『割に合わないことをやりなさい』の要約を通して、AI時代に人間が手間をかける意味を全6章から学ぶ

家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。
効率よく動けているのに、なぜか手応えが薄い。
そんな感覚に、言葉を与えてくれる本があります。
小玉歩さんの『割に合わないことをやりなさい』(KADOKAWA)です。
この本が扱う問いは、シンプルです。AIが効率をいくらでも出してくれる時代に、人間はどこで価値を生むのか。
著者の答えは書名のとおりです。「割に合わないこと」の中にある、と。
といっても、根性で長く働けという本とは違うんですよね!
本の中には、すべての場面で全力を出さなくていい、という条件もちゃんと書かれています。そこまで含めて読むと、印象がだいぶ変わります。
この記事では、本を通して、はじめにから第6章、おわりにまでを順番に解説します。いくつかの章には、私自身の話も重ねました。
ここで、私の読み方も先に書いておきます。
私は「割に合わないこと」を、労働時間や手間を上乗せする話として読みませんでした。
効率では測れない価値を、目的もゴールもない遊びの時間として受け取る。そのためにAIへ仕事を手放し、余白をつくって、もっと遊びたい。
この一本で、本の主張と私の思いをつないで読みました。では、章ごとに見ていきますね!

三行まとめ
- 効率で競うとAIには勝てない。だから人間の価値は、手間・感動・つながりの側にあると著者は説く。
- 鍵は「感動資本」と「逆張り思考」。ただし、すべての場面で全力は要らず、相手と場面を選ぶ。
- 最終章の答えは、目的のない時間を味わうこと。AIとの関係は対立より共創だと描かれる。
目次
- 『割に合わないことをやりなさい』要約|本の背骨は「効率の神話」を問い直すこと
- 第1章 効率化時代の「次の価値」は、手間と時間の中にある
- 第2章 AI時代の最強兵器「感動資本」|期待を少しだけ超える思いやり
- 第3章 失敗と寄り道は、主体性があれば強さになる
- 第4章 逆張り思考は「順張り」を理解してから
- 第5章 「ムダ」から生まれる深いつながり|対面と、あえて合わせる努力
- 第6章 効率主義の先で人生を「味わう」|目的のない時間とAIとの共創
- 実践編|AIで余白をつくり、割に合わないことを遊びとして取り入れる
- 『割に合わないことをやりなさい』FAQ|読む前に気になる疑問
- まとめ|要約すると、割に合わないことは損得を計らない余白から始まる
- ひろくんコラム|新しいAIで、自分の表現が意図以上に形になった
『割に合わないことをやりなさい』要約|本の背骨は「効率の神話」を問い直すこと

まず、本全体の背骨から押さえます。
著者は、効率そのものを悪者にしていません。
問題にしているのは、効率が疑えない前提になっていることです。何をするにも、見返りがあるかを先に計る。成果に直結しないものは削る。
その物差しが、大切なものまで削っていないか。全6章は、この問いをいろんな角度から照らしていきます。
第1章で効率が広がった仕組みを描き、第2章で「感動資本」を打ち出す。第3章は失敗と寄り道、第4章は逆張り思考、第5章は人とのつながりです。
そして第6章で、効率の先にある「味わう人生」へたどり着きます。
仕事の話から始まり、人生の話で終わる。そんな流れの本です!
