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赤ちゃんが泣き止む曲ザ・ハッピー・ソングはどう作られたか。26人への試験とAIで候補を出す時の選び方

2026年10月20日

家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。今回は、CNN.co.jpが10月19日に配信した、赤ちゃんが泣き止む4.7億回再生の曲「ザ・ハッピー・ソング」が、科学的根拠に基づいて作られたという記事を紹介します。

この記事は、私が保存したブックマークです。TikTokの検証の回に書いた「出した後に確かめて、初めて分かる」、馬田隆明さんの回のコラムに書いた「おいしいですね」と「買います」は別のもの、そして自分の運用で、6回だけ測って確定して外した失敗が、赤ちゃんの曲の話とつながりました。

読み方の筋はこうです。赤ちゃんの曲の話に見えますが、小さな困りごとを出発点に、材料を集め、直感で選び、少人数で確かめるという順番は、自分のサービスや商品を持つ人にもそのまま重なります。あなたの仕事に引き寄せて、読んでみてください。

赤ちゃんが泣き止む曲「ザ・ハッピー・ソング」は、2分半の曲で、Spotifyの再生が4億7000万回を超えました。CNNの記事によると、この曲は、既存の研究、2000人以上の親への調査、作曲家の直感、26人の赤ちゃんへの試聴を重ねて作られています。この記事では、この曲がどう作られたかを順に追い、その順番を、AIで案がいくらでも出る今の小さな商品づくりに引き寄せて整理します。

3行でわかるポイント

  1. ヒープさんが作曲を始めた目的は、渋滞の車内で家族が数分でもほっとできる曲という、小さな場面の願いでした。
  2. 研究と調査が材料を出し、母親としての直感が選び、赤ちゃんに聞かせる試験で、速いテンポという研究者の予想が外れました。
  3. 約80%が好んだことと4億7000万回の再生は別の測りなので、私なら、AIには材料と候補を頼み、選ぶことと確定する線は自分で持ちます。
01

渋滞の車内で家族が数分でもほっとできる曲から、企業の依頼で始まったザ・ハッピー・ソングの出発点

渋滞の車内で家族が数分でもほっとできる曲という出発点から、2016年にカウ&ゲートの依頼で生まれ、2分半の曲が誕生10周年、Spotifyで4億7000万回の再生になった流れの図解。私の読みは、出発点は小さな場面の困りごと

CNN.co.jpの記事「赤ちゃんが泣き止む4.7億回再生の曲、科学的根拠があった」(イモージェン・ヒープさん(作曲家)の発言・「(冒頭)赤ちゃんを落ち着かせる曲「ザ・ハッピー・ソング」」の節)

渋滞にはまったときなんかに家族が数分でもほっとできるような曲を本当に作りたいと思っただけ

元記事の画面。作曲前には世界中の赤ちゃんのおかげで大もうけできるなんて考えたこともなかった、渋滞にはまったときなんかに家族が数分でもほっとできるような曲を本当に作りたいと思っただけ、というヒープさんの発言
元記事キャプチャ: 渋滞で家族がほっとできる曲を作りたかった(ヒープさんの発言)

ヒープさんが言っているのは、渋滞にはまった車の中で、家族が数分でも息をつける曲を作りたかった、という小さな場面の願いです。壮大な目標ではありません。まず、この曲がどう作られたかを、出発点から順に見ていきます。

CNNの記事を書いたのは、幼い子どもが2人いる父親の記者だ。車での移動の半分ほどは、泣き声がBGMだそうだ。泣いているのは記者本人ではなく、たいてい子どもたちの方だ。

泣く理由として、記者は、おなかにたまったガス、窮屈なチャイルドシート、長くて怖いトンネルを挙げている。車窓から外をのぞくのもやっとの小さな子どもには、どれも泣くのに足る理由だと書かれている。

気持ちはわかる、とも。

記者と奥さんは、鍵をジャラジャラ鳴らす、手近なものを握りつぶしてバリバリと音を立てる、不自然なほど甲高い声で歌ってなだめる、といったことを試してきました。あきらめて、目的地に着くまで聞き流す日もあったそうです。

