GMO代表が2カ月で10万行書いた話。”安く簡単に”だけじゃない、本当の理由

GMO代表が2カ月で10万行書いた話 全体図解

AI活用 / 経営者の実践

GMO代表が2カ月で10万行書いた話。”安く簡単に”だけじゃない、本当の理由

2026年7月 | AI氣道

家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくんです。

先に、いちばん大事な数字からお伝えします。GMOインターネットグループ代表・熊谷正寿さん(62歳)が、たった2カ月で10万210行のコードを書いたという話。しかもトークン代は約3万円強。従来のSIer発注なら50人月・5000万円級の仕事です。

「それって、誰でも簡単にできるってこと?」——そう思った方に、先に釘を刺しておきます。この記事はその方向には行きません。数字は事実として伝えつつ、「じゃあ私たちは何をすればいいのか」を、私自身の失敗談も交えて正直に考えます。派手な数字ほど、受け取り方を間違えると遠い世界の話にしてしまいがちなので、そこは慎重に扱いたいと思っています。

3行でわかるポイント

・GMO熊谷正寿氏が2カ月で10万210行のコードを個人開発。トークン代は約3万円強、従来のSIer発注(50人月・5000万円)と比べて約1500倍の効率化

・ただし「安く簡単に」で終わる話ではない。熊谷氏自身も「エンジニアはなくならない、ただコードを書くだけの”コーダー”という役割が終わった」と語っている

・私自身も「AIに任せる」つもりが「AIを監視する」になって3時間かかった失敗がある。数字の派手さより、任せ方の練習の方が本質

熊谷正寿さんが2カ月でやったこと

熊谷正寿さんが2カ月でやったこと
熊谷正寿さんが2カ月でやったこと

GMOインターネットグループ代表・熊谷正寿さんの事例を紹介した記事「GMO代表・熊谷正寿『2カ月で10万行コード書いた』トップ自ら”使ってなんぼ”を地で行く理由」(type.jp)を読みました。

熊谷さんが作ったのは、自身の平均余命を秒単位で刻む「人生時計シート」と「夢リスト」を管理するスマートフォン専用のポータルアプリ。かつてExcelで管理していたものを、Claudeを使って自作アプリ化したそうです。

「平均余命を秒単位で刻む」というのが、私にはとても印象的でした。数字として自分の残り時間を可視化するというのは、がんサバイバーの私にとっても他人事ではない話です。ただ、熊谷さんの場合はそれを「管理して終わり」にせず、日々「夢リスト」と照らし合わせて行動を決める道具として使い続けているところに、単なる自己啓発ツールとは違う実務性を感じました。

ここ2カ月間で書いたコードは10万行になりました
——熊谷正寿さん(type.jp記事より)

キーボードはほぼ使わず、音声入力アプリを電波状況に応じて切り替えながら、口頭でClaudeに指示して開発を進めたとのこと。この体験から「ものすごい効率化になる」と判断し、グループ全社約8,300人にグースネックマイクを導入するプロジェクトを即座に始めたそうです。

使い分けていた音声入力ツールは3つ。それぞれの役割を整理すると、こうなります。

ツール役割
Typelessメインの音声入力アプリとして長文の指示出しに使用
Aqua Voice電波状況が不安定な場面でのサブ用途
Apple純正音声入力OS標準機能として、他のアプリが使えない場面のフォールバック

複数ツールを電波状況で使い分けるという地味な工夫が、「2カ月間、毎日途切れずにClaudeと対話し続ける」という継続性を支えていたんじゃないかと私は見ています。GMOインターネットグループは、熊谷さんが1991年にボイスメディア(現GMO)として創業した会社で、今ではグループ全体で約8,300名を率いる規模。その創業者自身が、現場のいちユーザーとして道具を試し倒しているという構図が、まず単純にすごいと思いました。トップが率先して手を動かすから、全社導入の説得力も桁違いになるんだと思います。

なぜこの数字がすごいのか

なぜこの数字がすごいのか
なぜこの数字がすごいのか

数字を比較表にすると、こうなります。

項目従来のSIer発注熊谷さんの個人開発
開発規模10万行のコード10万210行のコード
期間50人月2カ月
コスト約5,000万円(1000行あたり約100万円相場)約3万円強(トークン代435ドル)