はじめに|効率は、いつの間にか神話になった
はじめにのタイトルは「効率という名の神話」。
とくに自分でビジネスを始める人ほど、失敗したくない気持ちが強い。結果として、確実に成果が出ることしかしなくなる。著者はこの流れに、強い危機感を書いています。
面白いのは、著者自身がかつて効率を最優先していた一人だと明かしている点です。過去の著書では、飲み会なんて行くなと語っていたそうです。
その人が、なぜ真逆に見える本を書いたのか。
きっかけとして挙げられるのが、生成AIの急速な進化です。文章を書き、絵を描き、プログラムを組む。人間の領域だった所に、AIが入ってきた。
もはや効率や生産性という土俵で、人間がAIに勝つことは不可能です。
(『割に合わないことをやりなさい』はじめに より)
これは著者の見立てです。だからこそ人間は、遠回りに見えることの中にある感動や納得、人との強いつながりで勝負しよう、と続きます。
損得の計算を超えて心を込めた仕事が、相手の心に残り、信頼を生むかもしれない。はじめにには、そんな問いかけも出てきます。
もちろん、無制限に働き続けよという話ではありません。
著者は、昭和の根性論へのノスタルジーとも違うと断っています。テクノロジーが進む時代に、人間らしさを問い直す。そのための戦略的な試みだ、という位置づけです。
その武器として掲げられるのが「逆張り思考」です。
第1章 効率化時代の「次の価値」は、手間と時間の中にある

第1章は、私たちがなぜここまで効率に縛られたのかを解き明かす章です。
出発点は、人間の自然な欲求です。
面倒なことは避けたい。早く結果がほしい。
著者は、この欲求そのものは悪くないと書いています。問題は、社会全体がその欲求に応えすぎたこと。商品も情報も、即効性と再現性を前提に作られ、それが「正解」に見えてくる。
SNSが「評価の時間軸」を短くした
著者が大きな要因に挙げるのが、評価の時間軸が極端に短くなったことです。
タイムラインには、過程を省いた結果だけが流れてきます。そこに再生数やいいねの数字が添えられる。
顔も見えない誰かの成果と、自分の今を比べてしまう。差を早く埋めたくて、最短の方法ばかり探すようになる。
ショート動画や倍速視聴も、この流れを加速させたと著者は見ています。
投稿して数時間、反応がないと失敗だった気がする。この感覚、覚えがありませんか?
著者はさらに、うまくいった形をそのまま真似る風潮や、匿名・流動型の犯罪グループ、いわゆるトクリュウにも触れます。極端な効率主義の行き着く先への警告として書かれた部分です。
AI時代に「手間」の価値が見直される
後半は、AI時代だからこそ手間の価値が際立つ、という話です。
例に挙がるのは、昔のスピーカーや万年筆、フィルムカメラのようなヴィンテージ品。そして、制作過程を発信するハンドメイド作家の人気です。
共通するのは、人が時間をかけた跡です。作り手が誰で、どんな想いで作ったのか。その背景まで含めて選ばれている、と著者は書きます。
人との関係でも同じだ、と話は続きます。
大事な決断をAIに相談すれば、数十秒で筋の通った答えが返ってくる。それでも、時間をかけて話を聞き、一緒に悩んでくれた人の答えを選びたくなる。
決め手は、腑に落ちるかどうかです。論理と感情と関係性がかみ合った時に生まれる納得だ、と著者は説明します。
著者自身の例もあります。コロナ禍でスクールの活気が落ちた時期に、メンバー一人ひとりとオンラインで顔を見て話す時間をとった。本当にやる意味があるのか、迷いもあったそうです。それでも、少しずつ空気が変わっていった。
章の締めは、豊かさは時間の中にある、という話です。
どれだけ遠回りでも、時間がかかっても、「自分で選び、自分で納得する」ことにしか、生きる意味は宿りません。
(『割に合わないことをやりなさい』第1章 より)
速さより、自分の意志で進むこと。第1章の答えはここにあります!