そんなある日、泣きやませるのに絶大な効果を発揮する方法を知ります。それが「ザ・ハッピー・ソング」です。冒頭で楽しげな笑い声が響き始めた瞬間に、子どもたちはたちまち落ち着く、と記者は書いています。

この曲は2分半で、今週で誕生10周年を迎えた。Spotifyでの再生回数は、過去10年で4億7000万回を超えている。

マービン・ゲイの「レッツ・ゲット・イット・オン」や、サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」を上回る数字だ。

意外なのは、生まれ方だ。ヒープさん個人の思いつきではなく、英ベビーフードブランド「カウ&ゲート」の企画から生まれた。CNNによると、その経緯は今ではほとんど知られていない。

同社は2016年、音楽心理学者のローレン・スチュワートさんと、児童発達心理学者のキャスパー・アディマンさんに依頼した。親たちに提供する、赤ちゃんを幸せな気分にする曲の制作だ。

2人は、テクノロジーを積極的に取り入れることで知られるミュージシャン、ヒープさんに協力を求めました。ヒープさんにも、当時1歳半の子どもがいました。

依頼主、心理学者2人、作曲家と、役割の違う人が集まって始まった曲です。

ここで、ヒープさんの言葉に戻ります。4億7000万回を狙った言葉ではありません。渋滞のときに、家族が数分でもほっとできる曲を本当に作りたいと思っただけ、という目的の小ささが、この曲の出発点でした。

なお、記事に出てくるフォーカスグループ調査とは、少人数に集まってもらい、意見や反応を聞く調査のことだ。CNNは、乳児を対象にしたこの種の調査の結果と、既存の研究を組み合わせて曲を作ったと書いている。

あなたのサービスや商品に置き換えると、渋滞の車内に当たる場面は、どこにあるでしょうか。数分でもほっとしてもらえる場面を1つ言葉にできるかどうかが、ここから先の読み方の入り口になります。

私の読みです。大きな数字の出発点は、小さな場面の困りごとでした。商品づくりでも、最初に置くのは、誰のどの場面か、だと私は読みました。

02

研究という材料と母親の直感:選ぶのは人、材料づくりと候補出しはAIに頼める

材料は、心理学者2人の提案(長調と繰り返し、ドラムロールとピッチグライド)と2000人以上の親への調査。選ぶのは、ヒープさんの母親としての直感。私の読みとして、材料の整理と候補出しはAIに頼み、どれを選ぶかは人が持つ、の図解

CNN.co.jpの記事「赤ちゃんが泣き止む4.7億回再生の曲、科学的根拠があった」(イモージェン・ヒープさん(作曲家)の発言・「好みがはっきりした聴き手」の節)

母親として何が心地よく感じられ、何がありきたりすぎると感じられるかは直感的にわかるものだ

元記事の画面。2人の心理学者が長調、メロディーの繰り返し、ドラムロール、ピッチグライドなどをヒープさんに提案し、2000人以上の親を対象に赤ちゃんが反応する音を特定した、という内容と、母親としての直感も頼りにしたというヒープさんの発言
元記事キャプチャ: 心理学者2人の提案と2000人以上の親への調査

ヒープさんは、何が心地よく、何がありきたりすぎるかは、母親として直感的にわかる、と話している。材料を集めたあとに、選ぶ目が必要だという話だ。研究の話だけで終わらないところが、この章の芯だ。

2人の心理学者は、科学的根拠に基づいて、さまざまなやり方をヒープさんに提案した。たとえば、長調を使うこと、メロディーを繰り返すこと。

さらに、期待感や驚きを生むドラムロール、音程をなめらかに上げるピッチグライドといった音楽的手法だ。

ドラムロールは、期待を高めるために太鼓を連打する演奏のことだ。ピッチグライドは、音程を、すべるように上げていく演奏のことだ。どちらも、聞く側の気持ちを動かすための、音の作り方だ。

一方で、2人は2000人以上の親を対象に調査を行い、赤ちゃんが反応する音も特定した。その中には、動物の鳴き声や、ほかの子どもの笑い声が含まれていて、どちらも曲に取り入れられている。

