WATCH REPORT

生成AI導入が目的になると使われない、入れる前に決めること

2026.10.25

家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。今回は、YouTube のチャンネル みらいカケル中小企業 | 大塚商会 の動画で、生成AIを会社に入れても使われない原因と、導入前に整える3点を、大塚商会の郡司さんが話す回を紹介します。

会社に入れたのに、誰も使っていない生成AI。仕事の中身を、個人用のAIにそっと入れている社員。使えそうだからと入れて、そのまま止まった導入。そんな状態に心当たりのある中小企業の経営者や、社内でAI導入を任された人に向けて書きました。

27分の動画です。郡司さんは、導入が目的になると使われない理由から話し始め、導入前に整える3点へ進みます。適したサービスの選択、ルールの策定と見直し、リテラシーの教育。締めくくりは、教育とガイドラインを同時に進める話。

読み終えた時に持ち帰れるのは、AIを入れる前に自社で決めることの順番です。何を減らしたいか、どのサービスを選ぶか、どこまで使っていいか、どう教えるか。

SPEAKER

郡司さん(大塚商会 AIビジネス推進課)

ゲストとして出演し、解説の中心になります。大塚商会のAIビジネス推進課に所属し、AI導入のお手伝いとセミナーでの情報発信を担当していると自己紹介します。

SPEAKER

MCの橋本さん

司会として、郡司さんに質問を重ねる役です。

SPEAKER

アシスタントの片野さん

アシスタントとして、冒頭で今回のテーマを紹介します。

3行でわかるポイント

  1. 入れることが目的になった導入は、使われないまま。業務の棚卸しと課題から、自社に合うサービスを選ぶのが出発点です。(第1章・第2章へ)
  2. 郡司さんが次に挙げるのは、線引きのルール作りと、AIの機能が変わるたびの見直し。リスクを最初に伝える教育も、続けて回すものだと言うんです。(第3章・第4章・第5章へ)
  3. 私なら、AIを入れる前に、何を減らしたいかを決め、教育とガイドラインを同じ場所に置きます。(第6章へ)

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01

導入が目的になると使われない理由。社員が個人で使い始める前に決めること

▲目次
「導入が目的になると使われない」の図解。「入れて終わり」「使う理由が無い」「何を減らしたいかを先に決める」の三つの札が矢印で並び、下の帯に「AIは荷物を下ろすための道具」
図解: 入れることが目的になると使われない
動画の場面。郡司さんが話す画面に、「目的をはっきりさせないと誰も使わない」という大きな文字
動画キャプチャ: 目的をはっきりさせないと誰も使わない、という冒頭の場面(0:05頃)

生成AIを会社に入れたのに、使われません。なぜでしょう?性能が足りないから、と考えがちです。動画は、そこより手前の話から始まります。

冒頭は、アシスタントの片野さんが、今回のテーマは導入前に整える3点だと紹介する場面。続いて郡司さんの自己紹介。担当しているのは、AI導入のお手伝いと、セミナーでの情報発信です。

聞き手が、仕事の内容を個人用の生成AIに入れてしまうのはよくある話か、と尋ねます。返ってきた答えは、非常に多い、のひと言。

それが、企業が生成AIの導入を検討し始めるきっかけになっているケースも多い、と言うんです。社員が個人で使っているという相談も、かなり増えた印象とのこと。

必要なのは、無条件に使っていいわけではない、という認識を社員に持ってもらうための、会社としての仕掛けづくり。

聞き手は、AIでどう改善して効果を出すかという前向きな検討を望みつつ、仮にそう考えなかったとしても、勝手に使われているリスクは考えた方がいいか、と尋ねます。郡司さんは、考えた方がいい、と答えます。

郡司さん(動画 2:19〜)

Google検索すれば勝手にAIモードみたいな形で立ち上がりますよね。で、あの辺と同じような感覚でやっぱり仕事も使われてしまうと一定のリスク出てきてしまいますので

