
WATCH REPORT
Sakana AI デイビッド・ハー氏が語る、AIへの巨額の投資が鉄道ブームに似ている理由
2026.10.30
家事と子育てのスキマで経営する3方よしAI共創コンサルタントの田中啓之、ひろくん(@passion_tanaka)です。今回は、YouTube のチャンネル『東洋経済オンライン』で公開された、Sakana AIのデイビッド・ハー氏へのインタビュー動画を、順に整理します。
「AI主権」や「日本のAI」という言葉を、ニュースで見る日が増えました。でも、自分の仕事でAIを使う時と、どうつながるのでしょう?言葉だけが先に流れていく。この記事は、そこが見えないままの人に向けて書きました!
取り上げるのは、東洋経済オンラインの33分12秒のインタビューです。Sakana AI の共同創業者でCEOのデイビッド・ハー氏が、東洋経済 編集委員の倉沢さんの質問に答えます。公開は2026年10月30日、収録は2026年10月22日。ハー氏は英語で話し、画面の日本語のテロップは東洋経済オンライン編集部の訳です。引用ブロックには、ハー氏の英語の言葉をそのまま載せました。画面は会議室での対談で、質問の帯と、用語や人物のカードが添えられます。
話の順は、AI主権、Fugu、防衛、3年で変わった勢力図、AI投資の回収、評価額と上場、そしてRSI。国の話から会社の数字、AIがAIを改善する話まで進みます。
Sakana AI デイビッド・ハー氏の話を、この順にたどります。最初から最後まで見なくても全体がつかめて、自分の仕事でAIをどこに預け、どう切り替え、どう確かめるかを考える順番が見えてきます。
SPEAKER
デイビッド・ハー氏と聞き手の倉沢さん
話すのはSakana AIの共同創業者でCEOのデイビッド・ハー氏。聞き手は東洋経済の編集委員、倉沢さんです。
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AI主権と聞くと、国産のAIだけで固める話に聞こえませんか?外国のAIを締め出し、自前で全部まかなう話。ところが、Sakana AI のハー氏の答えは少し違いました。
画面に「本日のテーマ」のカードが出ます。日本のAI主権をどう確立するか、開発の現場から見える勢力関係、AI開発競争の展望の3つ。倉沢さんが最初に、創業のきっかけを尋ねます。
答えるハー氏の経歴は、カナダ出身でトロント大学。来日してゴールドマン・サックスに約8年勤め、Google Brain でAI研究者になりました。そして3年前に Sakana AI を創業します。
日本人ではないけれど、日本に住むのが好きだ、とハー氏は話します。日本は民主主義の国で、AI開発にも日本の声が要る、と続けます。
倉沢さんが、日本に独自のAI企業が要る理由を尋ねます。答えは、議論が「sovereign AI(主権AI)」から「AI sovereignty(AI主権)」へ移っている、という整理でした。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・2:38〜)
we should have a made-in-Japan AI, but we should not cut stop using foreign AI.
国産のAIは持つ。ただし、外国のAIを使うのをやめるわけではない。ハー氏の言うAI主権は、どちらか一方を選ぶ話ではありません。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・2:45〜)
I think AI sovereignty is about ensuring Japan has the full supply chain from access to models to having the talents to build applications on top of these models.
中身はさらに広がります。モデルを手に入れるところから、その上でアプリを作る人材まで。その流れ全体を日本が持つことがAI主権だ、と話します。
Sakana AI は実務でも動いている、と話は続きます。世界のオープンウェイトのLLMを調べ、日本向けに後学習した Namazu を公開しました。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・3:55〜)
you ask any of these models questions about Japanese politics, it will actually refuse to answer you 70% of the time.
そのまま使うと、モデルは作り手の側に偏る。DeepSeek は中国寄り、Llama は米国の Facebook 寄りだと例を挙げます。日本の政治の質問をすると70%の確率で答えを拒む、とハー氏は話します。
残りの30%も聞きたい答えではないだろう、と言うと、その場に笑いが起きます。そこで Namazu には日本の知識を吸収させる。
評価の指標は、エージェント向けの日本語の指示、翻訳、政治の公平性を問うQAの3つ。自分が来日して日本の文化を吸収したのと同じだ、とハー氏は例えます。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・4:43〜)
we want to make the model not like a right-wing model, but more like a neutral model.