当初の制作指示には、「マザリーズ」で歌うことも盛り込まれていた。マザリーズとは、乳幼児に向けた話し方のことだ。研究、調査、話し方の指定と、材料は何層にも用意されていた。

ここまでが、材料です。そのうえで、ヒープさんは、こうした提案に加えて、自身の母親としての直感も頼りに、制作に取りかかりました。CNNは、そう書いています。

ここが、この記事の芯だと私は読みました。材料を集めたのは、研究と調査です。けれど、どの音を残し、どれを捨てるかを決める最後の一手は、母親としての直感でした。材料と、選ぶ目は、役割が別なんです。

私なら、研究の下調べを、AIに頼みます。「長調、繰り返し、笑い声」のような材料を一覧にしてもらうこと、メロディーの候補の数を出してもらうことも、AIに向いた仕事です。

ChatGPTでもClaudeでも、材料と候補を速く並べる手として使います。

ただし、どれが「ありきたりすぎる」かを感じ取って選ぶところは、その相手の顔を知っている人が持ちます。ヒープさんの場合は、赤ちゃんを育てている母親としての感覚が、その役を担っていました。

ここで、私の過去の記事の言葉をひとつ置きます。

AI氣道『サムネイルのクリック率が低い時に、まず見直す順番と直し方を整理する』より

「クリック率や視聴時間を記録して、見比べられる形に並べる所までは、AIに回せる作業。どの1つを変えるかを選ぶのは、その動画を出す人の役目です。」

研究と調査が材料を出し、人が選ぶという向きを、私は『サムネイルのクリック率が低い時に、まず見直す順番と直し方を整理する』で書いています。

研究と調査が材料を出し、直感が選んだ。この向きは、記録して並べるまではAI、どの1つを変えるかを選ぶのは人、という私の過去記事の言葉と、同じ向きです。

作業を渡す先が違うだけで、選ぶ役目は人に残る、と私は読みました。

もうひとつ、材料の使い方で気になった点があります。2000人以上の親への調査は、大きな材料です。けれど、調査が教えてくれたのは、赤ちゃんが反応する音の種類までです。

それをどう曲にまとめるかは、作る人の手に残る、というのが私の読みです。

あなたの仕事に引き寄せると、競合の調べ物や、お客さんの声の整理は、材料の側です。AIが速い仕事です。

その材料を前にして、「これはうちらしくない」「これはありきたりだ」と感じて選ぶ目は、あなたが持っている側だと私は読みました。

材料が増えるほど、選ぶ目の役目は大きくなります。AIで案がいくらでも出る今は、特にそうです。出てきた案の数を数えるより、自分が選ぶ基準を一言で言えるかどうかの方が、あとで効いてくると私は考えています。

03

26人の赤ちゃんに聞かせて確かめたら予想が外れた:AIに候補を出させ、小さく試して小さな数で確定しない

生後6〜12カ月の赤ちゃん26人に、4種類のメロディーを2種類の速さで聞かせ、約80%が好んだメロディーが選ばれた。別の試験では研究者の予想は速いテンポだったが、結果はわずかに遅い方で予想が外れた。私の読みは、26人も私の6回の測定も小さな数なので、確定の線を先に決める、の図解

CNN.co.jpの記事「赤ちゃんが泣き止む4.7億回再生の曲、科学的根拠があった」(キャスパー・アディマンさん(児童発達心理学者)の発言・「好みがはっきりした聴き手」の節)

好みが非常にはっきりしていた

元記事の画面。生後6〜12カ月の赤ちゃん26人に4種類のメロディーを2種類の速さで聞かせ、約80%が好んだメロディーが中心に据えられた。別の実験では赤ちゃんがわずかに遅いテンポを選んだ、という内容
元記事キャプチャ: 赤ちゃん26人への試験と、遅い方が選ばれたテンポ

アディマンさんは、赤ちゃんの反応を見て、好みが非常にはっきりしていた、と話しています。小さく試してみたら、答えがくっきり出た場面です。ただし、この章はそこで終わりません。

4種類の主要なメロディーが作曲されたあと、生後6〜12カ月の赤ちゃん26人に、各メロディーを2種類の速さで聞かせる実験が行われた。4種類のメロディーを、それぞれ2つの速さで試した形だ。

