
読んだ本を、自分の現場で使える形にする
H2Hマーケティングとは?コトラーの人間中心マーケティングを全6章で要約
家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。
今回読んだのは、『コトラーのH2Hマーケティング 「人間中心マーケティング」の理論と実践』です。フィリップ・コトラーさん、ヴァルデマール・ファルチさん、ウーヴェ・シュポンホルツさんの共著です。
日本版は2021年9月にKADOKAWAから出ました。監訳と解説は鳥山正博さん、翻訳は石丸由紀さんと大坂裕子さんです。
H2Hは、ヒューマン・トゥ・ヒューマンの略。人と人のあいだで価値をつくるマーケティングを、考え方から実務の手順までまとめた本です。
全6章の各章末には、鳥山さんの「日本の読者へのヒント」が付きます。海外の議論を、日本の文脈に引き寄せてくれる解説です!
3行でわかるポイント
- マーケティングは信用を失いかけている。企業と顧客の双方に得がある道を、本書はH2Hと呼ぶ。
- 企業が渡せるのは価値の提案まで。価値は、受け取る人が使う場面で一緒に生まれる。
- デザイン思考、サービス・ドミナント・ロジック、デジタライゼーションを土台に、考え方・経営・実務の手順まで組み直す。


コトラーのH2Hマーケティング 「人間中心マーケティング」の理論と実践
フィリップ・コトラー、ヴァルデマール・ファルチ、ウーヴェ・シュポンホルツ 著
Amazonで本書を見る※Amazonアソシエイトのリンクです。リンク経由でご購入いただくと、当サイトに紹介料が入ります。
H2Hマーケティングの背骨は、価値を売り手だけで作れないこと
全6章を読み通すと、1本の考え方が最初から最後まで通っています。
マーケティングを、人と人のあいだに戻すこと。売り手が一人で価値を作る前提を外して、受け取る人と一緒に価値をつくる側へ組み替えることです。
その理屈は、第2章でじっくり出てきます。ここでは、本全体の見取り図だけ先に置きます!
本書は、この考え方を二層の図にまとめています。
一層目は影響の柱。デザイン思考、サービス・ドミナント・ロジック、デジタライゼーションです。
二層目は、それを現場に下ろす層です。考え方のH2Hマインドセット、戦略のH2Hマネジメント、実務のH2Hプロセス。第3章から第5章が、それぞれに当たります!
章の並びで見ると、こうなります。第1章が、なぜ組み替えが要るのかという現状。第2章が一層目の柱です。
第3章から第5章が二層目で、第6章は社会への広がり。いま二層のどこを読んでいるかを意識すると、全体を見失いません。

『コトラーのH2Hマーケティング』全容解説|前付けから第6章まで本の順に
ここからは本の順番どおりに、章ごとの中身をまとめます。各章末の鳥山さんのヒントも、章の中で一緒に紹介します。

序文・はじめに|マーケティングを人間主体に戻す宣言
「日本版刊行に寄せて」で、著者の3人はH2Hを、現時点でのマーケティングのゴールと位置づけます。マーケティングは紆余曲折を経て、人間主体の存在へ戻ってきた、と。
問題提起から解決まで人間を主体にする。だから、マーケター以外にも学ぶ意味がある。そう書いています。
序文の主題は、市場における誠実さと、人間への敬意です。経済活動の基盤は、商品の販売ではありません。信頼と、他者への奉仕という人間の価値だ、と強調します。
そのうえで、消費者中心のやり方を問い直し、サービス中心の枠組みへ移るよう促します。信頼と共感の大切さも、ここで予告されます。
はじめには、未来のマーケティングはどんな姿か、という問いから入ります。背景は、インターネットが顧客に与えた力、パンデミックの不確実性、自動化とAIの浸透です。
その中でB2Bマーケティングを進化・拡大させるために、H2Hという概念を創った。古典的な4P、つまり商品・価格・場所・プロモーションは、供給側発想だと注記されます。
正直、章の並べ方が独特です。ドイツ語の先行書を下敷きに、物語の型で章を組んでいます。
第1章が冒険への誘い、第2章が大いなる旅路。第3章と第4章が勇気ある行動、第5章が解決と帰還、第6章が締めくくりです。
初稿では、バンガロールモデルと呼んでいたことも明かされます。メンシュ・マーケティングという言い方も使っていました。メンシュは、人間中心の振る舞いを強調する言葉です。
各章の終わりには、答えを示さない問いが置かれます。状況で答えが変わるから、回答は載せない。読み手に考える席を空けておく作りです!