今は検索をするだけで、AIの回答が立ち上がる時代。会社の中で生成AIを使う環境をどう整えるかは、とても大事なテーマだそうです。

聞き手が、会社で使いたいと思った時、どこから決めるのがいいか、と尋ねます。よくあるのは、使えそうだと調べて、入れて終わり。このパターンは、うまくいかないケースが多い、と言うんです。

導入にあたって検討するポイントは、整理すると3点。ここから話は、1つ目のポイントへ進みます。

入れて終わりがうまくいかないのは、AIの性能のせいではありません。理由は、何のために入れるかが決まっていないこと。郡司さんが見ているのは、そこです。

AIを入れること自体は、目的になりません!人が抱えている荷物を下ろすために使うもの。

何を下ろすのかを決めないまま入れると、誰も使わないんですよね。道具だけが先に届いて、使う理由が後から来ない状態です。

AIに作業は任せられます。でも、何のために任せるかを決めるのは人です。何を下ろしたいのかを言葉にする役目は、導入を任された人にあります。

では、社員が個人用のAIに流れるのは、責める話でしょうか?責める話ではないと思います。会社が用意した道具が、自分の荷物を下ろしてくれないのです。

個人用のAIは、検索の延長のように手元へ届きます。会社の側が決めないまま放っておくと、使い方は社員の数だけ増えていきます。

AIを入れる前に、先に決めるのは、何を減らしたいのか。まず、そこからです。

02

適したサービスの選択。課題から決めて、100が60でも成功にする

▲目次
「適したサービスの選択」の図解。「業務を棚卸し」「要件を先に決める」「一部でも成功と数える」の三つの札と水彩画。下の帯に「価格や体系より、課題から選ぶ」
図解: 課題から選ぶサービスの決め方
動画の場面。脳のマークの木のブロックとAIの半導体のマークの木のブロックを、二つの手が寄せる写真。字幕は「生成AIのサービスによって全く考え方が異なるところが出てくるので」
動画キャプチャ: サービスによって考え方が異なる、と話す場面(9:50頃)

サービスを何で選ぶと、入れたのに使われない形になるのでしょう?値段や、IDの数の体系。最初に挙がるポイントは、この選び方の話です。

1つ目のポイントは、適したサービスの選択。生成AIは本当にいろんなことができるので、はっきりしないまま選ぶと、機能が多すぎたり足りなかったりするサービスを選んでしまう、と言うんです。

郡司さん(動画 3:34〜)

そういう判断をして入れてしまうと結果的に使われない、全然誰も使わないってことにもなりがちですので、自社に合うサービスとは何か、これをしっかり整理して決めていきましょうってのが1つ目のポイントになります。

聞き手が、うまくいかない具体例を尋ねます。挙がるのは、実際に使う部門の課題やニーズを洗い出さず、価格やID数の体系で選ぶケース。機能がシンプルすぎて、結局、社員が使うのは個人用の生成AI。これが割と多いそうです。

聞き手が、試しに使って終わってしまう話もありそう、と言います。目的を持って、どんなサービスや機能が要るかの答えを出すために1回使うのは否定しない、という答え。

郡司さん(動画 4:33〜)

入れることが目的になってしまうとその後の具体的なアクションがない

導入した後に、使うにはどうしたらいいですか、と相談を受けるケースは非常に多い、と言います。どの業務で使うか、どんな課題があるか、から考えるのが出発点。業務を棚卸しして、時間のかかる業務がAIでできるのか、できないのかを検証してほしい、と続きます。

ゲスト自身の例もあります。セミナーのタイトルや内容、最近はスライドまで、AIに作らせている、と言うんです。対応できるサービスだからこそ、使えているとのこと。スライドの性能が低いサービスを会社に入れられたら、自分は個人用のAIを使う決断になってしまう、という言葉も出ます。