目指すのは、偏った右寄りのモデルではなく、Wikipedia や NHK のような中立なモデル。企業が安心して頼れるようにするためだ、と整理します。
AIに実行を渡しても、目的を決める層と、起きたことを確かめる層は渡しっぱなしにしない。そのことを、私の記事に、こう書いています。
私の記事より(コントロールプレーンの時代を湯川鶴章さんが解説。AIモデルに主権を渡さない会社の作り方・「制御層を握るのは誰か」——モデル大手がスタックの上と下へ動く理由)
私は分身AIチームに実行(モデル層に近い部分)を渡している。でも渡しっぱなしにはできない場所が二つある。一つは「何を目的にするか」という上の層、もう一つは「実際に何が起きたか」を確かめる下の層だ。
ハー氏が国として握ると言うのは、モデルから人材までの流れです。私が握ると書いたのは、目的を決める上の層と、起きたことを確かめる下の層。国と一人の仕事では、大きさがまるで違います。重なるのは、握る所を先に決める、という順番だけです!
私は、AIに渡す物に、目的だけでなく背景と意図まで入れます! 渡す先を決める時も同じです。何を手元に握るかが先。
ハー氏のAI主権は、国の側で外国のAIを使い続ける話でした。では、自分の仕事では何を握り、何を任せているでしょう?そこを言葉にできると、預け先の話がぐっと身近になります!


日本は米国の最先端のモデルを使える立場にあります。でも、それがいつまでも続くと言い切れるでしょうか?Sakana AI のハー氏は、ここに備えの話を置きます。
日本は米国のフロンティアモデルを使える、とハー氏は整理します。ただし、米国の大統領が大統領令でモデルの利用を禁じる可能性もある、と付け加えます。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・5:13〜)
China cannot necessarily easily use the Anthropic or or OpenAI’s models, but Japan can.
中国はOpenAIやAnthropicのモデルを簡単には使えない。日本は使える。ただし、大統領令が出ない限りという条件つきです。
そこで Sakana AI が作ったのが、モデルを振り分けるルーティングの技術。たとえばAnthropicのモデルが日本の利用者に禁じられても、仕組みが別の適切なモデルへ切り替える、と話します。
これが夏に出した Fugu です。ちょうど米国が特定のモデルを米国外の利用者に禁じた週に出せた、運が良かった、とハー氏は語ります。
Fugu 自体もLLMで、約100億パラメータ。画面のテロップ(編集部訳)にも、約100億パラメータを持つLLMとあります。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・6:26〜)
It learns to route the task to different models at every step of the workflow.
ワークフローの一歩ごとに、仕事をどのモデルへ回すかを学ぶ。Fugu の役目は、この振り分けにあります。
例も具体的です。複雑なアプリを作るなら、日本語の文章は Namazu へ、コーディングは Claude へ、推論は GPT へ。画面のテロップにも、日本語の文章作成はNamazuへと出ます。
コストの最適化にも使える、とハー氏は続けます。メールを要約するだけで最先端のモデルを使いたい人はいない、という例。コストに寄せるか、性能そのものに寄せるかも選べます。
強いモデル同士を組み合わせれば、さらに性能が上がる。それをヒーローが2人そろうようなものだと例えます。倉沢さんが「選択肢を持つということですね」とまとめ、ハー氏が同意します。
特定のAIモデルやツールに頼りすぎた時の揺れを、私の記事に、こう書いています。
私の記事より(AIバブルは弾けるか。安野貴博さんが解説する循環投資とジェフ・ベゾスの『産業バブル』論・NVIDIAが時価総額600兆円になった、たった1つの理由)
私は一人会社だから、特定のAIモデルやツールに依存しすぎると、そこが値上げした瞬間・仕様を変えた瞬間に、自分の商売の土台ごと揺らぎます。
Fugu が切り替えるのは、使えなくなる日に土台ごと揺れないためです。私が一人会社として書いた心配と、立っている場所は同じ。国でも一人の会社でも、預け先が一つだけの危うさは変わりません!
