
COLUMN / AI氣道
AIに「うちは何屋ですか」と聞かれる時代。
神田昌典さんの「存在起点のマーケティング」を読む
2026.09.22
家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。
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3行でわかるポイント
- 買い物の入り口が、売り場の手前にずれてきました。Googleは2026年1月に、Criteoは2月に、AIが候補を絞る仕組みを発表しています。
- 問題から考えるのは、AIが一番得意。だから神田昌典さんは一つ手前に戻れと言います。「そもそも私たちは何者なのか」です。
- 料理で言うと、メニュー表じゃなくて厨房の話。AIに渡すのは「安い・近い・便利」じゃなく、その店にしかない出汁のほうです。
AIを仲間と一緒に実践したい人へ
GPTs研究会に参加する(無料)日経MJの切り抜きが、また手元にあります。
神田昌典さんの連載「未来にモテるマーケティング」。2026年9月7日号。見出しは「AIが変える買い物の入り口」。大きな見出しは、「今問うべき『私たちは何者か』」です。
前回の8月24日号は、値段に負けない会社を先につくる話でした。その前の8月10日号は、きれいな社名より先に一語を掘れ、という話。で、今回はその一語に名前が付いた回なんです。存在起点。9月14日に出た新著のタイトルにもなっています。
読み始めて、最初の一行で手が止まりました。
「この店は何屋ですか」と、AIに聞いてみてほしい。
これって宿題ですよね。というわけで、私も実際にやってみたんです。自分のサイトの名前を入れて。で、返ってきた答えが正直ちょっと痛かったので、今日はその話を書きます。
「この店は何屋ですか」。AIに自分のサイトを聞いてみた
連載は、こんな宿題から始まります。
こちらが思う自分と、AIから見える自分は、案外違うかもしれない。神田さんはそう続けます。
やってみました!「ai-kidou.jp というサイトがあります。このサイトは何屋ですか」。AIは36秒考えて、218件のサイトを見て、こう答えてきました。
「GPTs研究会の公式メディア(生成AIの実践コミュニティ/道場)です。」
2026年9月22日、Grokに聞いた実際の回答から引用
合ってます!1文字も間違っていない。毎朝のLIVEを記事にして、会員制度があって、運営は田中啓之。全部その通りなんです。
その通りなのに、読んでいるうちに、なんだか他人の会社の紹介文を読んでいる気分になってきました。
私がこのサイトでやりたいのは、一人で全部抱えて潰れそうな経営者に、荷物を1つ下ろしてもらうことなんです。昔の私と同じ場所で止まっている人に。でもAIの答えの中に、その話はひとつも出てきません。
AIが悪いんじゃないんですよね。私が外に出してきた材料が、機能の説明ばかりだったってことです。この「痛い」が、今回の連載の入口でした。
買い物の入り口が、売り場の手前にずれてきた
神田さんは、これは遊びじゃないと書いています。買い物の入り口そのものが変わり始めているからです。
記事に出てくるのは、ChatGPTでの買い物、米グーグル、仏クリテオの3つ。これ、私も裏を取ってみました。
グーグルは2026年1月、小売業向けの展示会NRFで「UCP(Universal Commerce Protocol)」というオープン規格を発表しています。AIエージェントが比較から決済まで一気にやる前提の規格です。
クリテオは2026年2月5日に「エージェンティック・コマース・レコメンデーション・サービス」を発表。AIショッピングアシスタントを店舗の在庫データへ直接つなぐ仕組みで、推薦の関連性が最大60%上がったと書いてあります。
つまり、もう構想の話じゃないんですよね。買い物の配管が、売り場の手前にどんどん敷かれている最中です。
ここで料理に例えます。今までのお客さんは、商店街を歩いて、店先の看板を見て入ってきました。これからは、家を出る前に「今日の晩ごはん、どこがいい?」とAIに聞く。AIが3軒に絞ってから、お客さんは歩き始めるんです。
その3軒に入るために何を磨くか。そこが今日の本題です。
問題から考えるのはAIが一番得意。だから一つ手前に戻る
ここからが、私が二度読んだところです。
神田さんは長年、マーケティングでは顧客の問題から考えることを重視してきた、と書いています。問題を見つけ、解決策を示す。今でも正しいと考えている、とも。
そのうえで、こうです。
だが、AIほど問題から考えることが得意な存在はない。条件を渡せば、解決策を瞬時に並べ、比較までしてくれる。
問題から始める手法だけを続けると、AIを介して皆が同じ答えに近づいていく。だから、もう一つ前に戻る必要がある。何を売るかでも、どんな問題を解決するかでもない。「そもそも私たちは何者なのか」だ、と。
これ、耳が痛いんです。
目の前の課題は、どの経営者も尽きないんですよね。人件費、原価、集客、人手不足。私も、困りごとが来るたびに解決策を出してきました。その仕事が嫌いじゃないんです。むしろ得意なつもりでいました。