第1章 マーケティングの現状|双方が損をするやり方は無駄になる

第1章は、耳の痛い現状認識から始まります。マーケティングと聞くと、嘘やごまかし、操作的といった言葉が連想されるほど、イメージが悪くなっている。
対比に置かれるのがアマゾンです。購入ボタンを押した人に、実物を見ていない商品を届ける。信用がなければ成り立ちません。
マーケティング予算を削ると、短期には響かなくても、長期ではブランドやロイヤリティに響く。市場志向と資源志向は、どちらかに偏らず両方を備えるべきだとも書きます。
両方を備えた例として、ホールフーズ・マーケットやパタゴニアが挙がります。マイクロソフトやセールスフォースにも触れます。
ここで出てくるのが、悪意のない悪行という罠。顧客を犠牲にした成功は短命に終わります。命を救う薬の価格を大幅に引き上げ、経営者が失脚した例も紹介されます。
顧客のメリットが短命に終わるやり口は、商品やサービスの提供者にとって賢明でないのは明らかで、長期的には無意味である。両者にデメリットしかないのは無駄なマーケティングだ。
いやー、ここまで言い切りますか!
割り込み型の宣伝は、インタラプション・マーケティングとして批判されます。対置されるのは、許可を得て届けるパーミッション・マーケティングと、役に立つ情報で引き寄せるインバウンドです。
顧客と価値を共創する例も並びます。アマゾンの商品レビュー、スポティファイの個人向けプレイリスト、デウォルトのインサイト・コミュニティ、イケアの共創の場です。
1.2で紹介されるのが、愛される企業、FoE。どの利害関係者も、ほかの関係者を犠牲にして得をしない企業のことです。
社員教育に時間とお金をかける。サプライヤーを協働パートナーとして扱う。長期の目標を持つ。こうした特徴が挙がります。
1.3はサステナビリティです。アプティとシェスを引いて、持続可能性と売上の成長は両立できると主張します。
道筋は、成長とバージン資源の使用を切り離すこと、シェアやレンタルに合わせた商品展開へ移ること、成長を財務以外にも広げて定義し直すこと。利害関係者を広く取ったSPICEモデルも出てきます。
1.4は、マーケティング理論の歴史をたどる節。4Pの思考、競争の思考、関係性の思考と進み、本書はサービスの共創的交換を次の節目に置きます。S-DLを新しいパラダイムとして採用する、という宣言です!
所有からアクセスへの移行、目的や体験が重視される超越の時代、エクスペリエンス・イノベーションも扱います。顧客は、能動的な共同創造者になった。イケアの組み立て家具は、その身近な例です。
章の結びは、短期の取引を重視してきた姿勢への批判です。押し付ける型から、許可を得た人間中心型へ。それを課題としてまとめ、5問の問いで閉じます。
日本の読者へのヒントで、鳥山さんはまず批判の原典をたどります。元はコトラーの自伝にある、マーケティングへの7つの批判。根は、信用の欠如と過度な株主価値志向だと整理します。
企業と顧客の双方にメリットのある尾根を目指さねばならないということであり、それがH2Hの目指すところなのだ。
片側の谷は、企業には得でも顧客に得のない非倫理的なマーケティング。反対側は、企業にすら利益をもたらさない無意味なマーケティング。その間の尾根を歩くのがH2Hです。
FoEは近江商人の三方良しに近い、とも書きます。自分ならマーケティングの失敗をもっと具体的に描いてから説く、と率直に添えつつ、本書の価値は統合にあると評しています!