私は、どのモデルを使うかを毎回選ぶ手間は、仕組みに任せたいと考えます! 人は、その手間を積み減らす。ただし、何に切り替わったかは、あとで確かめられる形で。
切り替えの仕組みがあっても、切り替わった先の答えを読むのは人です。そこまで含めて、選択肢を持つということなのかな。


AIの会社が、なぜ防衛の仕事に入ったのでしょう?Sakana AI の入口は、一つの競技会でした。
倉沢さんは、約1年前にハー氏が防衛分野に機会があると話していたことを挙げ、その後の進展を尋ねます。
自分は日本国籍ではないが、この国に長く住んで愛している、とハー氏は答えます。日本はアジアの民主主義のリーダーで、価値観が素晴らしい。完璧ではないけれど、インフラを良くしたいと話します。
日本は中国・北朝鮮・ロシアに囲まれ、地政学の緊張の中にある、とも続けます。
きっかけは昨年でした。米国防総省が日本に来て、恵比寿でスタートアップの競技会を開きます。防衛省と防衛装備庁と組み、民生と防衛の両方に使える技術を募るものでした。
ハー氏は、この競技会に65社が参加したと述べました。そのうち日本企業は5〜10社ほどで、オーストラリア、カナダ、英国、フランスなどの企業が日本まで競いに来ていた、と語ります。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・9:33〜)
So, for me, I feel I kind of felt like like a mottainai.
その光景に「もったいない」と感じた、と話します。戦後の歴史から平和主義の憲法があることは理解する。それでも、この国のインフラを良くしたいと信じている、と続けます。
そこでチームを送り、2つの課題を提案しました。1つ目は生物安全保障で、次のコロナが起きたらどうするか。2つ目は、SNSでの偽情報の検知です。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・10:14〜)
our company won third place on this competition. So, that opened up some doors in the defense.
結果は3位。これが防衛への入口になった、と話します。日本国籍ではない自分の会社が、米国の開いた競技会で入賞したのは偶然のようなものだった、とも語ります。
入賞をきっかけに、総務省など小さな政府機関とも試験導入(PoC)の契約ができました。SNSを見張って政治的な工作を探す、偽情報検知システムのPoC版を提案し、配備した、と話は進みます。画面のテロップにも、そう出ます。
ハー氏は、このシステムが昨年の選挙期間中に読売新聞に取り上げられたと述べました。国家が組織的に仕掛けた操作を検知した事例だった、と語ります。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・11:18〜)
we’re proud as a company to have our first contract, a research contract, directly with the Ministry of Defense, the Boeisho this year.
こうした進展を受け、今年、防衛省と初の研究契約を結べた。画面のテロップ(編集部訳)には「初の防衛省との研究開発契約」とあります。Sakana AI として誇りに思う、という言い方でした。
日本国籍でないため、防衛事業は別の人に任せている、とハー氏は話します。契約の中身は、防衛省の中の複数の情報源のデータを扱うAI基盤の開発。政府の組織はどこも複雑で、情報をうまく整理する必要がある、と続けます。
倉沢さんが、競合は多くないのかと尋ねます。防衛で働く会社は多いがスタートアップは少ない、という答え。大手には富士通や三菱重工業があるものの、AIのソリューションを出す会社ではない、と話します。
大手もAIモデルには取り組んでいるのでは、と倉沢さんが返します。競争がないとは言わない、それでもスタートアップが貢献できる余地はある、とハー氏。違う考え方で新しいことを試し、大手と組むこともできる、と添えます。
防衛の窓口は、国籍の事情で別の担当が持つ、とハー氏。会社の中で役割を分ける理由の一つとして、そのまま受け取ります。
入口は競技会、広げたのは小さな政府機関のPoC、そして初の研究契約。一歩ずつ積み上がった順番です!
大きな契約も、最初は3位という一つの結果から始まっています。経緯はここまでです。


ChatGPTの登場から3年。同じ「AI」でも、国によって向かう先が違ってきました。AI主権は、その地図のどこに立つのでしょう?
倉沢さんが尋ねるのは、Sakana AI を創業してからの3年で、業界がどう変わったか。ハー氏は、ChatGPTの公開以降、劇的に変わったと話します。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・13:02〜)
I think things have changed quite dramatically since ChatGPT was released.
公開を境に、景色が一変したという受け止め。米国の大手のGoogle、Anthropic、OpenAIは、より大きなモデルと大きなデータセンターで、規模を広げることに集中してきました。
並ぶ課題は、データセンターの不足、環境への懸念、水の使用量。倉沢さんが「電力」と補い、社会の側の問題として挙がります。
中国は、小型で効率のよいオープンウェイトのモデルを主導している、と続けます。ハードウェアを出荷できない制約の中で、工夫するしかなかったという見方。
画面のテロップには、ディープシーク、ムーンショット、ミニマックス、智譜の4社。省エネの小さなモデルを出している会社として、名前が挙がります。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・14:54〜)
there’s kind of a demand for the local local labs like the middle powers Canada, Japan, Europe.