聞き手が、会社としてのゴールはどう決めるか、と尋ねます。答えは、トータルでは工数削減につながること。単純に入れただけでは、個人の効率化どまり。この業務のこの部分の工数がどうなるかまで考えると、AIエージェントの方がいい、と切り口が変わることもある、とのこと。

優先順位も大事なポイント。100を0にしなければと考えていると、できないじゃないか、で終わってしまうんですよね。大事なのは、AIを使ってどう改善できるかを見つけ出すこと。

郡司さん(動画 7:15〜)

100が60にできるということであれば1つの成功だと思いますので、そういったものをどう柔軟に見つけ出すかってことは大事だと思いますね。

期待しすぎて、こんなものか、と萎える人も非常に多いそうです。AIは何でもやってくれる、と思ってしまうパターン。だからこそ、大体の業務に使えそうな性能のサービスを選んでおくこと。片っ端からお試しして、みんなでアンケートを取るのはコストもかかるので、最初に要件を決めておく、という順番です。

要件には、システム部門としての管理の仕方も入ります。個人向けには、AIの学習に使われる可能性があるものもあります。ログを取れるか、グローバルIPの制限で会社の外では使わせないか、セキュリティの基準を満たすか。選ぶのは、会社の決め事に合うもの。

課金の仕方も、サービスでまったく違います。法人向けは基本が従量課金。月額の枠を超えると課金されるものや、安いが性能の低いモデルしか使えないものもあります。安いと思って契約したら、性能が低くて使えなかった、という例も挙がります。

金額が、ホームページに直接出ないことも多いんです。どこまでできて、いくらかかるのかは、具体的に聞いた上で判断すること。そのためにも、こういうところをこう改善したい、という要件を先に定めてから声をかけるとスムーズ、という話でした。

使われない原因は、価格やID数で選んで、課題から決めていないこと。郡司さんの話は、そこに集まっていきます。

私は逆に、作り込みすぎた側でした。メールとLINEを同じ読者にまとめる仕組みを、AIに頼んで作り込んだんです。試験用の受け口、データベース、メールの確認リンク、合言葉の送信、連携のリンク。全部で6つの手。読者が自分でメール確認という文を送る形になり、私は差し戻しました。使っているサービスの公式のヘルプには、同じシナリオを指定したメールフォームと、サンキューページのLINE友だち追加ボタンだけで統合される、標準の手順があったんです。

そのとき私がAIに伝えたのは、複雑にしないこと。シンプルイズベスト。ゼロベースで常に本質を見ること。

郡司さんが挙げる失敗は、安さや体系で選んで、機能が足りなくなる側。私の失敗は、作り込みすぎて手が増えた側。向きは逆です。

でも、着く所は同じなんです!共通するのは、何をしたいのかを先に決めずに、選ぶ、作る、に飛びついたこと。

100が60なら1つの成功、という郡司さんの物差しも、ここに重なります。0を目指して作り込むより、標準の機能で60まで持っていく。その方が早く使い始められます。

私の記事より(AI導入の前に、仕事を紙に書き出して業務を可視化する考え方を、動画から整理した記事)

私なら、AIの話を始める前に、仕事を紙に書き出します。書き出すと、考えが動き出すからです。

AIの話より先に、まず仕事を外に出すこと。そうすると、考えが回り始めるんです。

動画の棚卸しは、時間のかかる業務がAIでできるかを確かめるための、会社の作業。私の書き出しは、その手前で、自分の考えを動かすための作業です。順番でいえば、書き出しが先、棚卸しが後。

課題を書き出してから、標準の機能で足りるかを確かめます。選ぶのは、その後です。

03

ルールの策定。線引きがあるから、社員は自走して使える

▲目次
「ルールの策定」の図解。「ここまでは使っていい」「ここからはやらない」「線の内側で自走する」の三つの札と水彩画。下の帯に「線引きは安心して使う土台」
図解: 線引きがあるから自走できる
動画の場面。スーツの人たちが書類とノートパソコンを囲んで話し合う写真。字幕は「このルール決めを会社で考えるのが大事」
動画キャプチャ: ルール決めを会社で考えるのが大事、と話す場面(11:47頃)