私の場合|抱えていた仕事を手放した側から見えたもの
この章で著者は、成果を追うあまり、本当に大切なものまで削ってしまう人の姿を描いています。
この構図に、私の体験を重ねてみます。
「前から家族第一だった。」
家族が大事だという思いは、もともとありました。けれど、仕事を抱え込む癖があって手放せなかったんですよね。
その癖から離れたきっかけは、自分で選んだものではありませんでした。
「抱え込まず手放してよいことを手術や入院で物理的な強制断捨離で気づいた」
病気で入院し、物理的に仕事を持てなくなったことで、抱え込まず手放してよいのだと気づきました。
手放したあとの状態について、私はこう答えています。
「ワクワクしないコトが途切れたことでワクワクすることしか再開しなくてよい状態になった」
持っていた仕事が一度途切れたことで、本当にワクワクすることだけを選び直せる余白が生まれました。
本は、成果を急ぐあまり大切なものが削れていく様子を描いています。私の場合は、仕事が強制的に離れたことで、手放して余白をつくる大切さに気づきました。
同じ構図を、手放した側から見た話として置いておきます。
第2章 AI時代の最強兵器「感動資本」|期待を少しだけ超える思いやり

第2章で、この本の中心になる言葉「感動資本」が登場します。
著者の定義をかみくだくと、こうです。人の心を揺さぶる経験が記憶に残り、信頼になり、評判として広がり、やがて新しいチャンスを呼び込む。その積み重ねが感動資本です。
広告とも人脈とも違う。またお願いしたいと自然に思われる、目に見えない力です。
一度きりで終わらず、長く資本として働く。ひとつの行動が何倍ものチャンスになって返ってくる。著者はこれを、人生にレバレッジをかける力と表現しています。
記憶に残るのは、小さな思いやり
章の入り口で、著者は読者に問いかけます。最近、感動する仕事に出会いましたか、と。
納期を守る。依頼に的確に応える。どれも大切な基本です。
でも、何年も後にあのとき感動したと語られることは、そう多くない。
記憶に残るのは、ちょっとした書類ミスにやさしい一言を添えてくれた人や、残業中に缶コーヒーを差し入れてくれた同僚のような場面だ、と著者は書きます。
著者自身の体験も印象的です。出張先のホテルで、フロントの方がペンを左側に置いてくれた。左利きへの、さりげない心遣いです。
それだけで、またこのホテルを使おうと思ったそうです!
想定より多くのデザイン案を出してくれた人の話も出てきます。評価されたのは案の数そのものより、仕事にちゃんと向き合う姿勢だった、という例です。
そして著者は、核心をこうまとめます。
本質的なのは、「喜ばせたい」「相手に気持ちよくなってもらいたい」という、 人を思いやる姿勢そのもの です。
(『割に合わないことをやりなさい』第2章 より)
特別なスキルは要らない。ただ、多くの人はそこまでやらないし、気づかない。だからこそ、受け取った側に強く残るわけです。
なぜ今、感動資本なのか
著者は、今この資本が大事な理由を順に挙げます。
ひとつは、AIでアウトプットが均質化すること。著者の見方では、AIが出すのは期待通りのもので、予定調和からは感動が生まれにくい。だからこそ、人が生む期待以上の瞬間の価値が上がる、という論理です。
次に、人の最終的な決断は感情でなされること。神経科学者アントニオ・ダマシオの研究にも触れながら、条件が良くても、人は最後にこの人がいいと感じたほうを選ぶ、と書きます。
そして、時間をかけて効く資本なので、早く始めた人ほど有利になること。
築き方の答えはシンプルです。相手の期待を、少しだけ上回る。
心理学でいう期待違反効果にも触れています。期待通りは安心を生み、期待以上は記憶に深く刻まれる、という話です。
実際、章の終わりにははっきりした条件が書かれています。
すべての場面で常に120%の力を出し続ける必要はありません。 大切なのは、「どこで」「誰に対して」その期待を超える行動をとるかを、見極めること。
(『割に合わないことをやりなさい』第2章 より)
相手と場面を選ぶ。第2章で見落とせない一文です!