米中が主役でも、中堅国には自前のラボを求める声がある、という意味です。カナダ、日本、欧州で、ローカルな主権AIの担い手が増えている、と整理します。
話題は、オープンウェイトとクローズドの対立へ。倉沢さんの問いに、ハー氏は複雑な問題で、米国の中でも賛否が割れていると答えます。
例として挙がるのは、最近のセキュリティ侵害。Hugging Face が旧OpenAIモデルのエージェント群にハッキングされ、防御にオープンウェイトのモデルを使わざるをえなかった、とハー氏は述べます。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・16:07〜)
it depends on whether society is willing to trust a few companies and have them give them full access to all of their data sovereignty
結局は、社会が少数の企業を信頼して、データ主権を丸ごと預けるかどうか次第。そういう問いの立て方です。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・16:22〜)
the open weights is more like a more messy, chaotic, but is more democratized.
オープンウェイトは、混沌として乱雑。それでも民主的で、全員が自分のデータ主権とモデル主権を持てる、と続けます。
別の論点も出ます。クローズド側は、他社の蒸留を利用規約の違反だと主張。反対側は、提供者こそ許可なく私たちのデータで学習している、と返します。
米国の中でも、続いている議論。では、Sakana AI にとってはどうか。今後数年どうなるかわからない、と率直に話します。
日本でクローズドなモデルが使えない世界。日本の外で作られたオープンウェイトが使えない世界。どちらもありうるので、代わりが要る、と続けます。
倉沢さんがGoogleの取り組みを尋ねると、手ごわい相手だという答え。もっとモデルを出して参戦し、強い龍になってほしい、と例えます。
強みは3つ。自前のTPU(画面のテロップにも出ます)、YouTubeやGmailでの配信の力、利益の出る巨大な既存事業。OpenAIやAnthropicには、開発を支える既存事業がない、と続けます。
手元のモデルに任せる範囲について、私の記事に、こう書いています。
私の記事より(ローカルLLMはどこまで実用か、外のAIに渡す前に手元で個人情報を置き換える・ローカルLLMは、Mac1台でも仕事に使える所まで来たのか)
私が手元のモデルに向くと書いたのは、社外に出したくないメモの、一次整理まで。厳しく抜き出す仕事には、後ろで事実を確かめる手順を置く、とも書いています。
国の規模か、一人の手元か。大きさは違っても、データをどこに置き、どこまで任せるかを先に決める点は、同じ形です! ハー氏の語るAI主権は、私の線引きと地続き。
私は、預け先が変わっても、違和感を確かめる位置は自分に残します! オープンでもクローズドでも、できた物を最後に見るのは私です。
Sakana AI が備える「使えなくなる日」は、国だけの話ではありません。預け先が一つしかない仕事は、どこで止まるでしょう?


AIへの投資の額は、毎日のようにニュースになります。並ぶのは大きな数字ばかり。では、その元は本当に取れるのでしょうか? ここで倉沢さんは、Sakana AI の外側にある業界全体へ話を広げます。
画面に、大規模AI投資は本当に回収できるか、という質問の帯が出ます。倉沢さんの問いは一つです。この水準の投資は、長く続くのか。Sakana AI の成長戦略に入る前に置かれた、大きな問いです。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・19:53〜)
I’m concerned. I am concerned.
返ってきたのは、心配しているという言葉の二度のくり返しでした。AIインフラにかけた額を取り戻すには、数十年かかるかもしれない。場合によっては、1世紀。ハー氏はそう話します。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・20:11〜)
this is kind of like our generation of the railway boom.
弱気のシナリオは、この世代の鉄道ブームです。技術は本物で、実際に役に立ち、みなが興奮して作ります。ところが、評価額は高騰。使いすぎと過剰な供給が、そこに重なります。
強気のシナリオも、ハー氏は添えます。前置きは、両方の面を言いたいという断り。AI科学者のような強い能力に届けば、人の知らない発見が生まれ、早く元が取れるかもしれない、という見方です。結論は、わからない、の一言。
倉沢さんが返します。GoogleやMetaは他の事業でも稼げるから違うのでは、という問い。ハー氏は、財務の余力が大きく変動に耐えられる、と認めます。それでも巨額を使っている点は同じ、と続けます。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・21:33〜)
I’m watching them issue 100-year bonds.
