WATCH REPORT / AI×働き方

「任せると丸投げの違い」をAIに聞いたら全部違った——山口周さんの問いに、私は自分の答えを持っていた

2026.08.13

家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。今回は、山口周さんが「人的資本を“哲学”する」というテーマで語るレイヤーズ・コンサルティングのセッションを紹介するね。

山口周さんが実験で選んだ問いが、よりによって私がずっと考えてきたテーマそのものでした。しかもAIたちの答えは、全部バラバラだったんですよね。

山口周さん
独立研究者・著作家/動画出演者

3行でわかるポイント

  1. すでに上手にできる人にその仕事をやらせている間、その人の学習は止まっている。成長曲線が寝た状態。
  2. 「任せると丸投げの違い」をAIに聞くと答えが全部違う。つまり世の中に合意された正解が存在しない。
  3. 正解がないものを考え続けるのが哲学。だからこそ、問いを持っているかどうかが人の値打ちになる。

この記事でやること

あなたの時間が今どこへ流れているかを見て、「もう上手にできる仕事」と「まだ下手な仕事」を仕分けるところまで進みます。

🎬 元動画

「時間資本の人的資本への転換効率」——その一日は、何に変わったのか

「時間資本の人的資本への転換効率」——その一日は、何に変わったのか

冒頭の一言から、いきなり刺さりました。人的資本という言葉を、こう言い換えるんです。

「会社全体として見た時の従業員の時間資本の人的資本への転換効率ってのがどうなのかってのが1つの問題点」

山口周さん — 0:10〜

時間を投じたら、その分だけ人が育っているか。育っていなければ、時間は消えただけ——という見方です。

で、これ経営者だけの話じゃないんですよね。私は家事と子育てのスキマで仕事をしているので、使える時間が最初からブツ切りです。息子を寝かせてからの1時間、洗濯機を回している20分。その細切れが何に変わったのかを、正直あんまり考えたことがなかった。忙しかった……で終わらせていました。

転換効率という言葉を当てられると、急に落ち着かなくなります。今日の3時間は、何に変わったのか。

今の自分を一行で(1分):昨日いちばん長く使った作業を1つ書き出してください。1分でOK。それはあなたの何に変わりましたか。

「もう成長が寝た状態でみんな仕事やってる」——得意な仕事ほど学習が止まる

「もう成長が寝た状態でみんな仕事やってる」——得意な仕事ほど学習が止まる

そして、その転換効率が下がる原因が、これでした。

「その仕事をすでに上手にできるような人にその仕事をやらせてるってことは、その人個人の学習ってのは停滞してるってことですよね。このSのカーブで言うと、もう成長が寝た状態でみんな仕事やってるわけですから」

山口周さん — 0:17〜

いやー、これは耳が痛い。だって会社としては、いちばん上手い人にやらせるのがどう考えても効率的なんですよね。早いし、失敗しないし、教えなくていい。でもその瞬間、その人のSカーブは寝ている。組織の効率と個人の成長が、真正面からぶつかる場所です。

ここでAIの話とつながります。すでに上手にできる仕事——つまり型が固まった仕事こそ、AIに渡せる領域なんですよね。渡した人は、まだ下手な場所へ移動できる。役割を渡すことについて書いた記事でも触れましたが、委ねるのは「自分にできないこと」じゃなくて「自分がもう覚えてしまったこと」のほうなんです。

ぶっちゃけ私も、記事の型が固まってきた時に「もう自分が書かなくてもいいな」と思いました。寂しさもあったけど、それ以上に、寝ていたSカーブが動き出した感じがあったんですよね。

今の自分を一行で(3分):あなたが「もう完全に上手にできる」仕事を1つ挙げてください。3分でOK。それがAIへの最初の引き渡し候補です。

「任せると丸投げの違い」をAIに聞いたら、全部答えが違った

「任せると丸投げの違い」をAIに聞いたら、全部答えが違った

ここで、山口周さんが自分でやった実験の話が出てくる。科学と哲学の違いを説明する流れで、AIに投げた問いがこれでした。

「ChatGPTとGeminiと、いくつかのAIに『任せると丸投げの違いを端的に説明してください』って(中略)AIは基本的に統計で動いてますから、任せると丸投げの違いがAIごとに全部違うってことは、これ何を意味してるかって言うと、世の中にコンセンサスの取れた正解はないってことなんですね」

山口周さん — 5:44〜

正直、画面の前で声が出ました。よりによって、その問いか……と。

というのも私、この問いにずっと引っかかっていて、しかも自分なりの答えを書いてしまっているんですよね。寝ている間にAIを走らせた実験のLIVE記事の締めが、これです。