私の場合|相性の良くなさそうな人にも売って、お互いに損をした
販売の失敗を振り返ったとき、私はこう書いています。
失敗したのはあまり相性は良くなさそうな人にも販売してしまったことで、お互い損することになったこと
売ること自体は成り立っていました。それでも、結果はお互いの損です。
本を読んだ今、私はこの失敗を、第1章の両者にデメリットしかないマーケティングに重ねて考えています。
鳥山さんの尾根は、売れたかどうかで引かれていません。相手と私の両方に得が残るかどうかで引かれている。今の私は、そう読んでいます!
第2章 新たなマーケティング・パラダイム|デザイン思考・S-DL・デジタライゼーション

第2章は、本書でいちばん厚い章です。冒頭は、空虚な約束や攻撃的な戦術が見抜かれ、信用が損なわれたという現状から入ります。
残されたコミュニケーション機能も、重要性を失いつつある。生き残るには、有意義なバリュープロポジションをつくる核心に戻るしかない、と書きます。
2.1では、影響の柱となる三因子がどれも、価値創造と関係者の理解を大切にしている点が示されます。自動化が進んでも、変わらないことがあります。
あらゆるビジネスの最終顧客は人であって機械ではない
2.2はデザイン思考です。データはパターンを示せる。でも、それを解釈して新しいサービスにつなげるには、人間の洞察が要る。ここが出発点です。
IDEOが挙げる考慮要素は、人間の視点、技術的な実現性、経済的な実現性。本書のアドバイスは一つです。まず、そのアイデアが人にとって望ましいかを確かめること!
デザイン思考には、マインドセットとしての顔と、ツールボックスとしての顔があります。原則は、早期に頻繁に失敗すること。間違いは早く見つけるほど、直すコストが小さく済みます。
デザインシンカーの特性は、共感力、統合的な思考力、楽観、実験的な姿勢、協働力。実践には、分野の違うメンバーのチーム、プロセスの反復、実験できる空間が欠かせません。
プロセスは、理解、観察、視点の定義、アイデア出し、プロトタイピング、テスト。広げる発散と、絞る収束を行き来します。
こうしてマーケティングを、研究開発の前の曖昧な段階へ戻す。この段階をファジーフロントエンドと呼びます。
あ、そうだ。日本の例も出てきます。駅のホームで次と次の次の電車の待ち列を示す表示、タクシーの後部ドアの自動化、人ごみで歩きやすい透明な傘です!
2.3はサービス・ドミナント・ロジック、S-DLです。モノ中心のグッズ・ドミナント・ロジックと対比しながら、基本的前提を順に解説します。
サービスとは、自分の知識やスキルを相手のために使うこと。サービスは交換の基盤で、モノはそれを運ぶ手段だと捉えます。
知識やスキルのように、ほかに働きかける側の資源。これをオペラント資源と呼び、戦略優位の源泉に置きます。
価値は、受益者を含む複数のアクターが一緒に共創する。売り手の側にできることにも、はっきり線が引かれます。
アクターは価値を提供することはできないが、バリュープロポジションの創造と提供に参加することはできる
アクターとは、企業も顧客も含めて、経済の中で動く人や組織のこと。売り手が出せるのは、こういう価値がありますという提案までです。
価値を決めるのは受益者で、同じ商品でも人によって価値が違います。サービスを交換し合う場では、出す側も受益者です。
でね、ここが鳥山さんも核心と呼ぶ所です。全てのアクターは資源を統合する存在で、売り手と買い手の二元論ではない。アクター・トゥ・アクター、A2Aの見方に移ります!
サービスエコシステムと、それを動かす制度も扱います。アマゾンは顧客には強いのに、サプライヤーとの関係管理は弱い、という指摘も。フリックスバスやインテルは、エコシステムを育てた例です。
2.4はデジタライゼーション。アナログをデジタルに置き換えるデジタイゼーションと、ビジネスの進め方そのものが変わるデジタライゼーションを分けます。
商品はアプリやソフトへと脱物質化し、一人ひとりに合わせて個人化されていく。ソーシャル、ローカル、モバイルのSoLoMoの行動で、決める時点と買う時点が分かれました。
生産にも関わる消費者、プロシューマーも登場します。企業は、主導権を顧客に委ねる課題に向き合うことになる。章末の問いは9問です。
ヒントで鳥山さんは、最適化はAIの得意分野で、創造は人間にしかできないと書きます。だからデザイン思考が求められる。S-DLが定着したのは、利用の場の反応が測れるようになったからだ、とも。
デザイン思考とエフェクチュエーションとアジャイル開発が似た形に育ったのを、ハヤブサとトビの収斂進化にたとえる話も出てきます。結びは、コトラーの真骨頂は統合にある、でした!