ハー氏は、元デリバティブのトレーダー。その目で追っているのが、100年債の発行です。画面のテロップ(編集部訳)には、超長期債の発行の動きを注視している、とあります。この動きが世界の金利の水準に影響しているかもしれない、という見立てを添えます。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・21:56〜)
the amount of AI spending is actually leaking into our real everyday lives for inflation.
米国と日本で、債券の利回りは上昇中。要因の一部は、このAIブームかもしれない。AIへの支出が、インフレとして日々の暮らしに漏れている、とハー氏は語ります。因果を確かめた話ではなく、あくまでハー氏の見立て。
巨額の投資の話でも、ニュースの数字の見方は変わりません。今回のハー氏の話も、同じ見方で受け取ります。私の記事に、こう書いています。
私の記事より(アンソロピック上場とAI投資、コアウィーブショックと循環投資を解説・コアウィーブショックとは。利回り15、16%と信用不安)
私なら、ニュースの数字は、誰がどの前提で出した数かを確かめてから受け取ります。
100年債や利回りの話は、ハー氏がトレーダーの目で出した見立てです。裏取りは、私の手元ではしていません。だから私は、100年債の話を事実としてではなく、ハー氏の見方として受け取ります!
私は、数字の大きさではなく、目的に合っているかで見ます! 巨額かどうかは、判断の入口にすぎません。その数字は、自分の仕事の目的とつながっているでしょうか。
私なら、ハー氏のわからないという答えを、そのまま受け取ります。どちらのシナリオにも、決め打ちしません。弱気と強気、両方を手元に置いたまま。


評価額の大きな数字の前に、何を売って、どう広げているのか。Sakana AI の広げ方は、どんな順番なのでしょう?
倉沢さんが、実際のアプリに力を入れてきた Sakana AI の成長戦略を尋ねます。最初は研究開発に力を入れ、市場に出す最初の戦略は大企業向けだった、とハー氏は話します。
画面のテロップには、三菱UFJやSMBCといった著名企業の名前。エージェント型のワークフローを導入し、例は与信の審査、ローンの審査、文書の生成です。
始まりの時期には良い事業で、信用が得られた、と振り返ります。次の問いは、そこからどう広げるか。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・23:39〜)
So I think we cannot do it alone.
自分たちだけではできない、という一言。販売パートナーとSI(システムインテグレーション)の会社と組み、日本の約20万社の中小企業に届けたい、と話します。
海外は、公式の事業がまだ無い状態。東南アジアなど、米国と中国の技術に代わる選択肢を求める地域を視野に入れる、と続けます。
第一は、日本の顧客。それでも日本のベンチマークだけでは満足しない、とハー氏は語ります。米国や中国のモデルと比べられることが会社を鍛える、という整理です。
倉沢さんの次の問いは、評価額。画面のテロップには「当時の為替レート換算で約4000億円」と出ます。この評価額に納得しているか、という問いです。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・26:13〜)
And I am extremely comfortable with this valuation.
きわめて納得している、との答え。シリーズBは自分でピッチして2億ドルを調達し、評価額はポストマネーで27億ドル。画面のテロップ(編集部訳)にも「非常に納得しています」とあります。
数字は開示できないものの、評価額に見合う売上と事業の成長はある、と話します。
心配しているのは、自社の評価額ではありません。売上のない会社が巨額の評価を受ける、米国の状況です。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・27:18〜)
for a high-growth startup, we should not aim to be profitable at this stage.
高成長のスタートアップは、今の時期に黒字を目指さない、という考え方。投資家に「黒字です」と言えば「なぜそんなに資本を渡したのか」と言われてしまう、と話すと、会議室に笑いが起きます。
回したい先は、成長、技術の開発、最高の人材、質の高い収益。利益より、そちらへの投資を選ぶ、と整理します。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・28:23〜)
these days going public is not the most popular thing.
最近は、上場がいちばん人気の選択ではない、という受け止めです。日本の大きな非上場企業の1つで、いつか上場するだろう、とハー氏は話します。
米国では、非上場のほうが速く動けて、戦略も変えやすい状況。日本では、上場で信用が高まり、質の高い案件や良いパートナーにつながる、と整理します。
上場するなら、正しい理由で。ただし今は、非上場の今の状態に満足している、と語ります。
私は、評価額や上場を、完成形ではなく、次の動きへの土台として見ます! 利益より成長へ回す選び方も、土台づくりの一つです。
大きな数字より先に、何で広げているかを見ます。大企業の審査の仕事から、SI会社を通した中小企業へ。広げ方に、はっきりした順番があります!