「『毎回』を『こういう時だけ』に条件を絞ったら、画面を作りすぎる癖が直った、という話です。今日の『ゴールとループ』の話と、実はまるっきり同じ構造でした。委ねることと、丸投げすることは、紙一重で違う」

ひろくん — AI氣道「AIとゴールとループ、一晩の自走の実験」

私の答えは「条件を渡したかどうか」でした。何をもって完了とするか、どこで人に戻すか。それを決めて渡すのが委ねるで、決めずに渡すのが丸投げ。

これが世の中の正解かというと、たぶん違います。山口さんの実験が示す通り、AIごとに答えが割れるくらいだから、人間だってもっと割れる。でもね、だからこそ意味があるんだと思うんですよ。正解がないなら、自分の答えを持っている人が強い。

今の自分を一行で(5分):「任せる」と「丸投げ」の違いを、あなたの言葉で一行だけ書いてみてください。5分あれば書けます。AIの答えを写さないのがコツ。

「正解のないものについて考え続けるのが哲学」——道元が800年前に出していた答え

「正解のないものについて考え続けるのが哲学」——道元が800年前に出していた答え

そこから、哲学の定義がすっと出てきます。

「正解のないものについて考え続けるっていうのが、まあ哲学であり(中略)人事においてもしかしたら正解はないのかもしれない、と。でもそれでも問い続けなくちゃいけない」

山口周さん — 6:17〜

正解がないから考えない、じゃなくて、正解がないから考え続ける。ここ、順番が完全に逆なんですよね。

で、面白いのが、この「任せる/丸投げ」問題に、800年前にすでに答えを出していた人がいることです。禅僧・道元について書いた記事で、私はこう書きました。

「AIに任せていい仕事と、任せたら意味がなくなる仕事がある。その境目を、800年前の禅僧・道元が『他は是れ吾にあらず』の一言で言い切っていた」

ひろくん — AI氣道「AIに任せていい仕事、任せたら意味がない仕事|800年前の禅僧の答え」

他人がやったのでは、自分がやったことにならない。道元が典座(食事係)の老僧から言われた言葉です。成果だけ欲しい仕事は渡していい。やること自体に意味がある仕事は渡せない。掃除も炊事も畑仕事も、代わりにやってもらったら修行にならないわけです。

山口さんの言う「学習が停滞する」と、道元の「他は是れ吾にあらず」は、たぶん同じ場所を指しています。800年かけて、まだ正解は出ていない。でも問いは同じ形で残っている。

今の自分を一行で(2分):あなたの仕事で「やること自体に意味がある」ものを1つ挙げてください。2分でOK。そこは渡さない場所です。

「役に立つ」から「意味がある」へ——価値の逆転現象

「役に立つ」から「意味がある」へ——価値の逆転現象

後半は、価値そのものの話。聞き手が山口さんの過去の発信を引きながら、こう振ります。

「日本の価値と企業の価値と、日本人も共通かもしれないですけど、なんか役に立つ価値っていうのがもう役に立たなくなってきて、むしろ意味のある、っていうことにフォーカスすべきなんじゃ、みたいな論でお話されてたのもあったと思うんです」

聞き手 — 10:31〜

それを受けて、山口さんが「価値の逆転現象が起こっている」と応じます。

「価値の逆転現象が起こってるっていうのは、どこかでね、言って(いる)」

山口周さん — 11:34〜

役に立つものは、もう十分ある。しかもAIが増やし続けている。そうなると、役に立つかどうかで差がつかなくなるんですよね。残るのは、意味があるかどうか。

あ、そうそう、これ私の実感とも合っていて。うちのブログでも、正確で網羅的な記事より、私が手を止めた場所を書いた記事のほうが反応があります。役に立つ情報は他所にもある。でも「その時どう思ったか」は私のところにしかないんですよね。

今の自分を一行で(30秒):あなたの仕事は今「役に立つ」で売っていますか、「意味がある」で売っていますか。30秒で、どちらかに丸をつけてみてください。

「それでも問い続けなくちゃいけない」——AIに渡せないのは、問いのほうだった

「それでも問い続けなくちゃいけない」——AIに渡せないのは、問いのほうだった

このセッション全体を通して、私の中に残ったのは答えじゃなくて、問いの置き場所でした。

AIは答えを出すのがものすごく速い。というか、山口さんの実験が示したのは「速いけど、それぞれ違うことを言う」という事実です。統計で動いているから、世の中にコンセンサスがなければ、答えは割れる。割れた答えを見て「どれを採るか」を決めるのは、結局こちら側なんですよね。