私の場合|高崎さんとの朝LIVEで、実装とアイデアが往復した
高崎さんとの朝LIVEの場面を振り返ったとき、私はこう答えています。
自分のイメージ通りにAIシステムを作ってきてくれたりしてますますアイデアが湧いてきてワクワク夢中だった
私のアイデアを高崎さんが実装しながら、新しいアイデアを足してくれる。その繰り返しで、どんどんアップデートしていく過程にワクワクしました。
高崎さんは自分のペースで、人を気にせず、ありのまま手を動かしていました。それが私の凸凹にも噛み合い、お互いにワクワク夢中のフロー状態になっていました。
本を読んだ今、私はこの往復を、S-DLのサービスとサービスの交換として読んでいます。私のアイデアが渡り、高崎さんの実装と新しいアイデアが加わる。資源を持ち寄って統合するたびに、更新が起きていたと考えています。
ただ、価値を決めるのは受益者です。私が受け取ったのは、ワクワク夢中の時間でした。高崎さんが何を価値と受け取ったかは、高崎さんにしか決められません!
第3章 H2Hマインドセット|人間を手段でなく中心に置く

第3章は、H2Hマーケティングの土台になる考え方の章です。マーケティングは人の役に立つもの。マーケターは、世界を良くするために働くか、自分のために働くかを意識して選べる、と書きます。
H2Hとは、人間を目的への手段ではなく、中心に据えること。これがこの章の起点です。
マインドセットの説明には、ドゥエックの固定型と成長型が使われます。人は常に両方を持ち、その比率は文脈で動く。そこにホファートのアジャイル型を重ねます。
マインドセットは、人や組織が常に自省する意志を持ち、その結果としての変化を受容するという条件のもとで変えることができる。
3.1は、伝統的な市場志向の整理です。社内の資源から考えるRBVと、市場から考えるMBVは、視点の向きが違うだけ。マッツラーらは価値ベースの見方を加えて、顧客ベースの統合モデルCBVを示しました。
例として、デュール・グループ、利害関係者の相互依存を示すSPICEモデル、ホールフーズ・マーケットの相互依存宣言、ソリューション化を進めたSKFが挙がります。
で、この章の読みどころは3.2です。H2Hマインドセットの4つの特徴を、良い例と悪い例の対で見せてくれます!
1つ目は人間中心。ある自転車メーカーの商品マネージャーは、都市部で日々の用事に自転車を使う人が少ないのは、快適性に問題があるからでは、と考えました。
開発チームが利用者の立場から見直すと、都心での買い物を妨げる一番の原因は交通渋滞でした。
だから多くの人は、広い駐車場のある郊外のスーパーへ、車で買い物に行く。自転車は、日常の買い物の手段として候補に上がらないんです。
快適性の向上に開発資源を注ぎ込む無駄を、ここで避けられました。悪い例は、人間工学の観点だけで新しい自転車を作らせ、都市交通の課題を見ないやり方です!
2つ目はサービス志向性。自社に必要な機械がない依頼を受けた営業担当者が、元パートナー企業を紹介し、三方良しになった。反対の例では、作れると断言してあとで覆り、三方とも損になります。
3つ目は俊敏性と実験主義。夕方に機械が壊れ、部品は週明けまで届かない。サービス担当者は、それまでのつなぎに仮修理を提案し、生産マネージャーの同意を得て実行しました。
4つ目が、他者視点への共感的関心です。あらゆる利害関係者の観点から問題を見る。その順番は、まず問題を抱えている人の観点から。特に情動的な共感が、解決策の決め手になると書きます。
3.3では、要件が4項目にまとまります。企業が打てる手は、採用時の見極めと、企業文化づくりの2つです。
例は、パネラブレッド、ノボノルディスク、インディテックス、グッドキッチンです。グッドキッチンは、デンマークのホルステブロ市が、自炊できなくなった在宅の高齢者に提供しているフードサービスです。問いは6問です。
ヒントで鳥山さんは、仕事の重心がHowからWhat、Whyへ移ってきたと読みます。Howの仕事の多くの部分と、Whatの仕事の一部は、AIでかなり代替できるようになった。だから、人間にしかできないWhyの部分がより重要になってきている、と。パーパスの重要性が高まっている、とも書きます。
ドラッカーの石工のたとえも出てきます。言われた通りに石を削っていると答える人より、大聖堂を作っていると答える人のほうが良い仕事をする。H2Hマインドセットが大事な時代だ、と結びます!