ルールがない会社で、AIを渡された社員は何を考えるでしょうか?使っていいのか、怒られないか。そこで手が止まる、という話から2つ目のポイントが始まります。

2つ目のポイントは、ルールの策定。自社で生成AIをどう使わせるか、会社でしっかり考えてほしい、と郡司さんは言うんです。

郡司さん(動画 11:51〜)

そのルールがないと社員の側もですね、どこまで使っていいのかが分からないみたいな感じになっちゃうんですね。そうするとこれ入れない方がいいのかな怒られるかもしれないしな。

どこまでは使っていい、どこからはやらないで。そう線を引けば、社員も自走していろんな使い方をしやすくなり、環境を整えることにもつながるそうです。

ルールは生成AIの性質を知らないと作れないのでは?聞き手のこの問いには、公開されている情報である程度は作れる、という答えでした。

例に挙がるのは、日本ディープラーニング協会が公開している法人向けのガイドラインのひな形。項目ごとの考え方つきなので、自社ならこうだな、と当てはめるだけで作り上げられます。まずそれを見るのが一番の近道だ、と言います。

それを自社なりに解釈して明文化します。大塚商会の例も、全部は公開できないと断ったうえで紹介されます。会社が決めたサービスを通して使う。要るサービスがあればシステム部門に相談すること。本当の機密情報や個人情報は入れないこと。

ルールを作っても見てもらえないのでは?聞き手のこの心配には、2023年9月1日の話が返ってきます。大塚商会で、今日から生成AIを使っていい、というお達しが出た日なんです。

郡司さん(動画 14:17〜)

そのタイミングで一緒に公開されたのがやっぱガイドライン。このガイドラインに従って使いなさいということが公開されたので、まずそのルールがあるっていうことをその企業なりにちゃんと示していくっていうことは1つ大事だと思ってます。

全社にAIのツールを入れる時の、やってはいけないことを4択から選ぶテスト。これもフォローの1つです。運転免許の試験のようなもので、ルールを見ておかないと合格できないそうです。

やり方は会社ごとでいい。馴染みのある方法で常に周知すればいい、と郡司さんは話します。

ガイドラインがないと、触らなくていいとなりそう。聞き手のこの言葉に、そうなんです、と返ってきます。ここまではダメと書いてあれば、ここまではいいのか、となります。

簡単な商談の資料づくりやセミナー資料づくりなど、大塚商会では多くの従業員がいろんな形で使っているそうです。基準の中でどんどん使ってもらう環境づくり。それが最初にやる2つ目のポイントでした。

線引きは、縛るためのものではありません。安心して使ってもらうための土台。

私はセミナーで、最新の朝ライブをブログ記事にする作業を、AIに任せる実演をしていました。

AIが作業を進めている、その最中。私が設定していた仕組み(フック)が、見せてはいけない情報へのAIのアクセスを止めました。

APIの認証情報のようなものは、画面に出ません。AIも見られません。だから安心して作業を委ねられる、と私はその場で話しました。

郡司さんが話すのは、社員に向けた会社のルール。私が見せたのは、AIに向けた仕組みの線引きです。

線がないと、どうなるか?怖くて、誰も触りません。ルールづくりは、委ねるための土台づくりです。

私の記事より(AIに片付けを任せる前に、消す前に止まるルールを決めておく考え方を、公式の手順書から読んだ記事)

公式ドキュメントは、提案された変更とコマンドのレビュー、テストの実行、壊す操作の承認を人に残し、スキルは検証の代わりにならない、と明記しています。私は、進める返事と止める返事を先に決めておくことを勧めます。

人の手に残す所と、AIに進めさせる所。その境目を、迷う前に決めておくのが、引用した記事の芯なんです。

動画のルールは、何を入れてはいけないかを社員に示すための線引き。私が勧めたのは、そこに一段足して、AIに進めてと返す時と、止めてと返す時を先に決めておくこと。迷った社員が、線の手前で手を止めずに済みます。

社員が安心して手を出せる線は、会社の中に引いてありますか?