見ていたのは、赤ちゃんの動きや表情、声による反応だ。付き添いの親たちによる多少の解釈も加わった、とCNNは書いている。言葉で感想を言えない相手の反応を、周りの大人が読み取った試験だ。

その結果、明確な勝者が浮かび上がりました。ヒープさんが「ザ・ハッピー・ソング」の中心に据えたメロディーは、赤ちゃんの約80%が好んだといいます。

全員ではなく、約80%という言い方で出ている点は、覚えておきたいところです。

その後、さらに完成度を高めたバージョンの曲も、あらためて赤ちゃんたちに聞かせました。ある実験で異なるテンポの曲を聞かせると、赤ちゃんたちは、わずかに遅い方を選びました。

ここに、予想外れがあります。一般に、大人より乳児の方が心拍数が速いので、研究者たちは当初、速いテンポを使うようヒープさんに提案していました。アディマンさんは、この結果に驚いたそうです。

考えてみれば、筋の通った予想です。それでも、赤ちゃんに聞かせたら、外れました。ここを、私の過去記事の言葉につなぎます。

AI氣道『TikTok 集客で万バズしてもダウンロードは増えない?個人開発者の検証を解説』より

「ただ、出した後に確かめて、初めて分かることがあります。」

出した後に確かめるという向きを、私は『TikTok 集客で万バズしてもダウンロードは増えない?個人開発者の検証を解説』で書いています。

研究者の予想が外れたと分かったのは、完成度を高めた曲を赤ちゃんに聞かせたあとです。頭の中でどれだけ筋を通しても、出した後に確かめて初めて分かることがある。これが、この場面を読んだ私の感想です。

私の運用にも、同じ型の実例があります。2026年9月14日、UTAGEで販売ページに2ページ目を足した直後に、6回だけ測って、現行のページが出ると確定しました。

ところが実際は、足したB案のページが、5日間公開されていました。

9月19日に気づいて、管理画面からB案をアーカイブした。9月23日に13回測り直して、現行のページが13回とも出ることを確認した。

原因は、2ページ目を足すと、サービスが後から作ったページを返す仕組みだったことだ。

対策は、本番の構成を変えたら、翌日にもう一度測ることだ。

26人も、6回も、小さな数です。26人の結果は、選ぶ材料としては強いです。でも、「これで決まり」と言い切る数ではない、と私は線を引いています。約80%が何人にあたるのかは、元の記事に書かれていません。

私なら、AIに「速い案と遅い案を、同じ長さで両方出して」と頼みます。そのうえで、小さく試す相手を決めてから見せます。測る回数と、確定してよい条件は、先に自分で決めておきます。

私の6回の測定は、確定して外した実例です。26人の試験の結果を読むときも、この実例を物差しとして横に置いています。

04

4.7億回再生は結果であって狙った数字ではない:好まれたと選ばれたは別のもの

作曲前には4億7000万回の再生を考えたこともなく、幸運はヒープさんの娘の歌から着想を得たこと。約80%が好んだ(好まれた)と4億7000万回の再生(選ばれた)は別の測りで、おいしいと買いますも別のもの、の図解

CNN.co.jpの記事「赤ちゃんが泣き止む4.7億回再生の曲、科学的根拠があった」(イモージェン・ヒープさん(作曲家)の発言・「(冒頭)赤ちゃんを落ち着かせる曲「ザ・ハッピー・ソング」」の節)(同じ節のもう1つの発言)

『世界中の赤ちゃんのおかげで大もうけできる』なんて作曲前には考えたこともなかった

元記事の画面。この2分半の曲は誕生10周年で、過去10年間にスポティファイで4億7000万回を超えて再生された、という内容
元記事キャプチャ: 誕生10周年とスポティファイ4億7000万回

ヒープさんは、世界中の赤ちゃんのおかげで大もうけできる、とは作曲の前に考えたこともなかった、と話している。ロングヒットを振り返って笑いながらの言葉だったと、CNNは書いている。