期待を超える2つのコツ
著者が挙げるコツは、目の前の相手に関心を持つことと、理想の自分を思い描くことです。
クッキーづくりを教える方が、丁寧なラッピングに手書きの手紙を添えていた例。目標を達成したお客様とお祝いのランチに行っていたダイエット指導者の例。どちらも、本人が当たり前だと思ってやっていたことが信頼になっています。
気配りは才能より、後から育てられる力だとも書かれています。人と関わり、いろいろな考え方に触れるうちに、人の気持ちを想像できるようになる。
私の場合|好きなことの列に「人に喜ばれる」があった
著者は、喜ばせたいという姿勢を感動資本の核に置きます。
実は私、2024年6月9日にChatGPTへ、自分の好きなことを書き出したことがあります。
お題は、好きなこと、得意なこと、時間を忘れてやってしまうこと。それをランダムに並べました。
その列の中に、こんな行があります。
- 子供と遊ぶ
- 人に喜ばれる
- 隠徳
ほかにも、買い物をして料理する、歌を歌う、最新AIやツールを試す、などが並んでいます。
感動資本を、見返りを待つ仕組みとしてだけ読むと、少し苦しくなるかもしれません。
喜ばせたいという姿勢が、好きなこととして先にある。そう読むと、また違った見え方になると私は思います。
第3章 失敗と寄り道は、主体性があれば強さになる

第3章は、失敗と寄り道を見直す章です。
私たちは、間違えたくない、ムダをしたくないという空気の中で物事を選んでいます。著者は、その姿勢が未来の芽を自分で摘んでいると指摘します。
レビュー頼みで、経験が似てくる
点数の低い店は避ける。評判の悪い映画は観ない。
便利ですし、賢い選び方にも見えます。
著者はここで、損失回避性という人間の性質に触れます。得をする喜びより、損をする痛みを大きく感じる傾向のことです。
ただ、他人の評価を判断基準にし続けると、自分の感性を使う機会が減る。みんながいいと言うものばかり選び、経験が似たり寄ったりになっていく。
本や情報から知識を得ること自体は大切です。でも、失敗を避けて安全な情報ばかり選んでいると、自分で直接体験して学ぶ機会が遠ざかってしまいます。
あらかじめ損を避けて集めた知識と、自分で実際にやってみて得る実感の間には、大きな差があるわけですね。
失敗はデータ、試す量が道をひらく
失敗をどう捉えるか。
著者の答えは、失敗はデータだ、というものです。今のやり方ではうまくいかないと分かった。それだけの話だ、という立場です。
失敗はデータ。分かりやすいですよね!
ペニシリンの発見、ポスト・イットの誕生、ホンダがアメリカで小型バイクを前面に出して成功した話。どれも、当初は失敗に見えたものから価値が生まれた例として並びます。
大量に試すことの大切さも説かれます。数本の投稿で伸びないと悩む人と、本数を重ねて比べ、改善を続ける人。差は才能より、試した量にあるという話です。
一発で正解を出そうとする姿勢こそが成長を妨げる、とまで著者は書いています。
寄り道と迷走は、見た目が似ている
後半は寄り道です。
スティーブ・ジョブズが大学を中退したあともカリグラフィーの授業に通い、それがのちにマッキントッシュの美しい書体につながった話が紹介されます。
著者自身の寄り道も語られます。会社員時代に本気で続けた音楽と、長く趣味にしてきたカメラ。その両方が、のちに音楽ビジネスに挑む人を支える場面で重なった、という話です。
ここで大事な注意があります!
寄り道と迷走は違う、という点です。違いは主体性にある、と著者は言います。
面白そう、もっと知りたい。そんな自分の動機で遠回りするのが寄り道。周りがやっているからと、流されて動くのが迷走です。
では、人に誘われて始めたことは迷走なのか。著者の答えはこうです。
きっかけが他人だったとしても、実行する中で自分の意志が芽生えれば、それは立派な「寄り道」です。
(『割に合わないことをやりなさい』第3章 より)
お金を稼ぎたいという動機でも、本気で取り組めているなら自分の道になり得る、とも書かれています。
逆に避けたいのは、動機も弱く、受け身で流行を追い続ける状態です。著者は、今やっていることは何のためかを時々問い直してほしい、と呼びかけます。
大量に試すことも、寄り道も、何でも手当たり次第にやれという話とは違います。自分が関わっているかどうか。そこが分かれ目です。
章末では、情報として知っていることと、実際に体験して身につけることの間には天と地ほどの差がある、と結ばれます。
第4章 逆張り思考は「順張り」を理解してから

第4章のテーマは、選ばれる人になるための「逆張り思考」です。
キーワードは希少性。どれだけ優れているかより、どれだけ唯一無二か、という視点が出てきます。
希少性は、成果よりポジションから生まれる
水は命に欠かせません。でも、豊富にある場所では値がつかない。
砂漠なら、事情はまるで変わります!