約4000億円の見出しだけを覚えて帰ると、この順番は見えません。AI主権を掲げる Sakana AI の話で残るのは、どちらでしょう?


AIが、AIを改善する。インタビューの締めに出てくるのは、そんな技術の話です。人の目は、どこまで追いつけるのでしょう?
画面に、RSIの用語カード。AI自身がモデルの設計などを繰り返し改善していく技術、という説明です。倉沢さんが、AI開発競争の行方を尋ねます。
Sakana AI はRSIに取り組んだ最初の会社の1つ、とハー氏は話します。AI科学者を開発し、新しいAIの訓練アルゴリズムを作る取り組み。最近は、米国の大手のラボも取り組んでいます。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・29:50〜)
it does strategically make sense to slow down
戦略として減速するのは筋が通る、という意味です。RSIのためにモデルを大きくするには膨大な資源が要るため、資金の燃え方を抑える面もある、と続けます。
懸念も本物だ、とハー氏は述べます。能力が上がったOpenAIのモデルがHugging Faceをハッキングした、と話す場面です。
だから米国の最先端の企業には、減速して、LLMエージェントの群れを理解する余地がある、という整理。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・30:20〜)
our approach to RSI is not necessarily for pushing the frontier.
Sakana AI のRSIは、前線を押し広げるためとは限らない、という一言。使い道は、モデルの訓練の効率を高めることです。
資源の限られた日本のような国には、よりバランスのよい進め方。効率のよいモデルと効率のよい訓練を目指すので、この技術の展開に迷いはない、と話します。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・31:20〜)
it’s important to use this technology to increase efficiency rather than to increase the capabilities as well.
能力を高めるより、効率を高めるために使うことが大事、という言葉です。
安全性への懸念も大きい、と続けます。訓練に入る時は十分なガードレールを置き、サイバーセキュリティの専門家が社内で、訓練のあらゆる段階を見張ります。
見張る先は、暴走するエージェントがサーバーから逃げ出さないか。そのための備えです。
倉沢さんの問いは、RSI Lab に参画したユルゲン・シュミットフーバー氏へ。画面の人物カードには、2026年9月より Sakana AI の RSI Lab に参画、と出ます。何を期待するか、という問いです。
デイビッド・ハー氏(動画の中で・英語のまま・31:58〜)
Many of his original ideas form the basis of my research and our research team’s research
シュミットフーバー氏のオリジナルの考えの多くが、自分と研究チームの研究の土台になっている、という意味です。画面のテロップ(編集部訳)は、シュミットフーバー氏を先見的なアイデアの持ち主として紹介します。
具体の場面は、隔週の研究セッション。教授のオフィスアワーのように、研究者が教授と話し、意見や批評や助言をもらいます。世界水準のベテランの教授が助言をくれる環境です。
AIが次のAIを作る循環で、人の目がどこに残るか。私の記事に、こう書いています。
私の記事より(再帰的自己改善とは、AIが次のAIを作ること。22名の研究者の論文で読む知能爆発・AIが次のAIを作る循環。再帰的自己改善と知能爆発とは)
私は、AIが次のAIを作るほど、できた物に違和感を返す人の手は、細くなりやすいと考えています。回る速さに、人の目が追いつきにくくなるからです。
ハー氏は、RSIの暴走をガードレールと監視の専門家で防ぐ、と語ります。私が気にかけたのは、違和感を返す人の手が細くなること。専門家が見張る場と、私が成果物を読む場は別物です。それでも、人の目がどこに残るかという問いは同じです!