ヒープさんは、ソロ活動に加えて、デュオ「フル・フル」のメンバーとして活動してきた人だ。テイラー・スウィフトのアルバム「1989」の共同プロデュースも手がけた。

その人にとっても、「ザ・ハッピー・ソング」は、今や多額の印税を生む有数の楽曲になっている。

狙って得た数字ではない。始まりは、渋滞の車内の家族をほっとさせたいという、第1章で見た小さな目的だった。結果として、4億7000万回という数字がついてきた、という順番だ。

もうひとつ、CNNは大事な一文を置いている。科学がこれだけ関わっているとはいえ、幸運も一役買っていた、というものだ。選ばれたメロディーは、ヒープさんの娘が歌っていたちょっとした歌から着想を得たものだった。

研究も調査も試験もありました。それでも、中心になったメロディーの種は、日常の中の小さな歌でした。設計できた部分と、設計できなかった部分が、1曲の中に同居しています。

運は、設計の外にあります。ただ、ヒープさんは、その歌を曲の中心に据えました。運が来たとき、それを拾って形にしたのは人です。これは私の読みです。

ここで、記事に出てくる数字を並べてみます。赤ちゃんが好んだ割合は、約80%です。曲を聞き返した親の記者は、自分の意思で何百回も聞いてきたと書いています。

Spotifyでの再生回数は、4億7000万回を超えています。

この3つは、それぞれ別の測りだ。赤ちゃんが好んだ割合は、試験の場での反応を測ったものだ。記者の何百回は、使い続けた人1人の回数だ。4億7000万回は、10年かけて積み上がった再生の回数だ。

1本の線ではつながっていない。

記者の何百回は、赤ちゃんの反応だけでなく、聞かされる側の親が付き合ってきた回数でもあります。この見方は、次の章で扱います。

私は、約80%が好んだことと、4億7000万回という数字を、因果として結ばずに読みました。ここで、私の過去のコラムの言葉を置きます。

AI氣道『馬田隆明さんの「売れるようにしてから作る」を解説。AIで作れるようになった今、作る前に相手が使いたくなる条件を、AIと1枚の仕様にして確かめる』より

「「おいしいですね」と言われたことと、「買います」と言われたことは、別のものです。」

好まれたと選ばれたは別という線を、私は『馬田隆明さんの「売れるようにしてから作る」を解説。AIで作れるようになった今、作る前に相手が使いたくなる条件を、AIと1枚の仕様にして確かめる』で書いています。

「好まれた」ことと、「買われた」「再生された」ことは、別のものです。試験で好まれても、使い続けてもらえるか、選び続けてもらえるかは、別の問いとして残ります。

あなたの商品でも、お客さんが「いいですね」と言ってくれた数字と、実際に選んで買った数字は、分けて見てみてください。2つを同じ棚に並べてしまうと、うれしい数字だけが目に入りやすくなります。

小さな試験で好まれた手応えは、大事な出発点です。ただし、それが4億7000万回に育つかどうかは、試験の外で決まります。この線を引いておくと、数字を見たときの落ち着きが変わる、と私は読みました。

05

聞くのは赤ちゃん、選ぶのは親:親をいら立たせない曲の作り方と、AIに洗い出してもらう疲れどころ

聞く人は赤ちゃん、続ける人は何百回も聞く親。耳障りでなくちょっと面白い曲、部分的に大人に向けた歌詞。私の読みは、10回目の疲れどころをAIに洗い出してもらい、どこを残すかは自分で決める。聞く人と続ける人が別の商品は多い、の図解

CNN.co.jpの記事「赤ちゃんが泣き止む4.7億回再生の曲、科学的根拠があった」(イモージェン・ヒープさん(作曲家)の発言・「親たちのお墨付き」の節)

親をいら立たせる曲があることはわかっている

元記事の画面。筆者が何百回も聞いてきたこと、親をいら立たせる曲があることはわかっているが、あまり耳障りではなくちょっと面白い部分もある曲を書きたかった、というヒープさんの発言
元記事キャプチャ: 何百回も聞く親と、耳障りでなく少し面白い曲