出典: type.jp「GMO代表・熊谷正寿『2カ月で10万行コード書いた』」(効率化倍率は約1,500倍)

熊谷さんはこの27年間のIT革命について、こう振り返っています。

あの27年間はIT革命の本番ではなく、全て”前座”だった
——熊谷正寿さん(type.jp記事より)

「安く簡単に」で終わらせたくない理由

安く簡単にで終わらせたくない理由
安く簡単にで終わらせたくない理由

ここからが、今日いちばん書きたかったことです。この数字だけ見ると「AIを使えば誰でも安く簡単に開発できる」と読めてしまいます。でも、熊谷さん自身がこう釘を刺しています。

エンジニアはなくならないけれど、ただコードを書くだけの”コーダー”という役割は完全に終わった
——熊谷正寿さん(type.jp記事より)

差別化要因は「仕様書がない曖昧な世界で問題を見つけ、言語化できる能力」だと熊谷さんは言います。つまり、安くなったのは「書く」部分だけで、「何を作るか決める」部分の価値はむしろ上がっている、ということです。

正直に言うと、私自身「AIに任せる」つもりが「AIを監視する」になって時間を溶かした経験があります。最初にClaude Codeでブログ記事を作ってもらった時、10分おきに「これ大丈夫?」と確認して、結局3時間かかったことがありました。「AIに任せる」と「AIを監視する」は全然別物です。監視してるうちは、時短にも質の向上にもつながりません。

熊谷さんの2カ月・10万行も、口頭で指示を出し続けるという「任せる」練習を積み重ねた結果だと思います。魔法のように一瞬でできたわけではなく、2カ月間、毎日Claudeと対話し続けた蓄積です。

経営者が最後まで手放さないもの

以前、「AIに『枠の中』を任せて、経営者は『枠の外』で味見する」という記事を書きました。熊谷さんの事例も、この構造そのものだと思います。

コードを書く「枠の中」の作業はAIに任せられる。でも、「何を作るべきか」「どこまで任せていいか」を決める「枠の外」の判断は、経営者自身がやるしかない。熊谷さんが「仕様書がない曖昧な世界で問題を見つける」と言っているのは、まさにこの「枠の外」の話です。

この「枠の中/枠の外」の線引きは、業種や規模が変わっても同じ形で効きます。GMOのような数千人規模の企業でも、私のような家事育児の合間に経営する小さな会社でも、「枠の外」を決める主体は結局、経営者本人しかいません。AIがどれだけ賢くなっても、この境界線だけは外注できないというのが、私が熊谷さんの事例から一番受け取りたかったことです。

非エンジニアにも関係ある話

「うちはアプリなんて作らない」という方にも関係があります。熊谷さんの本質的な主張は、コーディングの話ではなく「他人が作った正解に依存せず、自分の頭で未来を予測する」という働き方の話だからです。

実際、コードが書けなくてもAIで診断アプリは作れる|ChatGPT×Codex実践レポートという記事でも紹介した通り、エンジニアでない経営者がAIを使って自分の事業のツールを自作する事例は、もう特別なことではなくなっています。

以前紹介した「AIは相談相手|毎朝25分ChatGPTと壁打ちする店主の予約率改善実演」もそうですが、熊谷さんのような大企業のトップだけでなく、個人店の店主さんでも「毎日AIと対話し続ける」という積み重ねは同じ形でできます。規模の大小より、対話の継続時間がものを言うんだと思います。

今日から始められること

①自分の業務で「Excelで手作業管理しているもの」を1つ思い出す。熊谷さんの「人生時計シート」も、最初はExcel管理だったものです。

②いきなりアプリ化を目指さず、まずAIに「これ、どうやったら自動化できる?」と口頭で相談してみる。

③「AIに任せる」練習は、被害の少ない小さなタスクから。週報テンプレなど、失敗しても大きな損害にならないものから始める。

④音声入力を1回試す。キーボードで打つより、話しかける方が速いタスクが実は多いです。

⑤最初の1週間は「監視」になってもいい。10分おきに確認してしまっても、それ自体は失敗じゃありません。監視の時間が少しずつ短くなっていくのを、自分の成長として味わってください。