04

ルールの見直し。機能が変わるたび、ガイドラインも改定する

▲目次
「ルールの見直し」の図解。「機能が変わる」「ガイドラインを改定」「古い版は下げる」の三つの札と水彩画。下の帯に「作って終わりにしない」
図解: 機能が変わるたびに見直す

ルールは、一度作ったら終わりなのでしょうか?話は、作ったルールをいつ、どう見直すかへ進みます。

セキュリティポリシーが変わった時の情報共有にも似たところがあるか。聞き手のこの問いに、扱いはかなり近い、というのが郡司さんの答え。

会社で契約している生成AIが変わった時。技術革新で、できる範囲が変わった時。そこで見直して、改めて社員に周知する必要が出るんですよね。

世の中に出ている物を見ながらも、専門家の判断や助言がほしい場合は?答えは、セキュリティの専門会社の助言を受けながら、自社のガイドラインを作るのもいい、というものでした。

専門家と一緒にガイドラインを作るサービスもあります。自社の今の使い方や考え方をヒアリングしてたたき台を作り、あとはメールなどで意見交換しながら完成させる流れ。自社でやりきれない時に使うもの、と話します。

AIの機能やトレンドが変わる中で、定期的な見直しも必要か。この問いには、必要だと思う、という答え。

振り返りに出てくるのは、クラウドのサービス。今はかなり主流でも、最初はダメという企業が多く、だんだん一般化しました。時代の流れに合わせて、自社も解禁しなければ、と動いてきたと言うんです。

郡司さん(動画 17:52〜)

AIもやっぱ一緒でこれから機能が入ってきたり、いろんなことが変わってきたりすると思いますので、そのタイミングね、どこまでうちの会社では解禁していこうかみたいなことは検討していく必要はあると思いますし、そのタイミングでね、また改定が必要になってくるのはそのガイドラインってとこになってくると思いますね。

過去のひな形で作ったまま止まっている企業は、それが邪魔をして新しい機能が使えなくなっていないか。聞き手がこう尋ねると、同じ見方だ、と郡司さんは答えます。

専門家のサービスを頼む会社で非常に多いのは、他社の動向や、今どう考えるのが普通か、の助言がほしい人。相手はセキュリティの専門家なので、自社の考え方との折り合いをつける具体論まで出せるそうです。

見直しとは、新しい物を足すことより、古い物をそのままにしないこと。ここが肝です。

10月2日、AIで動画を作る私の手順が、3回失敗しました。原因は、手順書が、すでに使えなくなった古い道を教えていたこと。

作り方は4か所に散っていて、生きていたのは2か所だけでした。そこで、手順書を1本、実行するスクリプトを1本にまとめました。

できあがったのは、6場面・44.5秒の動画!

古い手順が、ただ残っていたんです。それだけで、3回止まったんです。決めたことを更新しないまま置くと、どうなるか?古い道が、現場に残り続けます。

私の記事より(替え歌の動画をAIで作って3回失敗した原因と、古い手順書を捨てて1本にまとめた直し方を書いた記事)

料理でいえば、同じ料理のレシピが台所に4枚あって、1枚だけ古いのが混ざっていた状態です。見張りを立てるより、古いレシピを捨てる方が早いんです。

見張りを増やすより先に、古いレシピを台所から下げること。混ざる元を断つ方が早いんです。

動画は、AIの機能が変わるたびにガイドラインを見直す話。引用の記事で私が選んだのは、見張りより先に古い版を下げる方。版が1枚なら、社員はどれを守るかで迷いません。