第4章 H2Hマネジメント|信用とブランドを重視する

第4章は戦略の章です。冒頭の一文が、全体を貫いています。
信用はマーケティングの究極の通貨
信用が事業の主要な手段になる時代を、本書はレピュテーション・エコノミーと呼びます。4.1は、エデルマン・トラストバロメーターを引いて、信用の危機を示すところから始まります。
人々は企業やCEOに、社会課題への関与を期待している。中立を貫くだけでは足りない、とまで書きます。
リブランディングの例も具体的です。ヤフーは差が開いてから追いつこうとして、信用を取り戻せなかった。ビヨンド・ペトロリウムを掲げたBPは、原油流出事故が移行の妨げになりました。
マスターカードは、お金では買えない価値を語るプライスレスのキャンペーンで、人間味のある会社として差別化しました。
正直、明快なのが信用の分け方です。信用傾向、感情的信用、評判上の信用、経験上の信用。このうち管理できるのは、経験上と評判上の2つだけだと言い切ります!
CSRも見直されます。見せるための善行では足りない。その成熟版として、社会や環境の課題への立場を行動で示すブランド・アクティビズムを置きます。
顧客体験の管理、CXMでは、認知、訴求、調査、行動、推奨の5Aでタッチポイントを洗い出します。ボルボ・トラックが俳優ジャン・クロード・ヴァンダムの開脚で、ステアリングの精度を見せた動画も、B2Bの例として出てきます。
カスタマージャーニーは直線ではなく、行き戻りする循環です。そして、個人的なものから社会的なものへ変わった、と書きます。
評判とイメージは分けて扱います。イメージは企業の信念を映し、評判は市場から見た成果を映す。利害関係者ごとにペルソナを作り、評判を統合的に管理します。良い評判は、磁石のように人を引きつけます。
4.2はブランドです。全体論的なブランドマネジメントを出発点に、ブランドを形づくるデザインBFDと、顧客と一緒につくるブランディングCBを加えます。
ブランドプロミスと実際の行動が一致しないと、イメージは傷つく。S-DLを通すと、ブランドの価値は交換の時点から、使う時点へ移ります。ブランドの意味は、社会の中で共創されるものになります。
接続の時代のジャーニーでは、態度は個人より周りの社会で決まる。ロイヤリティは再購入より、推奨に前向きかで測られる。顧客どうしの質問と推奨も増えました。
企業が力を持つのは、外的な範囲です。他者の範囲には一部しか届かず、本人の自分自身の範囲には届きません。これをOゾーンと呼び、魅力、好奇心、コミットメント、親近感の4方向から詰まりを解きます。
ブランドマネジメントは、制御するものより導くもの。デザインとブランドは切り離せず、ディーター・ラムスのグッドデザインの10カ条も紹介されます。
4.3では、ブランディングの7項目、潤滑油のリキモリ、インテルのような成分ブランディングが例に出ます。問いは7問です。
ヒントで鳥山さんは、ブランド・アクティビズムの背景を、米国のベビーブーマー、X世代、ミレニアル世代、Z世代の価値観から解説します。BFDの元論文が、ドイツの博士論文だったことも紹介します。
そのうえで、中国の信用スコアリングや、メルカリのような相互評価、レビューの星の数も信用の議論として扱ってほしかった、と書いています!