ヒープさんは、親をいら立たせる曲があることはわかっている、と話している。赤ちゃんに向けるだけでなく、聞かされる親のことも、曲づくりの頭にあったという話だ。

CNNの記者は、ほかの子ども向け音楽産業が生み出す曲とは違って、この曲が嫌いではない、と書いている。階段を上るときやコーヒーを入れるときに、気づけば口ずさんでいるそうだ。

頭から離れない曲だ、とも書かれている。もし子どもがいなかったら聞いていたとは言えないが、実際には自分の意思で何百回も聞いてきた、というのが記者の言い方だ。

親をいら立たせる曲が世の中にあることを知っているからこそ、「嫌いではない」という記者の一言に重みが出ます。使い続ける側の、率直な評価だからです。

ヒープさんは、あまり耳障りではなく、ちょっと面白い部分もある曲を書きたかった、と付け加えた。耳障りでないこと。少し面白いこと。その2点が、親に向けた狙いとして語られている。

それを実現しているのが、部分的に大人に向けて書かれた歌詞だ、とCNNは書きます。記者の頭に最もよく浮かぶのは、親の気持ちをそのまま表した一節です。

この一節は、子どもたちではなく、親の気持ちを表している、と記者は読んでいます。

ここで、見方をひとつ置きます。この曲は、聞く赤ちゃんと、車の中で何百回も聞く親の、2人に向けて作られています。使う人と、続けて使う人が別、という見方ができます。これは私の読みです。

赤ちゃんは、気に入るかどうかで反応します。親は、10回目、100回目になっても耳が疲れないかで、付き合い方が変わる、と私は考えています。同じ1曲でも、2人が見ている場所は違います。

私なら、AIに、「この商品を10回目に使う人が、どこで疲れるか」を洗い出してもらいます。ChatGPTやClaudeに、使い始めの日ではなく、10回目、50回目の場面を想像して書き出してもらう形です。

使う人と、お金や時間を出す人が別のときも、同じです。たとえば、プレゼントとして買う人と、受け取って使う人が別の商品がそうです。「それぞれが嫌になるところ」を、別々に並べてもらいます。

ただし、洗い出された疲れどころのうち、どこを直して、どこを面白みとして残すかは、自分で持ちます。

ヒープさんが、耳障りでない曲にしつつ、ちょっと面白い部分を残したように、直す所と残す所の線引きは、作る人の仕事です。

あなたの商品の、続けて使う人は誰ですか。その人が10回目に感じることを、1つ言葉にできるかどうか。それが、この章で私が持ち帰った問いです。

私の読みです。使い始めの一瞬だけを良くしても、続けて使う人が疲れる商品は、長く選ばれにくいと考えます。AIは疲れどころの洗い出しを速くしてくれますが、残す面白みを決めるのは人、と私は読みました。

06

科学と直感と幸運の順番を整理する:本当の気持ちを込める所は人が持ち、AIには材料と候補を任せる

小さな困りごと、研究と調査で材料、直感で選ぶ、少人数で確かめる、好まれたと選ばれたを分ける、続ける人の疲れも見る、の6つの順番。幸運は設計できず、拾える形にしておく。AIに任せるのは材料の整理、候補出し、疲れどころの洗い出し。自分で持つのはどの1つを選ぶか、確定の線、本当の気持ちを込める所、の図解

CNN.co.jpの記事「赤ちゃんが泣き止む4.7億回再生の曲、科学的根拠があった」(イモージェン・ヒープさん(作曲家)の発言・「親たちのお墨付き」の節)(同じ節のもう1つの発言)

歌詞には本当の気持ちを込めたかったし、楽しいものにしたかった

元記事の画面。部分的に大人に向けて書かれた歌詞で、歌詞には本当の気持ちを込めたかったし、楽しいものにしたかった、というヒープさんの発言
元記事キャプチャ: 大人に向けた歌詞と、本当の気持ち

ヒープさんは、歌詞には本当の気持ちを込めたかったし、楽しいものにしたかった、と語っています。楽しさと、本当の気持ちの両方を置いた、という言葉です。最後の章は、ここまでの流れを整理します。