でも、そこだけを磨き続けると「安い」「近い」「便利」に寄っていく。比較しやすい項目ばかりが光って、比較できない部分が消えていくんです。
で、比較しやすい項目の計算って、どう頑張ってもAIのほうが速いんですよね。
ここ、7歳の作文の回で神田さんが書いていた話ともつながります。問題解決の土俵で勝負を続ける限り、私たちは平均点の上のほうを取り合うだけになります。
存在起点のマーケティングとは。背景を圧縮した一語のこと
神田さんは、この考え方を「存在起点マーケティング」と呼んでいます。9月14日に出た新著『存在起点のマーケティング 旗を掲げよ AI時代の分野No.1戦略』(日本経済新聞出版・2,420円)の編集過程で生まれた言葉だそうです。
もともとは「旗印起点」と呼んでいた。編集者から「これは存在起点ではないですか」と言われて、膝を打った。そういう経緯まで書いてあります。
で、ここが今日いちばん大事なところです。
存在起点とは格好のいいコピーをつくることではない。会社の歴史や現場の経験、社員の誇り。顧客に届けたい価値を束ねて言葉にすることだ。
連載に出てくる例が「日常力NO.1」です。これ、8月10日号の回で私も書きました。社名を変える相談に来た経営者と、会話を重ねて掘り出した一語です。
神田さんは、この言葉を別の会社へ持っていっても、おそらく機能しないと書いています。強い言葉とは、その会社にしかない背景を圧縮した結果として生まれる言葉だから。
料理で言うと。「日常力NO.1」は、看板の文字に見えて中身は出汁なんです。同じ文字を別の店の軒先に吊るしても、鍋の中身が違うから同じ味にはならない。逆に、鍋を何十年も炊いてきた店は、看板の文字が短くても味で伝わります。
だから、他所のうまい言葉を借りてくるのは意味がないんですよね。AIに「かっこいいキャッチコピーを10個」と頼んで並べても、そこに出汁は入りません。
そして、AIの時代のマーケティングはこう移る、と神田さんは書きます。
見つけてもらう競争は、SEOや広告で戦ってきた土俵です。理解される競争は、材料を置く仕事。AIが読める場所に、自分の背景を置いてあるかどうか、なんです。
AIに理解される会社をつくる経営は、うまい言葉を探す仕事じゃないんですよね。材料を置く仕事です。
新著『存在起点のマーケティング』は、空欄を埋める本でした
連載で触れられている新著、私はもう手元に置いて使っています。読む本というより、空欄を自分の手で埋めるワークシートの本です。
章立てはこんな流れになっています。
序章 AI時代は、すべて、逆だ(業界No.1ではなく分野No.1へ)
第1章 モブになるな。勝つ場所は102通りある(社会課題×事業の型)
第2章 AI時代の高収益事業は「つい」から生まれる
第3章 捨てるマーケティング(接点を足さずに選び直す)
第4章 忘れられる提案を、前に進める言葉の型(D-BE UNICK)
第5章・終章 旗は立てただけでは動かない。未来から逆算して旗印経営へ
私が一番くり返し開いているのは第1章です。旗を一文にするテンプレートが載っていて、空欄はたった3つでした。
私たちは、( )という社会課題に対して、( )という事業の型で、( )の分野No.1を目指す。
この3つの空欄、すぐには埋まりません。私も何度も書き直しています。でも埋まらない理由がはっきりしているんですよね。普段の仕事で、そこを言葉にしていないからです。
では私は何者か。分身AIに渡しているのは旗を立てた理由
宿題に戻ります。私は何者か。
私が分身AIに渡している一行は、これです。
「凸凹のまま、夢中に生きる。だから噛み合い、満たしあえる。」
私が分身AIへ渡している北極星
これ、かっこいいコピーとして作った言葉じゃないんです。逆でした。
太っていた子ども時代に、ありのままを否定された記憶。50kg痩せた時に分かった、頑張るほど太るという逆説。一人で抱え込んで潰れかけた経営。全部を並べて、AIに何度も聞かれて、答えて、削って、残ったのがこの一行でした。
だから、他の人が使っても機能しません。私の背景を圧縮した結果だからです。神田さんの言う存在起点って、たぶんこれのことなんだと思います。
で、冒頭に戻ります。AIは私のサイトを「GPTs研究会の公式メディア」と答えました。その答えの中に、この一行はありませんでした。
悔しいけど、これは私の側の宿題ですね。旗は自分の中にあるのに、AIが読める場所へ置いてこなかった。分身AIには毎日渡しているのに、世の中には渡していなかったんです。
今日の一手(5分でできます)
1. ChatGPTでもGeminiでもGrokでもいいので、自分の店名か会社名を入れて「この店は何屋ですか」と聞く。
2. 返ってきた答えを読んで、抜けている一行を探す。「合ってるけど、これじゃない」の部分です。
3. その一行をメモに書く。それが、あなたの旗の入口です。
正解を出そうとしなくて大丈夫です。私も一発では出ませんでしたw 合ってるのに何か足りない。その違和感が見つかれば、今日はそれで十分だと思います。
よくある質問
存在起点のマーケティングって、理念やパーパスと何が違うんですか?