ガイドラインは1本にして、古い版は残しません。見直しの出発点は、そこです。

05

リテラシーの教育。AIの答えは100%ではないと先に伝える

▲目次
「リテラシーの教育」の図解。「答えは絶対ではない」「人の作品と同じ扱い」「定期的に学び直す」の三つの札と水彩画。下の帯に「リスクを先に伝える」
図解: AIの答えを疑える状態をつくる

ルールを作っても、社員がその中身を分かっていなかったら、どうなるでしょうか?守っているつもりで、破ってしまう。

3つ目のポイントは、リテラシーの教育。社員1人1人の生成AIに対する考え方を、きちんと教育していく話です。2つ目で会社のルールを定めましょうと話したうえで、と郡司さんは続けます。

郡司さん(動画 19:04〜)

ルールを守るというところにも至らない、破ってると思ってなかったみたいなこともやっぱり出てきますので

だからこそ、1人1人が使う時のポイントやリスクを、しっかり押さえておく。そこが教育の役目だと言うんです。

社員がまず知っておくことは?聞き手のこの問いに、郡司さんは、リスクは最初に押さえておきたい、と答えます。最近はSNSでも、AIがこう言っています、とだけ言う人がいて困るそうです。

郡司さん(動画 19:43〜)

AIが言ってることが100%正しいわけじゃないっていうことを理解してないからやってる行動だと思うんですね。

あれを仕事でやられると、良くない使い方になります。AIの特徴を理解して、どう使いこなすかを知っておく、という話です。

2つ目は、権利問題。AIが作ったからといって、無条件に何でも使っていいわけではないんですよね。

郡司さん(動画 20:08〜)

やっぱり類似が認められたら何らかの権利として訴えられる可能性はございますので、人が作ったものと同じように扱うみたいなところはやっぱポイントなんですけども、どうしてもAIが作ったんだから大丈夫だみたいな意識になりやすいとこなので、そこは大前提としては抑えておきたいですね。

では、教育をどう浸透させるのか。大塚商会では、数か月に1回、eラーニングとその後の試験があるそうです。少し面倒でも時間を取って受け、合格しないと、何回でも受けてください、というメールが届くと言います。

1回の教育だけでは、なかなか忘れてしまう。会社のホームページの目立つ所に定期的にアラートを出す、AIのセキュリティの内容への入口を目立つ所に置く、など、自社なりのやり方を見つけることが必要だと話します。

研修は、一番初歩が生成AIのリテラシー研修。歴史から入り、今の位置づけ、リスク、気をつけて使うことを学びます。次のステップが活用研修。広く学ぶものも特定のツールに絞ったものもあり、自社のツールとリテラシーの高さで選ぶそうです。

リテラシーの教育で育てたいのは、AIの答えを疑える状態。ルールを守れるのは、その後。

私は、セミナーでこう話しました。AIは、やった後に嘘をつくことがあります。だから、本当にできているかを、別のAI(サブエージェント)にチェックさせます。

別のAIに見せると、頭が切り替わるんです。同じ頭のままだと、ごまかしたり、大丈夫です、と言ったりするんです。

あわせて話したのが、仕組みの設計。きちんと設計しておかないと、情報が漏れたり、誰でも見られる所に置いてしまったりする可能性がゼロではありません。そこから先は、使う人の責任。だから防ぐ仕組みを先に学んでほしい、と伝えました。

10月8日のAIニュースの記事でも、似たことがありました。AIが書いた原稿に、10月7日から使えます、と言い切る一文。公式の発表は、順次提供でした。

別系統のAIに検収をしてもらうと、1回目は不合格。3回目で合格しました!