価値は相対的なもの。そんな経済学の話から章が始まります。
分かりやすいのが、職場でExcelがとても得意な人の例です。周りが苦手な職場では欠かせない存在になる。全員が使いこなす職場に移れば、同じスキルでも目立たなくなる。
重要なのは、「他と比べて優れているか」よりも、「他とどう違うか」なのです。
(『割に合わないことをやりなさい』第4章 より)
ところが人には、群れの中で安心したい本能があると著者は書きます。みんなと同じ道は安全に見える。けれど人が集まるので、わずかな差を争う消耗戦になりやすい。
だからこそ、まだ評価されていない場所でも、可能性を見出せるなら時間を注ぐ価値がある。それが著者の考えです。着付けというジャンルにこだわり、独自の理論を作って事業を育てた方の例が紹介されています。
AIは過去のデータから最適を導くのが得意。まだ誰も認識していない欲求を構想するのは人間の領域だ、と著者は位置づけます。
「AIは80点を出すプロ」という見立て
この章でとくに議論を呼びそうなのが、努力の逓減の話です。
最初の少しの努力で80点はとれる。そこから100点へは、何倍もの努力が要る。多くの人はその手前でやめてしまう。だからこそ、その先で差がつく、という主張です。
著者はAIを、80点を出すプロと呼びます。そこそこ整ったアウトプットだけでは淘汰されていく、とも書いています。いずれも著者の見立てです。
ここは読み方に注意したい所です。
私は、何にでも100点を目指せという話としては読みませんでした。第2章で著者自身が、相手と場面を選ぶと書いていました。この章の実践法でも、判断の基準を効率のよさより内側から湧く動機に置いています。
熱を注げるものを探し、順張りを理解する
逆張りの実践として、著者は2つのヒントを挙げます。
ひとつは、熱を注げるものを探すこと。いくら時間を費やしても苦にならない対象です。心の底からやりたい気持ちがあれば、人から割に合わないと見える努力も続けられる、と書かれています。
次のヒントが、順張りを理解することです。
重要なのは、「順張り」をきちんと理解したうえで逆張りを選ぶ、という視点です。
(『割に合わないことをやりなさい』第4章 より)
みんなと逆をやるだけでは、ただの奇行と思われてしまう。
例として挙がるのが、朝活や自己肯定感という言葉が流行った背景です。なぜ多くの人がそれを選ぶのか。それによって何が見えなくなっているのか。そこまで考えて初めて、意味のある一手が打てます。
最後に、ためらいを越える一言が添えられます。他人は思っているほど、あなたの失敗を気にしていない。
ちょっと気が楽になる言葉ですよね!
第5章 「ムダ」から生まれる深いつながり|対面と、あえて合わせる努力

第5章は、人間関係の「非効率」を扱います。
誰とでもすぐつながれる時代なのに、孤独を感じる人が増えているのではないか。著者はそう問いかけます。
対面でしか共有できない空気
オンラインで済む話を、わざわざ会って話す。
効率だけで見れば、移動も場所も必要です。
それでも大切な商談や込み入った相談では、直接会いたくなる。対面では表情や声のトーン、間の取り方といった言葉以外の情報が豊かに行き交うからだ、と著者は説明します。
オンライン会議では対面より創造的なアイデアが出にくかった、という研究(Brucks & Levav, Nature, 2022)にも触れています。
こうした空気の共有が「共創」の土台になる、と著者は書きます。同じ方向を見て、一緒に考える関係です。
「無理をしない関係」の落とし穴
この章で一番考えさせられるのが、無理して人に合わせなくていい、という言葉への問いかけです。
著者はその心地よさを認めたうえで、追いすぎると孤立につながる危険があると書きます。価値観がすべて同じ人はいないからです。
そこで出てくるのが、あえて合わせる努力。とはいえ、相手の言いなりになる話とは区別されています。
大切なのは、相手を尊重したうえで、自分のコンフォートゾーンを少しだけ超えてみる勇気を持つこと。
(『割に合わないことをやりなさい』第5章 より)
少しだけ、がポイントです!