第5章 H2Hプロセス|オペレーティブ・マーケティングを再考する

第5章は実務の章です。古典的な4Pは、組織が管理できる要素ばかりを見て、顧客の視点が抜けていた。モノ中心の一方通行に根ざしている、と批判します。
その後継として、ラウターボーンの4C、SIVA、SAVE、ホールの5C、ファルチの5Eを順に検討します。H2Hプロセスは、その延長にあります。手順は5つです。
- H2H問題を発見する
- 深い洞察を集める
- バリュープロポジションを開発する
- 価値あるコンテンツで情報・助言・娯楽を提供する
- ネットワークへのアクセスを提供・管理する
反復的で、どこからでも始められるのが特徴です。洞察の段階があるので、ファジーフロントエンドにも参加できる。探索と深化を組み合わせる両利きの例として、富士フイルムも出てきます。
ここに大事な区別が入ります。バリュープロポジションは、価値の約束ではなく価値の提示。価値は受益者が決めるので、約束はできません。約束を伝えるのは、コンテンツの役割だと整理しています!
5.2は、ブリーフィングの条件から始まります。書面にする、シンプルにする、必要なら変更できるようにしておく。
H2H問題を能動的に探す方法として、オンラインのコミュニティに入り込むネトノグラフィー、トレンドウォッチ、ビッグデータを使うソーシャルリスニングが紹介されます。
洞察の段階では、行動を観察するエスノグラフィー、知見の凝縮、エンパシーマップを使います。セグメンテーションとペルソナは、組み合わせて盲点を消します。
いやー、ここから先が細かいんです。
バリュープロポジションの開発では、顧客を共創に巻き込みます。事業者と顧客の知識やスキルを持ち寄り、足りない力は経験ネットワークのほかの会社に頼ればいい。
顧客の側のサービスとは、自分の知識やスキルを使って、価値提案の展開を支えること。顧客も、価値づくりの担い手として描かれます。
エクスペリエンスは、何が、どのように、なぜ、で設計し、なぜから始めます。音楽を聴く例では、仕事終わりにくつろぎたいのか、運動中に自分を鼓舞したいのかで答えが変わります。
価格は、顧客から見た価値を数字にしたものとして扱います。価値から決めるバリュー・ベースド・プライシングと、目標原価計算が説明されます。
コンテンツの合言葉は、売るな、役立て。教育か娯楽、つまりエデュテインメントであること。デジタルだけでなく、対面のアナログも含めることを求めます。
小さく作って試し、学んで直すリーン・コンテンツマーケティングも登場します。対話については、次の言葉が引かれています。
「実りある対話を生むには、人と人として向き合うことが決定打となる。自動配信メールやツイート、販売後のフォローアップは潜在顧客の信用を勝ち取るには適していない。信用される対話には、人間味、真実味、感謝の気持ちが必要なのだ」
顧客の関心と自社の専門知識が重なるスイートスポット、顧客がつくるユーザー生成コンテンツ、オウンド・ペイド・アーンドのメディアの使い分けも扱います。評価は5Aのジャーニーに沿って測ります。
アクセスの節では、オンラインとオフラインをつなぐオムニチャネル、検索で期待が生まれる瞬間のZMOT、ソーシャルコマースの段階を扱います。
5.3は、新興企業と既存企業でのプロセスの使い分けです。成否は結局、適用する企業のマインドセットにかかる、と締めます。問いは7問。
ヒントで鳥山さんは、反復とカスタマーエクスペリエンスが要だと読みます。市場の理解がアスキングからリスニングへ移ったこと、守備範囲がファジーフロントエンド、CXM、BFD、コンテンツまで広がったことも指摘します!
私の場合|教えることで、私も学んだ懇親会
あ、そうだ。懇親会について、私はこう答えています。
「たくさん教えることで学べて人と人の絆も深まる懇親会でワクワク夢中が相互に広がる」
教える側の私も学ぶ。人と人の絆が深まる。ワクワク夢中が、相互に広がる。
本を読んだ今、私はこれを第5章の共創に重ねています。対話型では、価値は共に学ぶ中で出てくる、と本書は書きます。対面のイベントは、より有意義な人間と人間の交流を可能にするとも。
教えることで、教える私も学ぶ。その形が、知識を持ち寄って価値を統合する流れに重なる。今の私は、そう受け取っています!