私の記事より(AI研修を受けても現場が変わらない構造的な理由を整理した記事)

つまり、変えたい対象が個人の外側にある。研修は個人に届く。業務は組織に属している。この非対称が、定着しない構造的な原因だ、と。

変えたいのは組織の側の仕事なのに、研修が届くのは一人ひとり。ずれているのは、届く先と変えたい先なんですよね。

動画の教育は、リスクを最初に伝え、定期的に学び直してもらう形。私の見方が違うのは、教育を続けるだけでは個人の中で止まる、と考える所です。業務の側を変える決め事と組にして、初めて届くと見ています。

では、2つをどう組み合わせるのか?次の章で、同時に進める話に入ります。

06

教育とガイドラインを同時に。目に触れる場所に置く

▲目次
「教育とガイドラインを同時に」の図解。「研修を受ける」「ガイドラインも目に入る」「同じ場所に置く」の三つの札と水彩画。下の帯に「掲示板に載せて終わりにしない」
図解: 教育とガイドラインを同じ場所に置く
動画の場面。複数の人の手がノートパソコンに向かう写真。字幕は「それが自分がやらなくてはいけないタスクがあるところに折り混ぜると」
動画キャプチャ: タスクのある所に織り交ぜると伝わる、と話す場面(23:50頃)

ガイドラインは作りました。研修も用意しました。では、2つは別々の日に出すのか、同じ日に出すのか?動画の後半は、その出し方の話です。

業務の棚卸しから課題を決めてサービスを選ぶところまで固まれば、どんな教育をするかも見えてきそうです。聞き手のこの言葉に、導入のタイミングに合わせて受けてもらえると、とてもきれいな流れになる、と郡司さんは答えます。

次の質問は、ガイドラインを作って共有する時に、教育も一緒に進めるのが理想か。やり方は各社あるけれど、理想的だと思っている、と言うんです。

理由は、eラーニングを受けるタイミングで、なんだ、ガイドラインもあるのか、と一緒に目に触れる形になるから。

郡司さん(動画 23:30〜)

普段会社の掲示板でこのルール増えたよっつってもなかなか見ないと思いますので

自分がやらなければいけないタスクのある所に織り交ぜると、伝わりやすいそうです。

部署やパートで教育を分けるのか、全社で統一するのか。この質問には、会社のニーズに合わせてでいい、という答えです。

例えば、全社員に生成AIのリテラシー研修を受けてもらい、全体のリテラシーを上げる形。そのうえで、先に活用していくメンバーには活用研修も受けてもらう。ただ、一番多いのは、導入にあたって全社員向けの研修を用意する会社なんですよね。

一定の基準はみんなでクリアしておこう、という意味か。聞き手がこう確かめると、そうです、と返ってきます。大塚商会では、この日までにこの試験を受けてクリアしてください、という形でやってきたそうです。

会社によっては、研修を受けて試験に合格しないと、IDやパスワードすら渡さない所もあります。使うにはどうにかしないと、というやる気になりそう、と聞き手が言うと、各社の運用もあるので、やりやすい方法で、という返事でした。

話は、最後のまとめへ。生成AIを法人で導入していくために、3点に整理して案内した、という振り返りです。

郡司さん(動画 26:38〜)