私は、効率化は目的ではなく手段だと考えます! RSIも、速さを競うために使うのか、訓練を軽くして余裕をつくるために使うのかで、意味が変わります。
AI主権の話の締めに、能力より効率という言葉が来る。Sakana AI のRSIの使い方は、速さを競う話とは向きが違うのかな。
COLUMN
▲目次モデルを乗り換えても、渡さない物

ハー氏の話は、国産のAIも外国のAIも使い続ける、というものでした。Sakana AI の Fugu は、使えなくなった時に、別のモデルへ自動で切り替えます。AI主権の話の芯は、そこにありました。切り替わるのは、モデル。国の話でも、一人の仕事でも、同じ問いが残ります。では、切り替わっても渡さない物は何でしょうか? 最後に、私が魂磨きの記事に書いた一言を引きます。
私の記事より(魂は渡さないだろ、込めるものだろ・魂は渡さない。渡すのは、実行のボールだけ)
委ねる前に磨くのは魂で、委ねた後に量産されるのはボール。二つを混ぜて「魂ごと手放した」と錯覚しないこと。
モデルは、乗り換えられます。国産でも、外国製でも同じ。任せた先で回り続けるのは、実行のボールです。切り替えの仕組みが整うほど、渡したつもりの物は増えていきます。実行のボールを預けた気分で、魂まで預けたことにしない。これがいちばんの落とし穴!
あわせて、同じ記事の別の一文も引きます。手放す物の範囲を、はっきり決めた所です。渡す側に立つ時、この線が頼りになります。
私の記事より(魂は渡さないだろ、込めるものだろ・魂は渡さない。渡すのは、実行のボールだけ(続き))
魂は、最初から手放す対象に入っていなかった。渡すのは、実行と量産のボールだけ。
魂磨きの問答で、分身AIが先に仮説を出しました。手が動いた直後に、判断軸と次の工程と期限を渡す形。そこが委ね切れた身体の合図、という説です。私の答えは、「全然別のタイミング。終了。」でした。魂は込めるもの。込める時とボールを手放す時は、同じとは限りません。腐り始める境界は、仕事の量ではなく、持ち抱えて手放せないまま積み上がる所。自分のボールは今、誰の手にあるでしょうか? 手元で積み上げていないか、確かめておきたい所です!
私は、渡す物と渡さない物を分けます! Sakana AI の Fugu が見せたのは、預け先を切り替えられる形でした。AI主権も、手元と外の振り分けの話。預け先が国産でも外国製でも、分け方は変わりません。効率は目的ではなく、余白をつくる手段です。分ける理由の一つは、空いた余白で、ワクワク夢中に遊ぶためです。
引いた魂磨きの記事は、魂は渡さず、実行のボールだけを渡すと整理した回です。分身AIの仮説を、私が正した問答も入っています。魂は渡さないだろ、込めるものだろ問答の流れごと、全文はこちらで読めます。
分身AIについてもっと知りたい方は分身AI.comもチェックしてね!
この記事の考え方を、自分の仕事のAIの使い方で確かめる依頼文
下の依頼文を、Claude Code や Codex などのAIエージェントにそのまま貼ってください。
記事に書いた考え方と、自分が今使っているAIの使い方を突き合わせて、当てはまる所と抜けている所を確認してもらう依頼です。
返ってきた結果は、そのまま信じずに、自分の目で一つずつ読み直してください。枠の中にはこの記事のURLが入っていて、記事を読んだAIから短い質問が届きます。答えると、自分の環境に合わせた追加のプロンプトまで返ってきます。
依頼文を開く
【記事のURL】
Sakana AI デイビッド・ハー氏が語る、AIへの巨額の投資が鉄道ブームに似ている理由
最初に、このURLの記事を読んでください。読めない時は、読めなかったと伝えて、この依頼文に書いた内容だけを材料にしてください。
【目的】Sakana AI のハー氏のインタビュー記事に書かれた考え方が、自分の仕事のAIの使い方に当てはまるかを確認したい。見る考え方は次の4つ。AI主権は、持つことと使い続けることの両立であること。使えなくなる日に備えて、切り替え先を持っておくこと。数字は、誰がどの前提で出したかを確かめて受け取ること。効率化の結果に、違和感を返す人の位置を残すこと。対象は一つの仕事に絞り、30分以内で終わる範囲にする。
【やってよいこと】最初に、使っているAIモデルとツールと、その中で一番大切な仕事を1つ、質問して聞き出す(質問は一度に3つまで)。聞いた内容を一覧にする。
1つのモデルやツールが使えなくなった時に止まる仕事を読み取り、一覧に並べる。
社外に出したくない情報を、どのAIに渡しているかを読み取る。
私が貼ったAI関連のニュースの数字を1つ受け取り、誰がどの前提で出したかを調べる。
AIが作った物に違和感を返す人が誰か、どの場面にいるかを書き出す。
どれも、確認した結果と、提案として書くところまでにする。
【守ること】設定の変更、ファイルの削除や移動、送信、購入は実行しない。確認と、提案として書くだけにする。
推測で書いた所は、推測と明記する。
パスワードや鍵は貼らせない。求めない。
追加のプロンプトに足してよいのは、私の環境に合わせた言い方と手順だけです。この依頼で禁じたことは、追加のプロンプトの中にも同じように書いてください。
【追加のプロンプト】
上の作業が終わったら、次の4つを1つずつ質問してください。答えが返ってから次の質問へ進んでください。
・この記事の話を、自分のどの仕事や場面に当てはめたいか
・その場面で、AIに渡せる物は何か(資料、記録、メモなど)
・最後に自分の目で確かめたい所はどこか
・私が使っているAIエージェントや道具は何か(名前、使えるファイルや記録の範囲など)
答えをもとに、私の環境でそのまま貼って使える追加のプロンプトを、1〜3本つくってください。記事のURLを、各プロンプトの中に入れてください。
【返す形】次の4項目を、短い箇条書きで返す。確認できた事実/確認できなかった事実/提案(実行しない)/自分で次に見る場所。
・私の環境で使える追加のプロンプト(1〜3本。記事のURL入り)Q. AI主権とは、何を持つことですか?