自分の中にない価値観に触れることで、ふだん使わない思考や感情が鍛えられる。それが人間的な知性を育てる、というのが著者の主張です。
飲み会は本当にムダなのか
過去に飲み会を否定していた著者が、この問いを立てる。そこが興味深いところです。
形式だけの飲み会や、参加を強いられる飲み会は苦痛だと、著者自身も認めています。そのうえで、肩書きを少し脇に置いて笑い合う場から生まれる信頼もある、と書きます。SNSで話題になった、AIにビールは飲めないという趣旨の言葉にも触れています。
ランチや、ちょっとした雑談も同じだと話は続きます。
こうした積み重ねが、信頼という名の「社会資本」になる。見返りを求めずに助けてもらった人は、次は自分がその人の力になりたいと感じるようになります。
結論の出し方も丁寧です。無理に合わせなくていいという考えと、多少無理をしても合わせたほうがいいという考え。どちらか一方だけが正しいわけではない、と著者は書きます。
そのうえで、心の余裕があるなら後者を意識してみてほしい、と勧めています。
余裕がある時に、という条件つきなんですよね!
ここを読み落とすと、無理を重ねる話に見えてしまいます。
第6章 効率主義の先で人生を「味わう」|目的のない時間とAIとの共創

最終章で、本はようやく人生の話に入ります。キーワードは「味わい」です。
著者は、マズローの欲求段階説に触れながら、人は本能的により良く生きることを求めると書きます。
スケジュールをこなすことと、人生を味わうことは違う。記憶に温かく残るのは、段取り通りにいかなかった瞬間ではないか、と問いかけます。
旅の途中で道に迷って見た夕焼け。期待はずれの映画のあと、友人と語り合った時間。焦げた料理を家族で笑いながら食べた食卓。
そんなズレや余白に人生の味わいが宿る、という見方です。
目的のない時間に身を置く
では、日常でどう味わいに触れるか。
著者のヒントは、目的のない時間に身を置くことです。
例は、目的もなく本屋を歩くこと。検索では出会えない一冊に出会える。直感が動き、見知らぬテーマを理解しようと論理も動く。その行き来が、思考と想像を育てると書かれています。
意図的なゆとりの過ごし方も並びます。手間をかける料理を楽しむ。手紙を書く。目的のない散歩を楽しむ。そして、趣味や学びに没頭する。
最後の項目は、実益に直結しなくても、好きだから、楽しいから、という理由だけで夢中になる時間です。この記事の背骨に、いちばん近い所です。
私の場合|目的もゴールもない鬼ごっこを、もっと
目的のない時間という言葉に、私が重ねたい場面があります。
公園での鬼ごっこです。
その遊びを振り返り、遊べた自分をどう受け取っているかと聞かれた時、私はこう答えました。
「子供のようにワクワク夢中に遊ぶ時間のためにAIを使って仕事を手放したいもっと遊びたい」
続けて、あの遊びのどんな所をもっと味わいたいかと聞かれて、こう答えています。
「ただ鬼ごっこするだけ目的もゴールもない」
ただ鬼ごっこをする。目的もゴールもない。
ここが、私がこの本でいちばんつなげたかった所です!