第6章 この難しい世界の中で|内発的動機で動く社会へ

最終章で、話は企業の外へ広がります。H2Hにコミットする企業は、社会問題を解く変革の推進者になれる、と書きます。
あらゆる利害関係者と共に、持続可能な共通の価値を創る。ダボス・マニフェスト2020のこの方針に、H2Hは沿うと位置づけます。業績は、株主還元だけでなくESGの達成度でも測るべきだ、と。
背景には、低金利のジレンマ、格差の拡大、政治の二極化、信用の低迷がある。人々は企業に、問題の解決を期待するようになりました。
哲学者プレヒトの議論も出てきます。デジタライゼーションで、今ある仕事の多くが失われる。その先は二階級社会か、ユニバーサル・ベーシックインカムに支えられた社会か。
ヘーリングによる、キャッシュレス化が市民の自由を損なうという懸念も紹介されます。企業が使えるツールとして、教育と倫理、対話と議論、ソーシャルコーズ・マーケティング、ロビー活動などが並びます。
6.1は、世界の目覚め。サステナビリティ・エッジのモデルと、人間を中心に置いた同心円が示されます。パーパスを意識した真摯なマーケティングこそ、未来の姿だ、と。
外発的動機で仕事をしていた社会から、内発的動機で動くことに意味を見出す社会への変革が必要なのだ。
人類をテクノロジーに合わせるのではなく、技術を人類のニーズに合わせる。コダックが破綻する中で変革に踏み出した富士フイルム、ゲームのルールの偏りを問うライシュの議論も取り上げます。
ポーターとクラマーの共通価値は、商品と市場の再考、バリューチェーンの生産性の再定義、地元集団の発展支援という道筋です。マイクロクレジットには、批判的な見方が添えられます。
賃金の高いFoEのほうが、収入あたりの人件費は低い、という分析も出てきます。パイを分け直すより、パイそのものを大きくする!グメソンのバランス中心主義も、同じ方向です。
でね、6.2の答えは減速ではありません。
社会学者ローザの加速論を受けて、解は共鳴、レゾナンスだと書きます。一部の人だけが味わえる減速のオアシスは、社会全体の答えにならない、と。
日常の小さな疎外感を越えるだけでも、共鳴は生まれる。6.3で旅を振り返り、信用は唯一の通貨であり続けると結んで、7問の問いで閉じます!
ヒントで鳥山さんは、引用された論客を一人ずつ解説します。そのうえで、共鳴への着地は日本の読者には納得しにくい、ユヌスの否定には強い違和感がある、と率直に書きます。
自分なら、何が測れて何が操作できるかで理論が変わる、という形而下の原理から統合する。ムーアの法則やギルダーの法則を変化の根に置く、そんな素案まで示します。
今後の課題を5点挙げたうえで、H2Hの方向性はロバストで骨太だと評して締めます。監訳者の異論まで一冊に入っているのが、この本の厚みです!
実践編|人間中心マーケティングを自分の仕事で試す
ここまでの中身を、自分の仕事で試せる手順に落とします。今日やることは、この節にまとめました。

1|売る相手のH2H問題を、一文で書く
自分の商品やサービスが解こうとしている、人間の問題を一文にします。第3章の自転車の例を思い出して、相手の立場から見た問題になっているかを確かめます。
書けたら、その問題を抱える人の場面を一つ思い浮かべます!
2|提案と約束を分けて書き直す
説明文の中で、価値を約束している言葉に印を付けます。企業が出せるのは価値の提示まで。約束に見える言葉を、相手が使う場面の提示に書き換えます。
3|売る前に、相手の場面を聞く時間を置く
第1章の尾根を思い出します。売れるかどうかとは別に、相手と自分の両方に得が残るか。セールスの前に、相手の場面を聞く時間を置きます!