貼り出す場所が違います。理念は壁に貼って終わることが多いですよね。存在起点は、商品の選ばれ方そのものを決める起点です。神田さんは、会社の歴史や現場の経験、社員の誇りを束ねて言葉にすると書いています。やるのは作文より、集約に近い作業です。
一人社長や小さな会社でも、旗は立てられますか?
むしろ小さいほうが早いです。束ねる材料が自分の中に全部あるからです。会議も合意形成もいりません。私の場合も、材料は昔の失敗と身体の記憶でした。
AIに正しく理解されるには、何をすればいいですか?
AIが読める場所に背景を置くことです。サイトの自己紹介、記事、お客さんの声。そこに機能の説明しかないと、AIも機能で紹介します。誰のどんな場面を助けたいのかを、自分の言葉で書いておくことが先です。
まとめ
- 買い物の入り口が、売り場の手前にずれてきました。グーグルは2026年1月にUCP、クリテオは2月にAIアシスタント向け推薦サービスを発表しています
- 問題から考えて解決策を並べる仕事は、AIが一番得意。そこだけ磨くと「安い・近い・便利」に寄っていきます
- だから一つ手前に戻る。「そもそも私たちは何者なのか」。神田さんはこれを存在起点マーケティングと呼んでいます
- 存在起点はコピーライティングではありません。歴史・現場・誇り・届けたい価値を束ねた一語です
- 今日の一手は、AIに「この店は何屋ですか」と聞いて、抜けている一行を探すこと
AIの答えが痛かったのは、間違っていたからじゃないんですよね。合っているのに、自分が一番言いたいことが入っていなかったから。これって、自分の外向きの言葉が機能の説明で止まっていたってことなんです。
見つけてもらう競争から、理解される競争へ。その競争で渡すのは、上手な言葉じゃなくて、自分の背景です。AIに理解される会社をつくる経営の起点は、外の相場じゃなくて自分の中にあるんですよね。私はそこを、これから書き足していきます。
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分身AIに旗を渡すと、世の中にも同じ旗が立つ
神田さんの「私たちは何者か」を、私は分身AIの育て方の話として読みました。分身AIに機能だけを渡すと、返ってくる紹介文も機能になるんです。今回Grokが返してきた答えと、まったく同じ構造でした。
以前、AIに「自分を商品化して」と頼んだら、自分のことが一番わかっていなかったことがあります。強みを聞かれて固まりました。冷蔵庫には材料がぎっしりあるのに、看板メニューが言えない。あの日と同じ場所に、また立っていたわけです(成長してないw)。
そのあとにやったのが、分身AIに「関係性運用」を入れる作業でした。優等生テンプレの紹介文に、自分の血肉を後から足していく。プロンプトを直すんじゃなくて、履歴を足すんです。旗は、書いた瞬間より、渡し続けた分だけ濃くなります。
料理で言うと、分身AIは弟子です。レシピだけ渡した弟子は、レシピ通りの味を出します。厨房に立たせて、なぜこの火加減なのかを毎日見せた弟子は、私がいない日も同じ味を出せる。存在起点って、弟子に見せる厨房のことだと私は思います。
で、今日から私がやるのはひとつ。AIが読める場所に、北極星の一行と、その裏にある失敗をちゃんと置くこと。魂は渡さないんですよね。魂は込めるものです。渡すのは、その魂で選んできた履歴のほうです。
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スペック自慢をやめて自分の旗を立てる。9月19日の朝LIVEを記事にしたもの。
何者かを探す時、外ではなく自分の当たり前を掘る回。存在起点と同じ方向を向いています。
参考リンク
この記事で引用したコラムの公式再掲。全文はこちらで読めます。
2026年9月14日発売・2,420円・360ページ。連載で触れられている新著です。
出版社の書籍ページ。社会課題17×事業の型6=102通りという構成の紹介つき。
2026年1月のNRFで発表された、エージェント時代の小売向けツールとUCPの説明。
2026年2月5日発表。AIショッピングアシスタント向けの商品推薦サービスの一次情報。
引用について
本文中の神田昌典さんのコメントは、日経MJ「未来にモテるマーケティング」2026年9月7日号の紙面から引用しています。全文は神田昌典公式サイトの再掲でご確認ください。AIへの質問と回答は2026年9月22日に私が実際に試したものです。
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