著者は、目的のない時間や、好きだから夢中になる時間に、人生の味わいを見ます。そしてこの章の後半で、AIが人間に余白をくれると書きます。
私の場合、その余白で何をしたいかは決まっています。
遊びたい。目的もゴールもない遊びを、子供のように夢中で。
そのためにAIへ仕事を手放したい。AIに任せるのは、効率のためというより、遊ぶ時間のためなんですよね。
ここでいう遊びを、何かの成果を得るための手段には置きません。答えたとおり、目的もゴールもない遊びです。
「割に合わないこと」を、私はこの場所で受け取りました。損得を計らずに遊べる時間です。
バズより、長く愛される価値
著者は、SNSのバズを追う危うさにも触れます。熱狂の多くは、驚くほどあっけなく消えていく。
対比として出てくるのが、地域で長く愛される普通の定食屋さんです。
派手さはなくても、毎日食べても飽きない味と、いつもの居場所としての安心感がある。ぶれずに本質的な価値を届け続けるから、信頼や愛着がゆっくり育つ、という話です。
AI時代に人間が磨きたい4つの力
章の後半では、AI時代に人間が磨いておきたい力が整理されます。
問いを立てる力。感情と共感を使った共振力。創造的破壊と編集する知性。そして、複雑な現実を引き受けて納得解をつくる力です。
著者は、答えを出すのはAIが得意でも、そもそも何を問うべきかを生み出す力は今のAIにはない、と書きます。人間関係の葛藤の中で合意をつくる責任までは担えない、とも。いずれも著者の見解です。
そのうえで、AIとの関係は対立より共創だ、と著者は続けます。
論理やスピードはAIに任せて、人間はもっと感情に、物語に、関係性に力を注ぐことができるようになる。
(『割に合わないことをやりなさい』第6章 より)
AIは何かを奪う存在というより、人間が向き合うべき問いに専念する余白をくれる。著者はこれを、喜ぶべき進化だと書いています。
この記事の背骨は、この一文とつながっています。
譲れない価値を見つける
本書の締めくくりは、読者への問いかけです。あなたにとって、どうしても譲れないものは何か。
寝食を忘れて没頭できる趣味かもしれない。誰かの役に立ちたいという思いかもしれない。他人の評価より、自分の心の声で見つけてほしい、と著者は書きます。
そして最後に、割に合わないことは裏切らない、と言い切ります!
AIがどれほど賢くなったとしても、それは私たちの「代わり」にはなれません。
(『割に合わないことをやりなさい』第6章 より)
これも著者の見解です。人には、矛盾を抱えながらも歩み続ける力や、他者と心を通わせる力があるから、という理由が添えられています。
おわりに|「本質」を次の時代へ継ぐ
おわりにで、著者は本書に込めた想いを明かします。
手間暇を惜しまない働き方や、義理人情を大切にする関係。いわゆる昭和的な価値観に、改めて光を当てたかったそうです。
ただし、懐古主義とは違うと念を押しています。昔の成功体験をそのまま再現することはできない。根底にある本質を見抜く力を、今の文脈で読み直す。そこから新しい価値が立ち上がる、という考えです。
だからこそ、この思考法が世代をつなぐ架け橋になってほしい。受け継ぐべきは、どんな時代にも本質を見失わない姿勢だと結ばれます。
実践編|AIで余白をつくり、割に合わないことを遊びとして取り入れる

ここからは、本の内容を日常にどう持ち込むかです。
大前提として、仕事を増やす方向には使いません。この本が言っているのは、何でも全力でやれ、とは違うからです。
AIに任せられる作業を手放して、余白をつくる
第6章で著者は、AIが人間に余白をくれると書きました。
まずは、毎日の作業を見渡してみる。論理やスピードで片づく作業は、AIに任せられないか考えてみる。
そして、生まれた時間を別の仕事で埋めない。
ここが分かれ道です!
期待を超える相手と場面を選ぶ
第2章の条件を思い出してください。すべての場面で120%を出す必要はない。
この人には、と思える相手に、少しだけ期待を超える。
思いやりは量より、向ける先です!