4|役に立つコンテンツを、小さく1本出す
売るな、役立て。相手の関心と自分の専門が重なる所で、小さなコンテンツを1本出します。反応から学んで直す。対面の場も、コンテンツとして数えて構いません。
5|教える場で、聞き返す
教える機会があれば、話し終えたあとに相手の受け取り方を聞きます。価値は受益者が決めるもの。相手の言葉で返ってきた価値が、次の提案の材料になります。
H2Hマーケティングのよくある質問

Q. H2Hマーケティングと人間中心マーケティングは同じものですか?
A. 本書の副題が「人間中心マーケティング」の理論と実践で、同じ方向を指しています。コトラーさんたちは『マーケティング3.0』で人間中心のマーケティングを紹介しました。本書はそれを、デザイン思考、S-DL、デジタライゼーションで組み直し、実務の手順まで広げた形です。
Q. B2B企業向けの本ですか?
A. はじめにでは、B2Bマーケティングの進化・拡大のためにH2Hを創ったと書かれています。一方で本文は、B2BにもB2Cにも当てはまると述べ、ホールフーズ・マーケットやエアビーアンドビーのような消費者向けの例も多く出てきます。
Q. サービス・ドミナント・ロジックが難しく感じます。
A. 一言でいえば、全ての交換の根っこはサービス、つまり知識やスキルを相手のために使うことだ、という見方です。モノはそれを運ぶ手段で、価値は受け取った人が使う場面で決まる。第2章の基本的前提と、章末の鳥山さんのヒントを続けて読むと入りやすいです。
Q. 小さな会社や個人でも使えますか?
A. 第5章は、新興企業はまずH2H問題の探索と、パートナーや顧客と一緒の価値提案づくりに集中すべきだと書きます。コンテンツマーケティングでは、予算の規模より独創性が成功のカギになり、中小企業には心強いとも述べています。
まとめ|『コトラーのH2Hマーケティング』は、信用を取り戻すための一冊
H2Hマーケティングの芯は、価値を売り手だけで作れないことです。企業が渡せるのは提案まで。価値は、受け取った人が使う場面で一緒に生まれます。
だから、双方が損をする取引は尾根から外れ、信用を削ります。デザイン思考で人の問題から始め、S-DLで知識とスキルを交換し、デジタルを人のために使う。考え方、経営、実務の手順まで、その一本の線で組み直した本でした!
で、本を読んだ今、私の手元に残っているのは、相性をどこで考えるかという問いです。売れたかどうかより、価値を一緒につくれる相手かどうか。その問いから読み直すと、全6章が一つの線につながります。

COLUMN|相性を、どこで考えるか
当時の私の売り方は、興味関心のある人を大量に集め、自動のステップで教育して、ニーズとウォンツを高めたうえで、相手に個別セールスをする流れでした。失敗したのは、あまり相性の良くなさそうな人にも販売してしまったこと。お互いが損をしました。

本を読んだ今、私が向き合っているのは、相性をどこで考えるかという問いです。集める、育てる、個別にセールスする。そのどこで、価値を一緒につくれる相手かを見るのか。
第5章は、自動配信のメールや販売後のフォローは、信用を勝ち取るのに向かないと書きます。当時の自動のステップと並べると、考えることが出てきます。
売り手が渡せるのは提案まで。価値は相手の場面で、一緒にしか生まれません。そう読むと、相性は、価値を一緒につくれる相手かどうかの問いに変わります。
実は以前の魂磨きで、力を尽くしたい相手を一文にしたことがあります。
パーパスがあう、波長が合う、話しているだけでワクワクする、軸がブレない、他責思考でない、自己実現段階以上の人。
出典:抱えるほど、力を尽くせなくなる。二つの実在場面から見えてきたボールの渡し方|パーパスが合う人、という一文になるまで の節
この一文は、販売の失敗とは別の場面から出てきた言葉です。それでも本を読んだ今、相性の中身に近いと考えています。売れる相手の目印より、価値を一緒につくれる相手の目印として読み直しています。
集めて、育てて、売る流れのどこで、この一文を手元に置くか。本を読んだ今、考えているのはそこです!
分身AIと過ごした最初の100日の記録は、分身AIと歩んだ100日の全まとめにあります。分身AIについては、分身AI.comにまとめています。
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この記事はAIツール(Claude Code)を活用して制作しています。構成・文章生成・画像制作にAIを使用し、最終的な内容の確認・編集・公開判断はひろくん(田中啓之)本人が行っています。「分身AIひろくん」(bunshin-ai.com)とは別のコンテンツです。