COLUMN

数字の派手さより、任せ方の練習

数字の派手さより任せ方の練習

2カ月・10万行・3万円。この数字だけ見ると圧倒されます。でも私が本当に見習いたいのは、数字そのものよりも、熊谷さんが62歳の経営トップという立場で、実際に手を動かし続けたという事実の方です。役職が上がるほど「自分で手を動かさない」が当たり前になりがちな中で、あえて現場のいちユーザーであり続ける姿勢に、経営者としての在り方を考えさせられました。

私自身、がんの手術から復帰したあと「俺がやらなきゃ全部止まる」と抱え込んだ時期がありました。そこから「委ねるOS」に書き換える旅を続けています。ただ、委ねると丸投げは違います。熊谷さんも、口頭で2カ月間毎日指示を出し続けたわけで、これは「丸投げ」ではなく「対話し続けた」結果です。AIは横に広げる係、人間はどこまで委ねるかを決めて縦に掘る係。ここは経営者の私自身が、最後まで持ち続けるべき部分だと思っています。

そういえば、以前「Claudeの名前の由来?クロード・シャノンの情報理論と分身AI|AIに委ねるとは」という記事で、「委ねる」という言葉の意味を情報理論の視点から掘り下げたことがあります。委ねるというのは情報をゼロにすることじゃなくて、どの情報を残しどの情報を手放すかを設計すること。熊谷さんの2カ月も、まさに「何を任せて何を自分で決めるか」の設計だったんじゃないかと思います。情報理論の視点で見ると、削ぎ落とす勇気こそが本質だったのかもしれません。

正直に言うと、私はこの記事を書きながら、自分の「AIに任せる」練習がまだ全然足りていないなと感じました。10分おきに確認して3時間かかった過去の私と、2カ月間対話を積み重ねた熊谷さんの間には、まだ距離があります。だからこそ、この記事は「もうできてる私」ではなく「まだ練習中の私」として書いています。

Q&A

よくある質問

Q1. 私も2カ月あれば10万行書けるようになりますか?

分かりません。熊谷さんも「仕様書がない曖昧な世界で問題を見つけ、言語化できる能力」が差別化要因だと言っています。行数を真似ることより、「毎日AIと対話し続ける」という練習量を真似る方が現実的だと思います。

Q2. コーディングの知識がなくてもできますか?

熊谷さんはキーボードをほぼ使わず音声入力で指示を出しています。知識よりも「何を作りたいか」を言語化する力の方が重要なようです。ただし、私自身の経験では最初は「任せる」と「監視する」の違いに戸惑うと思うので、被害の少ない小さなタスクから慣れることをおすすめします。専門知識がないことは、むしろ「仕様書に縛られない曖昧な問題設定」をしやすいという意味で、有利に働く場面もあると思っています。

Q3. これって結局「AIさえあれば苦労せず結果が出る」って話ですか?

いいえ。熊谷さん自身が「コーダーという役割は終わった」と言いつつ「エンジニアはなくならない」とも言っています。安くなったのは作業コストだけで、何を作るか決める力の価値はむしろ上がっている、という話です。

まとめ:安くなったのは”作業”、上がったのは”決める力”

熊谷さんの2カ月・10万行・3万円という数字は事実です。でも、この記事で一番伝えたかったのは、そこから何を受け取るかです。「安く簡単にできる」ではなく、「何を作るか決める力」「AIとどこまで対話を続けられるか」の価値が上がっている、という話として受け取ってもらえたら嬉しいです。

今日からの小さな一歩が、2カ月後にどんな景色に変わっているか、私自身も試してみようと思います。

こういう「読んで自分に刺さった話を、自分の実践と重ねて考える」話は、私がやってる無料のGPTs研究会で、毎朝ライブでプロセスまるごと公開してます。よかったら覗きに来てくださいね。競争より共創。凸凹のまま、一緒にワクワクやっていきましょう。

参考リンク:GMO代表・熊谷正寿『2カ月で10万行コード書いた』(type.jp)AIに『枠の中』を任せて、経営者は『枠の外』で味見するコードが書けなくてもAIで診断アプリは作れるAIは相談相手|毎朝25分ChatGPTと壁打ちする店主の予約率改善実演Claudeの名前の由来?クロード・シャノンの情報理論と分身AI

上部へスクロール