まず、順番を並べ直します。①小さな困りごとを出発点にする。渋滞の車内で、家族が数分でもほっとできる曲を作りたい、という出発点でした(第1章)。

②研究と調査で材料をそろえる。長調、繰り返し、ドラムロール、ピッチグライド、2000人以上の親への調査がありました(第2章)。③直感で選ぶ。ヒープさんの母親としての直感が、材料から選びました。

④少人数で確かめて、予想が外れたところを拾う。生後6〜12カ月の赤ちゃん26人に、4種類のメロディーを2種類の速さで聞かせ、別の試験では、速いテンポの予想がわずかに遅い方に覆されました(第3章)。

⑤好まれたと選ばれたを分ける。約80%が好んだことと、4億7000万回の再生は、別の測りでした(第4章)。⑥使い続ける人の疲れも見る。聞く赤ちゃんと、何百回も聞く親が、別の人でした(第5章)。

ここに、幸運が加わります。選ばれたメロディーは、ヒープさんの娘が歌っていた小さな歌から着想を得ていました。幸運は、設計できません。設計できるのは、運が来たときに拾える形にしておくことだ、と私は読みました。

赤ちゃんの曲の話に見えて、この順番は、小さな商品づくりにそのまま重なります。一人社長や小さなチームでも、①から⑥の順は変わりません。

違うのは、試す相手が26人の赤ちゃんではなく、お客さんや常連さんである点だけです。

拾える形とは、小さく試す場があること、結果を見て予想を直す余地が残っていることだ。ヒープさんの場合は、完成度を高めた版を、赤ちゃんにもう一度聞かせていた。

さて、AIが候補を無数に出してくれる時代です。順番の②と④の下ごしらえは、AIの得意な方に寄っていきます。そのぶん、人に残る役目が、はっきり見えてきます。

私なら、材料の整理、候補出し、疲れるところの洗い出しは、AIに任せます。ChatGPTでもClaudeでも、それらを速く並べてくれます。

一方で、私が自分で持つものは3つあります。どの1つを選ぶか。小さな数で確定しない線を、先に決めること。そして、本当の気持ちを込めるところです。

科学だけでも、直感だけでもありません。この記事の面白さは、研究、直感、試験という順で、2つが交代で出てくるところにあります。

3つ目は、ヒープさんの歌詞の話そのものです。歌詞に本当の気持ちを込めたかった、と本人が言っています。そこは、AIが出した候補を採用して済ませる場所ではない、と私は読みました。

私なら、小さな場面の困りごとは何か、確定と呼ぶ条件は何か、本当の気持ちを込める所はどこか、の3行を先に書いてから、AIに頼みます。この3行が書ければ、AIに頼む範囲も、自然に決まると考えています。

FAQ

よくある質問

Q. ザ・ハッピー・ソングとはどんな曲ですか?

A. CNNの記事によると、2分半の曲で、今週で誕生10周年を迎えました。冒頭で楽しげな笑い声が響き、ぐずり始めた赤ちゃんが本格的に泣き出すのを食い止める効果があると書かれています。Spotifyでは過去10年で4億7000万回を超えて再生されています。

Q. ザ・ハッピー・ソングはどうやって作られましたか?

A. CNNによると、2016年に英ベビーフードブランド「カウ&ゲート」が、音楽心理学者のスチュワートさんと児童発達心理学者のアディマンさんに制作を依頼しました。2人がヒープさんに協力を求め、赤ちゃんを幸せにする要素についての既存の研究と、乳児を対象としたフォーカスグループ調査の結果を組み合わせて作られました。

Q. 26人の実験で何が分かりましたか?

A. 生後6〜12カ月の赤ちゃん26人に、4種類のメロディーを2種類の速さで聞かせました。ヒープさんが中心に据えたメロディーは、赤ちゃんの約80%が好んだといいます。別の実験では、研究者が勧めた速いテンポではなく、赤ちゃんはわずかに遅い方を選びました。約80%が何人にあたるのかは、元の記事に書かれていません。