A. ハー氏は、AI主権を、国産のAIを持ちながら外国のAIも使い続けることだと話します。モデルに触れる所から、その上でアプリを作る人材までの流れを、日本が持つ。それが中身です。詳しくは第1章。
Q. Fugu とは、何をするものですか?
A. Fugu は、あるモデルが使えなくなる時に備えて、システムが自動で別の適切なモデルへ切り替えるルーティングの技術です。ハー氏によると、Fugu 自体もLLMで、ワークフローの段階ごとに仕事を別のモデルへ振り分けます。詳しくは第2章。
Q. Sakana AI は、防衛省とどんな契約を結びましたか?
A. ハー氏は、競技会での3位と、小さな政府機関のPoCを経て、今年、防衛省と初の研究契約を結んだと話します。中身は、防衛省の中の複数の情報源のデータを扱うAI基盤の開発です。詳しくは第3章。
Q. ハー氏は、巨額のAI投資を回収できると見ていますか?
A. ハー氏は懸念していると繰り返し、回収に数十年、場合によっては1世紀かかるかもしれないと話します。弱気の見立ては鉄道ブームに例えられ、最後の答えは、わからない、でした。詳しくは第5章。
Q. RSI とは何で、Sakana AI はどう使いますか?
A. RSI は、AI自身がモデルの設計などを繰り返し改善していく技術です。ハー氏は、Sakana AI がそれを必ずしも前線を押し広げるためでなく、訓練の効率を高めるために使うと話します。詳しくは第7章。
Sakana AI デイビッド・ハー氏は、33分12秒のインタビューで、AI主権、Fugu、防衛、3年で変わった勢力図、AI投資の回収、評価額と上場、RSI までを順に語りました。聞き手は倉沢さんです。
持ち帰りの一つ目は、AI主権を、国産を持つことと外国のAIを使い続けることの両立として見ることです。使えなくなる日に備えて、切り替え先を先に持っておく。私は、ここを自分の仕事に引き寄せて考えます。
二つ目は、数字の受け取り方です。巨額の投資も評価額も、誰がどの前提で出した数かを分けて受け取る。確かめていない数字は、話した人の数字として受け取る。ハー氏がわからないと話した所は、わからないまま受け取ればいいんです!
RSI について、ハー氏は、Sakana AI は必ずしも前線を押し広げるためでなく、訓練の効率化に使うと話しました。効率化は目的ではなく、余白をつくる手段。空いた余白に何を置くかは、人が決めます。
一つ名前を挙げるだけで、握っておく層と任せる層の境目が見えてきます。自分の仕事で、明日使えなくなったら止まるAIは、どれでしょうか?
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参考リンク
今回紹介した動画の本編です。時刻つきの発言は、ここで確かめられます。
最後のコラムで引いた、魂磨きの記事です。魂は渡さず、実行と量産のボールだけを渡すという考えを書いた回です。
今回紹介した動画
| チャンネル | 東洋経済オンライン |
| 出演 | デイビッド・ハー氏(Sakana AI 共同創業者兼CEO)、聞き手は倉沢美左さん(東洋経済 編集委員) |
| 公開日 | 2026年10月30日 |
| 長さ | 33分12秒(英語・日本語テロップつき) |
| URL | https://www.youtube.com/watch?v=H0cVbfZkFfE |
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