適切なサービスの選択、企業のルールの整備、そして社員のリテラシーの教育

どれも、法人で生成AIを検討するうえで欠かせない要素。ただ、検討するのが難しいポイントでもある、と郡司さんは話して締めます。

同時に出す、というのは、順番の話ではないんですよね。どこで目に触れるか。場所の話です。

ルールは、読む物として置いておくより、仕事の流れの中で出会う物にした方が届きます。掲示板に載せて終わり、では届きません。

試験も同じです。通ることが目的になると、受けて終わりになります。

サービスの選択とルールと教育。この3点は、1つずつ片付けていく順番の話ではありません。どれかが欠けると、入れた物は使われなくなります。

第1章の、入れることが目的になる失敗。結局、そこに戻ってくるんです。

ルールと学ぶ場を、同じ場所に置く。使われる導入は、そこから始まります。

FAQ

よくある質問

▲目次

Q. 動画は、生成AIが使われない原因を、何だと話していますか。

A. 入れることが目的になって、入れた後の具体的な動きがないことだ、と郡司さんは話します。機能が合わないサービスを選ぶことも、原因に挙げています。

Q. サービスを選ぶ前に、何を整理すると話していますか。

A. 業務を棚卸しして、時間のかかる業務がAIでできるかを確かめます。管理の要件と課金の仕方も先に決めておく、という話です。

Q. 社内のルールは、どう作ると話していますか。

A. 公開されているガイドラインのひな形に、自社の場合を当てはめて作ります。大塚商会では、2023年9月1日の解禁と同時にガイドラインを公開した、と郡司さんは話します。

Q. 社員のリテラシー教育は、どう進めると話していますか。

A. リスクを最初に伝え、定期的な学習と試験で周知していきます。ガイドラインの共有と同じタイミングで進めるのが理想、という話です。

Q. ルールは、作ったら終わりですか。

A. 終わりではありません。AIの機能が変わるたびに解禁の範囲を考え直し、ガイドラインを改定する必要がある、と郡司さんは話します。

MATOME

まとめ。入れる前に、選ぶ・決める・教えるを同時に整える

▲目次

動画は、導入が目的になると使われない、という話から始まります。そこから、適したサービスの選択、ルールの策定と見直し、リテラシーの教育、教育とガイドラインを同時に、の順で進みました。

私が持ち帰ったのは6つです。AIを入れる目的を先に決めること。標準の機能で足りるかを確かめてから選ぶこと。線引きは、人もAIも手を出せる土台にすること。古い版を残さないこと。

そして、AIの答えを最後に確かめる人を決めておくこと。教育とガイドラインを、同じ場所に置くこと。郡司さんの3点と、同じ向きで読めます。

次に入れるAIは、何の荷物を下ろすためのものでしょうか?

COLUMN

AIを入れる前に、入口と出口を握る人を決める

「入口と出口は自分の手で」の図解。「何のためにやるか」「AIに任せる作業」「これでOKか」の三つの札が矢印で並び、最後の札に的と矢。左にひろくん
図解: 判断の入口と出口は自分の手で握る

郡司さんの3点、サービスの選択とルールと教育を順に読むと、どれも最後は、誰が決めるのか、という問いに行き着きます。作業は分けられても、決めるところは分けられないからです。以前、AIに作業を任せても、判断の入口と出口は自分の手で握ると決めた記事で、私はこう書いています。

私の記事より(AIに作業を任せても、判断の入口と出口は自分の手で握ると決めた記事)

曖昧な指示をAIに投げて、返ってきたものを鵜呑みにするんじゃなくて、判断の入口(何のためにやるか)と出口(これでOKか)の両方を、自分の手で握る。

何のためにやるかを決める入口と、これで良しとする出口。この2つだけは、AIに渡さず自分の手に残す、という一文です。

動画の3点は、サービス、ルール、教育を、会社として整える話。私が引用の記事で書いたのは、作業と判断を分けて、判断を手元に残すこと。サービスの候補やルールの叩き台はAIに手伝ってもらえても、何のために入れるか、これで社内で使われていると言えるか、を決めるのは人です。

だから、3点を整える前に、入口と出口を握る人を先に1人決めておくこと。それが、導入の最初の一歩です。決める人がいないと、サービスもルールも教育も、誰かがやってくれる物になって、入れたまま止まってしまう。その1人の名前、社内ですぐに挙げられますか?

AIに預けるのは作業。判断の入口と出口は、AIに任せる範囲がどれだけ広がっても、人の手で握り続けるもの。

LINK

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REF

参考リンク

今回紹介した動画

チャンネルみらいカケル中小企業 | 大塚商会
出演郡司さん(大塚商会 AIビジネス推進課)、MCの橋本さん、アシスタントの片野さん
公開日2026年10月22日
長さ27分53秒(日本語)
URLhttps://www.youtube.com/watch?v=c47BRqhaVkA

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