Q. AIで同じことはできますか?

A. 私の読みでは、研究の下調べ、材料の一覧づくり、メロディーに当たる候補の数出しは、AIに頼める部分です。ただし、どれを選ぶか、26人のような小さな数で確定してよいかは、人が持つところだと考えています。私ならそう分けて使います。

Q. 自分の商品づくりにどう使えますか?

A. 小さな場面の困りごとを出発点に、材料を集め、直感で選び、少人数で確かめる、という順番に置き換えられます。そのとき、好まれた数字と選ばれた数字を分けて見ること、続けて使う人の疲れも見ること、確定と呼ぶ条件を先に決めておくことが、私の読みでは役に立ちます。

MATOME

まとめ:小さな困りごとを出発点に、材料を集め、選び、小さく確かめる

「ザ・ハッピー・ソング」は、渋滞の車内で家族が数分でもほっとできる曲、という小さな場面の願いから始まりました。2分半の曲が、10年でSpotifyの再生4億7000万回を超えた、とCNNの記事は伝えています。

研究が材料を出し、2000人以上の親への調査が反応する音を特定し、ヒープさんの直感が選びました。AIに頼むなら、私は材料と候補の部分です。選ぶ目は、その相手の顔を知っている人が持つ、と読みました。

赤ちゃんに聞かせた試験では、速いテンポという研究者の予想が外れ、わずかに遅い方が選ばれました。出した後に確かめて初めて分かることがある、という私の過去記事の言葉と、同じ向きです。

ただ、26人も、私の6回の測定も、小さな数です。約80%が好んだことと、4億7000万回の再生は、別の測りです。「おいしい」と「買います」が別のものであるように、好まれたと選ばれたは分けて見ます。

聞く赤ちゃんと、何百回も聞く親が別の人だったように、使う人と続ける人が別の商品もあります。幸運は設計できませんが、運が来たときに拾える形にしておくことは、自分の仕事でできると私は読みました。

この記事で学んだことを誰かに教えて恩送りして学びを深めよう!

COLUMN

候補を増やす手を、相手の顔を見る時間に回す

窓辺の木の机で、ひろくんが筆で小さな紙に1行だけ書いている情景。机の左には案を書いたカードの山が脇に寄せられ、向こうに空いた丸椅子が3つ並ぶ。AIで案が増えても、試してもらう相手と確定の線は自分で決める、という絵

先日、「AIに任せる目的は、子供のように夢中に遊ぶ時間を持つこと」という記事を書きました。ザ・ハッピー・ソングの話を読んで、その中の一節をここで思い出しました。

AI氣道『AIに任せる目的は、子供のように夢中に遊ぶ時間を持つこと』より

「AIに任せた結果が、仕事を回す量を増やしただけになる。手放したはずなのに、手は空かないままです。」

手放したはずなのに、手は空かない。AIで案が何十個でも出る今は、空いた手で候補をさらに増やしたくなります。曲の案も、商品の案も、同じです。でも私は、ヒープさんの曲で目立つのは案の数ではなく、確かめる順番だと読みました。あの曲がどう作られたかを、もう一度並べると、2000人以上の親への調査で赤ちゃんが反応する音を絞り、母親としての直感で選び、4種類のメロディーを26人の赤ちゃんに聞かせて確かめています。のちの実験では、研究者が勧めた速いテンポではなく、わずかに遅い方が選ばれました。材料があっても、最後は相手の反応で決まったんです。案を増やす手間は、確かめる手間の代わりにはなりません。

私ならこうします。今日、次に出そうとしている案を1つだけ選びます。その案を試してもらう相手を3人決めます。そして紙に1行、確定と呼ぶ条件を書きます。何人がどう答えたら次へ進むのか。いつ見直すのか。ここまで書いておくと、案が増えても迷いません。空いた時間でもう1案出す前に、決めた3人の顔を思い浮かべるんです。誰に、いつ、何を聞くか。そこまで決めたら、あとは聞きに行くだけです。案を選ぶのは自分、答えるのは相手です。目的は、案の数ではなく、相手の答えを持ち帰ることです。

候補を並べる所は、AIに頼んでかまいません。でも、誰に聞くかと、確定の線は自分で持ちます。

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REF

参考リンク

今回紹介した記事

著者Oscar Holland(CNN)
媒体CNN.co.jp(抄訳)
公開日2026年10月19日
元URLhttps://www.cnn.co.jp/style/design/35253726.html

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