だとすると、AIに渡せるのは答えを探す作業までで、問いを立てることどの答えで生きるかを決めることは残る。山口さんが「それでも問い続けなくちゃいけない」と言ったのは、人事の話をしながら、人間の持ち場の話をしていたんだと思います。

私が「抱え込みOSを、委ねるOSに書き換えよう」と言い続けているのも、たぶん同じ場所にあります。 抱え込んで潰れる人を減らしたい。でも全部渡したら、自分がいなくなる。その線をどこに引くかは、毎回自分で考えるしかないんですよね。正解がないから、考え続ける。

今の自分を一行で(1分):いまあなたが抱えている「答えの出ていない問い」を1つ書き出してください。1分でOK。捨てずに持っておくのが、たぶん資産になります。

ご注意

本記事の見解は、すべて動画内での山口周さん・聞き手の発言に帰属します。人事制度や人的資本開示に関わる実務判断は、社会保険労務士など資格を持つ専門家に確認してください。

よくある質問(FAQ)

人的資本経営とは何ですか?

この動画では、人材を「価値を創造する資本」として捉える考え方として説明されています。山口さんはさらに踏み込んで「従業員の時間資本が人的資本にどれだけ転換できているか」という効率の問題として語っていました。

なぜ得意な仕事ばかりだと成長が止まるのですか?

すでに上手にできる仕事をしている間は、新しい学習が起きないからです。動画では成長曲線(Sカーブ)が寝た状態、という表現が使われていました。

「任せる」と「丸投げ」の違いは何ですか?

山口さんが複数のAIに同じ質問をしたところ、答えがすべて違ったそうです。つまり世の中に合意された正解はありません。だからこそ自分の言葉で定義しておくことに意味がある、というのがこの記事の立場です。

まとめ|正解がないから、自分の答えを持っている人が強い

時間資本が人的資本に変わっているか。上手にできる仕事に留まって、成長曲線が寝ていないか。この2つを突きつけられる45分でした。

そして真ん中にあったのが「任せると丸投げの違い」です。AIたちの答えは全部バラバラだった。世の中に正解がない証拠として使われていたけれど、私はむしろ逆に受け取りました。正解がないなら、自分の答えを持っている人のところに価値が寄る。役に立つから意味があるへの逆転も、たぶん同じ話です。

今日、「任せる」と「丸投げ」の違いを、あなたの言葉で一行だけ書いてみてほしい。AIの答えを写さずに書けたら、それがあなたの人的資本です。

COLUMN

ひろくんコラム ― 下手なことをやっている時間が、いちばん惜しくなかった

実家の惣菜屋の寸胴の前で味見するひろくんのコラム図解

ここまで仕組みの話を書いてきました。でも最後に、本文には収まらなかったことを置いておくね。

Sカーブが寝る、という話を聞きながら、私はずっと自分の20代を思い出していました。中卒フリーターから、リフォーム会社でWEB集客をやることになった頃。何も分からなくて、毎日ひたすら下手でした。

あの時期、傍から見たら効率は最悪だったと思います。同じことを何度も聞いて、何度も直されて。でも自分の体感としては、あの数年がいちばん濃かったんですよね。今でも判断の材料になっているのは、上手くなった後の10年じゃなくて、下手だった数年のほうです。

で、これが厄介なんですけど——下手な時間って、その最中は「早く上手くなりたい」としか思っていないんですよ。惜しいと思うのは、ずっとあとになってから。だから、いま下手なことをやっている自分を、その場で肯定するのはけっこう難しい。

AIを使うようになって変わったのは、そこかもしれません。上手にできることをAIに渡すと、手元に残るのが「まだ下手なこと」だけになるんですよね。最初はしんどい。効率も落ちる。でも、あの20代の感じに近い。分からないまま手を動かしている時間が増える。

山口さんの言う転換効率って、たぶん処理量の話じゃないんだと思います。同じ3時間でも、上手なことに使った3時間は消えて、下手なことに使った3時間は残る。だとしたら、効率を上げるというのは「下手な時間の割合を増やす」という、ちょっと矛盾した意味になるはずなんですよね。

私はまだ、これを気持ちよく受け入れられていません。上手にできることをやっている時のほうが、正直ラクだし、褒められるし。でも寝たSカーブの上で褒められ続けるのは、ちょっと怖い。分身AI.comで毎日書いているのも、結局そのための場所なのかもしれません。

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この記事は、YouTube動画の内容をもとにAIの支援を受けて構成し、田中啓之(ひろくん)が監修しています。動画内の発言は元動画に帰属します。

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