機やエアコンぐらいの存在になりたい、と成田さんは話します。

では、どのくらいの数を目指すのか?目標は、2035年に年間1万戸です。国内の新規戸建ては年に40万戸ほど、都内だけで15万戸ほどと語られます。

2027年には横浜で家を建て、成田さんと浅谷さん自身が住む計画なんですね。1年間のテストをして、販売後は管理料でメンテナンスや交換を担う予定です。

レールの下のハードウェアは交換できる作りです。5年か10年使ったら最新のものに入れ替えて、世代を上げていく想定だそうです。

住宅が一番複雑なので、そこができればホテル・小売・介護にも広げられる、という見立てなんですね。

会社を何年続けるかも、成田さんは先に決めています。

成田さん(動画の中で・74:49〜)

30年まずやるって決めてるんですね。

会社としては100年200年続く想定で、短期の売却や金稼ぎのためではない、という話です。締めくくりは、成田さんがアイアンマンのような家、浅谷さんが昔から夢だったドラえもん。

家のロボットは、腕の話の後に、施工と標準の話が来ます。ロボット単体より、家への入れ方。

高い所から始めるのは、お金持ち向けという話ではなく、小さく始めて実績を標準に変えるための順番だと私は見ています。私が見るのは、値段の高さより、順番の置き方です。

入口を絞るのは、広げる順番を守るためだとも読めます。

最初に自分たちで住んで1年間試し、その実績が、工務店やデベロッパーと決まりを作る時の材料になるんですよね。

最初から手広くやるより、一種のコミュニティの中で広げて、最新のものを入れながら性能を見て改善していく、という考えです。

FAQ

よくある質問

▲目次

Q. 家事をなくす家とは、どんな家ですか。

A. 成田さんが、究極的に素晴らしい家として挙げたのが、家事をなくしてあげる家です。洗濯物の片付けや食器の後片付け。そうした家事を、フィジカルAIで解決したいという構想です。

Q. 家事ロボットは、なぜ人型ではなく天井を走る型なのですか。

A. いちばんの理由は安全だと、浅谷さんは話します。天井に固定すれば、ロボットは転倒しません。天井は家のデッドスペースで、人の生活動線と分けられる場所。

Q. 家の中のセンサーの映像は、クラウドに上がりますか。

A. 浅谷さんの説明では、処理はセンサーの中や家のサーバーで終え、クラウドには上げません。人がいる間、ロボットは基本的に動かない仕組み。空間は共有して、使う時間帯をずらします。

Q. ロボットはいつ、どこまで家事をしてくれるのですか。

A. 動画で話された目標は、2027年に完全なAI自動化のデモ、2028年に製品化。2029年までに、家事5タスクで成功率90%を目指します。どれも収録時点の目標です。

Q. 最初が高級住宅なのは、なぜですか。

A. 先進的な体験を、新しいものに挑戦する層に絞って作るためだと、成田さんは話します。食洗機やエアコンのように、実績を積んで標準にしていく考えです。

MATOME

まとめ。家事をAIに渡す前に、安全とデータの置き場所を先に決める

▲目次

家事をなくしてあげる家という出発点から、天井を走る型と安全、毎回形が変わる洗濯物にAIが要る理由とデータの集め方、高級住宅から広げる事業の組み立てへ。動画は、この順に進みました。

私が持ち帰ったのは3つ。取り戻したい時間を先に決めること、安全とデータの置き場所を先に決めること、小さく実績を作ってから広げることです。天井ロボットの別の話は、MWの成田修造さんが、住宅の天井ロボットを解説した別の対談を整理した記事でも読めます。

AIに任せる範囲を決めても、入口と出口は人が持つ。私の運用にも、この並びがあります。ロボットが家に入る話も、同じ並びで読めます。

AIやロボットに渡せる時間と、自分の手に残したい時間。渡したくない家事を1つ、5分で紙に書き出してみてください。1つ書けたら、そこが自分の手に残したい時間です。

LINK

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今回紹介した動画

チャンネルTBS CROSS DIG with Bloomberg
出演成田修造さん、浅谷学嗣さん、中川雅博さん
公開日2026年10月1日
長さ78分13秒(日本語)
URLhttps://www.youtube.com/watch?v=OMht2mum_yU

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