寄り道か迷走か、動機を問い直す
新しく始めたことがあるなら、第3章の問いが使えます。今やっていることは何のためか。
きっかけが人からでも構いません。続けるうちに自分の意志が育っているなら、それは寄り道です。
目的のない時間を、あえて残す
目的もなく本屋を歩く。散歩をする。好きだから夢中になる。
その時間に、何かの役に立つかどうかを問わない。それが第6章でいう味わいに近づく道だと思います。
私にとっては、目的もゴールもない遊びの時間がそれにあたります。
『割に合わないことをやりなさい』FAQ|読む前に気になる疑問

Q1. 長時間労働をすすめる本ですか?
すすめる本ではありません。第2章では、すべての場面で120%の力を出し続ける必要はなく、どこで誰に対して期待を超えるかを見極めることが大切だ、と条件を示しています。
Q2. AIを否定する本ですか?
否定する本ではありません。著者は、効率の土俵でAIと競っても人間は勝てないと見ています。そのうえで第6章では、論理やスピードはAIに任せ、人間は感情や物語、関係性に力を注ぐ共創の関係を描いています。
Q3. 「無理をしない人間関係」はよくないのですか?
著者は、どちらか一方だけが正しいとは書いていません。そのうえで、心の余裕があるなら、相手を尊重しながら少しだけ合わせてみることを勧めています。自分を押し殺して言いなりになる話とは区別されています。
Q4. 寄り道と迷走は、どう見分ければいいですか?
分かれ目は主体性です。面白そう、もっと知りたいという自分の動機があれば寄り道。周りに流されて受け身で動いているなら迷走です。きっかけが他人でも、続ける中で自分の意志が芽生えていれば寄り道になる、と著者は書いています。
まとめ|要約すると、割に合わないことは損得を計らない余白から始まる

『割に合わないことをやりなさい』は、効率が疑えない前提になった時代に、手間・感動・つながり・味わいの価値を取り戻そうとする本です。
第1章で時間をかける価値を、第2章で感動資本を描く。第3章で失敗と寄り道、第4章で逆張り思考、第5章でつながりを扱い、第6章で人生を味わう話にたどり着きます。
どの章にも、条件がついています。
相手と場面を選ぶ。主体性を持つ。順張りを理解する。余裕がある時に合わせる。
この条件まで読むと、無理を重ねる本には見えません!
私はこの本を通して、AIに仕事を手放して、目的のない遊びの時間を増やす話として受け取りました。それが、私にとっての割に合わないことです。
あなたにとって、損得を計らずに夢中になれる時間は何でしょうか?
ひろくんコラム|新しいAIで、自分の表現が意図以上に形になった
この本の著者は、AIが供給するのは期待通りのものだと書いています。第4章では、AIを80点を出すプロとも呼んでいました。

私の体験は、少し違う見え方でした。
手術や入院で、ワクワクしないことが途切れたあと。最初に再開したワクワクは何かと聞かれて、私はひとことで答えています。
「新しいAI」
何がワクワクだったのか。その答えは「自分をより新しく表現できる」でした。
それまでの表現と何が違ったかも、こう答えています。
「シンプルにAIを触ってて楽しくより長文や画像や音楽やLPなど成果物がカタチになりやすく意図以上にできてワクワクした」
長文も画像も音楽もLPも、形になりやすく、意図以上にできたんですよね!
著者の見方を否定したいわけではありません。期待通りに整えてくれる安定感も、AIの大事な強みです。
そのうえで、私が触れたAIは、自分の表現を意図以上に広げてくれる相手でもありました。
以前、AI共創について私はこう答えています。
自分がワクワク夢中に遊び探求して消化できて腑に落ちてるところにAI共創するから価値も意味もある
この言葉のとおり、自分のワクワクや遊び探求があってこそ、AIと重ねた時に価値が生まれるんですよね。公開記事『AI共創の価値は、AIの外のワクワクから生まれる。休息は『ワクワクのための充電』』でも書いたように、AIの外にある熱こそが原点です。
損得を計らずにAIと夢中になれる時間。それもまた、人生の味わいの一つだと私は思います!
分身AIと過ごした最初の100日の記録は、分身AIと歩んだ100日の全まとめにあります。分身AIについては、分身AI.comにまとめています。
